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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
神話の再来
124/382

密談

続きです。



◇◆◇



「想定以上ですな、彼の『英雄』殿は・・・。」

「確かに・・・。我らが束になっても収束出来なかった事を、いともアッサリ解決してみせましたね。」

「やはり、早々にフロレンツ候に見切りを付けて、『王派閥』に鞍替えしたのは、懸命な判断でしたな、フィーエル卿?」

「ええ。とは言え、“外様”である我らは、今現在では発言力も弱まりましたけどね。まぁ、生き残れただけでも、良しとするべきでしょうが・・・。」

「いやいや、まだまだ()は残っていましょう?彼の『英雄』殿だ。彼の(チカラ)を取り込めれば、我らの影響力も復活しますよ!」

「それはそうでしょうが、それこそ厳しいと言わざるを得ないのではないですかな?彼は、あの『リベラシオン同盟』と懇意にしている。不確かな噂ですが、一部情報によれば、『リベラシオン同盟』を発足したのも、実は彼の『英雄』殿の発案であったとか・・・。」

「ハハハハハッ、流石にそれはないでしょう、フィーエル卿。いくらとんでもない(チカラ)を持ってはいても、彼はまだ成人して間もない少年ですぞ?『リベラシオン同盟』がいくら新興の『組織』と言えど、彼の『英雄』殿の年齢から鑑みれば、仮にその話が本当だと仮定しても、彼が一桁代の頃に“政治”に関しても深い先見の明があった事になる。流石にそれはありえない事でしょう。おそらく、それも誰かが吹聴した根も葉もない噂に過ぎませんよ。」

「だと、いいのですがね・・・。」


『ロマリア王国』の、『王都』・ヘドスにある『貴族街』の一角。

『領地持ち』の『大貴族』であり、かつてはフロレンツ率いる『貴族派閥』にもその名を連ねていたフィーエル・グラーフ・フォン・ナーガの『王都』・ヘドスでの別宅が存在した。


フィーエル伯爵は、かなり慎重な男で、『貴族派閥』にその名を連ねていたのも、主義・主張の観点からではない。

言い方はアレだが、彼は長いものに巻かれる事を良しとする、所謂『日和見主義者』の傾向があったのだ。


しかし、特段これは別に珍しくもない考え方である。

結局は、その人によって何が一番大事かによって主義・主張は変わるものだ。

『貴族』にとっての『地位』や『名誉』、自らの『特権』を重視していた『ロマリア王国』の『貴族派閥』は、ある種『保守的』な考え方ではあるが、と、同時に『王派閥』から『政権』を簒奪する事を最終目標にしていた事からも、『リベラル派』でもあり、『急進的』な考え方も同時に持っていた。

まぁ、そこら辺の政治のアレコレは複雑なのだが、ただ一つ言える事は、一つの『思想』で社会を統一しようなどと、土台無理な話なのだと言う事だろうか?

まぁ、『宗教』、つまりは『神』でも無理だったのだから当たり前なのだが。


で、そうした考え方は、フィーエル伯爵、と言うよりは、『ナーガ伯爵家』にとっても悪い話ではなかったし、勢いとしても『貴族派閥』が押していた訳であるから、どちらが得かを考えた末に、『勝ち馬』である『貴族派閥』についたのは、特段珍しい判断ではなかったのである。


しかし、『リベラシオン同盟』の台頭と、『ノヴェール家』の()()()(まぁ、ここら辺も見方は色々ある。元々、フロレンツが独断で動いていた側面もあるので、単純に『ノヴェール家』が、曖昧だったその『立場』を明確にしただけに過ぎないのであるが)によって状況は一変した。

“流れ”は、『王派閥』に傾いたのである。


そうなれば、賢しい者達ならば、鞍替えをする事も珍しい話ではないのだ。

戦国の世や、選挙の話なんかでも、敵対勢力の切り崩しや取り込み、票の取り込みなんかの『裏工作』は、ある種『正攻法』とも言える常套手段であろう。

もっとも、そこで如何(いか)に相手に自分を高く“売り込める”かは、情勢や手腕によるところが大きいのだが。


そんな事もあって、フィーエル伯爵やその一派は、フロレンツを見限り、『王派閥』につく事とした訳である。

また、『奴隷』関連でも関与が薄かった事もあって、フィーエル伯爵らは、粛清を免れ、どうにか生き残る事が出来たのであった。


もっとも、彼自身が“外様”と表現した様に、彼らの発言力は弱まってしまっていた。

これも何ら不思議はない話で、元々敵対勢力に与していた者達を上手く切り崩して()()()()に寝返らせたとは言え、元からいた『王派閥』の者達からしたら、フィーエル一派は『新参者』に過ぎず、『貴族派閥』からしたら()()()以外の何物でもない。

例え(チカラ)のある『貴族』とは言え、『新参者』に大きな顔を許していては、かねてより『王家』を支持してくれていた『王派閥』の者達に立つ瀬がない訳で、そうした意味では、フィーエル一派は、『御家存続』は叶ったが、『出世レース』からは遠ざかった状態であった。


で、そこから、巻き返しを図る為には、とにかくポイントを稼ぐしかない訳だ。

普通ならば、地道に大人しく、長いスパンを掛けて信頼を勝ち得ていくモノであるが、そこへ、極上の“餌”、『英雄(アキト)』の存在があれば、彼らが飛び付かない筈がない。


今現在のアキト、あるいは、『リベラシオン同盟』は、少々複雑な立ち位置にいる。

『リベラシオン同盟』は、向こうの世界(現代地球)で行くと、『国家機関』ではなく、『ノヴェール家』を始めとした多くの『貴族家』が出資するものの、『民間機関』としての色合いが強いのである。

これは、元より“政治”とは距離を置いているアキトの考え方が反映されている形だが、アキトの『使命』、あるいは、個人的事情もあって、彼は『ライアド教』や『ロンベリダム帝国』、場合によっては『異世界人(地球人)』とも敵対する可能性があるからだ。

仮にそれらと対峙する事があれば、少なくとも『異世界人(地球人)』は、アキトら以外に対処出来る“駒”がなくなる。

それ故、その複雑な立ち位置の『リベラシオン同盟』から、アキトらは更に独立した存在であり、国の法や枠組みに囚われない自由度の高い活動を可能としていた。


もっとも、それはフィーエル一派からしたら知り得ない事実であり、それほどの(チカラ)を持つ『英雄(アキト)』、あるいは『リベラシオン同盟』を遊ばせておくなど勿体ないと考える訳だ。

で、それらを国の枠組みに組み込めれば、国は安泰であり、同時に自分達の評価も上がる、と考えた。

まぁ、情報不足や焦りも加味されて、フィーエル一派(彼ら)はそう結論付けてしまった訳なのである。


「まぁ、いずれにせよ、フィーエル卿。『リベラシオン同盟(彼ら)』を遊ばせておくなど国家の損失ですぞ。それは、今回の件でより一層明白になった。我らが発言しなければ、いずれ誰かが声を上げるでしょうが、そうなった時に我らには一銭の得にもならない。決断するなら、今を置いて他にはないと愚考しますが?」

「・・・確かにそうですが・・・。すいません、少し考えさせて貰えませんか・・・?」

「・・・。」


ふぅ~と、フィーエル伯爵に面会している男、フィーエル一派の『貴族』の一人は溜め息を吐いた。

先程も述べたが、フィーエルは元来慎重な男で、『日和見主義』的傾向がある。

フロレンツの件では、その姿勢が功を奏したが、攻めの一手、他の者に先んじるのは苦手としていた。


これは、一長一短がある事なので、どちらが優秀だとか、正しいと言う事はないが、勝負事でもギャンブルでも、攻めの姿勢を見せない者に勝機はない。

もっとも、結局負けたら全て御破算になる訳だが、フィーエル一派(彼ら)からしたら、もう失うモノはないのだ。

ならば、一発逆転を狙って勝負に出る場面であるとフィーエル一派(彼ら)は考えていたのだが、肝心のトップであるフィーエルは難色を示していた。


「・・・結構です。確かに性急に過ぎましたね。しかし、あまりノンビリしている時間はありませんよ、フィーエル卿?王家が、今回の件で『リベラシオン同盟』を正式に褒賞する事は目に見えています。つまり、マルク王と『リベラシオン同盟』の謁見が、我らに取っては最初で最後の機会となるやもしれません。どうか、それまでに御決断下さいね。」

「ええ、分かっています・・・。」


話を終えると、男は部屋を辞した。

残されたフィーエルは、難しい決断を迫られ頭を抱え込むのだったーーー。



◇◆◇



「・・・じゃあ、やはりエイルも心当たりがないんだな?」

「エエ、私ノ『データ』ニハ、ソノ様ナ『失われし神器(ロストテクノロジー)』ノ情報ハ・・・。イエ、チョット待ッテ下サイ・・・。今、思イ出シタノデスガ、ニコラウス・サン(前ノマスター)ト共ニ居タ時ニ、『血の盟約(ブラッドコンパクト)』ヲ名乗ル“エネア”ト言ウ女性ノ襲撃ヲ受ケタ事ガアリマシタ。彼女自体ハニコラウス・サン(前ノマスター)ニ命ジラレテ私ガ排除シタノデスガ、ソノ時ニ“高次ノ存在”カラノ『強制アストラルリンク(ハッキング)』ヲ受ケ、『カウンターアタック』トシテ『妨害(ジャミング)』ヲシタ事ガアッタノデス。ソノ際ニ、ニコラウス・サン(前ノマスター)ガ気ニナル“言葉”ヲ口走ッテイタ事ヲ今思イ出シマシタ。」(再思考)

「なにっ・・・?詳しく教えてくれないか?」

「イエス、オ父様。・・・」


泥人形(ゴーレム)』騒動の報告と、そして何故か『ヒーバラエウス公国』で起こった『政変(クーデター)』騒動の一連の流れを語らされた僕が、ようやく解放されたのはもう夜に差し掛かる時間帯であった。


『王都』・ヘドスにある『リベラシオン同盟』の“拠点”はかなり広い。

それも当然で、ここは臨時的な『トロニア共和国』や『エルフ族の国』の『大使館』的な意味合いもあるからだ。

故に、それぞれの使者達が長期滞在する事も想定して、かなり余裕を持った設計がなされているのである。


で、僕とエイルは、『リベラシオン同盟』側が主に使用している部屋を一部屋貸してもらって、こうして二人で密談(?)を交わしていたのだった。


エイルを先んじて“拠点”に戻したのは、僕が()()情報の確認作業の為である。

彼女は、『魔道人形(ドール)』として、僕らが知らない情報を持っている可能性がある。

今現在では、僕も『千里眼』や『世界の記憶(アカシックレコード)』にアクセスする()()(と言うよりかは、それに耐えうる様になった、と言った方が正確だが)を持ってはいるが、まだまだ使いこなせているとは言えない状態だった。


故に、従来からの方法論通り、より多くの情報から、正しい情報を炙り出す作業が求められるのである。


「タシカ、“『目』を通してっ・・・!?まさか、『()()()』かっ!?ヴァニタスのヤツが覗き見をしていたのかっ!?”、ダッタカト思イマスガ・・・。」(再思考)

「『()()()』、か・・・。それに、“()()()()()”、ね・・・。ふむふむ、なるほどなるほど・・・。」


少し見えてきたかもしれない。

キドオカさんが、僕らをどの様に『()()』していたか、が。

と、言うのも、僕は以前に試行錯誤の末に、『()()()()』と言う、一種の“ワイヤレスカメラ”を再現した事があるからだ。

人の思考ってのは、割と似通っているものだから、『()(())』と名が付く以上、『()()()』も『視覚情報』に関連した能力(スキル)道具(アイテム)である可能性が高くなった。


もっとも、今回の場合は、個人的な能力(スキル)である事は除害しても良いかもしれない。

何故ならば、基本的な“ルール”として、複数の能力(スキル)の併用は、不可能ではないが、非常にハードルが高くなるからだ。

僕でさえ、『魔法技術』や『結界術』の併用は、『精霊石(せいれいせき)』やセレウス様・アルメリア様の協力が必要となる。

異世界人(地球人)』の扱う(チカラ)は、まだまだ未知数なところも多いから、まだ何とも言えないのだがね。

まぁ、エイルの口ぶりからも、何らかの道具(アイテム)っぽい感じがするしな。


では、道具(アイテム)に限定して考えてみた場合、『視覚情報』に特化したモノと言えば、僕の『前世』の知識から、『監視カメラ』か『偵察衛星』が真っ先に思い当たった。

で、今回の『泥人形(ゴーレム)』騒動時に、“場”を掌握した際に確認したが、『監視カメラ』は可能性として除害しても良いだろう。

何故ならば、その場合は現場に何らかの痕跡が残る筈だからである。


今更言うまでもないのだが、『映像』を見る為には、『目』が必要になってくる。

『カメラ』は、その『目』の拡張媒体であり、実際に現地に行って見れない事も、『映像』や『静止画』として見る事が出来るのである。

言うなれば、『カメラ』は視聴者の代理の『目』となり、物事を記憶する媒体なのだ。

で、それをリアルタイムで繋ぐ為には、現地の『カメラ』から送信された『映像』などを受信する『モニター』が必要になってくる(ここでは、中継する媒体や電波などは説明が長くなるので割愛するが)。

その『モニター』に映し出された『映像』を見て、初めて僕らは何が起こっているのかを『映像』なり『静止画』なりとして認識出来るのである。


で、ここで重要なのは、その場合は、現地に『テレビカメラ』なり『監視カメラ』を()()()()()()必要がある事だ。

しかし、先程も触れたが、“場”を掌握した際に、その様な人物や物質を検知していなかった。

故に、『監視カメラ』的なモノは可能性として除害される訳である。


ちなみに、先程のエイルの言葉をスルーしたのは、僕が“高次の存在”(ここでは『至高神ハイドラス』だが)が、『()()()()』を通して物事を知覚出来る事を知っているからである。

そこから鑑みると、前後の文脈も分かってくる。


おそらく、エイルがニコラウスさんに状況の説明を求められた時に、エネアさんの『目』を通して誰かがこちらを窺っていたと伝えたところ、それを勘違いしたニコラウスさんが、先程のセリフを言ったのだと推察出来る。


っつか、エネアさんって、あの時会ったウルカさんと一緒にいた人だよなぁ~。

彼女の存在感に異常を感じたのは、一度()()()()()()()からだが、今のエイルの発言から推察すると、エイルが彼女を手にかけたのであろう。

変なところで話が繋がったな。


更にちなみに、今更僕は()()を咎めるつもりは皆無だ。

いや、エイルが『無差別殺人兵器』であれば流石に話は変わってくるが、彼女は元来だだの『道具』に過ぎない。

銃やナイフ、剣自体に、“お前は殺人者だ”なんて問い詰める者はいないだろう。

彼女は、命令に忠実に従っただけだ。

咎められるべきは、エイルに命令を与えた者。

つまりは、ここではニコラウスさんが()()の大元になるから、咎められるべきは彼である。


それに、この世界(アクエラ)では、相手に道理が通用しないケースも存在する。

一番多いケースは、この世界(アクエラ)では『盗賊団』の襲撃であろうか?

当然ながら、その場合は襲撃された側にも自らの生命や資産を守る権利、『自衛権』が認められている。

その結果として、『盗賊団』を皆殺しにしたとしても、それは罪には当たらないのである。

まぁ、ここら辺は、向こうの世界(地球)こちらの世界(アクエラ)での“常識”の違いであるから、そうした考え方が場合によっては奇妙に映るかもしれないがね。


で、話を元に戻すと、ではもう一つの可能性として挙げた『偵察衛星』が、僕としてはもっともしっくりくるのである。


『偵察衛星』とは、光学機器(望遠レンズ付カメラ)や電波を用いて、地表を観察し地上へ知らせる軍事目的の人工衛星(軍事衛星)の事。

比較的攻撃を受けにくい宇宙空間より地上・海上を見下ろして敵部隊や基地・他の戦略目標の動きや活動状況・位置を画像情報として入手し、主に戦略計画に役立てる、軍事目的のため作られた無人の人工衛星である。


これは、考え方の方向としては『監視カメラ』と同じ(『視覚情報』を入手して、戦略その他に役立てる)だが、そのアプローチが違う。

『監視カメラ』がそこかしこに『カメラ』を設置する必要性があるのに対して、『偵察衛星』はその必要性がない。

何故ならば、『偵察衛星』は超遠距離からその“場”を認識しているからである。

これは、先程挙げた利点、比較的攻撃を受けにくく、敵に制圧、鹵獲(ろかく)される恐れが低いメリットがあるのだ。


しかし、当然ながら欠点も存在する。

『視覚情報』の精度に問題が生じる点だ。

これは、超遠距離からモノを映す上での弊害でもある。

当然、それは機器の性能その他にも影響されるのだが、当たり前の話として、近くから映した方が、『映像』や『静止画』はクリアに見えるのである。

もっとも、『監視カメラ』は『監視カメラ』で、『解像度』が粗いと言う問題点も指摘されてはいるのだが。

まぁ、こちらはこちらで、その目的的な問題もあるのだが、そこはここでは割愛しよう。


『偵察衛星』は、宇宙空間から地上を捉える訳だから、“場”の外側にいるので僕にも知覚出来なかった。

しかし、向こうの世界(現代地球)の最高峰の技術を持ってしても、米粒みたいな人の影を捉える事が精々である。

だが、この世界(アクエラ)の『魔法技術』や、特に『古代魔道技術』に関連した事ならば、もっと詳細な情報を取得出来る可能性も高い。

現に、人間そっくりの『人形』で、なおかつ『アストラル』すら持つ自立思考の出来るエイルなんて存在がいるくらいだからな。

この世界(アクエラ)のかつての『技術力』ならば、向こうの世界(現代地球)を軽く凌駕する性能を持った『偵察衛星』みたいなモノがあったとしても、それは何ら不思議な事ではなかった。


「しかし、となるとあの時『システム』を掌握出来なかったのは痛いな・・・。おそらく、その“()()()()()”とやら、多分その者も“高次の存在”なんだろうが、が干渉したんだろうけど・・・。ちなみに、お二方はその者の事は御存知で?」

〈いや、そんな名前の奴には覚えはねぇなぁ~。まぁ、名前を騙っていたなら、俺らも知り様がねぇ~けどな。〉

〈私もッスね。もっとも、()()()()なら、例え“高次の存在”の『干渉力』とは言え、問答無用で調べる事は可能っスけど、その場合も『制約』によってアキトさんにお伝えする(すべ)がないっスけどねぇ~。〉

「オ、オ父様ガオ一人デブツブツト呟イテイル・・・!?ナ、何カノゴ病気デショウカ・・・!?」(驚愕)

「ちゃうわ!っつか、お前さっきの口ぶりだと、『アストラル』を感知する事が出来るんちゃうんかっ!?」

「“ジョーク”デス。場ノ雰囲気ヲ和マセル為ニヤッタ事デスヨ。決シテオ父様ヲ危ナイ人ニ仕立テ上ゲテカラカオウトカ思ッテイマセンノデ・・・。」(しれっ)

「ええぇ~・・・。」(困惑)


何この()、コワイ。

僕は“ジョーク”で頭のおかしな人に仕立て上げられるトコだったんかい。( ̄▽ ̄;)


〈ハハハハハッ、中々おもしれぇ~嬢ちゃんじゃないか、アキト。お前の周りには、中々いないタイプだな。俺ぁ気に入ったぜ。〉

「ゴメンナサイ。“オジサン”トハチョットオ付キ合イ出来マセンノデ・・・。」(拒否)

〈だ、誰が“オジサン”だっ!こんな“ナイスガイ”捕まえてっ!〉

〈早速からかわれてるっスよぉ~、セレウス様ぁ~。〉

「ア、“オ婆様”。新シク“ストレリチア家”ニ加ワル事トナッタエイルデス。ドウゾヨロシクオ願イイタシマス。」(ペコリ)

〈誰が“お婆様”っスか!や、確かにアキトさんは戸籍上の息子に当たるっスけどねっ!?けど、私は“ピチピチの乙女”っスよっ!?〉

「アルメリア様もからかわれてますよぉ~。」

「フム。中々落チ着キノナイ人達デスネ~。」(困惑)

「〈〈お前(貴女)が言うなっ!!!〉〉」


た、確かにセレウス様の言う通り、エイルはこれまで僕の周りにはいなかったタイプかもしれんなぁ~。


「・・・ん?ちょっと待てよ?エイル、お前、今現在のセレウス様やアルメリア様を認識出来て、おそらくハイドラスの『強制アストラルリンク(ハッキング)』すら『妨害(ジャミング)』出来るのに、何でキドオカさんの『霊能』には対処出来なかったんだ?」

「ソレハ・・・。」

〈そりゃ、おそらく、エイルのお嬢ちゃんの出自によるモノだろうよ。俺も詳しい事は知らねぇ~が、っつか、厳密には俺らは彼女を造った連中には敵視されていた訳だからそれも当たり前なんだが、彼女は俺ら“高次の存在”に対抗する為に造られた『魔道兵(ロボット)』だからな。もちろん、彼女は『アストラル』=『人工霊魂』を持つに至ったが、その知識は大半が彼女を造った連中が入力(インプット)した事だ。つまり、彼女は『アストラル関連』の知識は持っていても、それらを真に理解している訳じゃない。故に、()()()()()()()欠点が存在するのさ。〉

「ムゥ・・・。私ガ御説明シタカッタノニ・・・。セレウスオジサン、キライデス。」(プクー)

〈ありゃ!?〉

〈・・・今のはセレウス様が悪いっスねぇ~。で、補足しますと、これは『異世界人(地球人)』も抱える欠点っスね。以前御説明した事があったと思うっスけど・・・。〉

「ああ、なるほど。能力と知識に片寄りがあるって事ですね?大半の人間は、ゼロから積み重ねていくのに対して、造られた存在であるエイルや、突然大きな(チカラ)を手にした『異世界人(地球人)』達には圧倒的に()()が足りない。故に、意外な事を知らなかったり出来なかったりする、と。」

〈そうっス。もっとも、エイちゃんはアキトさんの『アストラル』の影響を受けていますから、通常の『魔道兵(ロボット)』とは一線を画した存在になりつつありますが、それもまだまだ成長段階っス。結果として、()()()()()『霊能』には対処出来なかったのかと。まぁ、もしかしたら、キドオカの『霊能』が、こちらの世界(アクエラ)由来の『技術体系(システム)』ではなかった事も原因の一つかもしれませんっスけどね?〉

「流石ハオ婆、モトイ、アリメリアオ姉様。ソノ通リデス。」(尊敬の眼差し)

〈むふぅ~♪〉

〈何か、俺だけ扱い雑じゃね?あぁ~、いいなぁ~、アリメリアの嬢ちゃん。“子供”に好かれるなんてさぁ~・・・。〉


うん、僕の中で変な風に落ち込まないでくれません、セレウス様?

しかし、“子供”、“子供”か・・・。

先程のアリメリア様の言葉からも、エイルは確かに“子供”なのかもしれない。

その言葉が妙にしっくりきた。

見た目は僕と変わらない年代の少女のナリだが、その『アストラル』はまだまだ生まれたばかりだ。

故に、妙にいたずらっ子だったり、かと思ったら妙に大人びていたり、その割には経験が不足していたり・・・。

僕は、ようやくエイルの今現在の“在り方”を理解した気がした。


「まぁ、それはともかく。今回の事でますます『異世界人(地球人)』の動向を注視する必要性が出てきましたね。引続き、ウルカさんの“()()()”から情報を探ってみますか。」

〈おぉ~う。ま、そっちはアキトに任せるわ。俺らは、今回の件で少し疲れたから、しばらく引きこもるし・・・。〉

「まぁ、結構『神霊力(しんれいりょく)』使わせちゃいましたもんねぇ~。」

〈とは言っても、半分以上はアキトさんの『霊能力(チカラ)』でしたし、今回の件で『英雄(アキトさん)』に対する『信仰』も高まるでしょうから、『神霊力(チカラ)』の()()、どころか、より『神霊力(チカラ)』も()()するでしょうっスけどね。もっとも、それを受け取る為にもしばしの休息が必要っスが。アキトさんの中の私達は、『神の座』にいた頃とは状況が異なるっスからね。〉

「そうですか・・・。まぁ、それならそれでしばらくゆっくりして下さい。御協力、ありがとうございました。」

〈お~う、またなぁ~、アキトぉ~、エイルの嬢ちゃん。ふぁ~、ねむ・・・。〉

〈では、しばし眠ります。エイちゃん、アキトさんの事お願いするっスよ?〉

「オ任セ下サイ、アルメリアオ姉様!」


そう言い残すと、セレウス様とアルメリア様の気配が消えた。

もっとも、それを感知出来たのは僕らくらいのものだろうけどね。


「・・・さて、もう入っても結構ですよ、ヨーゼフさん。」

「おや、これは気がつかれておいででしたか、アキト様。」

「・・・!?」(ビックリ)

「どうやら、エイルには気付かれなかった様ですよ?流石の隠密技術ですね。」

「ハハハハハッ。まぁ、悪意はないのですが、もはや気配を消すのは癖みたいなものですからな。」

「いえいえ、責めたりはしませんよ。むしろ頼もしくもありますからね。」


そのタイミングを図ったかの様に、出来る執事さんであるヨーゼフさんが静かに入室してきた。

エイルはビックリしていたみたいだが、ヨーゼフさんほどの『使い手』ならば、エイルの『センサー』を欺く事も訳はないだろう。

どうやら、ヨーゼフさんはかなり特殊な出自の様だしね。


「それで、どうされました?」

「ええ、少々アキト様のお耳に入れておきたい報告が御座いまして・・・。アキト様ならすでに御存知だとは思いますが、我が『リベラシオン同盟』では、各方面に『諜報員』を潜り込ませていまして。僭越ながら、(わたくし)がその統括を任されております。」

「ええ、もちろん存じておりますよ。」


『リベラシオン同盟』の活動内容は多岐に渡る。

そこには合法、非合法な事も含まれる。

っつか、人道的見地やそちらの『立場』に立てば、奴隷となっていた『エルフ族』、あるいは『他種族』を解放した事は素晴らしい事かもしれないが、『ロマリア王国』の法では、これは『違法』である。

何故ならば、結果的には奴隷の所有者から強引に奪い取った形になるからである。


しかし、これは以前にも言及したが、これによって『リベラシオン同盟(僕ら)』が罰せられる可能性は皆無だ。

何故ならば、『ロマリア王国』の法では、今現在奴隷を所有する事自体『違法』だからだ。

万が一被害を受けた側が訴え出た場合、もちろん『リベラシオン同盟(僕ら)』も何かしらの処罰を受ける事となるだろうが、被害を受けた側も処罰される事になる。

その場合のダメージは、むしろ被害を受けた側の方が大きくなる訳だから、わざわざ自ら自分の首を締める者はいない、と言う訳である。


中々我ながら(したた)かだとは思うが、世の中綺麗事だけじゃ渡っていけないからねぇ~。

特に、この世界(アクエラ)ではね。


それと同様に、様々な情報を収集する為に、『リベラシオン同盟』では各方面に『諜報員』、所謂『間諜(スパイ)』を忍ばせている。

と、言っても、マンガやアニメ、映画の様な存在ではなく、既存の従業員や出入り業者から様々な手段で話を聞き出す事が大半だけどね。

実際に潜り込ませられるほどの『使い手』はそう多くないし、『リベラシオン同盟(ウチ)』も資金力はともかく、人材が豊富な訳じゃないからねぇ~。


「それで、少々気になる情報が入ってきまして・・・。・・・・・・・・・。」

「はぁ、なるほど・・・。色々画策する人がいますねぇ~。」

「して、如何(いかが)致しますか?」

「まぁ、放置で構わないでしょう。彼らは肝心な事を理解していない様だ。その時になったら、適当にあしらいますよ。一応、ダールトンさん達にもそう伝えて下さい。」

「はっ。」


話が終わると、ヨーゼフさんはスッと部屋を出ていった。


「やれやれ、次から次へと色々起こるよねぇ~。」


僕は、ふぅ~と溜め息を吐きつつ、誰に言うでもなくひとりごちるのだったーーー。



誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。


ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。是非、よろしくお願いいたします。


また、もう一つの投稿作品、「勇者の師匠は遊び人っ!?」も、本作共々御一読頂けると幸いです。

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