詐欺師に御用心
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ひとえに、皆様の応援のお陰で御座います。
この場を借りて、御礼申し上げます。
◇◆◇
世の中には、神話や伝承に登場した場所や遺物が実は実在していた、なんて事もある。
有名な話で言えば、シュリーマンによる、ギリシャ神話に登場する伝説の都市トロイアの発掘などが挙げられるだろう。
(もっとも、シュリーマンの著書によれば、幼少のころにホメーロスの『イーリアス』に感動したのがトロイア発掘を志したきっかけであるとしているが、これは功名心の高かった彼による後付けの創作である可能性が高いらしい。
発掘当時は「トロイア戦争はホメーロスの創作」と言われ、トロイアの実在も疑問視されていた、というのもシュリーマンの著作に見られる記述であるが、実際には当時もトロイアの遺跡発掘は行われていた様である。)
この様に、神話や伝承が実際に起こった歴史かはともかくとして、こうした遺跡や遺物が実在していた以上、それらのもととなった歴史的事件があったのではないか、とする考え方も存在するのである。
そして、それはこちらの世界でも同様であった。
今現在のハイドラスを唯一神とするライアド教(特にハイドラス派)ではその存在を公式には認めていないものの、『アクエラ創世記』という古文書の記録の断片には、他の神々の存在や、超文明が過去に実在していたと示唆する内容が記載されていたりする。
そしてその中には、“神々の遺産を守るべく、楽園の門に『断罪者』・セシルを置き、煌めき回転する剣を置かれた”、という記述もあったのであるーーー。
◇◆◇
「うおりゃあぁぁぁぁっーーー!」
「アーロスさん、援護しますっ!」
「了解っ!!」
「いや、アーロスはそのまま一旦下がってっ!他のモンスター達がこっちへ向かってきてるっ!ここは安全策をとって、体勢を建て直すんだっ!」
「オーケーッ!」
「では、私が牽制するので、その隙に下がってください。」
「了解っ!」
アキトやティアからの評価は低かったが、事戦闘においては、アーロスらの実力と連携は中々のモノであった。
ようやく『聖域』に辿り着いたアーロス達は、ライアド教(ハイドラス派)の過酷な現状を目の当たりにする事となった。
それを解消すべく、また、手土産や功績の一つでもあった方がウルカ、ひいてはハイドラスに恩を売れるのではないか、との多少の打算も含みつつ、『聖域』周辺に生息している魔獣やモンスター掃討を始めたのである。
もっとも、これは以前にも言及したが、至極人間本位な行いでもあった。
と、言うのも、本来ここは、今現在は魔獣やモンスターの棲みかだからである。
つまり、侵入者は自分達なのだから、襲われたとしても文句を言える立場でないのである。
もちろん、ただ無抵抗に殺される事を推奨する訳ではないが、危険なエリアに来ている以上、死ぬ覚悟を持っていない者がこの場に存在している事の方がおかしな話なのである。
覚悟のない者は、“外”の世界に行ってはならないし、行かせるべきでもないのである。
まぁ、それはともかく。
アーロスらの活躍(?)により、魔獣やモンスターの屍の山が築かれていた。
とは言え、基本的に魔獣やモンスターは、人間種に比べたら知性はそう高くない。
これが人間種であれば、これほど仲間(?)が殺られる事態となれば、一旦侵入者の排除を断念する場面ではあるが、彼らは本能のまま、自身の棲みかを荒らし回る者達の排除に躍起になっていた。
もっとも、これは案外功を奏していたりする。
客観的に見て、アーロスらが強いのは事実だが、彼らの体力も無限ではないので、ずっと波状攻撃を受けていればいずれ綻びが生じる。
少なくとも、集中力は途切れてしまうだろうし、アーロスらは所謂『広範囲攻撃』に該当する手札を持っていないので、物量で押し切れば、撤退させる事も出来た可能性が高いからである。
ウルカだけでなく、アーロスらでさえ『聖域』で活動するのは厳しい、とハイドラス派の者達に伝われば、流石に妄信的な彼らと言えど、内側から不満が出てきたとしてもおかしな話ではない。
そんな計算が魔獣やモンスターにある訳ではないが、このままで行けば、そうなった未来もあった。
そう、そのままで行けば、だったがーーー。
「っ!!み、皆さんっ!!」
「おっ、ウルカさんだっ!ありがてぇ、いっちょ、『戦いの唄』を頼んますわっ!」
「えっ・・・?えっ・・・!?」
「色々言いたい事はあるでしょうけど、お話なら後で。今は、コイツらの排除が先ですよ、ウルカさん。」
「・・・。」(コクリッ)
「わ、分かりましたっ!
『戦いの唄』っ!!」
「っしゃあ、来た来たぁっーーー!!」
そこへ、ウルカが駆け付けた事によって状況が一変する。
たった一人増えたところでそう大して変わらないのが普通であるが、元・『LOL』のメンバーとして、彼らの連携はある程度確立されている。
そして、チームワークに優れたチームは、非常に優れた相乗効果を生む。
更にはウルカは、元々回復役で、なおかつ支援職としてこそ輝くタイプだ。
しかも、タリスマンも持っていた様な、所謂『職業』によって得られるスキルの中には、仲間全体へのリジェネ効果+攻撃・防御・素早さなどの各種ステータスのバフ効果などを付与する『戦いの唄』という固有スキルがあったのである。
これによって、失われた体力を回復し、なおかつ攻撃力などが大幅にアップしたアーロスらは、まさに水を得た魚の様な快進撃を繰り広げていくのだったーーー。
・・・
「ふぃ~、終わったぁ~!!!」
「一先ず、これで当分は安全だろうね。」
流石に知能がそう高くないとは言え、魔獣やモンスター達も強者を見極める能力はある訳で、ある時を境に全く歯が立たなくなったアーロスらに彼らも撤退を始めた。
これが人間種同士の争いであれば、ここで追撃を加える事で戦力を減らす手もあるが(もちろん、深追いは禁物、という言葉もある通り、逃げる相手を無理に追わない、という戦略もある。)、知能がそう高くない獣相手では、相手に恐怖心を与え反抗心を挫くという手段が使えない、という計算があった訳ではなく、単純に戦闘の疲れもあって、アーロスらはそれを追わなかったのである。
もっとも、ドリュースの持つ能力によって、魔獣やモンスターのある程度の感情の様なモノは感知出来たので、彼はその事を根拠に、魔獣やモンスター達が再びここを襲う事は低いと見積もっていたのである。
「お疲れ様でした、アーロスさん、ドリュースさん、そして・・・N2さんも。」
「ウルカさんもお疲れ~。いやぁ~、助かっちゃったよ。やっぱり、ウルカさんの支援技は頼りになるなぁ~!」
「ね。『TLW』時は、とりあえず開幕にバフを盛りまくるのが基本だったもんねぇ~。けど、こっちの世界だと、更に凶悪だよねぇ~。疲れも回復してくれるし。まぁ、終わった後は、その疲労感が一気に押し寄せてくるけど。」
「まぁ、こっちでは俺ら肉体を持ってるからなぁ~。『TLW』時も、精神的には疲れてたし、案外こんなモンなんじゃね?」
「そうかもねぇ~。」
戦闘が終わった瞬間、さっきまでの勇ましさから一転し、年相応の軽口を叩き合うアーロスとドリュース。
それに多少困惑しつつ、ウルカは彼らに話し掛ける。
「ところで、あの、何故この様な場所に?」
「あ~、忘れてた。俺ら、ウルカさんに用事があったんだよねぇ~。」
「・・・私に?」
何だろうか?
ウルカは警戒感を強める。
と、言うのも、ウルカは一度仲間達と距離を置いていたからである。
更には、この場にいるN2から、今現在ロンベリダム帝国にて実用化された(ライアド教内にも、そのデータは横流しされていたが)“魔法銃”の基となった『魔砲』のデータを掠め取ったのは、間違いなくウルカだったからである。
それは、明確な仲間に対する裏切り行為だ。
少なくとも、仲間達と距離を置いた事はともかくとして、N2の同意を得ずに『魔砲』のデータを掠め取った事は言い訳のしようがない。
場合によっては、それに対する報復、あるいは制裁を加えられたとしても不思議な話ではないのである。
ウルカが警戒感を持ったとしてもおかしくはないのである。
「ああ、そんなに警戒しなくてもいいっすよ。俺ら、ウルカさんをどうこうするつもりで来たワケじゃないっすから。」
「むしろ、今更だけど、僕らもティアさんを裏切って来た、とも言えるかもねぇ~。」
「仕方ねぇ~だろ?ティアの姐さんは、俺らの話よりあのヤローにべったりだったからよぉ~!けっ、案外、ティアの姐さんも人を見る目がなかったんじゃねぇ~のっ!?」
「・・・それは分からないけど、あの人の言う事を完全に信じてる素振りだったよねぇ~?まぁ、確かに、この世の者とは思えないほどの神秘性と圧倒的な存在感を持っていたから、言葉を鵜呑みにしたとしても不思議な話じゃないんだけどさ。」
「あの、さっきから何のお話ですか・・・?」
「・・・すいません、ウルカさん。順を追って御説明しますね。」
「は、はぁ・・・。」
アーロスとドリュースが軽く脱線しかけたので、それまで黙っていたN2が、仕方なしに説明を始めた。
「なるほど。あなた方もあの人にお会いした、と言う訳ですか・・・。」
「胡散臭いヤローでしたよ。まるで、“自分は何でも知ってますよ”、みたいなツラしやがってっ!」
「・・・まぁ、アーロスさんのは個人的な意見ですが、私達もアーロスさんの見解には概ね同意します。おそらく、あの人は全て本当の事を言っていない。いや、場合によっては私達の力を取り込む為に、わざと虚偽の証言をしていたのではないか、と疑った訳ですね。そして、最終的には、ウルカさんの存在を思い出した訳ですよ。」
「・・・私を?」
「ええ。今更そこを責める訳ではありませんが、ウルカさんは我々と距離を置きましたよね?」
「そ、それはっ・・・!」
「まぁ、みなまで仰らなくて結構。先程も申し上げた通り、今更そこを責めるつもりはありませんから。ただ、それは何故かを考えた訳です。」
「ウルカさんは、俺ら以上に向こうの世界に戻る事にこだわってたよな?それなのに、何故かライアド教に傾倒していき、まるで向こうの世界への帰還の事なんか綺麗さっぱり忘れた、かの様に見えた。“大方、ライアド教に依存する事で帰還出来ない事への代償とし、精神の安定を図ったんだろう”、ってのがティアの姐さんの意見だったが。」
「けど、それは違ったんですね?貴女は帰還を諦めていなかった。そして、おそらくですが、その事について、“カミサマ”と、何か密約を交わしたのではないですか?」
「っ!!??」
「俺らも“カミサマ”に会ったんだよ。そのヤローの“中”に居た存在だから、ウルカさんが知ってる存在とは違うかもしれないけど、確かにとんでもない力を感じたな。ま、そいつは俺らの帰還は不可能だと言っていたけど、本当のところは分からない。しかし、仮にウルカさんが帰還と引き換えにライアド教に力を貸していた、と考えると、ある意味辻褄が合うんだ。」
「仮に帰還する方法があるなら、それを皆さんで共有すれば良い事。その末で、帰りたい人は帰ればいいし、帰りたくない人は帰らなければいい。にも関わらず、ウルカさんは、その事をひた隠しにし、僕らから距離を置く選択を取った。これは何故か?」
「つまりは、当然ながらそれにも条件が必要だからです。おそらくですが、膨大なエネルギーが必要な為に、人数が多くなると、本当に帰還させる事が不可能なのでしょう。しかし、一人だったら、それも可能となる。もしそうした話なら、ウルカさんが我々から距離を置いた事も、アキト・ストレリチアらが本当の事を言わなかったのも説明がつきます。ウルカさんの場合、我々にその事を知られて帰還出来なくなる可能性を嫌ったからであり、アキト・ストレリチアらは、我々の為にそれほどのコストを支払う必要がないからです。違いますか?」
「・・・。正直申し上げると、そこまでの事は分かりません。ハイドラス様は、確かに帰還の方法がある事を示唆しておいででしたが、それは私がライアド教に協力をしたのならば、という前提条件を仰っていましたから。そこからは、私の憶測でしかありませんが、確かに私もあなた方が考えた様な結論に至り、あなた方と距離を置いたのです。もし、帰還が先着順であるならば、あるいは一人しか不可能であるならば、他の方々に知られて私が帰れない事態は何とか避けたかった。自分勝手だとは分かっていますが、それほど私は向こうの世界に何としても帰りたかったのです。」
「・・・なるほど。」
「「・・・。」」
ウルカの本音を聞き、自分達の考えが間違っていなかったとアーロスらは判断した。
もっとも、これはあくまで彼らの推論でしかなく、本当に帰還の方法などありはしないのである。
つまり、アキトが語った事が全てであったのだ。
だが、彼らはその事を信じられずに、自分達の都合の良い解釈をしてしまったのである。
もちろん、『アバター』の姿で良いなら、帰還する事は理論上可能なのだが、それも彼らも言っている通り、とてつもなく膨大なエネルギーを必要とする。
ハイドラスがアキトをこちらの世界に引き込んだのは“魂”の形態だったが、それでもハイドラスの神霊力が著しく失われる事となったくらいだ。
肉体と魂両面を送り返すとなると、自身を存続する事すら危ういほどのエネルギーを消耗する可能性が高く、当然ながらそんな事は割に合わない訳である。
もっとも、『エストレヤの船』が手に入れば、その懸念もクリアされる可能性もあり、それ故に、ハイドラスもウルカの帰還を請け負っていた訳である。
まぁそれに関しても、完全に言質が取れている訳ではないので、それも反故にされる可能性も当然ながらあるのだが。
「まぁ、ウルカさんの気持ちも分かるっすよ。俺らももし同じ立場だったら、そう考えていたかもしんないっすから。」
「けれど、まだそこで諦める事はないかもしれません。」
「・・・どういう事でしょうか?」
「私達の力は、客観的に見てもこの世界では突出しています。それなのにそのハイドラス様は、ライアド教に協力しさえすれば我々を帰還させても良いと御判断されたという事は、この地に超強力な『失われし神器』が眠っている可能性が高いと考えられませんか?御承知の通り、我々をこちらの世界に喚び寄せたのは『失われし神器』の力です。つまり、我々の突出した力と引き換えにしてでも、この地に眠っている『失われし神器』にはそれだけの価値があるのでは?」
「っ!!!」
「実は、俺らもやっぱり向こうの世界に帰りたいんすよね。で、ウルカさんと同じ様に、ライアド教に協力すれば、その道が拓けるのではないかと思ったっす。」
「最初は、ウルカさんを介して、そのハイドラス様に頼み込むつもりだったのですが、この地にやってくる時に気が付いたですよ。この地の魔獣やモンスターは、やたらと強力なモノが多い。我々ならばまだしも、かなりの強さも持った者達ですら、この地に踏み込むのは躊躇するだろうほどに。にも関わらず、戦えない一般人を大量に投入してでも、何かをしようとしている。つまり、それだけの“何か”がこの地に眠っているのでは?、と。」
「そう考えると、それは十中八九『失われし神器』ではないか、と思い至った訳ですね。ハイドラス様に頼み込みだけでは、先程のウルカさんの懸念から、もしかしたら僕らとウルカさんが対立する可能性もありましたが、もしそこに『失われし神器』の存在があった場合、話は大きく変わってくるでしょう。」
「・・・つまり?」
「つまり、我々もあなた方に協力させて欲しいのですよ。仮に、その“何か”を見つけるのに、我々が活躍を果たせば、交渉の手札を手に入れる事が出来るかもしれない、という打算はあるんですけどね。」
「世の中は等価交換っすもんね。だから、俺らもそれに見合う働きを示してやったらどうか、って思ってるんすよ。」
「・・・なるほど。」
さて、どうしたものか。
ウルカはそこまで話を聞いて深く黙考をする。
ぶっちゃけると、今現在の状況では、アーロスらの加入は願ってもない事である。
何故ならば、彼らが加われば、件の『門番』を倒せる公算が高くなるからである。
少なくとも、ウルカと『血の盟約』のメンバー達が特攻を仕掛けるよりも、遥かに勝率は高くなるだろう。
しかしそうなった場合、彼らに所謂“貸し”を作る事になる。
確かに、この地に眠っている『失われし神器』には、彼らが言うようにそれだけの価値があるのかもしれないが、逆になかった場合は、今度は自分の帰還が危ういモノとなってしまいかねない。
何せ、自分は一度彼らを裏切っているのだ。
彼らも帰還を望んでいる以上、彼らと自分はある意味競争相手になってしまう事となる。
仲良く一緒に帰れればそれが一番だが、仮にこの中の一人か二人しか不可能だと言われたら、最悪殺し合いに発展する可能性もある。
そして、そうなった場合、ある種の失点のある自分が真っ先に排除される可能性も考慮しなければならないのだ。
それ故に、ウルカは決断出来ずにいた。
少なくとも、自分の帰還が確保出来ていない状況では、どちらが正解か分からなかったのである。
しかし、
ー話は聞かせて貰った・・・。ー
「「「「っ!!!???」」」」
直接頭に響く声が聞こえた事により、彼女が自分で決断する必要がなくなったのである。
「こ、この声って・・・!?」
ーうむ。そなたらとは初めましてだな。我はハイドラス。そなたらが“神”と呼ぶ存在である。ー
「「「っ・・・!」」」
アーロスらは、声だけだと言うのに、その者が所謂“本物”であると瞬時に理解していた。
むしろ、アキトやルドベキアといった、並々ならぬ存在と実際に対峙した彼らだからこそ、確信するのも早かったのかもしれない。
ー他の悪神共の甘言に惑わされず、よく我等のもとに辿り着いた。そなたらの真実を見通す眼は称賛に値するだろう。ー
「「「っ・・・!!」」」
その言葉は、アーロスらの自尊心を刺激するにはまさにうってつけの文言だった。
流石に、長年様々な者達を騙し続けただけの事はある。
ハイドラスは、その者達が欲しい言葉を見抜く能力に長けている様である。
ーそなたらが真実を見通したからこそ、我はそなたらとの繋がりが出来た。故に、こうしてそなたらに語りかける事が出来たのである。ー
なるほど、とアーロスらは思った。
ハイドラスの発言の真意は分からないが、少なくともアキトらとの関係を拒否し、こうしてこちら側に来た事で、何らかの条件が達成されたのだと理解したからである。
ーさて、では、ウルカとそなたらの懸念について、我はここに宣言しておこう。そなたらが到達した通り、この地に眠る『失われし神器』は、おそらく、今まで確認された他の物よりも数倍、いや、数十倍強力な物だろう。それを手にすれば、我の悲願である、この世界全体に永劫の平和をもたらす事が可能となるやもしれん。しかし、その一歩手前まで来て、我等には大きな試練を課せられる事となってしまった。我の見立てでは、おそらく『門番』には、我が子らでは太刀打ち出来ぬであろう。そこで、そなたらには、我が子に成り代わり、その脅威を排除する事に協力して貰いたいのだ。ー
「それはっ・・・!」
ー皆まで言わなくとも良い。我には分かっておる。その代わりと言っては何だが、それに協力してくれるのであれば、そなたらの願いを聞き届けると、我が名・ハイドラスのもとに約束するとここに宣言する。・・・いかがかな?ー
「「「「っ!!!」」」」
それは、まさしく彼らにとっては願ってもない話であった。
もちろん、交換条件は課されたモノの、元々そのつもりであった彼らにとっては無茶な条件ではなかったのである。
もっとも、本来ならば、一応その『門番』とやらがどの程度の脅威であるかを確認してから答えを決めるという、ある種の強かな交渉術で答えを先送りにするという手法もあったのだが、残念ながら、彼らにはそこまでの手練手管はなかったのであった。
故に、彼らは即決した。
「こちらとしては願ってもない話です。そのご依頼、つつしんでお受け致します。」
ーで、あるか。では、そなたらの武運、我も祈っておるぞ。ウルカよ。そなたも彼らと協力せよ。ー
「ハッ、仰せの通りに。」
ーうむ。では頼むぞ、異世界の戦士達よ。ー
そう言い残すと、ハイドラスの言葉が途切れる。
残されたウルカらは顔を見合わせて頷いた。
「ま、そんな訳で、ウルカさん。よろしく頼むわ。」
「元・『LOL』、再集結ですねっ!」
「ええ、こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
「・・・。」
多少のわだかまりはありつつも、目的を同じくしたウルカらは、こうして再結集する事となったのであるーーー。
ーいやぁ~、経験が浅く、警戒感の希薄な奴等は簡単に騙せていいよなぁ〜。アンタもそう思わん?ー
《・・・・・・・・・。》
ーま、もう答える力も残ってねぇ〜かな?さて、使える駒共が向こうからやって来たんだ。せいぜい利用させてもらう事にしよ〜かねぇ〜!ー
誤字・脱字がありましたから御指摘頂けると幸いです。
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