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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
幕間 短編二編
183/383

こぼれ話

続きです。


今回は、ちょっとした短編です。

次回から、いよいよ新章に突入します。



◇◆◇



 アラニグラ達の打ち合わせ



「忙しいところすまない、ニナさん達。少しいいかい?」

「あれ、アラニグラ様。それにサイファス様も・・・。どうかされたんですか?」

「ああ、ちょっとな。とりあえず、一旦手を止めて、皆アラニグラ殿の話を聞いてくれないか?」

「「「「「はぁ・・・?」」」」」


場面は少しさかのぼり、冒険者ギルドの調理場にて。

サイファスの従者、兼今回のダルケネス料理を調理する為にサイファスに随伴してきたアルカード家の家人、兼シェフであるニナ達を、アラニグラとサイファスが訪ねていた。


「いきなりで悪いんだが・・・、少し料理の()()()()を変更して貰いたいんだ。」

「ええっ!?そ、そんな急にっ・・・!もう、仕込みも済んでいるんですよっ!!!???」

「あ、いや、もちろんメニューを変更してくれって訳じゃない。それに、おそらくそこまで難しい事じゃない筈だ。何せ、俺が注文しているのは、料理の()()()の話だからな。」

「・・・???・・・どういう事ですか?」

「ああ、それはな・・・。」


アラニグラがそんな事を急遽言い始めたのは、ダメ元で呼んだマルコが、本当に現場に現れた事への対応の為であった。



アラニグラこと本名橘恭平(たちばなきょうへい)は、元の世界(地球)では優秀な営業マンであった事はすでに述べた通りだが、とは言え、彼は普通の一般的な家庭の出であり、こちらの世界(アクエラ)の貴族の様な、所謂“上流階級”の出身者ではなかった。

それ故に、もちろん営業マンとして一般的なビジネスマナーは学んだし、高級なレストランにて顧客(クライアント)やビジネス関係の人々と会食、あるいは接待などをする機会はあったものの、やはりその根底には何処までも庶民の感覚は抜けきっていないのが実情であった。


今回の協議、兼会食にしても、当初はダルケネス料理を含めたダルケネス文化を発信する事が狙いではあったが、流石のアラニグラもその提供方法にまでは頭が回らなかったのである。

故に、当初の予定では、もちろん個別に分けてはいるが、料理を一気に出す方式(最初にセッティングしておいて、食べ終わった皿を順次下げる方式)を考えていた訳であった。

しかし、そこへマルコが現れてしまった為、予定の変更を見直したのである。


パリスはともかくとしても、貴族の、それも領主であるマルコに、そんな提供方法で良いのかとアラニグラは考えた訳だ。

もちろん、こちらの世界(アクエラ)でも、アラニグラが想定していた方式は一般的だし、それなりのレストランでも行われている提供方法であるが、それはあくまで平民に限定された話であるからだ。

この世界(アクエラ)の貴族などの特権階級の者達の食事は、まさに超が付く高級レストラン同様に、一人一人に給仕が付き、最初から食事がセッティングされているのではなく、食事をする者のタイミングを見計らって、食事を出す、引っ込めるという段取りが普通なのであった。


アラニグラがその事を知っていた訳ではないが、やはり貴族ともなると特別な所作や段取りくらいはあるだろうと、彼が知っている料理の中で一番それっぽい知識を参考に、急遽“提供方法”の変更を言い出した訳であった。


ここら辺は、やはり見栄や面子の問題もあった。

せっかくダルケネス料理を宣伝するのだから、それも美食家としても有名なマルコがわざわざ足を運んでくれたのだから、なるべくなら良い印象を持って貰いたいとアラニグラは考えた訳だ。

故に、より良い演出の一環として、そうした提供方法を提案した訳である。



「なるほど・・・。それならば、確かに献立の変更はしなくても対応出来そうですが・・・、なんだか、貴族の方々は色々と面倒なんですねぇ~。色々と気を遣わないとなりませんし・・・。」


一通りアラニグラの説明が終わると、納得した様にニナがそう頷いた。

ついでに、彼女自身の率直な感想も漏れていたが。


「はははは。それについては俺も同感だよ、ニナさん。けど、それが彼らにとって重要ならば、理解出来なくとも、こちらもそちらの歩調に合わせてやる必要もあるんだよ。」

「・・・なるほど、確かに。」


これは、アラニグラ自身の元・営業マンとしての心得であった。


「ああ、それと言い忘れたけど、盛り付けも一工夫して欲しいんだ。まぁ、見栄えを良くする程度でいいんだけどさ。」

「・・・ふむ、了解ですわ。」

「ふむふむ。」


アラニグラの言葉に、サイファスはしきりに頷いていた。

ダルケネス族の族長として、ダルケネス族の代表者としては、そうしたアラニグラの心構えは大いに参考になるからであった。


「っと、そんなところかな?ってな訳だから、すまないが後はよろしく頼むよ。俺達も、そろそろ向こうに顔を出さなければならないからさ。」

「そうだな。大分先方をお待たせしているからな。」

「かしこまりました。お任せ下さい。」


一通りの確認が済むと、アラニグラとサイファスは慌ただしく協議会場へと戻る。

ニナがそれを見送ると、調理場も再び慌ただしく動き始めるのだった。



規模の大きい小さい、質や種類の違いは存在すれど、こうしたイベント事には、段取りや綿密な打ち合わせが必要不可欠である。

それによって、滞りなく事を進められるからである。


そして、イベント事には、当日になっての変更なんかも意外と多いモノだ。

それに素早く、臨機応変に対応出来てこそ、イベントの成否が決まると言っても過言ではないのである。


結果として、新たな問題が起こったとは言え、イベントの進行やダルケネス料理自体は、提供方法も含めて概ね好評だった事は、ここで語るまでもないだろうーーー。



◇◆◇



 そういえば、あの話はどうなったの?



「アイシャさん。ちょっといいかな?」

「ん~?なぁにぃ~、アキトぉ~?」


時は、アキト達がティアらと邂逅する少し前。

ヴィーシャの訓練の為に、シュプールに滞在していた時の話である。


以前にも言及した通り、ヴィーシャの訓練はアイシャ達に任せており、アキトはアキトで、そのサポートという名の雑用や様々な調()()()()などをして過ごしていた訳だが、そういえば、とふと思い出して、こうしてアイシャを訪ねていた、という流れであった。


「いやね、ヴィーシャさんが新たに僕らのパーティーに加わった事でふと思い出したんだけどさ、鬼人族の、他の部族の人達のアイシャさんと同じ様な使()()を持っている人達ってどうなったのかなぁ~、って思ってさ。少なくとも、僕が知る限り、そうした人達が訪ねて来た事ってないじゃない?」

「なぁにぃ~?アキトは、私達だけじゃ満足出来ないのぉ~?新しい女をご所望ですかぁ~?」

「なっ・・・!」

「にぃっ・・・!」

「・・・“英雄色ヲ好ム”ト申シマスガ、オ父様モ、所詮ハ男、トイウ事デスネ・・・。」(蔑んだ目)

「なんやなんや、面白そうな話やなぁ~。」(ニヤニヤ)

「いやいや、そういう話じゃないんですけど・・・。」( ̄▽ ̄;)


アイシャに聞いた筈が、聞くともなしに一緒に聞いていたティーネ達にあっという間に取り囲まれてしまうアキト。

まぁ、彼女達はアキトを慕っている訳だから、そうした新たなるライバルの出現しそうな話には敏感になったとしても不思議はないのである。


「・・・なぁ~んてね!冗談だよ、アキト。えっと、ヤクシャ族とラクシャサ族の代表者の件だったよね?」

「そ、そうそうっ!」

「いやいや、こちらは冗談じゃ済まないのですがっ・・・!?」(ゴゴゴゴゴッ)

「どっちにしろ、他の女の話って事でしょっ!?」(ゴゴゴゴゴッ)

「ツマリ、オ父様ノ新タナル嫁候補ノ話デスヨネ?」(確認)

「なんやぁ~、旦那はんもお盛んなんやなぁ~。」(ニヤニヤ)

「えっと・・・、まず、皆僕の話を聞いて貰ってもいい?」( ̄▽ ̄;)



アイシャがアキトと合流した経緯は以前にも言及した通りであるが、改めて説明すると、鬼人族の歴史的背景と、それによって生じた問題を解決する為であった。

具体的には、人間族を見限った鬼人族が、彼らとの交流を絶ち、部族単位で人里離れた山などに引きこもった事によって、鬼人族は、“血が濃くなり過ぎてしまった”のである。


ここら辺は、遺伝に関連する話であるが、近しい血族同士で婚姻を結んでいると、生まれてくる子供達に何らかの障害が発生してしまうリスクがあるのだ。

向こうの世界(地球)でも、実際にハプスブルク家などにそうした事例が報告されている。

この様に、“血が濃くなり過ぎてしまう”という事は、種として見た場合、非常に危険なリスクを孕んでいるのである。


その事を本能的に察した鬼人族らは、引きこもるのを止め、今現在では外の世界と交流を持つ様になっていた。

少なくとも、アスラ族、ヤクシャ族、ラクシャサ族といった鬼人族の部族同士が交流を持ち、部族外との婚姻を結ぶ事によって、とりあえずのそうした危機は脱していたのである。


だが、それでも問題が根本的に解決した訳ではない。

そもそも、鬼人族は少数部族であるから、その絶対数が多くはないのだ。

つまり、また新たな部族を見つけない限り、そうした血の問題は再び持ち上がる懸念があったのである。


そこで、鬼人族らはもう一歩踏み込んで、鬼人族以外の血を引き入れる事を考えた訳である。

具体的には、人間族の血を引き入れる事であった。


もっとも、基本的スペックにおいては、鬼人族は人間族を軽く凌駕しており、鬼人族と対等に渡り合える人物は、人間族にはそう多くない。

それに、アキトの研究によれば、単純な異種族間の婚姻だけでは、子供が虚弱体質であったり、短命である問題点があり、それをクリア出来るのは、レベル300以上の人間族のみ、冒険者で換算すると、上級冒険者以上の実力者達に限定されてしまうのであった。


まぁ、当初は鬼人族はそんな事は知らなかったし、この人間族との異種族間婚姻にはそもそも慎重であり、山の神であるエキドラスの情報、と言うか御墨付きである『英雄の因子』の所持者であるアキトの情報を入手して、とりあえずの第一歩として、アキトとの婚姻を画策する程度であったのである。

その末で派遣されたのがアイシャであった。


が、それだと、アスラ族はともかく、ヤクシャ族、ラクシャサ族は英雄の血(他種族の血)を引き入れる事が出来ないので、その後、アイシャと同じ様な立場の人物が派遣されてくる事が予測された、と言うか、アイシャからそんな話を聞いていたアキトなのであるが・・・。



「なるほどぉ~、そういう話かいな。まぁ、現在の他種族の間では、種の存続は大きな課題やからなぁ~。」

「ソウデスネ。オ父様ホドノ存在デアレバ、ソノ遺伝子ヲ求メテ、女達ガ群ガルノモ道理デスカラネ。」(納得)

「うぅ~。理屈は理解出来ますけどぉ~!」

「それと感情は別物だもんねぇ~!で、アイシャちゃん。その女達はいつ現れるのかな?」

「ん~と、来ないよ?」

「「「「「・・・はっ???」」」」」


あっけらかんと答えるアイシャ。

それに、アキト達は目を丸くして驚いていた。


「えっ、いや、来ないの?じゃあ、ヤクシャ族とラクシャサ族はどうするつもりなんですか???」


それでは、結局元の木阿弥である。

アキトが驚くのも無理はない。


「いやいや、まず落ち着いて、アキト。ってか、やっぱり新しい女を期待してたんじゃないのぉ~?でなきゃ、アキトがこんな簡単な答えに辿り着かない筈がないよねぇ~?」

「そ、そんな事はありませんよっ!僕は、皆が居てくれるだけで十分幸せですしっ!!って、あっ・・・。」

「へぇ~・・・。」(ニヤニヤ)

「あ、主様(あるじさま)っ・・・!そ、その、嬉しい、です。」///

「もう、ダーリン。そういう事はもっと言って欲しいなぁ~!」///

「おお、ホンマかいな。いやぁ~、何やテレるなぁ~!」(ニヤニヤ)

「オ父様ハ“ツンデレ”、ット・・・。」(メモメモ)

「っ~~~!!!そ、それで、一体どういう事なんですかっ!?」

ー誤魔化したな・・・。ー

ー誤魔化しましたね・・・。ー

ー誤魔化したねぇ~・・・。ー

ー誤魔化シマシタネ・・・。ー

ー誤魔化し方、下手すぎやろ・・・。ー


アキトの心情を見透かしていたアイシャ達は、皆一致してそう考えていた。

だが、このままでは話が進まないので、彼女達はそれをスルーする事とした。

なんだかんだで、あまり思いを口にしないアキトの本心が聞けたので、それで今は納得する事としたのである。


「で、何の話だったっけ?」

「いや、だから、ヤクシャ族とラクシャサ族の事ですよっ!」

「ああ、そうそう。確かに、当初はヤクシャ族もラクシャサ族も、アキトの番となる代表者を派遣させる予定だったんだよね。もちろん、まずは私が英雄、アキトの所在を確認してからって事だったんだけど。流石に、大勢で押し掛けたら迷惑だって事もあったし、ヤクシャ族やラクシャサ族に情報が伝わるのも遅かったからさ。」

「ふむ、まぁ、道理やな。そもそも、この世界(アクエラ)では尋ね人を探し出すのも一苦労やろうしな。」

「そこは山の神・エキドラス様からの情報があったから、私達はそんなに苦労しないでアキトに会えたんだけどねぇ~。」

「そうでしたねぇ~。」

「しかし、それならば、アイシャさんが主様(あるじさま)と合流してから間もなく、そのヤクシャ族やラクシャサ族の方々も合流したとしてもおかしくないと思うのですが・・・。」

「そうだよねぇ~?ボクも、ダーリンと知り合った時には、アイシャちゃんとティーネさんしか側にいなかったし。あ、ジーク達もそうなんだけどさ。」

「それは、私が()()()報告しなかったんだよ。アキトは、当時まだ6歳くらいだったし、まぁ、その当時から特別な存在ではあったんだけど、そんな子供に私達の事情を押し付けるのはどうかと思ってさぁ~。だから、もう少し経ってから、って思っていたら、色々な事が重なっちゃったんだよねぇ~。」

「あぁ~、なるほど・・・。」


確かに、アイシャとアキトが初めて会った時は、アキトが6歳くらい、アイシャが14歳くらいであった。

アイシャはともかくとして、アキトはまだ第二次性徴を迎えてすらおらず、単純に子供を作れる身体ではなかったのである。

それ故に、アイシャはアキトの居場所を把握しながら、その所在をアスラ族にもヤクシャ族、ラクシャサ族にも報告しなかったのである。

アキトが成長するのを待ってから、改めて報告しても遅くないと考えたからである。


また、単純に、当時は情報を伝達する手段が乏しかった事もある。

レルフなどの、外の世界に出る鬼人族がいた一方で、長らく他の種族との交流を拒んできていた弊害で、手紙のやり取りをするだけでも、商人や冒険者など他の誰かに任せる事が出来ずに(つまり、その当時はノーレン山を訪れる様な人間族がいなかったのである)、自ら山に戻らないとならない状況だったのである。


ところが、そんな事をしていると、ティーネ達が現れ、その後フロレンツやニル、果てはハイドラスとのいざこざに発展。

アキトらは『リベラシオン同盟』を結成し、ロマリア王国を忙しく飛び回る事となった訳である。

それによって、アイシャも使命を忘れた訳ではなかったが、アキトの成長を待つのと同時に、アキトの負担を軽減する上でも、その話は本格的に後回しにする事を決めたのであった。


「で、そうこうする内に、アキトも身体的にも成長した訳だけど、今度は、まさしくとんでもないレベルの存在になっちゃったって訳。鬼人族は、基本的スペックは人間族を凌駕するけど、流石に“レベル500(カンスト)”に到達したアキトほどのスペックは持ってない。そんなところにノコノコやって来たとしても、今度は文字通り、アキトのお荷物になってしまう、って思った訳ね。だから、アキトがアスラ族の集落を訪れた時に、その話はなかった事にしてくれって、父さんとライ兄さんにお願いしといたんだよ。まぁ、最初は流石に納得してなかったけど、アキトの力比べを見て二人も考えを改めていたよ?」

「そんな事があったんですか・・・。」


普通の、特に人間族の男女であったなら、レベル差などはあまり関係ない話ではあるのだが、アキトは本人が望むと望まざるとに関わらず、様々な事に巻き込まれてしまう運命みたいなモノを持っている。

故に、そんな彼のもとに、ノコノコと鬼人族とは言え、一般的なレベルの使い手である女性が現れたとしても、それはハッキリ言って足手まといでしかないのである。

まぁ、ヴィーシャの様に鍛え上げる方法もあるにはあるが、そこまでの思いと覚悟が、そのヤクシャ族やラクシャサ族の女性にあるかは分からなかったので、結果としてアイシャやアスラ族としてはそういう方向で調整する事としたのであった。


それは、アキトの(チカラ)を間近で見た、アイシャの父であるローマンも、アイシャの兄であり、次期アスラ族族長であるラインハルトも納得済みであったのである。


「しかし、それやと、まぁ、話は分かるけども、根本的には解決してへんやんな?その、ヤクシャ族とラクシャサ族は、今後どないするつもりなんや?」


ヴィーシャは、アイシャの説明に納得しつつも、じゃあアスラ族はともかく、ヤクシャ族とラクシャサ族の血の問題はどうするのかと疑問を呈した。


「それも問題ないよぉ~、ヴィーシャさん。そもそも、言い方は悪いけど、アキトに私達が目を着けたのも、間違いなく強者である目算が高かったからなんだよ。」

「アア、“英雄”ノ肩書キデスネ?」(理解)

「そうそう。私達も、長らく他の種族とは交流が途絶えて久しかったけど、異種族間婚姻が難しい事は理解していたからね。だから、まず人間族の血を引き入れるにしても、エキドラス様が名指しされたアキトに絞ったって訳。だけど、アキトの研究によって、そもそも古来から言い伝えられていた人間族の強者とならば子孫を築く事が出来る、っていう伝承の()()()()情報も分かったから、ヤクシャ族とラクシャサ族にもそれを伝えて、その二部族はその方向からアプローチする事にしたって訳だよ。それに、結局同じ人間、まぁ、ここではアキトだけど、の血をアスラ族、ヤクシャ族、ラクシャサ族に引き入れたとしても、当分は良いけど、結局同じ問題に直面してしまうかもしれないし・・・。」

「・・・確かに。それならば、多種多様な血を引き入れた方が良いし、その為には様々な種族と交流した方が良い。そういう事ですか・・・。」

「そういう事。だから、ヤクシャ族とラクシャサ族の代表者がアキトのもとに現れなかった、って訳。納得した、アキト?・・・それとも、ガッカリしたかな?」


ニヤ~と笑うアイシャに、アキトはたじろいで早口で答える。


「い、いやいや、納得しましたともっ!と、とりあえず、僕の疑問は解決したので、僕はこれでっ・・・!」


ここにいると、やたらとからかわれそうだと思ったのか、アキトはそのままそそくさと足早に去っていくのだった。


残されたアイシャ達は、そのアキトの様子がおかしかったのか、誰ともなく笑い出すのだったーーー。





















「で、ホンマのところはどうなんや、アイシャはん?」


一通り笑い合った後、ヴィーシャはそんな言葉をアイシャに投げ掛けた。

確かに筋は通っているが、本当にそれだけかと疑問に思ったからである。


「本当も何も、今言った通りだよぉ~、ヴィーシャさん。」

「ほぉ~ん?」


ウチの考え過ぎかねぇ~、ヴィーシャは相槌を打つ。


「けど、まぁ、そうなる様に()()()()事は否定しないけどね?ライバルは少ない方が良いし。」

「っ!!!」


が、続くアイシャの言葉に、ヴィーシャも絶句した。


ヴィーシャが感じた様に、一見筋は通っているが、これは所謂“後付け”の理屈でもある。

だが、そこに表向き理論的な穴がないので、からかわれて慌てて逃げ出したアキトも後になって疑問に思ったとしても、それ以上突っ込めないのも計算済みであった。


基本、脳筋でのほほ~んとしている様に見えて、こと恋愛事においては、アイシャもアキトばりの権謀術数(屁理屈)に長けていたのだった。


ー流石ですね、アイシャさんっ!!!ー

ー怖ぁ~!・・・けど、頼もしい、かな?ー

ーフム、誰ニ似タノヤラ・・・。ー

ー案外、策士やなぁ~、アイシャはん。なるべく敵に回さんとこ・・・。ー


だがしかし、恋愛は戦争であるとも言われる様に、勝つ為にはあらゆる手段が肯定される。

ヤクシャ族やラクシャサ族には気の毒な事にではあるが(まぁ、そのフォローを忘れない辺り、アイシャの優しさがにじみ出ているが)、アイシャの仲間であり、アキトラバーズ(ヴィーシャはまだ曖昧ではあるが)の一員からしたら、他の女を寄せ付けない彼女の存在は頼もしい限りであったーーー。



誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。


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