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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
神々の真実
267/383

『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』 1

続きです。



□■□



俺の名前はセレウス・ウォーカー。

第25セルース移民船団の戦闘乗組員(クルー)の一人で、双子の兄であるハイドラス・ウォーカーと共に、旗艦『エストレヤの船』を護衛する任務を担っていた。


もはや、俺達の世代では歴史の話となってしまった『資源戦争』。

その果てに、俺達の母星、惑星・セルースは壊滅的な被害を受けたのである。


もはや惑星セルースは、生命の住めない惑星と成り果て、そんな中俺達は、とあるスペースコロニーにて生まれたのである。


俺達に両親はいなかった。

後で聞いた話だが、俺達の両親は、かなり高い“霊能力”の資質を持っていたそうだ。


平時ならともかく、大戦真っ只中にあってその境遇という事は、それはつまり、“霊子力エネルギー”の発展の礎となってしまった事を意味する。

それ故に俺達は、二人きりの家族として、天涯孤独の孤児として成長したのであった。


もっとも、俺達の育った環境は、決して悪いものではなかった。

むしろ、両親の資質を受け継いだのか、高い“霊能力”の資質を持っていた俺達は、大戦後は手厚い保護を受ける立場に早変わりしていたのである。


ここら辺は、数多くの“能力者”の犠牲の上に成り立った“霊子力エネルギー”。

その夢のエネルギーが尽きてしまったら、今度こそ俺達セルース人は全滅の危機となるから、その発展、研究を進める上で必要不可欠となる“能力者”を保護する方向にシフトしたからであろう。


まぁ、当時の俺達にそうした事情は分からなかったが、結果として、両親がいないながらも、養父母の愛情を受けて、しかも普通の子供達より数段高い教育を受けられたのであった。


さて、俺達がまだ学生時代の事だ。

壊滅的な被害を受けた惑星セルース。

そこからの資源供給が断たれてしまったので、セルース人達はセルース星系の開拓に力を入れていたのである。


惑星内とは違い、衛星基地やコロニー、つまり現存のセルース人が生活する拠点を維持するには、当然より多くの資源が必要となるからである。


もちろん、エネルギー自体は、“霊子力エネルギー”があるので問題はないし、リサイクル・リユース技術も大きく発展していたのだが、そうは言ってもそのままではジリ貧だからな。


生活圏を広げる上でも、また資源を獲得する上でも、セルース星系の開拓は急務だった訳であろう。


そしてその事が、セルース人達の未来を、思わぬ方向へと進ませる契機となっていったのであるーーー。



「“先史宇宙文明”、か・・・。」

「ただいま〜。お、また例のニュースか。」

「おかえり、セレウス。そう、惑星バガドで見つかった例の遺跡さ。何でも、僕らとは別の知的生命体が残したのはほぼ間違いないみたいだね。」

「ほぉ〜ん、すげぇ発見じゃん。つまり、宇宙人がいる、もしくはいた、って事だろ?世界中のSFマニアが泣いて喜びそうな情報だよな。」

「それどころか、研究者も血眼になって群がるだろうね。とうさんとかあさんも、張り切っていたよ。」

「マジか・・・。やっぱり、元・研究者の血が騒ぐんかねぇ〜。」


養父母は、元々“霊子力エネルギー”に関わる研究者だったらしい。

その縁で、俺達の本当の両親とも繋がりを持っており、それが故に、俺達を引き取る事となったらしいのだ。


まぁ、それが、本当は本物の両親に対する償いなのか何なのかは分からないが、少なくとも俺達は、養父母から虐待のような事を受けた覚えはないので、もしかしたら生前の本物の両親と養父母は、割と友好的な関係を構築していたのかもしれない。

ま、それはともかく。


ただ、俺達もある程度育ってきて、しかも未知の“先史宇宙文明”が発見され、なおかつ、それが今後のセルース人達の未来を担うかもしれないとなると、元・研究者としての血が騒いだんだろう。

結果として彼らは、惑星バガドに赴く事となった。

もちろん、勝手に押しかけた訳ではなく、要請を受けての事であったが。


そしてそこで、彼らは帰らぬ人となってしまった。

原因は不明だが、どうやら実験中の事故だったらしい。


こうして俺達は、本当に二人きりの家族となり、天涯孤独の身になってしまったのであった。


ただ、養父母の意思、みたいなものは、しっかりと俺達は受け継ぐ事となった。

“先史宇宙文明”の遺跡から発見された“ワープ航行技術”や“ジャンプ機能”、その他超技術が数多く発見され、以前から提唱されていた『楽園再生計画』や『楽園開拓計画』が現実味を帯びた話となっていったからである。


そして俺達も無事に学生を卒業し、『楽園開拓計画』の一員として、外宇宙に飛び出す事を選択する事となったのである。

先程も述べた通り、ここら辺は、養父母の影響を強く受けたのだろう。

もっとも、未知に対する興味が強くあった、というのもあるが、すでに養父母が他界しており、友人とか、そうした存在はともかく、自分達がセルース星系に留まる理由、繋がりが薄かった、というのもある。


そうでなくとも若者連中は、俺達と同様に『楽園開拓計画』に志願する者は多かったのである。

ここら辺は、時代が変わっても環境が変わっても、革新や変革を求める心理が若者に多い事の裏返しだろう。


こうして俺達は、様々な訓練過程を経て、第25セルース移民船団の戦闘乗組員(クルー)として、旗艦『エストレヤの船』と共に長い長い航海をする事となったのであったーーー。



・・・



ここで大まかであるが、第25セルース移民船団について書き記しておこう。


第25セルース移民船団は、その名の通り、移民船団としては25番目に出発した一団だった。


その根底にあるのは、『楽園開拓計画』。

『資源戦争』によって、壊滅的な被害を被った母星を復活させるのは、誰の目から見ても不可能と思われたのである。

故に、『楽園再生計画』に対を成すように、この『楽園開拓計画』が提唱され始めたい訳である。

もっともどちらも、ハッキリ言って当初は夢物語でしかなかったが。


何故ならば、それをするにはどちらにせよ“資源”が必要となるからだ。

惑星セルースを復活させるとしたら、それは失われた“資源”やその他を他から調達して調整しなければならない。


また、現状維持すらままならなかった俺達が、外宇宙に飛び出すにしても、やはり“資源”の問題がネックとなったのである。


そこで、再三述べている通り、セルース星系の開拓に力を入れていた訳である。

そして、そこで“先史宇宙文明”の遺跡の発見と相成った訳だ。


この遺跡の発見と“資源”の確保によって、どちらの計画も目処がついたのである。

結果、両方の計画が同時並行で進んでいった訳であった。


どちらも、根底にあるのは“種の保存”の為、である。

緩やかに滅びの道へと突き進んでいた俺達にとっては、“再生”にしろ“開拓”にしろ、種の全滅を逃れる事が出来るなら、どちらでも良かったのである。

まぁ、成功の確率を上げるなら、どちらも挑戦してみよう、って事だろう。


とは言えど、宇宙は限りなく広大である。

それに俺達セルース人達は、この“先史宇宙文明”の遺跡以外に明確な異星人に対する情報は持っていなかった。

つまり、俺達セルース人類は、他の星系や銀河にて、俺達セルース人達が居住可能である惑星の情報を持ち合わせていなかったのである。


となれば、開拓派を一纏めに送り出すのは効率が悪い。

場合によっては、一生居住可能な惑星を発見出来ない恐れもあったからであった。


そこで、いくつかのグループに分けて、それぞれが別の場所を探索する事としたのである。


それに、俺達セルース人類に情報がなかったとは言えど、“先史宇宙文明”の遺跡には、謎の座標が数多く残されていた。

これほど高度な文明を築く技術を持っていながら、わざわざ無意味な座標を遺すとは考えづらい。


そこで、研究者達は、この座標を追っていけば、もしかしたら居住可能な惑星が見つかるのではないかと考えた訳である。

少なくとも、“先史宇宙文明”を築いた異星人の他の拠点が見つかるかもしれない。


こうして、“種の保存”と未知の惑星の開拓、そして、まだ見ぬ異星人との邂逅を夢見て、セルース移民船団は続々と出発していった訳であった。

俺達はその25番目、かつ、25個目の座標を担当する船団、という事である。



さて、こうして旅立っていった俺達第25セルース移民船団だったが、その“中身”は意外とシンプルなものだった。


旗艦『エストレヤの船』はもちろん、それに随行する大小様々な“船”には、必要最低限の生命維持システムしか組み込まれていなかったのである。


具体的な例をあげれば、衛星基地やスペースコロニーと違い、食糧生産をする施設がほとんど存在しないのである。

何故ならば、あくまで移民船団は生活をする為の拠点ではなく、移動をメインとしていたからである。

基本的には“先史宇宙文明”の遺跡から発見された人工知能(AI)に管理を全て任せ、俺達は“コールドスリープ”で眠り続けるのみなのである。


ここら辺は、効率化の問題だ。

移民船団内にて普通に人生を送り、数世代世代交代をするとしたら、複数の大規模な施設が必要となる。


ただでさえ資源は限られているのに、その中にあって通常のように生活をしていたら、座標に到達する前に移民船団は全滅してしまう恐れもあるからな。


ただ、もちろん全ての者達が眠りにつく訳ではない。

人工知能(AI)によって宇宙船はほぼオートメーション化しているとは言えど、それでも、何かあった時には、人間が対処しなければならない場面も存在するからである。


もちろん、ずっと“目覚めた”ままだと、“コールドスリープ”による老化防止の効果から外れてしまう。

それ故に、期間を決めて、持ち回りで任務に就くのである。


移民船団はかなりの人数を収容しており、各々が何かしらの技術を持っている。

ここら辺は、『開拓』という性質上、その選考基準が高い故の事であった。


ちなみに、俺とハイドラスなんかは、“戦闘乗組員(クルー)”であるが、では、何と戦うのか?という話になるかもしれないが、意外と宇宙というのは厳しい環境なのである。

例えば、航行中に小惑星帯に行き当たってしまう事もあるだろう。

もちろん、人工知能(AI)によって、自動で回避、迎撃する事は可能だが、人間の手が必要となる事も多いのだ。


他にも、仮に居住可能な惑星に到達したとしても、現地がどのような環境であるかも分からない。

もしかしたら、凶悪な動植物が存在するかもしれないので、調査などをする上では、俺達のような存在は必要不可欠なのであった。


で、途中になんやかんやあったりするが、それは割愛しておいて、今から数千年前、俺達第25セルース移民船団はとうとう“先史宇宙文明”の遺跡が指し示した座標に到達した。

そこが、今俺達がいる、“惑星アクエラ”だったのであるーーー。



・・・



“アクエラ”とは、セルースの古い言葉で、水を意味する“アクア”から派生した造語である。

これは、惑星アクエラの見た目が美しい青色だった事に由来する。


その惑星を発見した時、俺達は感激した。

俺達の母星は、すでにその美しさを失って久しかった事もあり、その様子は古い画像でしか知らなかったからである。


それが、今目の前に、母星とは別の惑星ではあるが、かつての母星を彷彿とさせる佇まいの惑星がひっそりと鎮座しているのである。


皆、口にこそ出さなかったものの、おそらく同じ様な感想を抱いた事だろう。

すなわち、


・・・帰ってきたんだな・・・。


そんな郷愁にも似たような気持ちである。


そして、とりあえずアクエラの衛星に腰を落ち着け、俺達はアクエラの調査を開始したのである。


当たり前だが、現地の状況も確認しないまま、一度に大量の人数が入植してはトラブルが起きてしまいかねないからな。

この惑星の環境やら大気の成分、生命体の生息分布など、調べるべき事は無数にある。


そこで、“先遣隊”として惑星アクエラを調査する部隊が編成されたのである。

残りの乗組員(クルー)達は、引き続き宇宙船にて“コールドスリープ(待機)”であった。


で、俺とハイドラスは、その先遣隊の一員に任命された訳である。

どんな危険が存在するかも分からないので、戦闘乗組員(クルー)の力は必要不可欠だったのだろう。


他には、研究者、学者が先遣隊の主な構成員であった。



アクエラの大地に降り立った俺達は、歓喜していた。

それは、俺達が初めて感じる“自然”の姿だったからであろう。


現存のセルース人達は、『資源戦争』の影響も相まって、ほとんど“自然”を知らない世代だったのである。


もちろん、衛星基地やスペースコロニーには、人間が暮らせる様にと惑星セルースに似た環境は用意されていたが、それはあくまで擬似的なものに過ぎないし、知識としては知ってはいても、それを直に感じるのとはやはり訳が違う。


初めて感じる“自然”は圧巻であり、俺達はますます惑星アクエラに惹かれていったのであった。


ただ、問題点もあった。

この惑星では、現地人の存在はか弱い存在に過ぎず、また俺達セルース人達でさえ手こずるほどの強力な生物が闊歩する世界だったからである。


具体的には、これは俺達も割と身近な存在だった猛獣、に似た生物。

後に、“魔獣”と呼称されるアクエラの野生動物の事だ。


それと、むしろこちらの方が重大な問題だが、人間に似た、醜悪な怪物の存在である。

後に、“モンスター”と呼称されるアクエラ特有の生物であった。


俺達セルース人の文明力なら、それら凶悪な生物に対抗する事は可能だったが、もちろん絶滅させる事など不可能であり、仮に出来たとしても、生態系のバランスを崩す恐れもある。


仮に俺達が本格的に入植するとしたら、彼らとの関係は細心の注意が必要となるだろう。


それと、当時の俺達にとってはこれが一番の問題であったが、調査を開始して数日後、人工知能(AI)の観測結果からはセルース人が生存可能な環境であると分かっていたが、一応の保険として(未知のウイルスや細菌がいるかもしれないからである)所謂『宇宙服』で作業、行動していたにも関わらず、先遣隊の間で謎の病気が蔓延した事であった。


感染症は、俺達セルース人達にとっても一番注意しなくてはならない。

場合によってはそれが原因で、移民船団そのものが全滅する恐れもあるからである。


そこで俺達は、一旦惑星アクエラから退避し、本隊とは別に先遣隊を隔離し、持ち帰ったデータを人工知能(AI)に調査・解析させて、再び“コールドスリープ”についたのである。


“コールドスリープ”の利点は、肉体の老化防止だけに留まらず、こうした事態の場合にも、病気などの進行を遅らせる時にも利用可能なのであった。


こうして、新たなる惑星を目の前にして、俺達は入植を果たせぬまま、足止めを食らう事となったのであったーーー。



数十年後、俺達の体感ではすぐの事であったが、その原因が判明した。


どうやら、惑星アクエラには、惑星セルースにはなかった未知の物質が存在するらしく、それが俺達の肉体に影響を与えた様である。

また、人工知能(AI)の解析結果から、“魔獣”や“モンスター”の様な生物が生まれた要因も、それと関係があるらしい、との事。


こうして、後に“魔素”と呼ばれる物質(?)が発見され、それを何とかする為の、研究・解析が本格的に始まったのであったーーー。



誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。


いつもご覧頂いてありがとうございます。

よろしければ、ブクマ登録、評価、感想、いいね等頂けると非常に嬉しく思います。

よろしくお願いいたします。

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