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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
女神の怒り
188/383

発言には気をつけましょう

続きです。


久しぶりに主人公登場です。



◇◆◇



「・・・と、言う訳です。」

「なるほど・・・。それで、その救出部隊の一部が何者かに殲滅された事によって、その件が明るみに出た、という訳ですか・・・。」

「その様ですね。ダルケネス族側としては、その日の内に同胞を二人も殺害され、なおかつ、ロンベリダム帝国側が攻め込んで来た事実に怒り心頭になった訳ですな。当然、一度は堪えた感情でしょうが、立て続けにそんな事が起これば、報復を望む声が大きくなるのは、これは、まぁ、当然でしょう。そうなればもはや国民感情、市民感情の話ですからなぁ~。」

「まぁ、それはそうでしょうねぇ~。もちろん、慎重論を唱える者達も中には居たでしょうが、一度形作られた流れを変える事は非常に困難でしょうからねぇ~。」

「ええ。それに加えて、その何者かがそのままダルケネス族側に付いたのも大きい様ですね。何でも、強大な(チカラ)を操り、なおかつ強力な指導力を発揮させているとか何とか・・・。一体、何者ですかね?更には、対外的に有名な『神の代行者(アバター)』の一人とその仲間達が味方に付いた事で、他の“大地の裂け目(フォッサマグナ)”勢力と、ロンベリダム帝国側の反ルキウス派も密かに合流しているそうですし、まぁ、分かりやすく申しますと、ダルケネス族側としては、ロンベリダム帝国側と戦えるだけの戦力が集まりつつあるという事ですな。」

「ふむ・・・。と、なると、その勢いは、もはや誰にも止められない、と考えられますか・・・。」

「そうですな・・・。まぁ、戦闘自体は、先程述べた救出部隊の一部が壊滅した後は表立った動きはありませんが、まぁ、普通に考えれば戦の準備をしていると考えられる為、何時本格的な戦争状態に突入するかは不透明な状況ですね。」

「ふぅ~む・・・。」



・・・



皆さん、ご無沙汰しております。

アキト・ストレリチアです。


僕らは今、ロマリア王国の王都・ヘドスに存在する、前・『リベラシオン同盟』、現・『ブルーム同盟』(正確には『リベラシオン同盟』はまだ存続しているのだが、『ブルーム同盟』が登場した事によって、その機能を『ブルーム同盟』へと併合させている。今では、『リベラシオン同盟』は『ブルーム同盟』の一部門、というのが正解である)本部施設へとやって来ています。

これは当然、ドロテオさんから知らされた件の詳しい事情聴取と、その後の対応を話し合う為ですね。


で、今僕と話していたのが、元・トーラス家の筆頭執事であり、前・『リベラシオン同盟』、現・『ブルーム同盟』の諜報部門を統括しているヨーゼフさんです。

情報に関しては、彼が仕切っているんですね。

まぁ、デキる執事さんたるヨーゼフさんは、『リベラシオン同盟』時代は、ダールトンさんの代わりに盟主代行なんかも務めていましたが、ルダの街の代表を息子であるハロルドさんに引き継いだダールトンさんは、今現在では『ブルーム同盟』の盟主としての仕事一本に絞っているので、ヨーゼフさんも本格的に諜報部門を統括する立場に就いて貰ったそうです。

まぁ、それとは別に、恩なのかそうした性分なのか、何かと甲斐甲斐しくダールトンさんの身の回りの世話を焼きたがる様ですがね。

見る人が見れば、BのLみたいに見えるかもしれませんね。

・・・まぁ、冗談はともかく。


ちなみに、この場には、僕とヨーゼフさんの他に、僕のパーティーメンバーである、アイシャさん、ティーネ、リサさん、エイルにヴィーシャさんも同席しています。

と、言うか、『ブルーム同盟』の盟主たるダールトンさん(まぁ、実質的なトップは議長であるマルセルム公なのだが、『リベラシオン同盟』が『ブルーム同盟』に併合した時点で、事務方のトップをダールトンさんに一任した様なのだ。例えるならば、マルセルム公が大臣相当、ダールトンさんが事務次官、って感じだろうか?)、戦術顧問を務めるドロテオさんに加えて、『ブルーム同盟』の参加国でロマリア王国の代表者・ジュリアンさん、トロニア共和国の代表者・ダグラスさん(ヴィーシャさんの元・部下で、獣人族の男性ですね)、ヒーバラエウス公国の代表者・ディアーナさん、エルフ族の国の代表者・グレンさんも顔を揃えていたりします。

後は、鬼人族であるアスラ族も一応『ブルーム同盟』に参加してはいるのですが、こちらは部族単位の参加となるので、他の“国”に遠慮しているのか、はたまたそれ以外の理由(鬼人族の統合を目指してから正式に合流するとか)かは分かりませんが、アスラ族からは正式な代表者が選出されていない状況だったりします。

代表者がいないと、自国(部族)の考えを伝える事が出来ないのですが、対外的にはアスラ族、族長の娘であるアイシャさんが代表代行みたいな立ち位置になるので、とりあえずは問題ない様ですけどね。

いずれ、鬼人族からも正式な代表者が派遣される事でしょうが、今回は仕方ありませんね。


それと、『ブルーム同盟』とは全く関係ありませんが、(くだん)のロンベリダム帝国との関係も深く、“大地の裂け目(フォッサマグナ)”勢力にも仲間の一部が加担している様子である『異世界人(地球人)』の皆さんも一緒だったりします。

彼らは、ある意味当事者ですから、直接的な情報の分からないロンベリダム帝国内部の事にも詳しいでしょうし、それ故に一種のアドバイザーとしてこの会議に特別に参加している貰っている訳ですね。

まぁ、彼らからしたら自分達にも関係してくる事はなので、ロンベリダム帝国周辺で何が起こったのかの情報を知りたいでしょうし、逆にこちら側が情報開示を拒んだ場合、彼らがどう動くかも分からないという事もあって、まぁ、僕らの都合もあったりしたのですが・・・。



・・・



「と、まぁ、そんな訳で、切っ掛けが何であれ、思惑がどうであれ、表向きはロンベリダム帝国が本格的に動き始めた事だけは確かなのです。」

「「「「「「「「「「・・・。」」」」」」」」」」


ヨーゼフさんからの説明の後、盟主であるダールトンさんが、改めてその点を指摘した。

その発言に、その場にいる者達に緊張感が走った。


これは言うなれば、長らく(当然仮初めである事は重々承知ではあったが)平和だったハレシオン大陸(この大陸)に、明確な戦乱の足音が聞こえてきたから当然の反応であろう。


「さて、それを踏まえた上で、『ブルーム同盟(我々)』の今後の動きについて、議論していきたいと思います。」

「あ、いや、その前に一点。話の腰を折る様で申し訳ないのだが、一応確認しておくが、『ブルーム同盟(我々)』はロマリア王国、トロニア共和国、ヒーバラエウス公国の三国を中心に、エルフ族の国や鬼人族も加わって、軍事的・経済的な連携を推進する同盟関係だと理解しているが?」


ダールトンさんがそう切り出すと、グレンさんがそう待ったを掛けた。


「ええ、その通りです。」


それに、ダールトンさんはしっかりと肯定の意を表明する。


「で、あるならば、この件は確かに重要な事案であり、注視する必要はあるが、現時点では『ブルーム同盟(我々)』には直接的に関わりのある事柄ではないと思うのだが?」

「「「「「「「「「「・・・。」」」」」」」」」」


グレンさんの発言は、もっともな意見だろう。

仮に、今回ロンベリダム帝国周辺で起こった事に、『ブルーム同盟』の参加国が巻き込まれたとしたら話は別だが、現時点では遠く離れた異国の地で起こった争乱に過ぎない。

故に、グレンさんの指摘した通り、重要かつその流れを注視する必要はあるものの、『ブルーム同盟』が表立って介入する段階ではないのも事実だろう。


それに、この場の代表者の発言如何(いかん)では、各々の国の住人達をも巻き込む恐れがあるのだ。

故に、慎重になるのも無理からぬ話であった。


「はい、ダールトンさん。発言よろしいでしょうか?」

「あ、ああ、アキトくん。どうぞ。」


それに、僕が挙手をして、発言の許可を求めた。

一応、僕らの立場としては、『ブルーム同盟』の“中”の組織ではないのだが、僕は『リベラシオン同盟』創設メンバーであり、『ブルーム同盟』創設にも深く関わっているし、今現在は外部協力者としての立場を持ち、様々な案件にも関わっているので、発言力としては他の参加国の代表者に劣らないという自負がある。

まぁ、だからと言って、僕らには別に決定権はない訳だし、好き勝手に発言していい訳ではないから、わざわざそうしたプロセスを踏んだのである。


「グレンさんの意見はもっともだと思います。少なくとも、現時点では『ブルーム同盟』が介入する段階ではありませんからね。」

「ちょ、ちょっと待ってくれよっ!!!じゃあアンタらは、雁首揃えて、戦争を放置するってのかよっ!?アンタらはそれぞれの国の偉い人達なんだろっ!!??」

「お、おいっ、アーロス殿っ!!!」


それに、いきなり噛みついてしまったアーロスくん。

うん、相変わらずの短慮っぷりである。

この場に置ける発言の重さを彼は理解しているのだろうか?

・・・まぁ、僕としては、この発言は大いに利用出来るんだけどね。


「・・・彼は?」

「ああ、ご紹介が遅れましたね。彼らは『神の代行者(アバター)』として有名な、ロンベリダム帝国の縁者ですよ。まぁ、今現在は冒険者としての立場を取っていますが、ある意味自分の所属する国の危機に、気が急いてしまったのだと思います。」

「ほお・・・。」

「彼らが・・・。」


まずは事情聴取をしてから、改めて紹介するつもりではあったのだが、ついでに彼らの紹介も済ませてしまう。

・・・まぁ、本当は、先に紹介しておくべき事なのだろうが、これにも僕の思惑があったからな。

まぁ、見事なほどまんまと引っ掛かってくれたけどね。


「アーロスさん。事はそう簡単な話ではありませんよ?僕としても、当然戦争などなくなれば良いと思っていますが、残念ながら、様々な事情の上で今回の話に至ってしまっているのです。これは、ロンベリダム帝国側や“大地の裂け目(フォッサマグナ)”側、その他、様々な勢力の思惑が介在した結果ですね。もちろん、それに巻き込まれてしまった、それこそ何も知らない一般人の方々の事を思うと胸が痛みますが、下手な正義感だけで『ブルーム同盟(我々)』も簡単に介入出来ないのです。当然ですが、それをするという事は、この場にいる方々の国すら巻き込む話になりますからね。それとも、自国の事は度外視して、他国の為に奉仕しろ、とでも?」

「うっ・・・!!!」

「もちろん、()()でそれをする事は止めはしませんが、責任の伴う立場である方々にそれをさせるのは酷というものでしょう。」

「申し訳ありません、皆さん。話を中断させてしまいました。彼には、私の方から注意しておきますので・・・。」


僕の追い討ちに、ティアさんがそう謝罪して、何とかその場を取り繕う。

まぁ、多少厳しい事を言ったが、一応、この場にいる方々の手前、咎めない訳にもいかないからね。


「いえ、それには及びませんよ、ティアさん。彼が素晴らしい精神をお持ちである事は、この場の全員が共通して認識していますから。・・・ですが、彼の発言も分からないではありません。」

「・・・と、言うと?」


しかし、ここで一転して、僕はアーロスくんの発言をフォローする様な発言を繰り出した。

もちろん、彼を庇うつもりではなく、話の流れ的に都合が良かったからであるが・・・。


「何故ならば、先程も述べた通り、現時点では遠く離れた異国の地での出来事ですが、ハレシオン大陸(この大陸)が一繋ぎで繋がっている以上、何時こちら側にまで飛び火してくるか分からないからです。それに当然ですが、戦争状態が長引けば、()()()()()()も出てくるでしょうからね。」

「ふぅ~む・・・?」


僕の発言に、グレンさんを含めて、他の方々も、分かった様な分からない様な表情を浮かべていた。

唯一、ティアさん、そしてヴィーシャさんは何となく理解出来た様だけどね。

まぁ、これに関しては、情報技術に乏しいこの世界(アクエラ)では実感がわきにくいと思うが、当たり前の話として、()()()()()()()()()のだ。

これは、物理的な話だけでなく、経済的な分野でも同様である。


例えば、向こうの世界(地球)における事例として、何処かの国が政情不安になるとか内乱が起こったとして、あるいは経済的な失敗や資源の産出量の激減などの要因によって下手を打つと、当然ながらその国と取引のある他国や企業が、経済的な打撃をモロに受ける事がままある。

それは、回り回って、直接的な取引のない国や企業にとっても、もちろん、その損害の大小はあるだろうが、やはり影響してくるものなのである。


実際、向こうの世界(地球)における大国に端を発した世界恐慌の流れから、第二次世界大戦へと雪崩れ込んだ歴史がある。

これは、一国の経済が打撃を受けた事によって、それが世界全体へと波及した代表的なケースであり、後にその事を教訓に、世界各国は互いに共倒れする事を防ぐ意味でも経済分野における協力関係を強化してきた歴史があった。

経済分野で転ぶと、争乱のもととなる。

これは、今や向こうの世界(地球)の世界各国の共通認識であろう。


当然ながら、それがそのまま今回のロンベリダム帝国の件に直結する訳ではないが、ロンベリダム帝国がハレシオン大陸(この大陸)有数の大国かつ強国である事は周知の事実であり、ロンベリダム帝国が“大地の裂け目(フォッサマグナ)”勢力と戦争をする事によって、その影響がこちら側にまで波及する恐れがある。

少なくとも、経済的な影響がこちら側にまで出てくるのはまず間違いないだろう。


「それ故に、自国の経済を守る意味でも、我々はこの戦争に介入するべきなのです。もちろん、戦争に参加する訳ではありませんし、場合によっては内政干渉に当たる可能性も高いので、表向き『ブルーム同盟』としては、外交ルートを通じてそうした懸念を公式に伝えるのがせいぜいですけどね。」

「ふむ・・・。」

「なるほど・・・。」


この件が他人事ではない事を、僕の説明でこの場の皆さんは理解してくれた様だ。

その顔には、納得の表情が浮かんでいた。


「ですが、アキト様。それだけでは弱いのではないですか?『ブルーム同盟』からロンベリダム帝国へと声明文を発表したとしても、今現在の『ブルーム同盟(我々)』の影響力では、軽く無視されて終わりだと思われますけれど・・・。」


しかし、それにディアーナさんが待ったを掛ける。


「ディアーナさんの仰る通り、“戦争を止めて下さい”と呼び掛けたところで、聞き入れられないのも想定出来ます。先程も申し上げた通り、中には慎重派もいるでしょうが、一度戦争に向かってしまっている以上、その流れを覆すのは困難ですからね。故に、一番効果的な手法は、『ブルーム同盟(我々)』が武力介入する事ですが・・・。」

「なっ・・・!?」

「それはっ・・・流石に・・・。」


それでは、先程否定したアーロスくんの発言を肯定する事になるという矛盾が生じてしまう。

もちろん、それが分かった上で僕も発言しているが、ダグラスさんやジュリアンさんも、難色も示していた。


「ええ、もちろんこれは選択出来ません。先程申し上げた通り、そこまで行ってしまうと、いよいよ持って各々の国をも巻き込んでしまいますからね。ですが、僕達()()ならば、話は別です。」

「「「「「「「「「「あっ・・・!」」」」」」」」」」


僕の発言の意図を察したのか、皆さんの表情に理解の色が浮かんでいた。


「先程も申し上げましたが、()()が何をしようとも、それはその人の自由であり、自己責任でもあります。幸い、僕達は表向きは『ブルーム同盟』からは独立した組織ですから、と言うかただの冒険者パーティーに過ぎませんから、この件に介入したとしても、少なくとも『ブルーム同盟』の責任にはなりません。まぁ、ある種の詭弁ではありますが、実際、僕らは『ブルーム同盟』には席を置いていませんしね。」

「確かに・・・。」


そうなのだ。

こういう事もあるかと思って、僕は前身である『リベラシオン同盟』から『ブルーム同盟』に移行したタイミングで、『ブルーム同盟』からは独立を果たしていた。

もっとも、先程から述べている通り、外部協力者としての立場を取ってはいるので全く無関係ではないのだが、言ってしまえば金で雇われている傭兵集団であるとも言えるのである。


故に、その組織が今回の件に介入したとしても、ロンベリダム帝国側が『ブルーム同盟』に抗議したところで、知らぬ存ぜぬを貫く事も出来るのである。

まぁ、さっきも言ったが、これはある種の詭弁ではあるが、相手が相手だけに、バカ正直に真っ正面から突っ込むのはあまり利口ではないからね。


「・・・つまり纏めると、『ブルーム同盟(我々)』からはロンベリダム帝国に対して公式に戦争の即時停止を求めた声明文を発表すると同時に、アキトくん達は別に動く、という事だね?」

「ええ、その通りです。まぁ、色々と()()するにしても時間がないので、本格的な戦争が巻き起こる前に、どうにかしてそれを防ぐのが関の山だとは思いますがね・・・。もっとも、こちらの皆さんの協力があれば、また話は変わりますが、ね。」

「・・・えっ!?わ、私達ですかっ!!??」


ここで急にティアさん達に水を向ける僕。

それに彼女は驚いた表情を浮かべていた。

まぁ、彼女からしたら、寝耳に水だろうが、今回の件は無関係ではないからね。

もっとも、彼女達がもうロンベリダム帝国に関わりたくないと言うならば話は別だが、それは不可能な話だろう。

少なくとも、彼女達の仲間は、今もロンベリダム帝国にいる者達もいる様だしね。


「先程も申し上げましたが、彼女達はロンベリダム帝国の縁者であり、彼の国では『神の代行者(アバター)』として有名ですし、その影響力はかなりのものだと考えられます。しかも、こちらの彼は、先程僕らに対して抗議をしたほどの正義感の持ち主だ。きっと、この件も放ってはおけない事でしょう。」

「えっ!?お、俺っ・・・!!??」


それに、ここで先程のアーロスくんの不用意な発言が意味を持ってくる。


こんな場で発言してしまった以上、それが彼らの基本姿勢であると肯定している様なものなのだ。

先程の例だと、


“アンタらなら戦争を止められるんだろ?止めてくれよっ!”


と、言ったのと同義であり、こちら側も武力介入は不可能ではあるが、声明文を発表する、という代替案でそれに答えている。


それに対して、


“では、あなた方もこちらに協力して下さい。”

“え?それとこれとは話が別ですよね?”


とはならない。

自分達だけ要求して、それに対する対価を支払わないなど、一般的な場所ではそれでうやむやにする事も出来るかもしれないが、少なくともこの場ではそれは通らない話なのである。


先程そうした発言をしてしまった事はこの場の全員が把握しているので、この場での退路はすでに断たれている訳だ。


言葉ってのは、時として自分達の立場を危うくしたり、不都合な事を招いてしまったりするので、実際に発言する際にはもう少し考えてから言葉にした方が良いだろう。

実際、それで下手を打った政治家や有名人など、それこそごまんといるのだから。


「まぁ、いずれにせよ、彼らにはロンベリダム帝国に仲間がいるそうなので、一度は戻られる事はでしょう。そのついでに、『ブルーム同盟』とロンベリダム帝国とを繋いで頂けるだけでも結構ですよ?それは出来ますよね?」

「え、ええ。それくらいなら・・・。」


まぁ、僕の都合としては、『縁切り(縁斬り)』もしなければならないし、ロンベリダム帝国を内側から掻き回す為にも彼ら『異世界人(地球人)』達を巻き込むつもり満々だが、そんな思惑は表には出さず、そんなもっともな譲歩案を提案する。

これも、『ブルーム同盟』にとっては重要な事だからね。

僕の譲歩案には、ティアさんも頷いた。


「では、『神の代行者(アバター)』の皆さんは『ブルーム同盟』からの使者と共に、ロンベリダム帝国へと向かってくださると言う事で。皆さん、異論はありませんか?」

「「「「「「「「「「・・・。」」」」」」」」」」


また何か言って、下手を打つのを躊躇ったのか、ティアさん達からも言葉はなかった。

しかし、今度の場合は沈黙は肯定である。


僕は、『ブルーム同盟』の本来の纏め役であるダールトンさんに密かに目配せをした。


「では、『ブルーム同盟』としては、ロンベリダム帝国への使者の派遣と、こちら側の意志の伝達をするものとします。『神の代行者(アバター)』の皆さんには、その件の仲介にご協力頂けるという事ですので、どうぞよろしくお願いいたします。日時や人選は、早急に取り決めたいところですが、何時になるかは不透明ですから、皆さんにはしばしこちらにご滞在頂いて、日程が決まり次第、ご一緒に出発して頂きたいのですが?」

「え、ええ。分かりました。」

「ああ、ちなみに、先に確認しておきますが、ご滞在頂く上での費用や道程の費用はこちら持ちですのであしからず。それに加えて、これはある意味依頼の様なものですので、名目としては協力費としてではありますが、依頼料を支払う用意もあります。それについては、落ち着いたら金額を提示して頂ければ、言い値で支払いますよ?」

「わ、分かりました。そちらに関しては、我々も相場が良く分かっていませんので、後で改めて請求させて頂きたいのですが・・・。」

「ええ、それで結構ですよ。他には何かありますか?」

「う、う~ん、そうですね・・・。いえ、今のところは特に思い付きません。」

「そうですか。まぁ、何かあれば、その都度仰って頂ければ、対応させて頂きますので、遠慮なく仰ってくださいね。」

「わ、分かりました、ありがとうございます。」


その意図を察してか、ダールトンさんは事務的な詰めの確認をしていた。

流石に、ここら辺は、僕とも長い付き合いである為か、心得たものである。


「と、まぁ、こんなところですかね?」


ダールトンさんがそう呟いて、周囲を見回した。

それに、皆さんは無言で頷いた。


「では、会合はこれにて解散とします。お疲れ様でした。」


それにダールトンさんも頷くと、そう締め括って、この会議の終了を告げたのだったーーー。





















以前は、ティアさん達の意思を尊重すると言っていた僕ではあるが、今回は半ば強引にこの件に協力させている。

まぁ、それに関しては、アーロスくんの不用意な発言もあったので比較的スムーズに事を運べたが、そうでなくとも彼らを半強制的にこの件に巻き込むつもりだったのである。


何故ならこれは、こちらとしての()()が多少変わってしまったからなのだが、それを説明する為には、再びシュプールでの出来事を思い出す必要があったーーー。



誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。


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