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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
83/177

78 思い出の歌姫

次の更新は1/19(金)です。

 美術部のブースの隣には写真部のブースがあった。

 俺は華愛子先輩の作品を探すべく、ブース全体にくまなく目を通した。

 すると、見覚えのある人物の写真が1枚、額縁に入れられ丁寧に飾ってあった。

 夕日をバッグに屋上で撮影された里沙の写真だ。

 あの時、俺と一緒にいた場面ではない。いつの間に撮り直しをしていたのだろうか。

 遠くを眺め、微笑を浮かべたその美少女はまるで映画のように美しい。

 女優か……。演技が上手ければ、トップ女優までのぼりつめそうだ。


 俺はスマートフォンを取り出して、こっそりと里沙の写真の写真を撮った。

 華愛子先輩にお願いして複製してもらってもいいかな。

 いやいや。絵も写真もそうだが、俺がストーカーみたいになっているじゃないか。

 冷静になれ。正気を取り戻すんだ俺。

 その時、俺を元の世界に戻すかのように大きめの鼻唄が聞こえた。

 綺麗な声で「ふんふふーん」と俺の頭をくすぐる。

 思わず声の出所を確認してしまうほど透き通った歌声だった。

 その声の主は大広間に面した廊下をゆっくりと、周りを見渡しながら歩いていた。

 手には『ライブ! 28日15時〜』と書かれている。

 宣伝か。看板を持って校内を練り歩いているというわけだ。


 SF研究部の輪に戻ると、里沙が問いかけてきた。


「どこに行ってたの?」

「ああ。ちょっとその辺に。ところで、写真撮り直したのか?」

「何で知ってるの?」

「今そこで見た」

「秘密にしておいたのに」

「何で秘密にするんだよ」

「だって……」


 俺たちの会話を裂くように、鼻唄の女子がこちらにやってきた。

 SF研究部は全員そちらに気をとられた。


「柚子だ〜! 何やってるの?」

「あ! 由香! ちょうど展示の準備が終わったところ」

「へ〜。今年もサボテンかな?」


 よくご存知で。

 どうやら、柚子先輩の友達みたいだ。


「その看板、明日の宣伝か?」

「そうだよ。絶対見に来てくれよな!」


 どうやら佐々木部長とも仲が良いらしい。

 俺たちは柚子先輩の催促の元、それぞれ自己紹介を済ませた。

 鼻唄の女子は柚子先輩の友達で黒坂先輩という名前だ。

 眺めのツインテールが特徴的で、地声は可愛らしい声をしている。


「よろしく! というわけで、みんなも見に来てくれよな!」

「はい!」


 俺は勢いよく返事をすると、黒坂先輩はハッとした顔をした。

 その後すぐに満面の笑みへと変わった。


「久しぶりだね、宏介! 里沙!」

「「あ!!」」


 俺と里沙もその瞬間はっきりと思い出した。


「どうしたの? 知り合い?」


 柚子先輩が興味津々に聞いてきたが、それは他の皆んなも一緒だった。

 俺たちは思い出したが、思い出すということは昔のことを頭に浮かべること。

 つまり、里沙の過去を知っているということだ。

 今回の場合、倉持とは違い直接的にはっきりと知っている。

 まさかのピンチ到来。こんなところで、なんてことないタイミングでバレてしまうのか?

 バレたところでどうなんだ?

 という疑問はあるが、本人が望まないうちは秘密にしておくのが良い。

 俺と里沙は何も言えず、黒坂先輩の次の言葉に構えていた。

 頼む! 願わくば何も言わないでくれ!


続く

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