77 美術部の不思議ちゃん
復活しました。
次の更新は1/16(火)です。
ポスターの掲示も無事に終わった。
俺は他の文化部がどのような展示をするのか気になったので、SF研究部の輪から離れてその辺を徘徊してみた。
中でも一番広く幅をとられていたのは、美術部のブースだった。
絵はもちろんの事、俺には理解のできないアートの数々が所狭しと並べられていた。
美術部ってこんなに人数いたのか。そういえば、織田の作品もあるのかな?
そこに飾られていた絵はどれも綺麗だったが、その中でも一際目立つ人魚の絵があった。
これが絵なのか? といった具合に信じられないほど綺麗な絵だった。
空のように透き通った青の中に美しい人魚と魚たちが泳いでいる。
作者を見ると、もちろん織田だった。
「綺麗すぎるだろ……」
俺はその絵に魅了され、思わず声を漏らしてしまった。
「綺麗でしょ!」
「うわ!」
びっくりした。俺は後ろから織田に声をかけられた。
織田の方を見ると、顔に絵の具をつけたままだった。
「あ……ああ。やっぱり凄いな」
「えへへー! もっと褒めてよ! 褒められてこそ私の美のセンスは増幅するの」
「それはよく分からんが、普通に部屋に飾りたい」
「今度描いてあげる!」
「マジ!?」
そうだ! 里沙のこと描いてもらって、それを部屋に飾るというのはどうだろうか。
「そうだな……。じゃあ今度里沙の絵描いたら俺に頂戴」
「え……。いいけど……。まさか貴方って変態なの?」
「なんでそうなる!」
「だって……。幼馴染の絵を自分の部屋に飾るなんて。ねぇ……」
いきなりテンション下がって低めのトーンで話すのやめてくれよ。
傷つくだろ。
「そうじゃないよ。里沙にプレゼントするんだ」
嘘だが。俺は苦し紛れの言い訳をした。
世の中には嘘をつかないといけない時っていうのが存在するはずだ。
きっと今はその時。
「そっか……。じゃあ里沙ちゃんにも秘密で描かないとね。あ、でも本人見ずに描くのって難しんだから」
「そこを何とか頼むよ」
「ん〜、じゃあ私の顔の絵の具とってよ」
「へ?」
「ほら、その指で拭ってくれるだけで取れるから」
「触れていいのか……?」
「鈴木だったらいいよ、ほら」
「はいはい」
俺は二つ返事で了承すると、織田の顔に人差し指を当て絵の具を取ってやった。
「きゃっ! 冷たい!」
どうやら織田が思った以上に俺の手は冷たかったらしい。
「鈴木の手って冷たいんだね」
「手が冷たい人は心があったかいってよく言うだろ? そういうことだ」
「本当〜? うふふ。そうだね。鈴木は優しいよ」
「そんなマジマジと言われても照れる」
織田の顔から離れた俺の人差し指を見ると青色の絵の具が付いていた。
俺はなぜだかその指を洗ってはいけない気がした。
「ありがと。おかげで顔を洗う手間が省けたよ」
織田はお礼を言うと、どこかへ行ってしまった。
不思議なやつだ。昨日初めて話したやつとは思えないな。
どこか引っかかる……。
ま、気のせいか。
続く




