悪夢 1
続きです。
夢の“ワープ航行技術”を手にしたセルース人達だったが、それですぐに入植可能な惑星や高度な知性を持った知的生命体を発見出来た訳では当然なかった。
何故ならば、“先史宇宙文明の遺跡”が遺した“ワープ航行技術”は、あくまで別銀河から別銀河までの、ある意味大雑把な範囲での移動に限定されており、その銀河の“中”にある様々な星系や惑星へのピンポイントでの移動は不可能だったからである。
そうした事もあって、入植可能な惑星、あるいは高度な知性を持った知的生命体、またはそうなる可能性の高い種族を発見する為には、どうしても地道な捜索が必要となったのであった。
たとえ、“先史宇宙文明の遺跡”から夢の“ワープ航行技術”を獲得したからと言っても、銀河、宇宙は膨大な領域を持っている。
もちろん、通常の方法で別銀河を目指すのとは違い、かなりの時間的短縮には成功したが、それでも長い長い年月の掛かる旅路なのであった。
そこで、セルース人達が発明したのが、所謂“コールドスリープ装置”だったのである。
“コールドスリープ”とは、生体、主に人間の体温を低温状態に保つ事で、人体機能を止め仮死状態にする事で極力生体の老化(劣化)を防いだ状態で保存する手法の事。
所謂人工的な冬眠の様なものである。
『冷凍睡眠』、『人工冬眠』とも呼ばれる。
この、主にSF作品で取り扱う様な技術である“コールドスリープ”であるが、人間の素となる精子や卵子は冷凍保存技術が開発されており、人間そのものを冬眠状態にする実験も、実際に向こうの世界でも成功している。
ただし、そこには膨大な量のエネルギーが必要であるとの試算も出ていたりする。
つまり、“コールドスリープ”を実現させるのは、現実的に問題が山積みなのであった。
だが、セルース人には、これらをクリアするエネルギー源があった。
そう、“霊子力エネルギー”である。
これならば、眠っている人々からエネルギーを抽出出来るので、“コールドスリープ”、および宇宙船そのものを運用するエネルギーに加え、広大な宇宙空間を飛び回る事による肉体的な老化を防ぐ事も同時にクリアしてしまったのであった。
まさしく、“霊子力エネルギー”は夢のエネルギーであろう。
こうしてセルース人達は、“先史宇宙文明の遺跡”から獲得した“ワープ航行技術”と、“霊子力エネルギー”、“コールドスリープ装置”を使い、広大な宇宙空間へと飛び立っていったのであるがーーー。
◇◆◇
当たり前の話として、過ぎ去った歴史を変える事は不可能である。
これは、言い換えると、過去に戻る事は出来ない、という事でもある。
人生に“リセットボタン”はないのである。
だからこそ我々は、今を必死に生き抜く必要があるのかもしれない。
だが人は、えてしてそんな当たり前の事を忘れて、過去にすがる事が往々にしてある。
例えば、これは非常に痛ましい話でもあるが、事件や事故が要因となり、大事な人を亡くした、あるいは、それまでとは違う生き方をせざるを得ない人々も数多く存在している。
そうした人々は、きっと常にこう思うのだろう。
“あの事件、事故がなければ・・・。”、と。
だが、それでも現実は変わらない。
先程も述べた通り、一度起こってしまった事を覆す事は不可能なのである。
残酷な話であるが、歴史にも人生にもifはないのだから。
であるならば、アーロスらが元の世界に戻る事など不可能なのである。
少なくとも、“元の生活”、“過去の自分”に戻る事など。
しかし、これは人知を超えた力を持つ技術や存在に触れた事で何か思い違いをしてしまったのかもしれないが、彼らはそんな当たり前の話を忘れて、今の自分をリセット出来ると本気で考えてしまったのである。
そしてその事が、結果として全て失ってしまう、という事にも気づかぬままにーーー。
・・・
「よっしゃあっ!んじゃ、いっちょリベンジと行きますかねぇ〜!!」
「今度こそ、『エストレヤの船』を手に入れましょう!」
「もちろんです。今度こそ、ハイドラス様の期待にお答えしなくてはっ!!!」
「・・・。」
「皆さん、やる気十分ですねぇ〜。」
アキトらが、アーロスらの異変に気付いてその対策に打って出ようとしていた頃、そのアーロスらは以前にセシルと激闘を演じた舞台へと舞い戻っていた。
その目的は、当然セシル、及び彼、あるいは彼女の本体兼エネルギー源である“疑似霊子力発生装置”を破壊する事。
ひいては、彼、あるいは彼女が守っている『エストレヤの船』が眠る遺跡類を確保する事であった。
もちろん、以前にこっぴどくやられた事もあって、何の勝算もなく再び突撃した訳ではない。
“夢”の中で、向こうの世界の神様を匂わす存在と出会い、チート能力を与えられる、というイベントがあったからこそである。
これによって、アーロス、ドリュースはもちろんの事、ウルカとN2も、大幅なパワーアップを果たす事となったのである。
「しっかし、キドオカさんだけ“眼”に変化がないんすねぇ〜?」
「ね?今の僕らなら分かるけど、間違いなくキドオカさんにも、アバターの性能とはまた別の力が宿ってるって分かるのにね。」
「・・・おそらくですが、個人差があるのではないでしょうか?そもそも与えられる特典も、個人によって異なる筈ですからね。」
嘘である。
アーロス、ドリュース、そしてウルカとN2も、セシルとの戦闘に結果的に敗北した事によって、現状を改善する為の策としてチート能力を得る手段を選んだ。
しかし、キドオカは、アラニグラやエイボン、ククルカン同様に、チート能力を受け取る事を断ったのだ。
何故ならば、そこにどんなリスクがあるかも分かったものではなかったからである。
「ま、そりゃそーか。」
「あんまり細かい事は考えても仕方ないよね。重要なのは、僕らが間違いなくパワーアップした、って事だし。」
「・・・それなんですが、本当にキドオカさんも、我々のパーティーに加わって下さるのですか?」
「ええ、まぁ。皆さんと違い、私は向こうへの帰還を望んでいる訳ではありませんが、『エストレヤの船』や『失われし神器』には興味がありますからね。ま、NPCの一時的な加入だとでも思ってください。」
「・・・。」
こちらも嘘である。
キドオカの目的は、ハイドラスの打倒と高次の存在への興味だけである。
アーロスらに合流したのも、『エストレヤの船』がハイドラスに渡る事を阻止する狙いがあり、まぁ、ここら辺はソラテスに強要された面も大きかったが。
ただ、やはり“仲間”として内側に潜り込んた方が色々と都合が良い事もあり、また、思わぬアーロスらのパワーアップイベントがあった事で、高確率で彼らが『エストレヤの船』が眠る遺跡類を獲得してしまう可能性があったので、こうして表面上は“仲間”として振る舞っていた訳であった。
(ちなみに、キドオカとソラテスが『エストレヤの船』が眠る遺跡類をゲットするのならば、最初から邪魔なアーロスらがセシルに殺られるのをただ傍観していれば良かったのに、と思われるかもしれないが、以前にも言及した通り、ソラテスにはキドオカ以外の“駒”がいない、という裏事情もある。
キドオカ一人では、いくらアバターとしての性能と霊能力という稀少な能力を併せ持っていると言っても、セシルに対抗する事は難しいし、なおかつソラテスも『制約』によって参戦する事が不可能だ。
つまり、アーロスらが先の戦いで命を落としてしまった場合、ハイドラス派に『エストレヤの船』が渡る事を阻止出来る一方で、自分達も『エストレヤの船』を手に入れるチャンスを失う事となる訳だ。
そこで、間一髪のところでアーロスらを助け、キドオカをアーロスらと共闘させる事で、セシルと“疑似霊子力発生装置”を破壊しつつ、最終的に彼らやハイドラスを出し抜き、キドオカ、及びソラテスが『エストレヤの船』をゲットする、というシナリオを描いたのであった。)
もっとも、あんまり物事を深く考えていないアーロスやドリュースはともかく、ウルカとN2は、キドオカを懐疑的な目で見ていた訳であるが。
しばらくすると、セシルの自爆によって地形が随分様変わりしたものの、逆に更地になった事で以前よりも分かりやすくなっていた目的地に辿り着いたアーロス一行。
ちなみに、前回と違い、トリアやエネアといったハイドラス派の者達は同行していない。
何故ならば、前回でもセシルとの戦闘ではあまり役に立たなかったし、それどころか、足手まといになる可能性が高かったからであった。
こうして、前回の反省点を活かし、アーロスらだけでセシルやセシルの本体であるところの“疑似霊子力発生装置”を破壊し、安全が確保出来てからトリアやエネア、またハイドラス派が合流する事で話はまとまっていた訳である。
〈警告します。この地は、第一級の特別機密区画です。正規の手段以外で侵入を試みる者は、誰であろうと排除します。これを解除する為には、速やかに認証コードの送信か、通行許可証の提示をお願い致します。繰り返します・・・。〉
「来やがったな・・・!」
「油断するなよ、アーロス。」
「分かってるさ。この間死にかけたばっかだからな。」
「では、私は例の装置の位置を探ります。」
「お願いします、キドオカさん。本体の位置が分からない限り、この戦闘は延々に終わりませんからね。」
短く打ち合わせをすると、アーロスらは散開する。
一応、キドオカが加入したと言っても、あくまで戦うのは前回と同じく、アーロス、ドリュース、ウルカ、N2がメインとなる。
キドオカは、式神を駆使して、“疑似霊子力発生装置”を発見する役割を担うからである。
結局は、本体であるそれを破壊しない事には、言うなればセシルが再びリスポーンする事となるだけだ。
それでは元の木阿弥であるから、この役割分担は理にかなっていた訳である。
〈これが最後通告です。警告します。この地は、第一級の特別機密区画です。正規の手段以外で侵入を試みる者は、誰であろうと排除します。これを解除する為には、速やかに認証コードの送信か、通行許可証の提示をお願い致します。
・・・認証コードの送信、および通行許可証の提示は確認出来ず。
“侵入者”達の更なる接近を感知。
“侵入者”達のデータ照合。
前回の“侵入者”と特徴が一致。
これより、殲滅モードへ移行します。
“侵入者”達の排除を開始。〉
以前と同様に、アーロスらにはセシルの言葉が分からないし、そもそも彼らの目的はセシル、及び“疑似霊子力発生装置”の破壊なので、警告を無視してズンズン進んでいく。
それに対して、セシルも前回と同じ文言を発するが、一つだけ違ったのは、セシル(正確には“疑似霊子力発生装置”)にもアーロスらのデータが蓄積されていたらしく、初手から全開で彼らを迎え撃とうとしたところであろう。
「来るぞっ!!!」
「「「「っ!!!」」」」
こうして、アーロスらとセシルの、2ラウンド目の激闘が開始したのであったーーー。
・・・
ドゴォォォォォ〜〜〜〜ンッ!!!!
「もう始まってるみたいっ!」
「だね。まぁ、すぐに決着がつくとも思えないけど・・・。」
一方その頃、大気を震わす様な轟音が鳴り響く中、アーロスらとセシルの激突を予見していたアキトらは、遅ればせながら現地に急行していた。
なんだかんだ、撤収作業やら作戦会議やらに時間を取られてしまった結果である。
もっとも、仮にアーロスらとセシルの激突が始まる前に現地に到着していたとしても、下手に手出しするつもりは毛頭なかったのだが、今現在のアーロスらは、アバターの能力とチート能力を併せ持っているので、仮にセシルが再び彼らを撃退出来ればそれに越した事はないのだが、それは流石に希望的観測が過ぎる。
故に、勝敗が決する前に何とか現地に到着し、その結果次第で次の一手が打てる様にと、こうして全速力で現場を目指していた訳である。
ドゴォォォォォ〜〜〜〜ンッ!!!!
再び、大気を震わす様な轟音が鳴り響く中、アキトは号令を掛ける。
「急ごうっ!!」
「オーケー。」「分かった。」「了解です。」「了解や。」「リョ。」( ̄ー ̄)bグッ!
その後、更にスピードを上げた彼らは、あっという間に風となって消え去って行ったのであったーーー。
・・・
「チッ!近づけねぇっ・・・!!!」
「やはり、向こうも僕らの事を警戒しているみたいだね。」
意気揚々とセシルとの戦闘を始めたアーロスらであったが、パワーアップもあって楽勝だろうと思いきや、実際にはかなり苦戦を強いられていた。
何故ならば、先程も述べた通り、今のセシルにはアーロスらの危険性が共有されていたからであり、油断も様子見もなく初手から全力全開。
光弾の雨あられをお見舞いされていたからであった。
以前にも言及したかもしれないが、アーロスらはかなりバランスの取れたパーティー構成をしているものの、その反面火力に若干の不安要素があった。
いや、近距離はアーロスが、遠距離はN2がいるのでその点はカバー出来ているのだが、反面遠距離からの大火力や高出力の攻撃は、やはり魔法使いであるアラニグラやエイボンの専売特許なのである。
それ故に、セシルの【霊子砲】による遠距離からの広範囲攻撃、かつ【霊子防壁】でガチガチに固めた防御力を突破する攻撃は、いくらパワーアップしたN2と言えど、中々生み出せないのであった。
当然、近距離主体であるアーロスは、言うまでもなくセシルに近付かない事にはその性能を発揮する事は出来ず、一応戦闘能力を有しているとは言えど、回復役であるウルカにもそれを打開する術はない。
様々なサポート能力を有するドリュースの召喚術も、味方に対する防御で手一杯であり、自ずとセシルとN2の撃ち合いの構図となる。
そうなると、N2も手数で応戦するしかないから、結果ジリ貧となってしまっていたのであった。
(仮に、N2が応戦しないと、セシルからの“光弾”は全てアーロスらに降り注ぐ事となる。
それでは、ウルカによる【戦いの唄】+【物理障壁】+【対魔障壁】+ドリュースによる召喚術でも防ぎ切る事は出来ない。
それ故に、どうしてもN2がセシルと撃ち合い、一定程度の“光弾”を相殺する事が必須になってしまうのである。
なるほど、前回にセシルがアーロスらに対する有効手段として【霊子砲】を選択したのは間違っていなかった様である。
しかも、今回は初手からそれであるから、前回と違い、アーロスらが何か仕掛ける前に全ての行動パターンを防ぐ、という徹底ぶりであった。)
もちろん、これは以前にアキトがエキドラスと対峙した際に用いた戦法だが、相手の攻撃が切れるタイミングを狙って反撃する、という選択肢も有りなのであるが、ここで、以前にも解説したエキドラスとセシルの違いを思い出して欲しい。
“神の末裔”たるエキドラスは、アキトすら追い詰めた圧倒的強者であるが、その反面、“生物”という特性も持っていた。
故に、息継ぎ(の様なもの)が必要となる、などの欠点(と、言っても、これは一般的にはほとんど欠点とはなりえないが)があったのである。
この弱点を利用して、アキトはエキドラスをくだす事が出来たのだが、一方のセシルはあくまで“機械”なのである。
故に、こちらは以前にも言及した通り、彼、あるいは彼女には“疲れる”という概念がなく、しかも、“生物”でも“機械”でも持っている筈の“エネルギー切れ”問題も、セシルの場合は“疑似霊子力発生装置”の恩恵により問題とならないのである。
ある意味、かなりマズい状況であった。
これを何とかする為には、セシルの本体であるところの、“疑似霊子力発生装置”を発見、破壊する他ない。
故に、キドオカの存在と役割がより一層大きな意味を持ってくるのであった。
「キドオカさんっ!まだ、敵の本体は見つからねぇ〜のかよっ!?」
アーロスがじれて、キドオカにそう言った。
探索に集中していたキドオカにとって、それは集中を阻害する要素でしかない。
「シッ!静かにっ!!集中力が途切れてしまいますっ!!」
「あっ・・・、す、すいません。」
「アーロスッ!キドオカさんの邪魔をするなっ!!暇なら、お前も迎撃に参加しろよっ!」
「お、おうっ!!」
流石のドリュースも、そのアーロスの短慮な発言には若干キレ気味にそう言った。
確かに、アーロスは近距離戦主体であるから現状ではあまり役に立たないと言えど、セシルから放たれた“光弾”をそらしたり弾き返したりは出来る筈だ。
それは、チームにとって有用な事であるから、文句を言っている暇があったら手を動かせ、という訳である。
ドリュースとのやり取りを経て、大人しく迎撃に参加したアーロス。
前回とは違い、アーロスらが防戦一方の展開となったが、ここでようやくN2にも余裕が生まれる事となった。
「チャンスッ!【チャージショット】、スタンバイ!しばらく持ちこたえて下さいっ!!」
「了解っ!」
「頼みますっ!」
「了解ですっ!」
それを好機と捉えたN2は、現状を打開する一手を仕掛ける事とした。
【チャージショット】とは、一定時間“溜め”を作る事によって、通常より高威力の魔砲攻撃を繰り出すスキルである。
今のパワーアップを果たしたN2なら、セシルの防御障壁を貫通する事が可能だろう。
いくら脅威の性能を備えているセシルと言えど、防御面が崩されれば、そちらに割くリソースの観点から、一時的に攻撃が疎かになるのは否めない。
そうなれば、前回と同様にアーロスが最前線に立つ構図となり、アーロスらには優位に、セシルにとっては不利な構図となる。
ただし、その為には、セシルからの“光弾”を撃ち落とす手数が減るので、かなりの負担を仲間達に強いる事となる。
だが、現状の防戦一方を変える為には、どうしても必要なプロセスであった。
「うぎぎぎぎっ・・・!!!」
「くうぅぅぅぅっ・・・!!!」
「アーロスさん、ドリュースさん、頑張ってっ・・・!!!」
一時的にN2が抜けた穴を、アーロスとドリュースが懸命に埋める。
回復役であるウルカには、それを応援する事しか出来ないが、彼女は彼女で、どうしても止められなかったセシルの光弾によるダメージを回復する役割があった。
時間にしたら、ほんの数十秒の事である。
しかし、アーロスらにとっては気の遠くなる様な時間が続き、元々戦闘の素人である彼らの集中力が途切れかけたタイミングで、ようやく待望の瞬間が訪れる。
「チャージ完了っ!行きますっ!!【チャージショット】っ!!!」
ゴッーーー!!!
〈っ!?高エネルギー反応を感知。【霊子砲】キャンセルッ!【霊子防壁】緊急展開っ!!〉
高エネルギー反応を感知したセシルは、慌てて【霊子砲】に向けていたリソースを【霊子防壁】に振り直した。
セシル(というか正確には“疑似霊子力発生装置”)には、高い学習機能が備わっているので、前回の反省点をすでに解析している。
前回は、アーロスらの攻撃力を甘く見積もった為に、セシルが破壊寸前に追い込まれる、という事態にまでなっていたが、ならば今回はその反省点を活かせば良い。
そして、出した結論が、防壁の多重化である。
一つの防壁で防げないのであれば、複数の防壁で防げば良い。
と、いう事で、アーロスらと戦いつつ、防壁を張り巡らせていた外側に、更に防壁を張ったのである。
もちろんその為には、攻撃に向けていたリソースを防御に回さなければならない、という隙を生む事となったが、セシルが破壊されるよりマシである。
ドゴンッ!!!
〈なっ・・・!?〉
だが、あくまで彼らの情報は、前回のアーロスらで止まっている。
チート能力を得た今現在のアーロスらは、前回より更に高い攻撃力を得ている。
それ故に、対策を打ったにも関わらず、N2のチャージショットは、複数張られたセシルの防壁を抜けて、セシル自体へとダメージを与える結果となる。
もちろん、だからと言って一撃でセシルを沈黙させる事態までは発展しなかったが、ダメージを受けた事、想定外の事態故に、セシルの行動にかなりの隙を生む事となった。
となれば、流石にそれを見逃す様なアーロスらではない。
「っしゃっ!ようやく攻守交代だなっ!!」
〈しまっ・・・!!!〉
「おせぇっ!!!」
「っ!!!捉えたっ!!」
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