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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
96/177

91 ゴーインエンジョイ

次の更新は2/14(水)です。

 占い女子が淡々と秋葉の結果を告げる。


「押してダメならもっと押せ。引けば最後。あなたの道は閉ざされてしまう。希望の道はまだいくつも広がっているでしょう」


 秋葉はその占いを食いつくような表情でしかと聞いていた。

 そして、その意味を理解したようだった。


「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」


 圧倒的な感謝。

 秋葉は俺の方を見ると、興奮した様子で堂々と宣言した。


「宏くん……! 私まだまだ頑張るから! 絶対に私のものにしてみせるから!」


 俺のことになると、周りのことが気にならないみたいで、教室内に響き渡る声だった。

 突然の恋愛宣言に他の人たちも驚く中、織田が一番驚いていた。


「ええ!? 2人ってどういう関係!?」


 織田は俺と秋葉を交互に、未知の生物に出会ったときのように何度も見てきた。


「そっかー。春奈は知らないもんな。鈴木のたらし伝説」

「嘘。鈴木って最低な野郎だったんだ」


 笹川は人聞きの悪い言い方でもって、織田に誤解をさせた。


「待て待て。俺はたらし野郎でも何でもない」

「はぁ……。君ってやつは」


 山内まで、やれやれといった感じで肩をすくめた。

 この展開、何度経験すれば済むの!?


「宏くんはたらしじゃないよ」

「そうだ、秋葉からも何とか言ってやってくれ」


 元はと言えば、お前があれほど堂々と宣言したからだ。

 責任を取ってもらおう。


「私が宏くんを好き……ううん……愛してるだけ。宏くんが全然振り向いてくれないのは、私の努力がまだまだな証拠かな」


 ナンテコッタ。

 余計に俺が最低の男に聞こえてしまう。


「えぇ……。鈴木……」


 織田よ。汚物を見るような目はやめてくれ。


「違うから! いや、秋葉の言っていることは違わないかもしれないけど、俺の好きな人は……!!」


 危ねぇ! 俺も宣言してしまうところだった。

 必死に誤解を解こうとしていた俺は、力が入り、気づくと織田の両腕をガッチリと鷲掴みしていた。

 織田は俺から顔を逸らし、わざとらしくこう言った。


「へ〜。鈴木って結構強引な男なんだ。秋葉さんを目の前にして迫ってくるなんて。私、強引な人に弱いんだよね……」


 織田は意外にも頬を赤らめていた。

 ああもう。織田は何をしでかすか全く読めない!

 俺は慌てて、手を離す。


「鈴木! 春奈まで手にかけるとは、やるなぁ!」

「そんなつもりじゃない!」


 秋葉は俺の袖をギュッと掴むと、自分の方に力強く引き寄せた。


「宏くんは渡しません」

「ズキューン! 秋葉さんも可愛い!! 今度は秋葉さんに惚れちゃいそう……」


 織田はまた頬を赤らめていた。

 こいつ……。ひょっとして何でもいけるクチか?


「それより鈴木。さっき『俺の好きな人は……』って言ったよね」


 笹川は俺の突かれたくないところを、逃さないように突っ込んできた。


「あー……。言ってない」

「絶対言った。それで、好きな人って誰なんだ〜?」


 笹川はニヤニヤしながら俺のことを指でつついてきた。

 こそばゆいから手を止めるんだ。俺は女子の攻めに弱いぞ。


「おほん! イチャイチャするのはその辺にして次に行こうか」

「えー。せっかく鈴木とコミュニケーションしてたのにー」


 助かったぜ、山内。

 彼の先導の元、俺たちは占いの館を出て、少し早めの昼食をとることにした。

 あ、そういえば俺だけ占ってもらってないぞ。



 俺たちは、嵐ヶ丘高校文化祭名物、通称食べ歩きロードへ向かった。

 外で食べ物の屋台がいくつも開かれている。まるで、夏祭りのようだ。


 いざ現場へ到着すると、けっこな人で賑わっていた。さすが名物。

 しかし、この屋台群。すべて業者に依頼しているのである。

 それでいいのか嵐ヶ丘高校。せめて生徒たちでやるべきでは?


「う〜ん! 美味しい!」


 いつの間にか笹川だけ、屋台のど定番、チョコバナナとリンゴ飴を手にしていた。


「甘い匂いがするー。何食べよっかなぁ」


 秋葉と織田も目を輝かせながら雰囲気を楽しんでいる。

 もっとこう、ガツンといきたいな。

 男の屋台といえば、焼きそばかたこ焼きか、焼き鳥も捨てがたい。


「何食べる?」


 隣でキョロキョロしている山内に尋ねる。


「そうだね。アレなんかどう?」


 山内が指差す先には、イカの姿焼きの屋台があった。

 渋すぎるぜ。普通、高校の屋台でイカの姿焼きなんて売りますか?


 山内と一緒にとりあえず近くまで行ってみると、香ばしくて食欲を唆る香りが漂ってきた。

 女子勢がベビーカステラに夢中になっている間に、俺と山内はイカを食すことにした。

 運良く列が途切れたので、素早く購入し、立ち食いをするために屋台から離れたところに退いた。


 すると、偶然にも華愛子先輩が同じくイカを頬張っていた。


「あ、どうも」

「おや、偶然ですね。今日は彼女さんと一緒じゃないんですね」

「里沙は彼女じゃないですよ」

「おやおや、私は関野さんのことを彼女だなんて一言も言ってませんよ」


 ドキッ! 華愛子先輩の鋭い指摘に、俺はイカを持ったまま間抜けにも固まった。


「なるほど。鈴木君はやっぱり関野さんのことが好きなんだね」

「それは……!」

「否定しないね……。大丈夫。僕は応援しているよ」

「キャー。私もです! 早くステキな写真を撮らせてくださいね」


 そうか。2人とも恋の味方になってくれるのか。素直に嬉しいね。

 俺はイカと一緒に、仲間のエールも噛み締めた。


 華愛子先輩のような女子がイカの姿焼きを豪快に食す姿には、突っ込むこともなく、昼食タイムが終わった。

 この文化祭。どこで誰に出くわすか、油断も隙もない。この先も、まだまだ長そうだ。


続く

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