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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
『英雄譚』の始まり
21/383

『宴会』と考察

続きです。



「さて、とりあえずはこの辺りで一旦解散しましょう。皆さんも休息を取る必要があります。これからどうするかは、各々で考えるべき事ですが、まずはゆっくり休んで下さいね?」


少し重くなりつつあった空気を変える様に、アルメリア様はそう提案してきた。


「そう、ですね。それでは、食事の支度でもしましょうか?」

「いえ、それには及びません。今日は、私と『ホブゴブリン』達に任せて下さい。アキトさんは、クロちゃんやヤミちゃん、それにアイシャさんやティーネさん達と過ごしていて下さい。アルマさん達の事も気に掛けてあげて下さいね?」

「はぁ、分かりました。」


確かに、クロとヤミとは後で遊んでやると約束したし、これはアルメリア様なりの気遣いなのだろう。

ただ、『()()()()()()()()()()()については、アルメリア様から一切言及が無いのが気になった。


ーアキトさん、それは後で二人きりの時に話すっス。ー


こいつ、直接脳内に・・・!?

じゃなくて。

えっ?

アルメリア様?

久々に()()使いましたね?


ー『シュプール』も人が多くなったっスからね~。皆には聞かれたくない(たぐい)の話なので、その件は後でお願いするっス。ー


分かりました。

今はとりあえずはクロとヤミと遊んでくるか。

最近憂鬱になる事ばかりしていたし、何も考えないで体を動かす事もたまには必要だろう。


「じゃあ、行こっか?アキトっ!」

「参りましょう、主様(あるじさま)っ!」


アイシャさんとティーネに連れられて、僕は外に出るのだった。



結局、アルメリア様が呼びに来るまで、皆で遊んでしまった。

まぁ、ぶっちゃけ、()()と呼べる範囲を大きく逸脱した『訓練』の様な『何か』だったが、クロとヤミが楽しんでいた様なので良しとしよう。

アルマ達は、流石に付いて来れなかったが、クロとヤミの背に乗り、間接的に参加していた。

最初は平和に、2匹と『フリスビー遊び』に興じていたのだが、そこにユストゥスが名乗りを挙げた。

僕との時間を邪魔された2匹は、いたくご立腹だったが、ユストゥスが『白狼(クロとヤミ)』相手に健闘した事で、2匹の対抗心に火が着いた。

気が付けば、何故か僕とアルマ達を除く全員で『フリスビー』を追いかけていた時は困惑したモノだ。

その後、僕が2匹といつもやっている『鬼ごっこ』をやる流れになった。

ただ、『領域干渉』外は、現状かなり混乱しているらしいので、『領域干渉』内限定の『鬼ごっこ』となった。

流石に『白狼』たる2匹に『鬼役』をやらせると、『領域干渉』内限定では勝負にならないので、アルマ達というある種の『ハンデ』を背負いながら、逃げる方に回って貰った。

『鬼役』は僕、アイシャさん、ティーネ、ハンス、ジーク、ユストゥス、メルヒ、イーナの中から2人選ばれ、協力したり、二手に別れたりと、いろんな戦略も駆使して主に2匹を攻略する。

勝敗は、まぁ、クロとヤミが勝ち越したが、『エルフ族(ティーネ達)』が『力』を示した事で、2匹は彼女達を認めたのだった。


「ワンッワンッ(あの人達、中々やるねっ!)」

「ガウッガウッ(アキトくんの家臣を名乗るだけはあるなっ!)」

「おおっ、皆喜べっ!クロ殿とヤミ殿に認めて頂けた様だぞっ!」

「「「「「おお~!」」」」」

「えっ?『エルフ族』って『魔獣』の言葉が分かるのっ?アキトが特別なんだと思っていたっ!」

「そうだね。僕も、自分とアルメリア様以外では、そういう人に会うのは初めてだなぁ」

「あ、いえ、何となく、と言った感じなんですが・・・。流石に、言葉までは理解出来ませんよ。」

「あっ、そうなんだ・・・。」

「我等は、森での生活が長いので、多少の意志疎通は可能なんですよ。ただ、言葉まで分かってしまったら、『狩り』に支障が出るかもしれませんので、逆に良いのかもしれませんが・・・。」

「あぁ~、それはあるかもね~。」


僕自身も、『英雄の因子』の『能力』の事は実は良く分かっていない。

クロとヤミの言葉は理解出来るが、他の『モンスター』や『魔獣』の言葉までは分からない。

『狩り』をして生活している以上、それは逆に有り難いのだが、もし全ての『モンスター』や『魔獣』の言葉が理解出来ていたら、狩るのを躊躇してしまうかもしれない。

ただ、『言語理解』の『効果』の法則性は何となく分かってきていて、繰り返し『会う』事で、言葉を理解している様なのだ。

超高速で言語をマスターしている感覚だろうか?

そんな訳で、クロとヤミ以外だと、『ルダ村』の『動物』などの言葉も実は分かる。

まぁ、『白狼(クロとヤミ)』ほど知能は高くはないので、さして面白味のある話はしていなかったが。


「みなさ~んっ!食事の支度が出来ましたよ~!!」


アルメリア様が呼びに来た。


「はぁ~い!」


僕が応えると、皆で『シュプール』に戻るのだった。



『シュプール』には『中庭』が存在する。

と、言っても『コ』の字の形になっているので、外からも入る事は可能だ。


「今日は、久々にクロちゃんやヤミちゃんも一緒に食べましょう。2()()とも大きくなったから、家の中は窮屈でしょう?と、言う訳で中庭でバーベキューにしてみましたっ!」

「ワンッワンッ(ありがとー、アルメリア様~!)」

「ガウッガウッ(最近は別々だったもんな~!)」

「それは悪いと思うけど、お前らデカくなりすぎなんだよな~。」


クロとヤミの現在の体長は2mを越える。

尻尾などを含めると2m半はあろうかと言うデカさで、流石に家の中には入れられない。

その為、『シュプール』近くに『犬小屋(と言う名のデカい小屋)』を作り、基本的にそこで生活してもらっている。

前は一緒に食事したり、お風呂に入ったり、寝たりしていたので、2匹は現状に若干の不満を持っている様だ。

もう成体なんだから、少しは大人になってくれると有り難いんだけどなぁ~。

大量の食材を調理しているのは、ホブゴブリン達だ。

本来は『家』の『妖精』なので、『中庭』とはいえ、『外』の作業にはあまり関心を示さないのだが、そこは『おっぱい女神(チートめがみ)』が何かしたんだろう。

その『おっぱい女神(チートめがみ)』は皆と一緒になって食事を楽しんでいる。

いや、いいんだけどね?

ほとんどホブゴブリン達に丸投げじゃないですかー。


「こらうまい、こらうまいっ!」

「あっ、おいっ、ユストゥスっ!それは僕の肉だぞっ!」

「まあまあ、ハンス。私の肉を分けてやるから・・・。」

「えっ、ジークいらねーの?じゃあもーらいっ!」

「あっ、おいっ、ユストゥスっ!!」

「早い者勝ちだぜ、2人とも?『同胞』とはいえ、メシ時は『戦争』だぞっ!?」

「ワンッワンッ(フッ、そのとーりだっ!)」

「ガウッガウッ(お前達に、この肉はまだはやいなっ!!)」

「あーっ!何すんだよっ、クロ先輩、ヤミ先輩っ!!」

「ワンッ(先輩のっ!)」

「ガウッ(高みを知れっ!)」

「おもしれー、『鬼ごっこ』のリベンジマッチと行くかっ!いくぞっ、ハンス、ジークっ!!」

「なんで僕らまで巻き込んでるんだっ、お前はー!!」

「もう始まってるっ!?我等も応戦しないと、肉にありつけないぞっ!?」

「冗談じゃないぞっ!僕はまだ一片(ひときれ)しか肉食べてないのにー!」

「私なんて、一口も食べてないぞっ!?」

「お前ら、ケンカすんなよなー!・・・はぁ、だからモテないんだぞー!?」

「関係ねーだろ、今その話はっ!!」

「まぁ、確かにメルヒには敵わないけどなー!」

「そうだなぁ、『訓練校』時代は凄かったもんなー、後輩女子からの歓声ー!」

「・・・あぁんっ!?ヤんのかおめぇらー!!」

「「「・・・あっ、やっべっ!」」」

「大人しく食べられんのか、アイツらは?」


非常にくだらないケンカだが、無駄に高度な応酬を繰り広げるクロ達。

まぁ、食料を落としてないので、僕もうるさくは言わないが、食べ物を粗末にしたら、僕とアルメリア様が黙ってないぞ?

僕は僕で、今それどころではないが・・・。


「ぷはぁー、ゴハンも美味しいし、お酒も美味しいー!」

「だれー?未成年にお酒飲ましたのー?」

「アキトさん、『この世界(アクエラ)』では、15歳から成人が一般的ですよ?」

「アンタか、アルメリア様・・・。」

「あるじざまぁ、わだじは、あるじざまにづがぇられで、ぼんどーにうれじぐおもっでるんでずよぉー。」

「ティーネさん?キャラ崩壊が過ぎますよー?」

「ぷはぁー、サケがたんねぇーぞ!タルごとよこせぇー!!」

「あらやだ、イーナさんたら男らしい。」

「アキトさまぁー、美味しいですねー。」

「「ねー。」」

「アルマちゃん、エーヴァちゃん、スヴィちゃん、意外とたくましいのねー。」

「うむむ、皆さんやりますね。私も負けてられませんわっ!」

「何の対抗意識を燃やしてるの、アルメリア様ー!?」


急募、ツッコミ役。

現在の『宴会』状態はカオスであった。

みんな、色々溜まっているのだろうか?

ホブゴブリン達は、良い顔でサムズアップするだけだし、誰かたすけてー。



死屍累々となった『中庭』で、僕は後片付けに奔走していた。

と、言っても、流石に食器や酒ビンが散乱しているって事はなく、戦いに敗れた者、お酒に敗れた者が好き勝手に寝こけているだけなのだが・・・。


「ワンッワンッ(フッ、口ほどにもないっ!)」

「ガウッガウッ(いや、格好つけてるけど、結構肉強奪(とら)れたからねっ?)」

「はいはい、お前達は自分で『小屋』に戻れるだろ?戻って、もう休みなさい。」

「ワウゥ~(は~いっ!)」

「ガウッガウッ(結構楽しかったなっ!)」


クロとヤミは元気良く『小屋』に戻っていった。

自分達とまともに『遊べる』者が増えて、かなりご満悦の様だ。


「さて・・・。」


食器や酒ビンなどの後片付けはホブゴブリン達がしている。

僕は、死んでる(寝ている)者達を部屋に運ぶ事にした。

まずはハンス、ジーク、ユストゥスの男子組だ。

彼らは、適当にまとめて()()()()()行って、大部屋に放り込んでおく。

『見た目』的には超美形の3人だが、中身は『男子中学生』みたいなモノなので、僕の彼らに対する態度もかなり雜になってきている。

まぁ、親しくなったと言う事でひとつ。

呻き声が聞こえた気がするが、スルー。

頑丈だから、明日になれば何事もなかったかの様に、ケロッとしている事だろう。

ポイッポイッポイッ!

おやすみー。


次は、アルマ、エーヴァ、スヴィの女子3人。

こちらは、丁重に運んでいく。

男子との差が激しいが、彼女達は少し前までは劣悪な環境に居たのだ。

必要以上に意識する事はしないが、なるべく優しく接するべきだろう。

『前世』の祖母と母の教育により、女子には優しくする様に刷り込まれているしな。

こちらも大部屋の大きなベットに、仲良く一緒に寝かせておく。

『アニマルセラピー』と同じく、人との触れあいは心を癒す『効果』が期待出来る。

今現在は、安心安全の『シュプール』に居るのだから、彼女達には良い夢を見てほしいモノだ。

時おり、「クロちゃ~ん・・・。」とか、「ヤミちゃ~ん・・・。」とか、「アキトさま~・・・。」とか(!?)、寝言が聞こえてくるが、こちらは男子とは別の理由でスルー。

墓穴を掘る様な真似をしないのが、僕のクオリティー。


さて、お次は、アイシャさんとティーネ、メルヒ、イーナ達だ。

アイシャさんは、『鬼人族』の特性上、酒豪なのは理解出来るが、イーナも負けてはいなかったなぁ。

2人は、仲良く酒樽を抱えて寝ている。

逆に、ティーネは酒に弱かったのか、『泣き上戸』を発症していた。

普段は凛としているので、ギャップが凄かったな。

涙の跡が付いた寝顔は、割と可愛らしい。

メルヒは、男子達とやり合っていたが、酒よりメシって感じだったな。

格好いい系美人女子の彼女は、男子達の失言通り、さぞ女子にモテる事だろう。

本人の名誉の為にも、口が裂けても言えないが。

寝ている姿まで格好いいのはある種の『呪い』なんだろうか?

割りとこの4人は、『種族』を越えて仲が良いので、こちらも大部屋に一緒に寝かせておく。

「アキト~、むにゃむにゃ。」、「あるじさま~・・・。」、「サケェ~、うへへ・・・。」、「私はノーマルだ~・・・。」、寝言が聞こえてくるが、彼女達の名誉の為にもスルーしておこう。

後が怖いし。

ふぅ~。

さて、『中庭』は片付いたかな?



◇◆◇



『中庭』はすでに片付いていた。

ホブゴブリン達の姿もすでになく、先程までの光景が嘘の様だ。


「お疲れ様っス、アキトさん。」

「アルメリア様・・・。」


そこにはアルメリア様が1人佇んでいた。


「・・・余程聞かれたくない話なんですか、『()()()()()()()()()は?『宴会』まで開いて、皆を寝かせる(リタイアさせる)なんて・・・。」

「う~ん、別にそこまででもないっスけど、荒唐無稽な話っスからね。『()()()』の存在を知らなければ、訳が分からないと思うっスよ?それと、『宴会』は皆と仲良くなる為にやった事で、他意はないっスよ?」


本当だろうか?

訝しげな顔を向ける僕に、アルメリア様は苦笑いしつつ、『シュプール』の一番高い屋根まで飛び上がっていった。

チラッとこちらを見たので、僕も後に続いた。

『シュプール』の屋根からは、『魔獣の森』が一望出来る。

『シュプール』は、『魔獣の森』の入口とも言える場所にあるので、周りの景色も森一色ではない。

空を見上げると、無数の星の輝きと、2()()()()が僕らを照らしている。

もはや見慣れた光景だが、『この世界(アクエラ)』には月が2つあるのだ。


「今夜は、良く晴れてるっスね。双月がこんなにハッキリ見えるのも珍しいっスよ。」

「そうですね~。まぁ、僕としては、月が2つある時点ですでに珍しいんですけど・・・。」

「そうだったっスね~。」


他愛のない話をしつつ、アルメリア様はどこからか木製のカップを出して、僕に勧める。

僕も慣れたモノで、一言礼を言うと、カップに口をつける。


「それで?」

「・・・まずは、アキトさんに謝らなければならないっスね。『ライアド教』と『至高神ハイドラス』についてっス。」


一旦言葉を切るアルメリア様に、僕は目線で先を促す。


「以前お話したっスけど、確かに『ライアド教』と『至高神ハイドラス』の『力』は弱まったっス。しかし、『失われし神器(ロストテクノロジー)』の『力』を利用して再起を図ろうとした事は予想外だったっス。」

「・・・ん?別に不思議な事ではないでしょう?王家の『秘宝』の例もあるのだし、『失われし神器(ロストテクノロジー)』の『力』が強大な事は予想出来るのではないですか?まぁ、この目で見たアレの『力』は予想以上でしたが・・・。」

「仰る事は分かるっスが、アキトさんは思い違いをしてるっスよ?『古代魔道文明』の『遺産』である『失われし神器(ロストテクノロジー)』は、当然、発見・発掘する為にはとてつもない労力と資金が必要不可欠っス。なぜなら、現存する王家の『秘宝』の様にすでにある物は、既存の『遺跡』から発見・発掘してる訳ですから、新しく『失われし神器(ロストテクノロジー)』を手に入れるには、新規の『遺跡』を発見するしかないっスよ。」

「なるほど、何となく話がみえて来ました。つまり、まず新規の『遺跡』を発見しなければならない。次に発見した『遺跡』の調査・発掘。もし『失われし神器(ロストテクノロジー)』が発見されればその調査・解析。発見されなければ、また新規の『遺跡』を探す・・・。確かに長い年月が掛かりますね。」

「そうっス。以前の『ライアド教』なら話は別ですが、今の『ライアド教』にその様な時間は掛けらないっス。だから、ワタシは『衰退する』と言ったっスけど、ここ最近、『至高神ハイドラス』がどうやら『覚醒』を果たした様なんっスよ。」

「『覚醒』?」

「『力』が弱まったのにおかしな話っスけど、『二級管理神』に目覚め様としてるっスよ。」

「えっ!?ルドベキア様やアルメリア様の様な『管理神』になったって事ですか!?」

「いえいえ、元々『土着神』は『三級管理神』なんっス。なので、厳密には『至高神ハイドラス』も『管理神』なんっスけど、ワタシ達の様な『一級管理神』とは『神格』が桁違いなんっス。まぁ、これはややこしくなるので置いておいて、『二級管理神』と言うのは、『一級管理神』になる為に段階が進んだ事を意味するっス。ただ・・・。」

「ただ・・・?」

「いえ、こちらの話なんっスけど、『至高神ハイドラス』の『力』はどうも(いびつ)なんっスよ。何と言うか、()()()()()()()()()みたいな・・・。まぁ、これも置いておきましょう。で、その事により権限が増して、どういう手段かは分かりませんが、『魔獣の森』に『遺跡』がある事を突き止めたらしいっスよ。『世界の記録(アカシックレコード)』にアクセスした形跡もそんな権限もないので不思議なんっスけど。」

「それで思い出したっ!なんで『魔獣の森(ここ)』に『遺跡』がある事教えてくれなかったんですか!?」

「それは悪いと思うっスけど、ワタシはこの世界には基本的に不干渉っスから・・・。歴史を大きく変える事に干渉出来ないっスよ。」


申し訳なさそうに僕に謝るアルメリア様。

うぅ、美人にそんな顔されるとこちらが申し訳なくなる。

確かに、これは僕のワガママだったかもなぁ。

『ライアド教』に先を越された事が、悔しかっただけだし。

アルメリア様は、僕ら『身内』以外には、確かに不干渉を貫いている。

僕以上の『力』を持っているのに、その『力』を使う事はない。

それは、もしかしたら多大な葛藤があるのかもしれない。

『一級管理神』で、チートの塊みたいな存在だが、様々な『制約』があるんだっけ?


「・・・いえ、すいませんでした・・・。し、しかし、アルメリア様にも分からない事があるんですねっ?」

「当然っスよ。『一級管理神』は『万能』ですが、『全知全能』では無いっスから。まぁ、ワタシ達の目的としては、予想外の事象は逆に大歓迎なんっスけどね・・・。で、その予想外の『覚醒』を遂げた『至高神ハイドラス』が『失われし神器(ロストテクノロジー)』・『召喚者の軍勢』を発掘して、今回の『事件』に繋がったっス。」

「ふむふむ。・・・んっ?目的?アルメリア様達『一級管理神』には目的があるんですか?」

「もちろん、あるっスよ。けど、それは『制約』により言えないっスけどね。申し訳ないっス・・・。」

「ふむ。なら仕方ないですね・・・。しかし、今回の『事件』は『至高神ハイドラス』にとっても予想外だったのでは?ニルも『失われし神器(ロストテクノロジー)』を使うつもりはなかった様でしたし、第一、『ライアド教』にとってメリットが無い。『信仰』を集める事が目的なら、マッチポンプですが、どこかで『事件』を起こして、『ライアド教』が解決する方が『信仰』やら『評判』が高まるでしょう?今回は僕らが中心となって解決しましたし、その事により、少なくとも僕はダールトン村長とドロテオギルド長に『ライアド教』が今回の『事件』を引き起こしたと報告するつもりですから、逆に『評判』が下がるでしょうし・・・。」

「確かにアキトさんのご指摘の通り、今回の『事件』は『至高神ハイドラス』にとっても手痛い失敗だったと思うっス。『英雄(アキトさん)』が介入した事で、予定が大きく狂ってしまった訳っスからね。しかし、ここで『()()()()()()()()()が大きな意味を持ってくるっス。」

「えっ!?」

「ご承知の通り、『この世界(アクエラ)』には『召喚魔法』は存在しないっス。『異世界転生』や『異世界転移』の様に途方もない『エネルギー』が必要なので、厳密にはそれを扱える者がいないと言った方が正しいっスが、『失われし神器(ロストテクノロジー)』にはそれが可能だった。アキトさんは、そう考えたのではないっスか?」

「そうです。・・・違うんですか?」

「ワタシも『至高神ハイドラス』も、『()()()()()()()()()が無ければ、そう考えたと思うっス。しかし、『()()()()()()()()()が観測された事で、ある可能性が浮かび上がったっス。それが、『()()()()()()()()()()する事っス。」

「うぅん?話がみえないのですが・・・?」

「順を追って説明するっスね。まず、『異世界転生』や『異世界転移』には膨大な『エネルギー』が必要である。これは良いっスよね?」

「・・・はい。」

「次に、アキトさんは、『至高神ハイドラス』の干渉により、『()』の形態でこちらに『転移』、マルク王の双子の一人として『転生』した。これも良いっスよね?」

「・・・そうですね。確か、『()』の形態にしたのは、コストカットの為だとか何とか・・・。」

「そうっス。で、今回の召喚。1000体を越える『モンスター』や『魔獣』が『召喚』され、討伐されたら、1/3ほどの『モンスター』の死骸が消えていた。」


こくりと頷く僕。


「その事により、『失われし神器(ロストテクノロジー)』・『召喚者の軍勢』の『力』は途方もないモノに思えるっスが、使用された『エネルギー』は、割りと大した事がない事が分かったっス。『()()()()()()()()()()()()()()のも、『暴走(バーサーカー)』状態だったのも、『力』が不完全に発動したからっスね。」

「それが、『()()()()()()()()()()って事に繋がるんですか?」

「そうっス。先ほどアキトさんも言ってたっスけど、『()』の形態で『転移』・『転生』したのはコストカットの為っス。さらに『召喚者の軍勢』は、コストを安くする為に、『()()()()()()()()()()()()()()としたらどうっスか・・・?」

「そうかっ!?『ゲーム』じゃあるまいし、と思ったけど、そういう事かっ!?」

「お分かりになったっスか?『召喚者の軍勢』の『効果』は、『地球』の『()()()()()()()()()()』を『召喚』している事だと思われるっス。元々、『()』がない()()()であるがゆえに、コストが安く済み、その分だけ、『再現』、あるいは『顕現』に『力』を割く事で完成する『術式』だと思われるっス。しかし、今回は不完全な発動になったので、『暴走(バーサーカー)』状態であったり、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と言う一種の『バグ』を引き起こしてしまったと思われるっス。」

「なるほど・・・。」

「まぁ、そのおかげで、この可能性に気が付いたっスけどね。ちなみに、ご存じの通り、『この世界(アクエラ)』には『転移魔法』は存在しませんので、何故同じ『世界線(アクエラ)』のデータが使われなかったがこれで分かるかと思うっスけど・・・。」

「えっと、確か『転移魔法』には『異世界転生』や『異世界転移』並に『エネルギー』を使うから、こちらの『世界線(アクエラ)』のデータを使うには、まず大量の『モンスター』やら『魔獣』を一度『()』の状態にする。つまり、殺して、それから『召喚』しなければならない。『()()()()()()()と違い、実在の『モンスター』や『魔獣』を大量に殺害しなければならないので、その分より多くの『エネルギー』を使わなければならない、とかですか?」

「概ね合ってるっス。後、補足しておくっスけど、『古代魔道文明』時代には、現代地球の様な『ゲーム』など存在しないっスけど、その分『こちらの世界(アクエラ)』とは比べ物にならないくらい『神話』やら『伝説』が地球にはあるっス。その頃の『召喚者の軍勢』の『効果』は、『神話』や『伝説』のデータを使っていたと推測されるっスね。」

「なるほど~。しかし、さっきから推察や推測が多いですけど、それも『制約』なんですか?」

「いえ、単純に『世界の記憶(アカシックレコード)』に『古代魔道文明』の記憶が消えかけているからっスよ。『古代魔道文明』や『失われし神器(ロストテクノロジー)』の事は詳しく分からないっス。本来のワタシなら、『本当』の『アクエラの記憶(アカシックレコード)』にアクセス出来ますが、その内容は『制約』により、『一級管理神』以外には明かせないっスけどね。」

「ああ、今のアルメリア様は、『一級管理神』ではなく『忘れられた神』で、『生体端末』なんでしたっけ?ところで、『世界の記憶(アカシックレコード)』ってなんですか?」

「『本当』の『アクエラの記憶(アカシックレコード)』はこの惑星の過去から現在にかけての全記憶の事っスが、『世界の記憶(アカシックレコード)』と言うのは、人々の『普遍的無意識』の事っスね。こちらは、かなり乱暴に要約すると今現在の人々の全記憶の事なので、記憶から消えかけている事は知りようがないっスね。」

「ほ~。」


いや、良く分かってないんだけどね。


「と、まあ、そんな感じなんっスけど、おそらく、『至高神ハイドラス』も、『()()()()()()()()()から、先ほど述べた結論に行き着いた可能性があるっス。注意して下さいね、アキトさん。『至高神ハイドラス』が、『召喚者の軍勢』の『効果』に気が付いていたとしたら、『()()()()()()()()()()』、つまり、『モンスター』や『魔獣』ではなく、『()()()()()()()()()()()()()』も『召喚』し、配下に出来る可能性がある事に気付くと思われるっス。『貴方(英雄)』に匹敵する者を、手中に修める事が可能かもしれないっス。まぁ、『召喚者の軍勢』の『再使用』には少なくとも数年の時が必要と思われるので、どういう結果になるかはやってみなければ分からないっスけどね。」

「なるほど・・・。つまり、『至高神ハイドラス』は今回の『事件』で失敗したが、同時にもっと強力な『手札』を手に入れる可能性もあると言う事ですね?」


こくりと、アルメリア様は神妙に頷いた。


「かつて、ワタシが予言した通りに、アキトさんは今回の『事件』により『至高神ハイドラス』にとっては、危険な人物として認識されたかもしれないっス。アキトさんとしては、平穏無事に『古代魔道文明』や『空飛ぶ都市』の調査・研究に没頭したいだろうと思うっスけど・・・。」

「『神々』が『英雄』を放っておかない・・・でしたね。アルメリア様が気に病む必要はありません。『失われし神器(ロストテクノロジー)』を悪用しようとする時点で、僕としては許せない事ですから・・・。『ライアド教』や『至高神ハイドラス』と事を構えるのは、ある種仕方のない事です。しかし、その事により、『鬼人族(アイシャさん)』や『エルフ族(ティーネ達)』、その他沢山の人々に迷惑をかけるかもしれないのが心苦しくもあります。」

「アキトさん、それは・・・。」

「ええ、分かっています。これは僕のエゴですね。彼らには彼らで戦う理由があるでしょうからね。ただ、今日の『宴会』の様な日々がずっと続けば良い。そう思わずにはいられないのですよ、僕は・・・。」


しばらく、僕とアルメリア様は無言で空を眺めた。

2つの月だけが、僕らを見守っていた・・・。



誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。

今回は、何度も書き直しました。

改めて、僕は説明が下手なのだなぁと思いました。

皆さんに伝われば良いのですが・・・。

では、また次回。


今後の参考の為にも、よろしければ、ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。よろしくお願い致します。

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