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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
続・『エストレヤの船』を巡る攻防
251/383

不思議な縁 4

続きです。


祝40万PV突破!

ここまで来れたのも皆さんのお陰でございます。

本当にありがとうございます。


物語はまだまだ続きますので、拙い作品ですが、引き続きお付き合い頂けると嬉しく思います。



◇◆◇



「お前には失望したぞっ、イカルス!」

「ち、父上っ!ち、違うんですっ!」


その後、とりあえずイカルスを連れ戻すという仕事を完遂したレイナードとバネッサは、ロンベリダム帝国にある彼の実家にイカルスを送り届けていた。


そこで、立派な身形の老齢の男性の開口一番のセリフがこれであった。

イカルスの口ぶりからも分かる通り、彼がイカルスの父にして、所謂大貴族その人であろう。


「言い訳は聞きたくないっ!とにかくお前は、処分が決まるまで謹慎しておれっ!誰かっ!!」

「ハッ!」

「此奴を軟禁せよ。此奴の言い分は一切聞かなくて良い。」

「了解しましたっ!」

「そ、そんなっ!父上っ!!」

「貴方っ!何もそこまでする事は・・・。」

「お前は黙っていなさい。そもそも、お前が甘やかすから、イカルスがこんなになってしまったのだ。多少の事ならば目を瞑る事も揉み消す事も出来るが、今回の件は流石に庇いきれん。それどころか、我が家の御家取り潰しすらありうるのだからな。お前も、“虐殺帝”の事は覚えているだろう?」

「それはっ、そうですが・・・。」

「私は、お前の夫、イカルスの父親であると同時に、我が家の長でもあるのだ。多くの者達の命と生活を預かっている以上、時に身内を切り捨てる事も厭わないつもりだ。その覚悟で一族の長に就いたのだからな。まぁ、お前はその事を理解していなかった様だがな?」

「・・・。」

「さあ、お前も下がりなさい。我が家に籍を置いている以上、一族の決定には従って貰うぞ。」

「わ、分かりました・・・。」


「・・・案外父親はマトモ、なんかね・・・?」(ボソボソ)

「う〜ん、どうだろう?」(ボソボソ)


目の前で、そんなやり取りを見せられていたレイナードとバネッサは、表向き空気を呼んで終始黙っていたのだが、ボソボソとそんな会話を交わしていたのだった。


「さて、冒険者くん。無茶を押し付けて悪かったね。しかし、よくイカルスを無事に連れ戻してくれた。感謝する。」

「あ、いえ。これも仕事ですから。」

「・・・ふむ。それで、冒険者ギルドからは、私と直接依頼料の交渉をすると連絡を受けているが・・・。」

「あぁ〜、それなんですがね?今はまだ良いですわ。」

「・・・何?」


そのレイナードの発言に、イカルスの父親は訝しげな表情を浮かべていた。


「と、言うのも、まだ俺ら的には依頼を完遂してないんですよ。御子息の護衛の皆さん。まぁ、半数は亡くなられてしまったのですが、もう半数は生存しております。彼らを連れ帰る事によって、初めて依頼を完遂したって言えると思うんですよね。まぁこれは、俺らのこだわりみたいなモンですが。」

「・・・ふむ。」


もちろんこれは建前だ。

本当は、レイナードの中で何某かの考えがあるのである。


イカルスの父親もその事は見抜いていたのか、確かに彼にとっても、イカルス以上に優秀な人材が戻る事は有益な事でもあった。

それ故に、レイナードの言葉を尊重する事とした様である。


「ならば、依頼料については全ての仕事が片付いてからにしよう。では、私は少々忙しい身なのでね。これにて失礼するよ。」

「はい。ではまた。」


イカルスの父親は、かなり話せる人物の様である。

少なくとも、表向きは平民を見下している感じはしなかった。

と、レイナードは感じていた。

まぁ、バネッサは、冒険者ギルドに圧力を掛けていた事を鑑みて、その人物評を曖昧なままにしていたが。


レイナードと会話を終えると、自身の発言通りそそくさと足早にその場を辞したイカルスの父親。

忙しいのは本当の事であろう。


レイナードとバネッサも、ここでのとりあえずの用が済んだので、彼が去ると、屋敷を出るのであったーーー。



「・・・で、実際これからどうするの、レイナード?」

「ちょっと彼、ククルカンさんの事が気になっていてな。とりあえず、()()のついでに彼にもう一度会っておきたい。」

「ふ〜ん。了解。」


打てば響く様にレイナードの発言にバネッサは頷いた。


「と、その前に、彼やセレスティア派の事や、ロンベリダム帝国(この国)の現状や大貴族の情報なんかは集めておきたいな。まだ考えはまとまっていないけど、何らかの交渉の手札となるかもしれないしな。」

「ふ〜ん。いいんじゃない?・・・レイナードも、アキトやリベルトみたいな考え方が出来る様になってきたんだねぇ〜。」

「・・・うっせ。」///


しみじみと呟くバネッサに、レイナードはテレた様にそう誤魔化した。

元々脳筋寄りのレイナードであったが、それでも『冒険者訓練学校』での臨時講師の経験や、冒険者としてのこれまでの経験値から、それなりにクレバーな立ち回りを身に付けていたのである。

もっともそれは、バネッサの言う通り、レイナードの中でアキトやリベルトなどを参考にしていた事から、多少の気恥ずかしさはあったのかもしれないがーーー。



・・・



「やあ、レイナードくんにバネッサくん。まさかこんなに早い再会になるとは思っていなかったよ。」

「こんにちは、ククルカン先生。改めて、先日はお世話になりました。」

「いやいや。この間も言ったけどね。こちらにも思惑あっての事だ。気にしなくとも良い。」


数日後、レイナードとバネッサは再び“大地の裂け目(フォッサマグナ)”入りを果たしていた。

一応の名目としては、負傷したイカルスの護衛、並びに帰らぬ人となった者達の回収ーーー、であったが、ククルカンにもう一度会う事がレイナードの一番の目的であった。


「だが、一応礼は受け取っておこう。そして、私からも礼を言わせてくれ。戦争の被害を食い止めてくれてありがとう。」


ペコリと一礼をしたククルカンに、レイナードとバネッサは面食らってしまう。


「・・・いや、何で、先生が礼を言うのですか?」

「あ、いや、何でだろうな。ハハハ。だが、医療に携わる者としては些か矛盾しているとは思うのだが、どんな理由があろうと、あまり怪我人や病人は見たくないんだよ。そうした意味だと、キミらが介入してくれたお陰で、あの場は穏便に収める事が出来たし、結果、救える命が救えたからね。だから、やはり、“ありがとう”が適切な様な気がするよ、うん。」


おかしな人だな、とレイナードは思った。

いや、悪い印象を抱いた訳ではない。

むしろ逆だ。


レイナードのこれまでの経験から、まぁ、これはアキトらの影響もあったかもしれないが、ライアド教に対してあまり良い印象を持っていなかっただけに、目の前の男は、ライアド教の法衣姿ながら、まるでそのイメージと合致しなかったからである。

まぁ、そもそも、ライアド教関係者が、紛争地域の最前線にまで出張(でば)って来て、負傷者を救護する事などこれまで聞いた事もなかった訳だが。


「・・・それにしても、ここでは獣人族も含めて治療されているのですね。一応彼らは、ロンベリダム帝国の敵方だと思うんですけど・・・。」

「ああ、他のテントも見て回ったのかい?そうだね。ここでは、ロンベリダム側、“大地の裂け目(フォッサマグナ)”勢力とに関わらず、負傷者ならば誰でも受け入れる事にしているよ。まぁ、これは私の我儘だがね。もちろん、ロンベリダム帝国側からもライアド教側からも良い顔はされないけどね。」


そうなのだ。

一応、ククルカンがこの場に派遣された名目は、ロンベリダム側の軍属の治療の為、であったが、その裏の目的は、日々その影響力を増しつつあった彼を最前線に送る事によって、彼の影響力を削ごうとした狙いがあったのである。

もっとも、ククルカンもそれは察していた訳であり、残念ながら彼はそうした思惑に素直に踊らされる様なタマではないし力もあった。

それ故に、この状況を逆手に取って、彼の理想を実現すべく、独自に活動を始めたのである。


「・・・何故その様な事を?敵を助けた場合、ロンベリダム側が危うくなるのでは?」

「それについては一理あるが、私は別にロンベリダム側の人間ではないからね。言ってしまえば、中立的な立場だ。それに、場合によっては、我々の存在が両者の架け橋になれれば、とも思っているのだよ。」

「???どういう事ですか?」


バネッサがそう指摘すると、ククルカンはそれは分かった上でそうしていると吐露した。

それにレイナードは合点がいかず、再び質問を繰り返す。


「『戦争』って何で起こるんだろうね?もちろん、今回の場合は構図としては単純だ。ロンベリダム側が“大地の裂け目(フォッサマグナ)”に侵攻したから起こっている訳だからね。もちろん、ロンベリダム側にも言い分はあるんだが、まぁ、普通に考えれば言い掛かりに等しい事だろうね。おそらく、どれほどの大義名分を唱えようとも、単純にこの土地が欲しかっただけだろう。」

「「・・・。」」


これについては、レイナードもバネッサもある程度は察していた。

いや、もしかしたら、ロンベリダム帝国の一般市民の中にも、そうした裏事情を察していた者達もいたかもしれないが。


しかし、同時に一般市民が大勢に逆らう事は難しい訳で、多少の疑問や疑念があろうとも、その流れに乗っかるしかないのである。

場合によっては、自分にとって不利益となる可能性もあるからだ。


結局は、我が身が可愛いのはこれはある種の真理であるし、それによって例え他者がどれほどの被害を被ろうとも、上手に目を逸らしたり考えない様にするのが人間の心理というものなのである。


「対する“大地の裂け目(フォッサマグナ)”としては、当然自分達の生活圏を脅かされたからには相手を撃退するのが通常の反応だろうね。こうして、今回の『ロフォ戦争』は勃発した訳だが、その根底にはある種の印象操作や情報統制なんかが介在しているんだよ。」

「印象操作?」

「そう。お互いに、相手の事が全く()()()()()()のさ。」

「は、はぁ・・・。」


中々ククルカンは回りくどい説明が好きな様である。

まぁ、レイナードとバネッサはアキトでそうした事には耐性があったので、根気強く付き合っていたが。


「人は、案外残酷な生き物だ。特に、相手が“悪”であった場合、普通の人々でも喜々として相手を攻撃し始める。キミらにも身に覚えはないかい?冒険者なら野盗や盗賊団なんかに関わった事があるだろう?」

「・・・確かに。そういう側面がある事は否定しません。」

「もちろん、私は彼らを擁護するつもりはないし、冒険者の活動を批判するつもりもない。もしかしたらのっぴきならない事情があったのかもしれないけど、だからと言って他者に対して武力や暴力を持って何かを成した事は褒められた手段ではないからね。彼らには話し合いが通用しない以上、冒険者なんかの武装集団が必要な場合はあるだろう。だが、彼らを必要以上に嫌悪する必要はないとも思っている。」

「・・・それは何故ですか?」

「それは、自分の目を曇らせる事もあるからさ。安易に相手を“悪”だと断罪するのは簡単だけど、実際には真逆である事も往々にしてある。まぁ、野盗や盗賊団などはまた別問題かもしれないが、じゃあロンベリダム帝国側の一般市民から見れば、“獣人族”とはどんな存在に映っていると思うかね?」

「それは・・・、まぁ、得体のしれない種族、とかですかね?ライアド教では、獣人族なんかの異種族・他種族は、人間族より劣った種族としていますし、ロンベリダム帝国内では、獣人族を“悪魔”などと揶揄している事は聞き及んでいます。」

「そう。つまり、ロンベリダム帝国側の人間にとっては、獣人族は“悪”なんだよ。実際に、自分達が見た事も関わった事もないのにも関わらず、だ。では、キミらから見て、“獣人族”はどの様な存在だい?」

「どう、って・・・。別に普通ですよ。俺らは幼い頃から異種族・他種族とは関わりがありますし、特に差別意識はないよな?」

「そうだねー。むしろ、レイナードはユストゥスさん達との事もあって、尊敬してるくらいだしね。」

「おや、そうなのかい。まぁ、キミらの場合は特殊な事例かもしれないけど、私が言いたかったのは、冒険者なんかの、異種族や他種族とも関わりのある者達、つまり彼らを実際に知っている者達は、()()()()()()()()()()()()、って事さ。」

「・・・なるほど。」

「確かに、そうかもねー。」

「逆に言えば、知らないって事はそれだけでマイナス要素なのさ。だから、言われた事を鵜呑みにしてしまうし、()()の価値観をそのまま受け入れてしまう事が往々にしてある。これは、為政者側からしたら都合の良い事だろうけど、一般市民にとっては不運な事さ。実際の獣人族達は、もちろん身体的特徴やその能力は人間族とは異なるけど、キミらの言う通り善良な“普通の人々”だ。だが、それを知らずに“悪”であると決めつけてかかっている。これでは、争いがなくなる筈がないよね?」

「そりゃそーだ。」

「しかし、現実問題として、そういう思想統制、印象操作を受けている者達が、“獣人族ってこんな人達なんですよー。”、“異種族、他種族も自分達と対して変わらないんですよー。”って言われたところで信じられる筈もない。だったら、実際に自分達の目で見たり、頭で考える機会が与えられれば、また状況も変わってくる、かもしれないよね?」

「・・・だから、先生は両者を受け入れている、と?相互理解を促進する為に?」

「そうなれば良い、とは思っているよ。まぁ、一度凝り固まった“常識”を覆すのは中々大変だとは思うけどね?」

「「・・・。」」


レイナードとバネッサは、改めてククルカンを凄い人だと感じていた。

しかし、腑に落ちない点もあった。

なので、レイナードは引き続き質問をする事とした様である。


「先生のお考えは分かりましたが・・・、何故先生がそんな事をやる必要があるのでしょうか?曲がりなりにも、貴方はライアド教の関係者な訳ですよね?」

「確かに、それは当然の疑問だろうね。まぁ、私自身、明確な答えがある訳ではないのだが・・・、そうだね。一つは、私に“力”があるからだよ。もしかしたら、これは私がやらなくても誰かがやってくれるかもしれない。“力”がなければ、そうやって諦めていたかもしれない。しかし、今の私には“力”があり、自分の理想を形に出来るかもしれない。と、そう思ったのさ。」

「「・・・。」」

「それと、もう一つはね。これは、とある書物の受け売りなんだが、これは未来への先行投資でもあるんだ。」

「・・・先行投資?」

「ああ。これは私自身がそうだったんだけど、幼い頃に命を救われた事でね、私は医療従事者の方々に憧れを抱いたんだよ。そして、成長し、曲がりなりにも私は今、医療従事者としてこの場に立っている。仮に、私が助けた者達の中から、将来的に私と同じ様に医療従事者を志す者が現れれば、私は、私が救った以上の命を救う手助けをした事になる。」

「っ!・・・なるほど。」

「それと同時に、私がこの場で活動する事によって、種族の壁を超えて私の意思を継ぐ者達が現れるかもしれない。少なくとも、獣人族達にとって、人間族の中にも自分達に寄り添ってくれる者達もいる、って事は理解して貰えるかもしれないしね。」

「・・・。」

「そもそも、組織の中に別の思想を持つ一派がいる事は珍しい事ではないよ。私は、ライアド教が持つ回復魔法に興味があっただけで、その思想にはあまり興味がない。そして、今はセレスティア派を率いる代表の様な立場になったけど、最終的にはライアド教から独立を果たし、回復魔法や医療に特化した組織を構築するのが私の夢なんだよ。国も種族も関係なく、ね。」

「っ!!!・・・先生、それって、俺らみたいな冒険者に言っていい事じゃないですよ。」

「ハハハ。まぁ、ロンベリダム帝国やライアド教からしたら、私の思想は危険視されるかもしれないけどね。しかし、私はキミらを信用している。少なくとも、キミらが私の思想を密告(チク)ったりしない、とね。それと、それを密告したとしても、キミらにとってはメリットもないだろうからね。」

「そうですか?もしかしたら、それで何らかの報奨を貰えるかもしれませんよ?」

「だとしてもだよ。キミらは頭の良い人物だ。確かにそれで、一時の大金が手に入るかもしれないが、その後面倒事に巻き込まれる可能性は大いにある。キミらがいくら名うての冒険者だとしても、流石にロンベリダム帝国やライアド教の様な大きな勢力に逆らう事は難しいだろう。と、なれば、最初から面倒事には関わらないのが無難だろう。そして、それくらいの計算が出来る人物だと私は思っているよ。」

「「・・・。」」


志が高く、そして計算高い。

更には、大胆不敵なククルカンに、レイナードとバネッサは感じ入っていた。

この人なら・・・。

レイナードは思っていた。


「褒め言葉、と受け取っておきましょう。しかし、だとすると、中々茨の道ですね。中立とは聞こえがいいですが、言ってしまえば両陣営から目の敵にされる、という事でもありますよね?」

「確かにその通りだね。私はともかく、仲間達には苦労をかけているよ。今のところ、大きな被害は出ていないけどね。さっきも言ったが、当然ロンベリダム帝国側からもライアド教側からも良い顔はされていない。それに、獣人族達からしたら、人間族は警戒の対象だしね。しかし、それでも変化を恐れずに一歩ずつ、だよ。・・・おっと、話が長くなってしまったね。」

「あっ・・・。」


ふと、部屋の外を見やると、確かにそれなりの時間が経過していた様だ。

レイナードとバネッサはともかく、ククルカンはこれでも忙しい身である。

それでも、こうしてレイナードやバネッサの為に時間を費やしたのは、ククルカンにも何かしら感じるモノがあったからかもしれない。


「生き残った護衛騎士達はすでに全快しているよ。残念ながら亡くなった方々も、私の方で保存処理をしている。馬車を貸そう。連れ帰ってあげたまえ。」

「わ、分かりました。」

「うん。では、また会える時を楽しみにしているよ。私は、患者さん達の治療なんかに戻らなければならないから、見送りは出来ないけどね。」

「い、いえ、十分ですよ、ククルカン先生。」

「・・・。」


コクリッ、と頷くと、ククルカンはテント内の一室を出ていった。


その後、ククルカンの代わりにレイナードらのもとを訪れたククルカンの助手を務める女性から、イカルスの護衛騎士達とご遺体を引き取るレイナードとバネッサ。

流石に二人でご遺体を運ぶのは現実的に不可能なので、ククルカンから馬車を借り受け、病み上がりの護衛騎士達に運ぶのを手伝ってもらい、彼らはそれを警護する、という形に落ち着いた。


その、ロンベリダム帝国への帰りの道程にて、


「・・・どうするの、レイナード?」

「バネッサさえ良ければ、俺はククルカン先生に合流したいと考えてるぜ。」

「そう・・・。やっぱりね。」


ククルカンの話を聞いたレイナードとバネッサは、そんな会話を交わしていた。


言うなれば、ククルカンの思想と活動は、アキトとは別側面から世界平和にアプローチする事である。

なんだかんだ、アキトの影響を受けてきたレイナードとバネッサが、その思想に共感するのはある意味必然であったかもしれない。


しかも、アキトと違い、ククルカンのもとでならレイナードやバネッサの力を活かす事が出来るかもしれないのだ。

確かにククルカンは、レベルの上ではアキトと同程度の力量を備えているが、時間的にもまた経済的にも、『リベラシオン同盟』→『三国同盟』改め『ブルーム同盟』を設立したアキトとは違い、組織として見た場合、まだまだ弱い部分が存在していたのは事実だからである。


今はククルカン一人の力で何とかなっているが、事戦力という意味でなら、今現在のレイナードとバネッサの力は重宝するモノとなるだろう。


それに、今現在のレイナードとバネッサなら、アキトやリベルトの影響で、取引や交渉術もそれなりに覚えがある。

しかも、薬学の知識もあるから、多方面で彼らの力になる事が可能なのである。


「んじゃ、さしあたって資金集め、かな?」

「・・・いいのか?」

「良いに決まってんじゃん。私はレイナードについていく、って決めてんだから、さ。それに、ククルカン先生は信用出来る人の様だし、ね。」

「・・・サンキューな。けど、それについては、もう心当たりがあるんだ。交渉を先延ばしにしておいて、ある意味正解だったかもなぁ〜。」

「ああ、それって・・・。」



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いつも御覧頂いてありがとうございます。

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