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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
99/177

94 伝説の歌姫

次の更新は2/21(水)です。

 由香たちがステージ上に姿を表すと、椅子に座っていた人が立ち始めた。

 俺たちも皆んなに合わせて、立ち上がる。

 全ての人が期待を込めて、ステージに臨んでいた。


 まずはじめに、4人に当てられていた照明が全て落とされた。

 そして、いきなり曲が始まった。

 ギターの乾いた音から始まり、その流れに続いてベースとドラムも入ってくる。

 少し長めのイントロが終わると、由香にだけ照明が当たり、彼女の可愛らしくも力強い声が一瞬にして全ての人を魅了した。

 彼女が歌い始めた瞬間、先ほどよりも大きい歓声が湧く。

 ノリのいい人は既に体を揺らしたり、手を振ったりして盛り上がっている。

 曲もサビに入る頃には、ステージもすっかり明るくなり、全員の表情や仕草がよく見えるようになった。バンドメンバーの全員が楽しそうに演奏している。

 

 キャッチーな曲調で一発目からかましてくれる。

 脱帽だ。確かにルックスも声も可愛いが、何よりも格好良い。

 俺は、初めて見る由香の姿に言葉を失うほど魅せられていた。


「どうだ? これが黒坂の歌だ」

「凄いですね……。いや、凄いを通り越してますが、とにかく凄いです」

「ははは。彼女の実力に驚いているようだな」


 佐々木部長が話しかけてきたが、俺も気の利いた返事はできなかった。

 もっと良い表現があるかもしれないが、俺の語彙力の無さが悔やまれる。


 隣の里沙を確認すると、俺と同じ気持ちのようで、ステージへ釘付けになっていた。

 そして何よりも一番はしゃいでいるのは笹川だ。歓声を上げながら手を振っている。完全に由香のファンになったな。


1曲目が終わると拍手が起こり、ようやく由香が喋り始めた。


「ありがとうございました。今日はこんなにもたくさんの人に集まっていただいて感無量です。最後まで楽しんでいってください!」


 それだけ言うと、2曲目に突入した。


「聞いてくださいっ! 『Fから始まる恋の話』!!」


 おお! 飛ばしまくってるな。

 これまたノリの良い曲だ。少し激しく荒っぽいリズムと、乙女が書いたような歌詞とのギャップが面白い。

 本当に高校生のバンドか? 贔屓目なしでもクオリティが高い。

 俺は、もうすっかりお前たちのファンになったぞ。


 2曲目が終わると、バンドメンバーの紹介が挟まれた。

 どの人たちもキャラが濃く面白そうな人たちだ。

 特にギターの人、絶対に面白くて良い人っぽい。

 由香もこの人たちとバンドができて、満足だろうな。


 メンバーの自己紹介が終わると、由香が再び喋り始めた。


「さあ、あと2曲やろうと思うのですが、次の曲はなんと、今日、急遽演奏することにしました!」


「えー!?」

「何々ー?」


 由香の突然の発表に会場がざわつく。


「私のわがままかもしれないんだけど、メンバーは快く引き受けてくれて……! はぁ……緊張する……」


 由香は溢れる気持ちをこぼすと、大きく深呼吸をした。

 一体どうしたのだろうか?


「実は今日、この会場に私の愛する人が来ています!!」


 何いっ!? 愛する人って……つまりそういうことだよな!?

 こんなところで言って大丈夫か? そして誰なんだ!?


「えー!!」

「誰だーーーー!!」

「きゃー!」

「嘘だと言ってくれー!!」


 様々な声が入り乱れる。


「皆んなごめん! ファンクラブもあることは知っているけど、私は皆んなに隠し事をしたくないし、音楽に全てを乗せて、ぶつけたいの!!」


 由香の力強い決意表明に会場は静かになった。


「そんな由香も好きだーーーーー!」


 前方からファンクラブと思しき人の声が響き渡ると、一気に会場は湧いた。


「そうだー! 俺たちは応援するぞー!」

「私もそんな由香が好きーーーーー!」

「このままプロデビューまで突っ走ってくれーー!」


 良かったな。皆んなお前の味方だ。

 俺は、この会場の一体感と、全員に認められていることに感動して胸が熱くなった。

 それにしても由香の好きな人か……。ふふふ、あいつも隅に置けないなぁ。

 おっと、自然と顔が綻んでしまう。今度会ったら聞いてやるか。


「みんなありがとっ!! 3曲目は愛する人に捧げます!」


 うおおお! 頑張れ由香! 想いよ届け!


 全く、やりやがったな。あえてこの舞台で宣言するとは。

 賛否両論あるだろうが、俺は応援しているぜ。


「宏介! どう思う!?」


 里沙は少し興奮気味に聞いてきた。


「由香の愛する人って、検討はつかないけど、熱いな!」

「うん。とっても素敵」


 由香はメンバーと相槌を打つと、マイクに口を近づけた。


「私の想い、聞いてください。『愛の証は赤い糸』!」


 その曲は今までより、少し落ちついており、由香の歌声がより一層目立った。

 曲に入る前の告白もあり、心に染みる。

 これが嵐ヶ丘高校の歌姫。遠い存在のように思えてしまう。


 それでも、由香、きっとお前の想いは届いているさ。俺でさえ、こんなにも心を打たれているんだから。


続く

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