革命をプロデュース 2
続きです。
今回は、多少ネタに走ってしまった感や、強引な感じは否めませんが、それは軽くスルーして頂けると幸いです(笑)。
◇◆◇
「・・・また随分大きく出られましたな。そんな事が本当に可能だとお思いで?」
「ええ、十分に可能だと考えています。と、申しますか、これは僕の個人的な持論ですが、“絶対的な支配者”などこの世に存在しません。何せ、所謂“神”と呼ばれる者達ですら、我々“人類”を一つに纏め上げる事が不可能だったからです。何故なら、我々“人類”には“自由意思”が存在するからであり、その考え方も千差万別だからです。これは、どれだけ強権的な政治体制で人々を縛り付けたとしても、どれだけ優れたカリスマ的指導者が存在しようとも変わらない原理原則です。で、あるならば、当然ロンベリダム帝国内にも現皇帝に対して反発している者達も少なからず存在している筈だ。それらの力を結集すれば、必ずや現政権を打ち倒す事が可能でしょう。」
「ハッハッハ。やはり、貴方は本物の様ですね。しかし、それはあくまで貴方が力を持っているから言える事だ。確かに、そうした考えを持っている者達は、もちろん私も含めて少なからず存在しますが、事はそう簡単な話ではありません。奴らの力は絶大です。我々がいくら声を上げたところで、叩き潰されるのが関の山でしょう。逆にそれほどの自信がお有りなら、御自身でそれを為さっては如何ですか?」
「まぁ確かに、身も蓋もない事も申しますと、僕らならば現皇帝を密かにこの世界から退場させる事は可能です。しかし、それでは意味がない。それに、大きく二つの意味で、それは悪手にも成りかねないのですよ。」
「と、申しますと?」
「一つは、単純に内政干渉に当たるからです。僕らはあくまで他国の人間ですし、やはりロンベリダム帝国の問題は、ロンベリダム帝国の者達が解決すべき事案だと考えています。当たり前ですが、いきなり他からやってきて、ああせいこうせいと口出ししてきたり、手を出してきたら貴方はどう思いますか?」
「・・・まぁ、気に食わない、と思う者達も出てくるでしょうな。」
「その通り。それに、仮に僕らがそれをすると言う事は、言ってしまえば、ロンベリダム帝国の権力を他者に譲渡するのと同義でもあります。現政権を打ち倒す=新たなる指導者となる事と同義ですからね。まぁ、僕は国など欲しいとは思いませんが、ここら辺は他に対する対面もありますからね。」
「う、ううむ・・・。」
ここら辺が、僕がロンベリダム帝国の人間にこだわる理由である。
当たり前だが、所謂RPG系ゲームではないが、世界(まぁ、ここでは国になる訳だが)を救っておいて、“後はお好きにどうぞ”、とは現実的にはならないのが実情である。
少なくとも、そんな無責任な事をすれば、世界や国はそれまで以上に乱れる事となるからである。
むしろ、ある種の楔が失った状態では、もはや秩序も何もあったモンじゃないだろう。
上に立ちたい者達が乱立し、覇権を争い内乱状態に突入するのがオチである。
故に、それを回避する為に、大抵の場合は革命の指導者は、そのまま新政権の指導者に成り代わる事でその混乱を抑える事となる訳だ。
が、以前から再三述べている通り、僕は国が欲しい訳でもないし、そうした責任を負うつもりもない。
それ故に、現皇帝をしばき上げて、“じゃ、後はお好きにどうぞ。”、という選択肢を除外していた訳である。
もちろん、今正にジャンさんに語った通り、いきなりやって来た第三者が物事を解決する事は、一時的には良いかもしれないが、その後の軋轢やら混乱やらを考えると、そうするべきではない、という至極全うな建前もあるのだが、身も蓋もない言い方をすると、“面倒くさい”と言うのが正直なところなのであるが。
「それともう一点は、下手に現皇帝を倒してしまうと、場合によっては今以上にロンベリダム帝国が結集してしまう恐れもあるからです。現皇帝は、まぁ、ぶっちゃけるとかなりマイナスな面も存在しますが、表向きはかなりの有能な人物であり、カリスマ性を併せ持つ人物として知られていますし、僕自身、彼がかなりの傑物であると認めています。そんな人物が非業の死を遂げた場合、その悲劇性もあいまって“神格化”されるケースもありえます。それは、ある種のカルト集団の様な結束力をロンベリダム帝国に与える可能性も高く、現皇帝が居る今のロンベリダム帝国よりも、更に厄介な国になる場合もありえる。それ故に、皇帝暗殺が失敗した事は、ある意味ではラッキーであったとも言えます。下手に“英雄”として死なせるよりも、“罪人”である事を周囲に認知させて処分する方が良い場合もあるのですよ。」
「ふむ・・・。」
ここら辺は、偉人や英雄にありがちな事でもある。
当たり前の話として、実際には偉人やら英雄と呼ばれる存在は、ちょいとばかり頭のおかしい人物達であると個人的には思っている。
少なくとも、マトモな感性を持っている正義感を持つ人物である、なんて事はありえないのである。
何故ならば、それでは英雄を英雄足らしめる偉業を成し遂げる事が不可能だからである。
少なくとも、その当時の常識を逸脱した存在だからこそ、彼らは偉業を成し遂げる事が出来た訳で、後にそれが伝説化、神話化した結果、彼らは偉大な人物である、と持ち上げられる事となるが、実際には、当時としても、現在の価値観からしても、結構なやらかしエピソードを彼らは持っていたりする場合も多い。
しかし、先程から述べている通り、それもこれも、全て偉業によって相殺される事となる。
どれだけ人間性に問題があろうとも、社会を混乱に陥れた元凶であろうとも、偉業にはそれらを吹っ飛ばす価値があるのである。
現皇帝にしても、ロンベリダム帝国を軍事的にも経済的にも、大国や強国と呼ばれるほどの国に押し上げた功績がある。
まぁ、その一方で、過剰な大粛清やら、先住民族や“大地の裂け目”勢力に対する迫害や侵略を行った事も事実なのだが、案外人は、功罪の功の部分しか見ず、罪、つまり都合の悪い部分からは目を背ける事が往々にしてある。
しかも、ここで先程も述べた様に下手に非業の死を遂げると、功績の部分だけピックアップされて神格化されてしまう事にも成りかねないのである。
それは、こちらとしてはかなり都合が悪い事になる。
「その為には、正々堂々と現政権と対決する必要があります。」
「・・・仰りたい事は何となく分かりましたが、しかし、あなた方の様な力を持たない我々が、如何にして現政権を打ち倒せると言うのですか?」
「それについては、既に条件は揃っています。確かに体制が磐石なタイミングでは、現政権を打ち倒す事は難しいでしょう。しかし、今現在のロンベリダム帝国は混乱の渦中にあります。おそらく貴方も御存知だとは思いますが、今現在のロンベリダム帝国では、何故か魔法技術の一部が使い物にならないという現象が起こっています。まぁ、ぶっちゃけるとこれは僕がやった事なんですが、それによって、市民の皆さんはとても大変な状況に陥っています。更には『ロフォ戦争』による軍事費の増大により、それを補填する為の増税まで行われている。当然ながら、そんな事になっていれば、市民の皆さんの生活を益々圧迫する事となり、次第にその怒りは現政権に向く事となりますよね?少なくとも、戦争を止めるなり、増税を止めるなり、あるいは魔法技術使用不可状態を解消しない事には、その混乱が収まる事もないでしょう。」
「確かに、私も今現在のロンベリダム帝国の魔法技術が一部使用不可状態である事は把握していますが・・・、いや、ちょっと待って下さい。今、サラッと仰いましたが、貴方が魔法技術を使えない様にしたですってっ!?な、何でその様な暴挙をっ・・・!!??いや、それよりも、そんな事が可能なのですかっ!!!???」
「理由は簡単です。ロンベリダム帝国の人々に立ち上がって貰う為です。確かに、かなり強引な手段であり、市民の皆さんには御迷惑をお掛けする所業だとは思いますが、これはロンベリダム帝国の皆さんの為でもあります。そもそもの話として、『ロフォ戦争』を引き起こしている以上、一見自分達には関係ないと思われるかもしれませんが、他方から見れば、自分達も戦争に加担している事と同義なのです。少なくとも、“大地の裂け目”勢力からしたら、現皇帝も貴族も市民も関係なく、ロンベリダム人は自分達を苦しめる悪しき存在である事は変わりません。もちろん、力を持たない者達が、強大な権力を持つ現政権に逆らう事は難しいでしょうが、それはあなた方の理論であって、相手に取っては全く関係のない理屈だ。つまり、極論を言えば、仮に『ロフォ戦争』がロンベリダム帝国側の勝利で終わったとしても、その後、“大地の裂け目”勢力を全滅させない事には、そう遠くない将来に報復措置を取られる可能性もある。しかも、そうされたとしても文句は言えないのです。何故ならば、あなた方は動こうとすらしなかったのですから。そうなりたくないのならば、現政権を打ち倒し、“大地の裂け目”勢力と和睦を結ぶしかない。」
ここら辺は、“イジメ”の構図と似た様なモノである。
ここでは、加害者=ロンベリダム帝国上層部、あるいは軍部、被害者=“大地の裂け目”勢力、直接加担した訳ではないが、(言い方は悪いが)我が身可愛さから傍観を決め込んだ者達=ロンベリダム帝国の一般市民だとしたら、もちろん、一番悪いのは加害者であるが、それを止めてくれなかった者達に対しても、被害者は恨みを募らせたとしてもおかしな話ではないのである。
もちろん、先程も述べた通り、“イジメ”と同様に、加害者側に逆らう事は難しいのは分かるが、そうしなかったらそうしなかったで、将来的に自身にまで被害が及ぶ可能性もある。
それが嫌ならば、立ち上がるしかない。
正義感とか、そうした理由ではなく、あくまで自分自身の為に。
「人は、当事者になって初めて動くモノです。もちろん、貴方の様に、まぁ、理由は現皇帝への恨みからの事かもしれませんが、動く者達も少なからず居ますが、それはあくまで少数の人々でしかない。しかし、流石に自分達の生活が懸かってくれば、動かざるを得ないでしょう。それ故に、ロンベリダム帝国の人々に、わざと負担を掛けてみたのです。」
「何とも恐ろしい事を平然と仰いますな・・・。」
「別に、僕は介入しなくても良かったんですよ?しかし、その場合、先程も述べた通り、短期的には“戦争に勝った、良かった。”で済むかもしれませんが、当たり前の話として、“大地の裂け目”勢力を全滅させる事など不可能に近い話なので、彼らからの報復措置は間違いなく巻き起こる事となります。そして、大抵の場合、それによって被害を被るのは一般市民の方々であって上層部ではない。」
「むむむ・・・。」
「残念ながら、この世界はあなた方が思うより、かなり厳しい世界ですよ?故に、生き残りたいならば戦うしかありません。戦いを放棄するのならばそれも結構ですが、その場合は、誰に何をされても文句は言えない立場となります。それでもよろしいならばね。」
「・・・。」
「それともう一点。確かに、魔法技術を使用不可にした事は中々信じ難い事だとは思いますので、少しばかり、ここで実演しておきましょう。メルヴィさん、少々御迷惑をお掛けしますが、“自由”となった今ならば、別にバレてしまっても構いませんよね?」
「むっ・・・?もしや、私の正体に気付いているのか?」
「ええ、まぁ。僕も、似た様な技術を使う事がありますからね。もっとも、貴女の扱う技術には造形が深くありませんけど。」
「・・・そうか。まぁ、確かに“自由”なった今ならば、分かったとしても問題ないし、それに、貴方がどの様な手段で私の“呪術”を打ち破るのかは、多少興味があるな。」
「ありがとうございます。さて、ジャンさん。メルヴィさんの了解も取れましたので、実演して見せますね。」
「???な、何の話ですか?」
「まあまあ、とりあえず、見てて下さいよ。じゃ、セージ、よろしくね。」
【了解しました。マイマスター。】
「な、何だっ!?」
「っ!!??」
僕は、端末に話し掛けると、セージが機械音声を響かせる。
その音声に驚きを見せたジャンさんとメルヴィさんだったが、これは説明が面倒くさいので無視する事とした。
それに、そんな事も気にならなくなるくらいの出来事が、すぐに巻き起こる事となる。
確かに、僕は“呪術”に関する知識はあまり持ち合わせていない。
しかし、この世界の魔法体系が、どの様なメカニズムによって引き起こされているかは熟知していた。
“古代語魔法”だろうが“竜語魔法”だろうが、“現代魔法”だろうが“精霊魔法”だろうが、そして“呪術”だろうが、その根本的な部分は全部同じである。
それを、どの様な方法で発現しているのか、どの様な術式の処理を経ているのか、などの違いにより、効率化の有無、どの様な現象を起こすのかの違い、強弱の違いなどはあるのだが(これが、一種の体系の違いに繋がる訳だが)、同じく“魔素”という“エネルギー”を用いている事には変わりがないのである。
それ故、“魔素”に直接干渉する、という一種の荒業を使えば、そもそも“エネルギー”が供給されない事となるので、どの様な術式も意味を成さなくなる。
これが、今現在ロンベリダム帝国で巻き起こっている一部“魔法技術使用不可状態”の正体である。
もちろん、いくら神性の域に達している今現在の僕の力量を持ってしても、これほど大規模な無効化、すなわち“魔素”に干渉する事は不可能であるが、そこはそれ、僕だけで無理ならば、他の力を借りれば良いだけの話であり、例えば『精霊石』や『結界術』を併用する方法や、アルメリア様やセレウス様の力を借りる方法など、それらを実現するプランはいくつかある。
その中でも、特に演算処理、情報処理に優れていたセージの力を借りた、という訳である。
まぁ、『精霊石』を設置している暇がなかった事や(それに、結局『精霊石』を用いる方法はどちらかと言えば“上書き”に近いし、そもそも『精霊石』は稀少、かつ消耗品である。)、アルメリア様やセレウス様の様な“神々”の力を借りる事は、特にロンベリダム帝国ではややこしい事にも成りかねない、という事情もあったのだが。
そもそも、再三述べている通り、元々ここまで介入するつもりはなかったしね。
などと考えながら、目の前では、厳つい男性の姿から、本来の女性の姿に戻ったメルヴィさんの姿が現れていた。
・・・うん、こうして改めて見ると、やはりヘルヴィさんの面影が感じられるなぁ~。
彼女達が血族である事は、まず間違いないだろう。
「なっ・・・!?」
「おおっ・・・!私の“擬態”が無効化されてしまったぞっ!?」
「“魔素”そのものに干渉しましたからね。体系が違えど、貴女の“呪術”も“魔素”を前提としている以上、“エネルギー”の供給がストップすればその力は発現しませんよ。」
「なるほど・・・?」
呑気な僕とメルヴィさんの会話に、しかしジャンさんは、一際驚いた様子で叫んでいた。
「お前、女だったのかっ!?」
「ああ、その通りだ、ジャン殿。今まで黙っていてすまなかったな。」
「ど、どうしてその様な真似をっ・・・!?」
「そ、それはっ・・・!」
「そこは、僕からお話ししましょう。メルヴィさんの口からは言いにくい事もあるでしょうからね。ジャンさん。仮にメルヴィさんが女性であると分かっていたら、“奴隷商”としてはどのルートにそれを流す事となりますか?」
「そ、それはっ・・・、ああ、そういう事かっ!」
「そう、“性処理の道具”として扱われる事となります。もちろん、表向きは労働力として、ですがね。しかも、(身体中に刺青が入っているとは言え)メルヴィさんほどの美貌を持つ女性ならば、大金をはたいてでも手に入れたいと思う下衆な男はかなり多いでしょう。そうなれば、当然彼女が自由の身になる事はかなりの困難だった事でしょう。折角手に入れた極上の美女を放し飼いにするとは考えづらい。で、あるならば、より強力な『隷属の首輪』を用いる可能性は高く、そうなれば、いくらメルヴィさんほどの使い手であろうと、自力で逃げ出す事はほぼ不可能に近くなってしまいます。それは、彼女の目的の為にも、看過できない事態だった訳ですね。まぁ、単純に、下衆な男達の慰み物になりたくなかった、という事情もあるかもしれませんがね。それ故に、男として振る舞う事で、そうした事態を回避した訳です。まぁ、結果としては、その時たまたま貴方が現場に居合わせた事で、その懸念は杞憂に終わった訳ですが。」
「び、美貌、極上の美女っ・・・?」///
「・・・やはり、その様な罪を犯した私では、貴方の言う様な立派な大役は務まりそうにありませんな。元、とは言え、私は先住民族達を奴隷に陥れた張本人なのですよ・・・?」
自嘲気味にそう述べたジャンは、力なく暗い笑みを浮かべていた。
・・・まぁ、気持ちは分からんでもないが。
「甘えないで頂きたい。貴方がそうした理由は、全て現皇帝を打ち倒す為ではなかったのですか?どの様な手段を用い様とも、必ずや現皇帝に一矢報いる。その覚悟で、泥水をすすって生きてきたのではないのですか?貴方がここで諦めたら、それこそ今まで貴方の犠牲になった人々はどうなりますか?」
「っ!!!」
「僕が貴方にこだわる理由。それは、まぁ、色々ありますが、やはり一番は、貴方には動くべき動機がある事だ。貴方は一族郎党を現皇帝に根絶やしにされ、自身の将来を踏みにじられた過去がある。現皇帝に対する強い恨みがある。それ故に、反政府運動の指導者としての器があるものと考えています。下手な正義感から行動を起こす者よりも、そちらの方が、余程説得力がありますからね。」
「・・・。」
「それに、イヤらしい話、そうした行動を起こした理由にも、ある程度辻褄を合わせてしまう事が可能です。貴方と同じ様に、先住民族の皆さんには、ロンベリダム帝国に対する恨みが多かれ少なかれ存在します。しかし、彼らを素直にロンベリダム帝国に引き入れる事は困難だった。そこで、奴隷として、労働力としてロンベリダム帝国に引き入れる手に打って出た、とかね。将来的に、ロンベリダム帝国に反抗する為の布石とする為に。」
「っ!!!」
「あ、貴方は本当に見た目通りの年齢なのですか?よもや、そんな理由を思い付くとはっ・・・!」
「まぁ、そちらは御想像にお任せしますが、世の中綺麗事だけでは渡り歩いて行けませんからね。時に屁理屈が必要な場面もあります。」
まぁ、これでも僕も、『前世』も含めたらもうかなりの人生経験を積んでいるからねぇ~。
仮に僕が、見た目通りの年齢と精神性を持っていたとしたら、若さ故の未熟な正義感故に、こうした手段を卑怯だと思ったかもしれないが、ぶっちゃけると、正々堂々と戦っても負けてしまっては意味がない。
まぁ、逆に、そうした方が、人々の心を動かす事が出来る可能性も高いが、しかし、あくまで歴史は勝者が築き上げてきたものの積み重ねなのである。
ならば、どれだけ非難され様とも、より勝率の高い手段を模索するべきであろう。
さて、ここまで煽ってみたが、ジャンさんはまだ多少躊躇している様子であった。
まぁ、事は彼の今後の人生を左右する事であるから、簡単には決断出来ないのも無理はないのだが。
・・・ここは、それっぽい文言で攻めてみる事にしようか?
「問おう。ロンベリダム帝国は誰のモノだ?」
「「っ!!!???」」
「そう。ロンベリダム帝国は諸君らのモノだ。貴族のモノでも、ましてや現皇帝のモノでもない。諸君らの国なのだ。しかし、現状はどうだ?一部の者達が権力を握り、諸君らの国を好き勝手に動かしている。だと言うのに、諸君らはそれを容認している始末だ。
諸君らには、自由を謳歌する権利がある。諸君らには、自由に主張する権利がある。諸君らには、自分達を縛る者達に反抗する権利があるのだ!」
「お、おおっ・・・!!!」
「確かに、敵は強大だ。戦う事が怖いだろう。しかし、戦わないという事は、自らの権利を放棄する事と同義である。諸君らは、現政権に飼われる一生を送りたいのか?否。断じて否であろう!
ならば、国民よ立て!
諸君らを縛る者達を打倒する為に。
諸君らの正当な権利を取り戻す為に。
立てよ国民!
ロンベリダム帝国の正当な所有者が誰なのか、奴らに知らしめてやるのだっ!
ジーク・ジ◯ン!
・・・あ、違った。」
「う、うおぉぉぉーーー!!!」
・・・どこら辺からパクったかバレちゃうよ。
しかし、流石は某総帥の御言葉である。
ジャンさんの心をガッツリ動かした様子であった。
思わず奮い立ったジャンさんに、僕はここで念押しをしておく。
「・・・では、反政府運動の指導者の件、引き受けて頂けますか?」
「もちろん、喜んでっ!」
「それは良かった。」
まぁ、やや強引な結論となった様に感じるが、そこはそれ、多分僕の持つ『事象起点』が、何かイイ感じの仕事をしたのだろう、と僕は深く考えない事とした。
終わりよければ全てよし、であるーーー。
「あ、アキト殿は悪魔か何かなので?」
「・・・マァ、“ソソノカシテクル”、トイウ意味デハ間違ッテハイマセンガ、コレハ彼ニ取ッテモ悪イ話デハナイデショウ。ムシロ、オ父様ニ見初メラレタノハ幸運ダッタト思イマスヨ?少ナクトモ、完全ナ勝チ馬ニ乗レタノデスカラネ。マァ、ソノ分、苦労モ多クナルデショウガ、ネ。」
「は、はぁ・・・。」
「貴女モ他人事デハアリマセンヨ?オ父様ガ関ワッタ以上、貴女ノコレカラノ人生ニモ大キナ影響ヲ与エラレル事デショウ。マァ、コチラモ悪イ事ニハナラナイデショウガ、アル程度ハ覚悟ヲ決メテオイタ方ガ良イカモシレマセンネ。」
「・・・・・・・・・。」
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