発展を遂げるルダの街
続きです。
ロマリア王国の首都は王都・ヘドスであるが、今現在、一部ではそれに匹敵するほどの発展を遂げている街があった。
それがノヴェール家の管理する領地、トラクス領の一部、アキトとも縁深い旧・ルダ村、現・ルダの街であった。
(ちなみに、かつてのそこの領主であったフロレンツが対外的に名乗っていたのが“フロレンツ・フュルスト・フォン・トラクス”であるが、彼の本名は“フロレンツ・フォン・ノヴェール”である。
中々ややこしいが、つまり、“フロレンツ・フュルスト・フォン・トラクス”とは、“トラクス領領主のフロレンツ侯爵”みたいな社会的な名前であり、“フロレンツ・フォン・ノヴェール”が彼の戸籍上の名前なのである。
まぁ、もっとも、地名に由来する名がその者の家名になる事も特段珍しい事ではないし、向こうでも、“○○の社長さん”とか、“△△会社の~~さん”とか、ある種ニックネーム、通り名で呼ばれる事も珍しくないし、逆に本名の方が聞き馴染みがないなんて現象も起こり得る。
もちろん、これは国や文化によってもそれぞれ差異はあるのだが。)
今現在のトラクス領の領主は、フロレンツの息子であるジュリアンが継いでいるが、実質的にはその代官であったガスパールが引き続き運営していた。
もっとも、ガスパールももうそれなりの歳であるから、この後継者をどうするかと言う問題はあったが。
ならば、ジュリアンがやれば良いではないかと思われるかもしれないが、彼は実質的にはロマリア王国の元老院議員(国会議員)であり、一年のほとんどをヘドスで過ごす事が通例となっている。
故に、領地経営に関しては、やはり代官を立てる必要性があるのだ。
まぁ、ここら辺は、かつての向こうの世界でも似た様な事はあったが。
さて、そんなルダの街だが、ロマリア王国の上層部もそうだし、ガスパールの件も含めて、ここでも世代交代の波が訪れていたのである。
旧・ルダ村、現・ルダの街の村長→町長はダールトンが務めていたが、今現在では彼は引退し、リベラシオン同盟の盟主一本に仕事を絞っていた。
これはむしろ当然で、実質的な実働部隊はアキトやその仲間達が務めていたが(他にも、裏方としてヨーゼフなどの裏工作をする部隊も存在するが)、それでも執務や各方面への意見調整や交渉・折衝は盟主であるダールトンが矢面に立つ事が殆どだ。
むしろ、村長や町長を務めながら、盟主の仕事もこなしていたダールトンの非凡さがよく分かる事例であろう。
しかし、リベラシオン同盟も大きくなり、更には『パンデミック』からの復興によって、大きくなったルダの街をダールトン一人では流石に面倒見きれなくなったのである。
故に、そのルダの街の町長の職を息子・ハロルドに譲ったのであった。
ちなみに、ルダの街がこれ程の発展を遂げた要因として、ここでもアキトが一枚噛んでいた。
災害から復興するに当たって、様々な事に需要が高まりをみせる事はよくある話である。
その顕著な例が、土木関連や住宅関連であろう。
幸い、旧・ルダ村の『パンデミック』時には、アキトらの活躍によって人的被害は軽微で済んだが、やはり森林などを中心に、それなりに物的損害は出たのである。
それを受けて、ノヴェール家や旧・ルダ村の公的資金を注入し、財政支援政策を打ち出したのである。
その当時は、ノヴェール家もリベラシオン同盟とはまだ直接の面識はなかったが、トラクス領で一番の稼ぎ頭だった旧・ルダ村は、ノヴェール家にとっても重要な地だったのである。
仕事があれば人は集まる。
人が集まれば、更に人が集まる。
実際、ドニ一家やリサも、復興事業の噂を聞き付けて、仕事にありつく為にルダの街へやってきたくらいだ。
そこへ更に、復興と言う、ある種新しい事をするには適したタイミングで、幼馴染みとのやり取りから、かねてより考えていたロマリア王国の教育問題や冒険者ギルドの改革案の一歩へとアキトが着手していたのである。
と、言っても、実際に動いたのはドロテオやノヴェール家だ。
残念ながら、アキトはその頃にはロマリア王国中を駆け回っていたからである。
で、その内容と言うのが、冒険者志望の卵達に、ある程度の技能を教える事だった。
以前にも言及したかもしれないが、ロマリア王国(だけではないが)では、教育格差は深刻な問題だったのである。
一番顕著な例が、貴族と一般市民の格差だろう。
貴族達は、高度な教育や『魔法』と言う特殊な技術を学ぶ事が出来る一方で、一般市民はそうした事を受ける機会に恵まれていない。
もちろん、宮殿や貴族街で働く様な一般市民も存在するが、彼らは貴族に次ぐ高い教育を受けられる、平民の中でも“エリート”に分類される人々である。
大半の人々は、ライアド教が社会貢献の一部として解放している『教学』にて、簡単な読み・書き・計算が出来る様になる程度が関の山であった。
更には、先程の“エリート”云々は別としても、一般市民同士の間でもそうした格差は存在する。
例えば、冒険者を一例に挙げてみよう。
改めてだが、この世界はかなり危険な世界だ。
村や街の“外”では、モンスターや魔獣などの危険生物、盗賊団などの無法者が跳梁跋扈する世界だからである。
故に、一般市民であろうと、ある程度の“レベル”を持ち、戦う術を心得ているのが一般的である。
しかし、当然だが、この『戦闘技術』と言うモノも、技術である以上独学で会得出来るほど生易しいモノではない。
もちろん、中にはセンスに相当優れた者達も存在するが、それでも、ある程度のレベルで頭打ちになる事が大半だ。
考えてみれば当たり前の話で、向こうの世界におけるプロスポーツの選手なども、誰にも師事せずにプロの世界に行けるほど甘くはない。
もちろん、中にはそうした者達もいるかもしれないが、可能性としては極めて低いと言わざるを得ないだろう。
それと同様に、優れた冒険者らは、それぞれ独自に、戦闘技術その他諸々を師事する師匠や先生が存在する。
例えば、優秀な冒険者の下で学ぶとか、引退した冒険者、あるいは騎士団や憲兵などの指導を受ける者達もいるのである。
しかし、大半はそうした指導を受けずに冒険者に成ってしまう。
いや、成れてしまうのだ。
故に、相当にセンスに優れていない限りは、初級→中級、上級には上がれないし、場合によっては、大成する前にその命を散らしてしまうのである。
これが、冒険者間の教育格差であり、一部では深刻な問題となっていた。
もちろん、特に冒険者は所謂“自己責任”が一つのテーマとしてある。
故に、情報から始まって、事前準備、己の力量の認識、コストパフォーマンス、リスクマネージメント、交渉から折衝に至るまで、全て己で解決しなければならないのだ。
だが、それを教えてくれる人もいない。
いや、それこそ己が未熟だと思ったのならば、あるいは学びが必要だと感じたのならば、自分の師事すべき相手は自分で探せ、って事になるのだ。
何故ならば、冒険者ギルド側も、そこまで一人一人の冒険者に時間や予算を割いていられないからである。
だが、現実問題としては、これも選別方法としては悪くない。
使える人材とは、結局は己で工夫する人の事を指すからだ。
結果として、そうやってふるいにかけられて、現在生き残っている冒険者達が、冒険者ギルドとしては使える人材なのである。
アキトも、その考えに大きな異論はなかった。
この世界(だけではないが)では、最終的には己の判断が生死を分ける。
これに関しては、教えられてどうこう出来る問題ではないからである。
が、同時に、もったいないとも感じていたのだ。
先程も述べた通り、最終的には己で判断しなければならない事も多いが、それを理解する前にその命を散らす者達も多いからである。
失敗は、何も悪い事ばかりではない。
例えば、子供がところかわまず駆け回るのは普通に見られる光景だが、親は心配しておそらくこう言うだろう。
“危ないから走っちゃダメよ。”
それに対して、子供は、
“はぁ~い。”
と返事を返すだろうが、大半の場合はその忠告は無視される事になるだろう。
何故ならば、何が危ないのか理解出来ていないからだ。
これは、例え“転んだら怪我をするから”とか、“人にぶつかってしまって迷惑を掛ける事になるから”などと、理論的に懇切丁寧に教えたとしても、である。
これは、単純に経験値が圧倒的に足りていないからである。
具体的にどれぐらい痛いかは、実際に転んでみないと分からないし、ぶつかって怒られてみないと、自分が如何に人の迷惑になる行為をしているのかが分からない。
そうした数多くの失敗の経験を経て、人は成長していくモノなのだ。
そして、ある程度経験を積むと(成長すると)、そうした無鉄砲な一面は鳴りを潜める。
実際に経験しなくとも、ある程度の未来予測、“こういう事をするとこうしたリスクがある”と言う事が見えてくるモノなのである。
もちろん、全く見えない者達も存在するのだが。
さて、長々と説明してきたが、アキトが発案し、実際にはドロテオとノヴェール家が主導したのが、そうした点を踏まえた上での『冒険者訓練学校』の創設であった訳だーーー。
・・・
この世界の冒険者の需要は高い。
更には、そうした経験は他の職種にも応用が効く。
しかし、先程も述べた通り、大半の冒険者は大成する前に引退するかその命を散らしてしまうのだ。
これはある種仕方のない部分も存在するが、やはり貴重な人材が失われてしまうのはデメリットも大きい。
故に、未熟な冒険者を対象に、ある程度の戦闘技術や知識を教える事で、安定した人材の供給を狙った『冒険者訓練学校』の創設をアキトが提案し、ドロテオがまず実験的に自身の冒険者ギルド支部にて始めたのであった。
また、それに乗っかったノヴェール家が資金援助を申し出て、段々とその規模を大きくしていったのである。
ちなみに、アキトには上記の様な理由の他に、もう一つ狙いがあった。
それが、ライアド教の影響力を削ぐ事だった。
『教学』は確かに有用だが、同時に一つの懸念材料も存在する。
それは、まぁ、ある種当たり前の話だが、『教学』の存在はただの社会貢献などではなく、裏の狙いとしてライアド教信者の獲得の一手になっているからである。
教育が人々に与える影響は思いの外大きい。
当然、そこまで露骨なモノではないが、『教学』で学んでいると、少しずつ『ライアド教』に対して親しみを感じる様に刷り込まれるのである。
ある種の洗脳教育である。
しかし、これは特段珍しい事でもない。
宗教絡みでなくとも、向こうの世界でも反○○教育とか、親△△教育などが普通に行われていたりする。
幼い頃に刷り込まれたものは、大人になってもその人の人生に影響を与える。
こうした事によって、ライアド教を好意的に捉える人々を増やす事によって、ライアド教は『教学』を通して新たなる信者獲得の下地作りに勤しんでいるのである。
何を信じるかは個人の自由だ。
アキトも、その点に関しては異論はない。
しかし、それはある程度の判断力がある事が絶対条件だとも考えている。
その末で選んだ事ならば、それはその人の自由だからだ。
しかし、何が良いのか悪いのかも判断出来ない純粋無垢な子供を対象に、将来への布石を打つライアド教に対して、アキトは感心すると共にその恐ろしさも同時に感じていた。
それはすなわち、何が自由かも分からずに知らない内に自由を束縛されているからである。
そこからの脱却を狙っての、この『冒険者訓練学校』の創設であった。
もちろん、ライアド教に比べたらその影響力は微々たるモノだろうが、焼け石に水であろうと、何もしないよりかは大分マシだろうと考えていた訳である。
しかし、ここでアキトにとっても嬉しい誤算があった。
英雄の影響力が思いの外大きかったのである。
後は、単純に良い機会ともなったのだろう。
当然ながら、将来的な事を見据えた場合、総合的な事を学ぶよりも、より専門的で実用的な事を学んだ方が効率は良い。
『教学』に比べて、『冒険者訓練学校』は様々な事が実用的であった。
例えば、戦闘技術。
例えば、モンスターや魔獣の情報。
例えば、簡単な応急処置や薬学に関する知識などなど。
こうした事は、特に一般市民としてはむしろ積極的に学びたい事だろう。
何故ならば、例えば『教学』にて一生懸命に学んで頭角を現したとしても、所謂『文官(役人)』への道は一般市民にはハードルが高いからだ。
ダールトンはその中でも成功した例と言えるが、彼ほどの才覚を持ってしても、一地方の、しかも地方自治体の長が限度であった。
ここら辺は、やはり貴族の存在が大きいのである。
国を動かす様な要職には、ロマリア王国では貴族が就くのが一般的であり、平民・一般市民がそこに成り代わるのはほぼ不可能に近い。
ここら辺は、所謂“慣習”などもあるので詳細は割愛するが、それにマルクからティオネロに政権が移行した事で少しずつ変化が起こっているので、将来的にはそうした事にも変革が訪れるかもしれないが、しかし、今現在ではほぼ不可能なのであるならば、わざわざ失敗の見えているところに飛び込んで行くよりかは、まだ可能性が高い方を選ぶのが人の心理というモノだろう。
この世界の分かりやすい実力社会は、やはり冒険者が代表されるだろう。
もちろん、騎士団や憲兵、あるいは商人などもその傾向にあるが、こちらはもっと繊細だ。
腕っぷしだけでなく事務方の仕事も同時にこなせなければならないし、政治的思惑や市場や経済にも敏感でなければならない。
更には、人間関係も複雑になるし、交渉、折衝、騙し合い、化かし合いはある種日常茶飯事だ。
もちろん、特に上位の冒険者ともなるとそうした術にも長ける様になるが、単純に一番成り上がれる可能性が高いのが冒険者なのである。
もちろん、一言に冒険者と言っても、その種類は千差万別である。
以前にも言及したが、例えば魔獣やモンスターを狩る事に特化した『狩人系』や、指名手配された犯罪者や犯罪組織(盗賊団など)を追い掛ける『賞金稼ぎ系』、『デクストラ』の様な護衛などを請け負う事に特化した『傭兵系』、遺跡や遺産を捜索する『探索者系』など色々だ。
そのどれもが、一攫千金の機会がある訳なので一概にどれが良いとは言えないが、実力さえあれば、おおよそ一般市民ではあまりお目にかかれないほどの大金を手にする事が可能だ。
しかも、冒険者は誰にでも(もちろん、犯罪者はダメだが)成る事が可能だ。
そうしたハードルの低さから、一攫千金や成り上がりを夢見て、冒険者となる者達は後を絶たないのである。
しかし、先程も述べた通り、大成する前に命を落とす者達も多い。
そこへ来て、その可能性をグッと下げる、どころか、もしかしたらスムーズに中級、上級へと進めるかもしれない『冒険者訓練学校』があったとしたら、賢しい者達ならば飛び付かない筈がないのである。
こんな事もあって、復興を契機に集まった各種職人もそうだが、“教育”や“学び”が一つのテーマとなって、徐々にルダの街は発展していった訳である。
一部では、“知識を得たいのならばルダの街へ行くべし。”と言われている程である。
こうして、ルダの街は、一部では王都・ヘドスすら凌ぐ“学問の街”へと形を変えつつあったのだったーーー。
◇◆◇
「勝手に飛び出すなよなぁ~、レイナード・・・。」
「フォローするこっちの身にもなってよねっ!」
「わりぃわりぃ。けど、コイツらが危なかったからよぉ~。」
クロとヤミ、レイナード、その後ろにオックス、ラッセルが距離を置いて対峙する後方から、若い少年と少女がそんな言葉を交わしながら姿を現した。
レイナードも、以前に比べたら背丈も伸びてガッシリとした体格になってはいたが、そこはそれ、向こうの世界で言えばまだ高校生くらいの年頃であるから、少年特有の線の細さは否めない。
しかし、そのレイナードとは対照的に、もう一人の少年は背丈もレイナードより一回り大きく、筋肉隆々のガチムチ系の体格をしていた。
向こうの世界で言えば、アメフトやラグビーなどの選手の体格に酷似しているかもしれない。
「「て、テオさんっ・・・!?」」
「うん、大丈夫か、二人とも?」
「「は、はいっ!!」」
そう、何を隠そう、彼はあのかつては肉好きのポッチャリした体型だった、アキトの幼馴染みのテオであった。
性格は以前と変わらず優しげで、正に“気は優しくて力持ち”を絵に描いた様な人物であり、オックスとラッセルの信頼も厚かった。
そして、もう一人の少女。
スラリとしたプロポーションに、活発そうな印象の美少女だ。
「オックスもラッセルもここに来ちゃダメって言ったじゃんっ!」
「「す、すいません・・・。」」
「ま、でも、怪我がないなら何よりだね。今度から気を付けてね?」
「「は、はいっ・・・!」」///
彼女がニッコリと微笑むと、オックスとラッセルはテレた様に顔を赤らめる。
彼女は、アキトの幼馴染みで、快活元気少女のバネッサであった。
こちらも、以前からその傾向にあったが、見る者を明るい気持ちにする(一部では邪な気持ち)美しい女性へと成長していた。
どうやら、アキトの幼馴染み達は、そのタイプは様々だが、美男美女軍団であった様だ。
まぁ、幼い頃からその傾向にはあったのだが。
「おい、和んでいるトコ申し訳ないけどよ、この状況を忘れんじゃねぇ~よ。」
緊張感を持って睨み合っているクロとヤミ、レイナードを尻目に、そんなノンキな会話を交わしているテオ達にレイナードがそう警告した。
今現在のレイナード達は、『掃除人』襲撃事件を経験し、その時に敗れた悔しさをバネに(まぁ、そもそもプロの殺し屋と多少なりとも善戦していただけ子供としては十分過ぎる力を有していたが)ユストゥスを中心としたアキトらの指導を受けた結果、先程のやり取りからも分かる通り、クロとヤミとすら渡り合えるほどの猛者に成長している。
残念ながら、彼らの実績や経歴では一足飛びにS級冒険者には成れないが(ここら辺は、冒険者ギルドの定義する選考基準の問題がある為だ)、実力はそれに引けを取らない実力者集団であった。
しかし、それほどの実力者とは言え、モンスターや魔獣種はやはり脅威だ。
何故ならば、そうした生物は、人間種とは別の強みが存在するからだ。
具体的には、『白狼』の場合は、その瞬発力と持久力、そして高い連携攻撃が大きな脅威となる。
今現在ではアキトに次ぐ実力者となっているユストゥス達でさえ、かつてはクロとヤミのその強みに圧倒された経験がある。
その域にまでは流石に到達していないレイナード達が、油断して良い相手では決してなかった。
しかし、
「いや、大丈夫だよ。彼らにこちらを傷付ける意図はない。『シュプール』に近付けたくないだけさ。」
テオはさもありなんと答えた。
「・・・へっ?な、なんでそんな事が分かるんだっ!?」
「あれ?レイナードは聞いた事ねぇ~の?彼らはアキトの弟分だよ。今現在は『魔獣の森』を統括する『黒双王』として有名だけど・・・。」
「そ、そうなのっ!?」
「まぁ、レイナードは己を鍛える事に夢中だったからなぁ~。」
「どっちかと言うと、見た目的にはテオがそのタイプっぽいけど、実際に“脳筋”なのはレイナードの方だもんね~。そういえば、アイシャ御姉様とも馬が合っていたよねぇ~。」
「お、おいっ、人をバカみてぇ~に言うなっ!」
確かに、見た目的にはテオはガチムチ系の“脳筋”に見えなくもないが、実際の彼は頭を使った戦略を得意としている頭脳派であった。
もとより狩人志望として、モンスターや魔獣の生態に関する知識に詳しかったし、数々の罠を考案してはアキトに相談していた実績もある。
それが、ユストゥスらとの指導を受けて更に磨かれていったのである。
その一方のレイナードは、元々剣術の才能もあったのだが、自身のセンスや感覚で物事を捉えてしまえる所謂天才タイプで、ここら辺はバネッサもその傾向にあるのだが、それ故頭は決して悪くはないのだが、どちらかと言うと理論よりも自身の感性で突っ走ってしまう傾向にあった。
今現在は、割とクレバーに立ち回れる様になってはいるが、そうした意味では頭脳派のテオに比べたら知識量は劣っていた。
もちろん、ユストゥスらの指導を受けているので、並大抵の冒険者には負けないのであるが。
ギャーギャーと騒ぐレイナードを尻目に、テオは一歩前に出て、クロとヤミに自分達は争う意図はない事をアピールする。
それだけでも高い知性を持つ、特にアキトと共に育った影響で人間族にも引けを取らない頭脳を持つ二匹にはある程度伝わったのだが、
「(仲間が大変失礼しました、『偉大なる白狼の黒双王』よ。初めまして、私はテオ・ドレーヌと申します。)」
「「っ!?」」
「「「「っ!!!??」」」」
更に驚くべき事に、テオは『白狼』の言語を操ってみせたのだったーーー。
誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。
ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。是非、よろしくお願いいたします。
また、もう一つの投稿作品、「勇者の師匠は遊び人っ!?」も、本作共々御一読頂けると幸いです。