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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
89/177

84 歌姫公式ファンクラブ

次の更新は1/30(火)です。

「なんと! 私たちはみんな嵐ヶ丘高校の生徒よ!」

「本当に!? すごい偶然じゃん!」

「それに隣のマンションに住んでるの」

「ええ!! そんなことあるの!?」

「これも運命のイタズラだよ」

「そうと分かれば、由香姉ともすぐに会えるね」


 亜子は部屋にも戻らず、ソファに座る由香の前で嬉しそうに話していた。

 里沙と由香の元で育った亜子だがとうとう暴君にならなかった。

 その点はお兄ちゃん安心してるからな。


「さて、そろそろ帰ろうかな。毎日来てもいいかな?」

「うん! お構いなく!」

「おいおい。毎日はさすがに迷惑だ」

「あーん。ケチ!」


 由香はソファから立ち上がると、椅子に座る俺の前まで来て鞄から本を取り出した。


「はい。さっきここに来る前に家によって取ってきたの。今までありがとう」


 本を受け取ったが、特にお礼を言われる覚えもなく頭は疑問で埋め尽くされていた。


「ん? 何の本だ?」

「忘れたの? じゃあ宿題! 思い出しておいて!」


 里沙と亜子に聞いてみたが2人とも心当たりはないようだ。

 その昔何かあったかな?


「由香姉! 待って!」


 帰ろうとしていた由香を亜子が止める。


「今日この後予定ないなら家で夜ごはん食べていかない?」

「いいの!? 食べてくー!」


 こうして由香も一緒に俺たちの食卓へ加わることになった。

 里沙を見ると「私も誘って」と言わんばかりの表情をしていた。

 ふふ。誘ってやるか。


「里沙も食べていくだろ?」

「え? も……もちろんよ」


 はい決定。今日の夜ご飯は騒がしくなりそうだ。


「お兄ちゃん、何食べる?」

「そうだな……」

「ピザパーティ!」


 由香はピザをご所望のようだ。

 そして、満場一致で決まったので俺はスマートフォンからピザを注文した。


「それじゃあピザが来るまでの間は宏介のお部屋探索と行きますか!」

「別に何もないぞ」

「いいから!」


 俺は由香に促されるまま自分の部屋へと向かった。


「お邪魔しまーす!」


 由香は俺の部屋に入ると辺り一面を見渡した。


「シンプル……。何か趣味はないの?」

「ほらな。面白みはないだろ」


 あいにく趣味と呼べる趣味は持ち合わせていない。

 由香に言われて気づいたが、何か始めた方が人生充実しそうだ。


「ふふふ。あそこも確認しなきゃね」


 由香は不敵な笑みを浮かべながら地べたに膝をつけベッドの下を覗き込んだ。


「あ! 何もない」


 それもそうさ。俺はベッドの下にエロ本を置いておくなんて下手な真似はもうしない。

 コレクションは既に別の場所へと移されていた。どこにあるかは誰にも教えない。


「つまんないのー。男の子だったらベッドの下にエッチな本がーとかあるでしょ?」

「あいにく俺は清廉潔白で煩悩のない男だからな」

「本当に〜?」

「ああ。誓おう」


 由香はつまらなさそうに俺のベッドの上に腰掛けた。

 俺は椅子に座り、由香の方を向いた。


「満足したか?」

「うん。宏介の部屋にいるだけで満足だ」

「どういうことだよ……」

「ししし。……そうだ! 宏介は私のファンクラブに入りなよ」

「突然何を言い出すんだ? まだ由香の歌を聞いたことさえないぜ」


 俺がそう言うと由香は声を抑えながら歌い出した。

 何て上手さだ。本気を出したら凄いだろうな。


「どうだった私の歌?」

「上手すぎる。プロか?」

「ありがと。それじゃあファンクラブの加入決定ね」

「強制加入かよ」

「いいじゃん。私のファンクラブ会員第一号よ」

「噂だともうファンクラブあるだろ?」

「あれは非公式。宏介は私が企画する公式のファンクラブ会員よ」

「ものは言い様だな」

「宏介が入ったということは二号と三号は里沙と亜子だからね」


 こうして里沙と亜子も知らないうちに公式ファンクラブの会員となった。


「今なら特別に会員料は無料よ」

「そりゃどうも」

「というわけで明日は絶対に聞きにこないと駄目だから!」

「ああ、もちろん行くよ」

「やったー!」


 由香は手を伸ばしながら俺のベッドに勢い良く寝転んだ。


「はぁ……。落ち着く」

「自分の部屋か!」

「うん。明日からここに帰ってこようかな」

「それは困る」

「ししし。由香お姉ちゃんだぞ!」


 お姉ちゃんか……。

 女兄弟はもうお腹いっぱいだから、次は男兄弟が欲しいところだ。

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