初見殺しイベント
続きです。
◇◆◇
「ぷはぁっ!な、何とか生きてる・・・。ソラテス様も無茶を言われるものだ・・・。もう二度と、こんな思いはゴメンだぞ・・・。」
セシルの自爆後、噴出した土砂によって生き埋めになっていたキドオカは、どうにか地表面に這い出し、生還する事が出来ていた。
それと同時に、自らが渡った危ない橋の事を思い返し、ゾッとしながらもブツブツと文句をもらしていたりもした。
当たり前だが、まるでドラマかの様な絶好のタイミングでキドオカが現れたのにはカラクリがある。
と、言うのも、彼とソラテスは、アーロスらとセシルの戦いを最初から観戦していたからである。
そもそも、セシルや“疑似霊子力発生装置”、そして彼らが守る遺跡類は、本来ならばソラテスを始めとした“古い神々”が残した遺産である。
故に、ある意味本来の所有者であるところのソラテスは、『エストレヤの船』の存在を知っていたとしても不思議は話ではないのである。
ところが、ソラテスは、その存在をすっかり忘れていたのであった。
これは、彼の力を弱体化させる時に生じた副次的な効果であり、彼の神霊力を四散させ、その存在を根源に還す処理の途中で、その“記憶”なども一緒に抜け出してしまっていたからである。
まぁ、どちらにせよ、いくら重要な事とは言えど、“古き神々”が生きた時代は、現在からしたら遥か遠い過去の話であるから、うっかり忘れていたとしても無理はないのだろう。
“古き神々”を人間の尺度で推し量る事は難しいとは言えど、“記憶”に関して人間種と同様に忘れていってしまうモノなのかもしれない。
そもそも、過去と現代では、地形が変わっていたとしても何ら不思議な話ではない訳だし。
まぁ、それはともかく。
こうした事もあって、『エストレヤの船』の事を忘れていたソラテスは、キドオカと共に傍観者として他の『異世界人』達の動向を観察していたのであった。
まぁ、そもそもアキトもすでに“大地の裂け目”入りしている現状の中では、ロンベリダム帝国、“大地の裂け目”勢力、そしてハイドラス派などの勢力が入り組んで複雑な情勢となっている。
いくらソラテスとキドオカが人知を超えた力の持ち主とは言え、流石に一柱と一人では勢力としては弱すぎる故に、何をするにしても慎重に成らざるを得なかった、という裏事情も存在しているのだが。
どちらにせよ、ソラテスとキドオカは合理主義的な側面があるので、それらに積極的に関与する、というよりも、様子を見て、それに合わせて行動する、という強かさがあったのである。
ただ、セシルとアーロスらの激闘に触発されたのか、ソラテスは失われていた記憶の一部を思い出していた。
そんなソラテスからしたら、少なくとも貴重な遺跡である『エストレヤの船』をハイドラスに奪われるのは面白くなかったのである。
とは言え、今更妨害も難しく、かと言って今更参戦するのもタイミングとしては微妙であった。
しかし、そこへ絶好の機会が訪れた。
そう、セシルの自爆である。
結果論に過ぎないが、もし仮にキドオカがあの場面で現れなかったとしたら、少なくともアーロスはすでにセシルの自爆に巻き込まれてその命を落としていた事だろう。
つまりは、あのタイミングでキドオカが登場し境地を救う事は、アーロスらに“貸し”を作る上では絶好のタイミングだった訳である。
もっとも、キドオカとしてもこれはかなり危険な賭けであった。
基本的に“神々”のルールでは、現世に直接的な干渉が出来ないのもあってか(もっとも、アスタルテの様にガッツリ干渉している例もあるので、そこら辺のルールも結構曖昧なのであるが)、久々に現世に復帰していたソラテスが自ら干渉する事は困難であったのだ。
そこで、ある意味ソラテスの使徒、つまりは代行者として、キドオカにその白羽の矢が立ったわけである。
突然危険地帯に行ってこいと言われたキドオカの心中は計り知れないが、結果としてキドオカもそれを了承し、“影”を使ったテレポートでアーロスらの元に現れた訳であった。
(ちなみに余談だが、アキトらが以前に瞬間移動的、テレポート的な現象は存在しないとしていたが、あくまでそれはこの世界の、更に言ってしまえば物質界のルールである。
実際、セレウスやルドベキアら神々は、地球とアクエラを行き来するという、ある種のテレポートの様な事を行っているし、アキト自身も“魂“としてではあるが、地球からアクエラにやって来ている。
以前にも言及した通り、精神や霊魂には3次元的な時間や空間の制約を受けない特性があるので、“アストラル”、言わば“魂”の形態であればそれらも可能なのであった。
そして、キドオカらが扱う力はこの世界の技術体系とは異なる力であるから、そうした不可能とされる事を可能としているのであった。)
キドオカの『TLW』時の最終職業は『忍者』であり、他の職業と比べてもかなり特殊な職業であった。
まず、純粋な戦闘職に比べて戦闘能力は劣るし、所謂後衛職、支援や回復の専門職に比べればサポート能力も格段に落ちる。
しかし、その職業にしかない特殊な能力の数々はかなり貴重であり、それだけにかなりクセが強いが、使いこなせれば物凄く重宝する職業でもあった。
ちなみに、キドオカはそんな『忍者』職業を巧みに扱うトッププレイヤーの一人であり、少なくとも『TLW』の誰よりもその職業を理解していると自負していた。
そんな特殊なスキルの中には、“影”を使った様々なスキルが存在していたのである。
一つは、先程も言及した“影”を使った任意の場所に移動するスキル・【影渡り】。
もっともこれは、“影”が存在する場所限定であるから、一般的なテレポートのイメージとは異なり、どこにでも跳べる訳ではない。
しかし、仮に敵の“影”を利用して敵の死角に急に現れて一撃食らわせる事が出来たり、味方の“影”を利用して即座に離脱出来たりと、使いこなせればかなり強力なスキルであった。
そして、キドオカが披露したもう一つが、相手の“影”を縫い留めて、相手の行動を一定時間制限をするスキルである【影縛り】であった。
もっともこれは、『TLW』時は、自分と相手のレベル差によって効果を得られない事も多かったのだが、キドオカもアーロスらと同様に“レベル500”の猛者であるから、発動すれば確定で相手の行動(移動・攻撃・防御、その他物理的な“動き”を必要とするモノは全てである。逆に言えば、“思考”は止める事が出来ないので、所謂“時間停止”の様な現象とはまた異なる技術である。)を封じる事が出来る強スキルであった。
ちなみに余談だが、こちらの世界に来る前の、『TLW』時の最強のレイドボスである邪神にトドメを刺した際にも、“毒”の他にこの【影縛り】で相手の行動を制限していた。
アーロスと同様に、邪神にも通用するのなら、セシルにも通用するだろうとの予測はあったが、それでも絶対の確信があった訳ではないのでキドオカ的には内心バクバクであった。
まぁ、先程述べた通り、ソラテスのムチャブリもあって、ぶっつけ本番でやらざるを得なかったのだが、彼の慎重な性格を考えればそれは本意ではなかった事だろう。
「そうだっ!アーロスくん達はっ!?」
すっかり地形の変わり果てた周囲を眺めながら、キドオカはふと呟いた。
咄嗟の事とは言え、アーロス達もキドオカの言葉に反応してセシルが自爆する寸前に地面にふせていたので、自分がこうして無事なのだから、おそらく生きているだろうとは思っていた。
もっとも、やはりキドオカと同様に、土砂に巻き込まれて生き埋めになっている可能性はある訳で、時間としては極めて短い戦闘時間でしかなかったが、セシルという強敵との戦闘には極度の集中力と緊張感を要求されていた事からも、アーロスらの体力や精神力が著しく消耗していたとしても不思議な話ではない。
場合によっては、体力・精神力共にほとんど消耗していないキドオカとは違い、自力で脱出出来る状況にはない事も考慮しなければならなかったのである。
キドオカとしては、折角助けたのに助かりませんでしたでは、何の為に危ない橋を渡ったかも分からなくなってしまう訳で。
「皆さぁ〜んっ!ご無事ですかぁ〜!!??」
そう呼びかけながら、キドオカはもう一つの、もっとも本来はこちらが彼の本当の能力であるところの、“陰陽道”における彼の使い魔である“式神”を使ってアーロスらの捜索を開始する。
もっとも、以前にも言及したかもしれないが、『忍者』は諜報関連のスキルを豊富に持っているので、わざわざ自前の能力を使わずとも捜索は出来たのだが、しかしキドオカは、『異能力』を使い過ぎる事へのリスクをしっかりと理解していたので、あえて自前の能力を使っていたのである。
まぁ、これに関しては後述する事としよう。
と、
「こ、ここでぇ〜す・・・。」
「助けてぇ〜・・・。」
「おお、N2さん。ウルカさん。ご無事でなによりです。」
特徴的なエルフ耳と、純白の法衣姿を認めたキドオカは、N2とウルカの救出に向かった。
この二人は、セシル戦においては完全に後衛を務めていたにも関わらず、やはりほとんど消耗していないキドオカに比べたら自力で這い上がる事が出来ないほど疲労していた様である。
本来地面に生き埋めになってしまった場合、一番最初に懸念すべき点は酸欠であるから、十分な酸素のない中でも地表面に顔を出せただけ、それでも驚異的な生命力なのであるが。
素早く二人を掘り起こしたキドオカは、それと平行していまだ顔の見えないアーロスとドリュースの捜索を行っていた。
ちなみに、エネアとトリアについては、最初から完全にスルーしている。
冷たい様だが、キドオカ的には彼女達まで助ける義理はないのだ。
特に、彼女達はキドオカも敵視しているハイドラスの使徒であるから尚更である。
まぁ、自力で生還してきたのならば、あえてトドメを刺すほどではないが、それ故に、生きてようが死んでようが、彼としてはどうでもよかったのである。
もっとも、彼の“式神”の探知には、アーロスとドリュースの前に彼女達の存在が確認出来たので、おそらく生きているだろう事は確認出来ていたのだが。
「ぷはぁっ!ハァハァ、た、助かった・・・!」
「あ、ありがとうございます、キドオカさん。・・・ところで、あの、何故この様な場所に・・・?」
「その話は後にしましょう、ウルカさん。残念ながら、まだアーロスさんとドリュースさんの安否が確認出来ていませんので。私達の力はこの世界においては最高峰の力である事はまず間違いないでしょうが、それでも“人間”というカテゴリーにいる以上、あなた方も経験した通り、空気が出来なければ死んでしまいます。一応、こうしている瞬間も、私の能力によって探知はしていますが、いまだに見付かっていないのですよ。ですから、生還したばかりで恐縮ですが、あなた方も彼らの捜索に協力して頂きたいのです。」
「そ、それはもちろんっ!」
「あっ、そうですよねっ!」
「ああ、ちなみにアーロスさん達とは別だとは思いますが、ここから東に3〜400メートルほどの地点に生体反応を二つ確認しています。貴女のお仲間ではありませんか?」
「あっ、そうだ、エネアさんとトリアさんっ!」
「早く行ってあげた方がよろしいかもしれませんね。その方々は、あなた方とは違い、【物理障壁】も【対魔障壁】も張ってはいなかったでしょうから、酸欠はもちろん、かなりの衝撃や熱波をモロに受けているかもしれませんから。」
「た、大変っ!!!」
キドオカらは生き埋めになる程度で済んでいたが、爆発によって膨大な熱エネルギー、つまりは“熱波”が発生するので、本来ならばそれによって焼け死んでしまう可能性もあるのだ。
実際、以前にも例に挙げた“ツングースカ大爆発”でも、爆心地から半径約30〜50キロにわたって森林が炎上した、とある。
そして、N2とウルカがその“熱波”にやられなかったのは、セシルとの戦闘時に使用していた【物理障壁】や【対魔障壁】のお陰であり、当然ながらその戦闘には直接加わっていなかったエネアとトリアには、それらのシールドが施されていなかった、つまりは、その“熱波”をモロに食らってしまっていた可能性が高い。
もちろん彼女達も、ハイドラスご自慢の『血の盟約』のメンバー、つまりはS級冒険者相当、具体的にはレベル400前後の猛者ではあるが、それでも当然生物である以上、火傷もするし死んでしまう事もある。
しかも、ウルカらとは違い具体的な対策も無しでは、流石の猛者と言えど、仮に生存していたとしても素早く救出し、迅速な処置を施さなければ、その命はすぐに尽きてしまう事だろう。
キドオカにその事を指摘されたウルカは、彼が示した地点に大急ぎで向かっていった。
まぁ、ウルカの優先順位で行けば、彼女達の生命など取るに足らないモノであるのもまた事実であるが、とは言え、まだハイドラスとの契約が終わっていない以上、献身的に働いている、というポーズは必要なのである。
それに、自分を慕ってくれていた二人に対して多少の感情はある訳で、一見すれば自身の友人を心配して駆け付けている、様に見えた。
「東に3〜400メートル・・・。この辺かしら?エネアさぁ〜ん、トリアさぁ~ん!!ご無事ですかぁ〜!?」
そう呼びかけながらも、ウルカはその辺の土砂を掻き分ける。
残念ながらウルカは純粋な魔法使い系の職業ではないので、地面に影響を及ぼす魔法やスキルの類は習得していないが、それでも、これまた純粋な戦闘職ではないとは言え、“レベル500”の驚異の身体能力により、新たに堆積した土砂程度はブルドーザーの如くあっという間に掘り起こす事が可能だった。
「う・・・、うぅ・・・。」
「はぁ、はぁ・・・。く、くるしい・・・!」
「エネアさん、トリアさんっ!!!」
キドオカの示した情報が正確だった事、“レベル500”の身体能力はやはり驚異的な事もあり、数分もしない内に二人を発見したウルカ。
とりあえず、息がある様だ。
しかし、声のする方を慎重に掘り起こしていくと、そこでウルカは酷い有様の二人を目撃する事となった。
「っ!!!」
そこには、生きているのが不思議なほど焼けただれた状態の二人がかろうじて息をしている状態だったのだ。
やはり、“熱波”をモロに受けた影響だろう。
本来ならば、これほどの火傷を負っていて生きているのが不思議なくらいであるが、やはりそこは彼女達もレベル400前後の猛者という事だろう。
更には、瞬時にふせた事や、土砂が撒き散らされた影響で息を止めていた事もプラスに働いたのかもしれない。
人間の肺機能は思ったよりも繊細だ。
高温の空気を取り込んで、内側から焼けてしまう事もありうるのである。
「【完全回復】✕2っ!!」
もっとも、ウルカは回復役であるから、息があるのならば、どれほどの傷を負っていようと瞬時に回復する事が可能だった。
それでなくとも、エネアは、一度ウルカから死んだ状態から生き返らせて貰うという“奇跡”を受けているので、そこには特段の驚きはなかったのだが。
しばらくすると、何事もなかったかの様に五体満足、健常な状態の二人がそこに立っていた。
「あ、ありがとうございます、ウルカ様ァ。また助けられてしまいましたねェ。」
「いえいえ、ご無事で何よりでした。」
「こ、これがウルカ様の“奇跡”、デスか・・・。自分で体験してみても、いまだ信じられまセン。先程まで、間違いなく私達は死にかけていたと言うノニ・・・。」
「アタシなんて、完全に死んだ状態から生き返らせて貰ったわァ。ウルカ様からしたら、この程度何て事ないのよォ。」
「・・・やはり貴女は、我が主の御遣い様・・・。」
エネアとトリアは、先程までもウルカを敬愛していたが、それが更に命を救われるという“奇跡”を体感する事によって、より一層の忠義と言うか、信仰の様なモノをウルカに向けていた。
そんな二人の様子に戸惑いつつも、ウルカは自身の点数を気にして、その空気をあえて無視して二人に質問した。
「そ、それよりも、アーロスさんとドリュースさんを見掛けませんでしたか?いえ、もちろん、あなた方は先程まで生き埋めになっていたので、何も覚えてなくとも不思議ではないのですが。」
「・・・申し訳御座いません、ウルカ様ァ。アタシは、あの爆発の後の事は何もォ・・・。気付いた時には、ウルカ様のお顔があったくらいでェ・・・。」
「そうですよね。」
「私もエネアさんに同じくデス、ウルカ様。・・・ただ、ウルカ様のお仲間の方々は、当然ながら我々よりもあの化け物の近くに位置していまシタから、もう少し爆心地に近い場所にいらっしゃるかもしれまセンね。」
「・・・なるほど。」
言われてみればその通りだ。
あの瞬間、もっともセシルに近い位置にいたのが、キドオカを除くとアーロス。
次いで、ドリュース。
そして、N2、ウルカ、少し離れてエネアとトリアという位置関係だったから、それがそのまま爆発後の位置関係とするならば、いまだ見付からないアーロスとドリュースは、もう少し爆心地の中心にいる事となる。
考えてみれば当然の事であるが、逆に言えば、その仮説が正しい事が、二人の存在によって分かった訳でもある。
故に、二人の救出は決して無駄足ではなかったのかもしれない。
「そうと分かれば、もう少し中心を探してみましょう。お二人も、もう大丈夫だとは思いますので、アーロスさんとドリュースさんの捜索のお手伝いをして頂けますか?」
「心得ましたわァ。」
「御意。」
・・・
ウルカがエネアとトリアを救出している一方で、キドオカとN2はアーロスとドリュースの捜査にあたっていた。
「アーロスさぁ〜ん、ドリュースさぁ〜んっ!!」
「ふむ、見当たりませんねぇ〜。もう少し捜索範囲を深くした方が良いかもしれません。」
「そうですね。・・・しかし、改めて見てみると、とんでもない爆発だったのですね。」
「そうですね。もし仮に、私達が元の普通の一般人だった場合、おそらくとっくに命を落としている事でしょう。」
「・・・ゾッとしますね。」
セシルの起こした自爆の影響を目の当たりにしたキドオカとN2は、そんな感想を述べていたのであった。
その間も、キドオカは“式神”により捜索を行っていたが、中々成果が得られなかったのである。
と、言うのも、先程エネアとトリアも述べていた通り、アーロスとドリュースはセシルにより近い場所にいた訳で、そうなると爆発の影響をモロに受ける事となる。
キドオカの“式神”がどの様な方法で生物を識別しているのかは定かではないが、セシルに近い位置になればなるほど、爆発の影響でくすぶっている箇所もあったり、やはり爆発などの影響で所謂“電磁波”や“赤外線”などの計測に必要な情報が狂う事となる。
つまりは、それだけ捜索が困難となっていた訳であった。
「キドオカさぁ〜ん!!!」
「おや・・・。」
そうこうしている内に、エネアとトリアを救ったウルカがキドオカとN2のもとに合流する。
そして、先程エネアとトリアが言及していたアーロスらの位置関係の情報をもとに、捜索範囲を爆心地近くに限定する事としたのであった。
その後、ウルカらの情報をもとに捜索を進めた結果、ようやくアーロスらの手掛かりを得る事が出来た。
大急ぎで地面を掘り起こしたキドオカらは、そこでセシルの起こした爆発の恐ろしさを実感する事となった。
「うぅ・・・、い、いてぇ・・・。」
「あ、あつい・・・、かゆい・・・。」
「た、大変っ!【完全回復】✕2っ!!」
掘り起こされたアーロスらは、エネアやトリア以上の全身大火傷を負っていたのである。
いや、むしろそれよりも重症だったかもしれない。
何せ、身体の一部が炭化していたからである。
おそらく、【物理障壁】や【対魔障壁】を貫くほどの破壊エネルギーが二人を襲った結果であり、更にはアーロスに至っては、【竜闘気】使用後の弱体化のデバフ状態だった事もあり、より症状は重かったのかもしれない。
まぁ、それに関しても、ウルカのチート的な回復魔法で事なきを得たのだったが。
「た、助かってぁ〜。ウルカさん、サンキューなっ!!」
「も、もうダメかと思ったよぉ〜。」
「よ、良かったぁ〜。」
「ご無事で何よりでした。」
無事に生還を果たしたアーロスとドリュースに、ウルカとN2は安堵の表情を浮かべていた。
エネアとトリアは、口にこそ出さなかったが、再び“奇跡”を起こしたウルカを、まるで女神かの様に崇拝する熱視線を送っていた。
そんな和やかな雰囲気をぶち壊す様に、キドオカは絶望的な言葉を発したのであった。
「皆さん、ご無事で何よりでした。では、新たにあの化け物が生まれる前に、この場を離れましょうか?」
「「「「「「・・・・・・・・・へっ???」」」」」」
「ち、ちょっと待ってくれ、キドオカさん。アイツは、俺らが倒したんじゃっ・・・!」
「確かに、あの個体は結果自爆して消滅しておりますが、彼らは所謂“ロボット”ですから、大元を叩かない事には何度でも再生すると思いますよ?」
「「「「「「っ!!!???」」」」」」
そうなのだ。
初見では分からない事であるが、セシルはこの地を守る守護者であるが、と、同時にあくまで“機械”でしかない。
つまり、本当にこの遺跡類、『エストレヤの船』を手に入れるつもりなのならば、セシルの方ではなく“煌めき回転する剣”であるところの“疑似霊子力発生装置”、つまりはセシルのマザーブレインであり、ある意味本体であるそちらを先にどうにかしなければ、また復活してしまう可能性が極めて高いのである。(まぁ、厳密には“リポップ”する訳ではないのだが、現象としてはそれと似た様な事だ。)
もっとも、セシルをどうにかしない事には、そちらに辿り着く事も出来ない訳だから無視も出来ないのだが、つまりはセシルを完全に制圧しつつ、同時に“疑似霊子力発生装置”も制圧しなければならない、という、初見では看破する事も難しい攻略が必要なのてあった。
改めて、『エストレヤの船』を誰にも渡すまいとする“古き神々”の鋼の意思を感じる事であろう。
こうして、セシルとの激闘を制したアーロスであったが、結局はセシルの自爆により遺跡類を再び封印される事となり、更にはせっかく倒したセシルも、リポップ前提の存在でしかなかった事実を知り、何の成果も得られない、どころか骨折り損のくたびれもうけという結果となり、すごすごと退散する事となったのであったーーー。
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