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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
78/177

74 ごゆっくりどうぞ

次の更新は1/7(日)です。

 俺はポケットに入れておいたスマートフォンをおもむろに取り出し、構えた。華愛子先輩、カメラの構え方はこれでいいですか?

 カメラのアプリを開きレンズを里沙に向ける。

 里沙は窓から外を眺めて黄昏れているようだ。こちらに気づいていない。

 俺はその美しき姿を写真に収めるべく、シャッターボタンを押した。

 パシャりと大きな音を立てて、里沙の姿を捉える。


「あ! 撮った!?」


 里沙は驚いた様子でこちらを向き、俺にそう問いかけた。


「撮ってない。気のせいじゃないか?」

「うそ! 絶対に撮ったでしょ! 見せて」


 恐ろしく早い掴み。

 俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 間一髪、里沙からスマートフォンを死守した。


「ちょっと!」

「安心してくれ。悪用はしない」

「ほら。撮ったじゃん」

「減るもんじゃないし、良いだろ?」

「良くない。恥ずかしい」

「青春の1ページとして保存しよう」

「何が青春の1ページよ。消さない?」

「消さない」


 俺はしっかりと保存ボタンを押すと、スマートフォンをポケットに再びしまいこんだ。

 我ながら良い出来の写真だ。帰ったら里沙にも送っといてやるか。


「それにしても、動きたくないな」

「ダメよ。もう戻らないと」


 里沙は立ち上がると、俺の腕を掴み強引に立たせようとした。

 さすが元番長。力が強い。


「痛てて」

「早く立って」


 俺の腕だけ上がる。

 里沙は大根を持つかのように俺の腕を持っている。


「分かったから!」


 俺はそのまま投げやりに立ち上がると、里沙が力を込めたままだったので勢い余って転んでしまった。


「うーん……」

「……」


 里沙は俺のすぐ真下、というか顔があと数センチのところで目を見開いて硬直していた。

 俺もその距離に思わず固まった。

 ほんのすこし前に出れば唇が重なってしまう。

 心なしか里沙の唇が震えているような気がした。


「あっ……これ以上は駄目……」

「す……すまん!」


 なぜか俺が謝るハメになった。

 俺は上半身を起こしたが、里沙にのしかかる形となっていた。

 どうりで柔らかい感触がすると思った。

 他の誰かに見られたら誤解が生じてしまう。


 その時、勢いよくDルームの扉が開いた。

 何でそうなるの!


「まだいるかー!? 渡し忘れた……ってお前ら!!」


 吉田先生が俺たちに渡し忘れた物を持ってきてくれたようだ。

 だけど余計なお世話になってしまいました!


「ふっ……。お邪魔したようだな。職員室で待ってるから、ごゆっくり」


 吉田先生はゆっくりと扉を閉めた。


「待ってください! 誤解です!!」


 ああ。行ってしまった。

 そんな察しのいい先生みたいにしないでください。


「いつになったらどいてくれるの?」

「そうだよな!」


 俺は体の緊張を無理やり解くと、勢いよく立ち上がり、里沙を起こすのを手伝った。

 その後、俺たちは何事もなかったかのようにお互いの教室へ戻った。

 あ。吉田先生のところに行ってない。すぐ忘れてしまう。

 今行っておかないと、誤解されたままか?


「宏くん、どこ行ってたの?」


 俺が吉田先生のとことに行こうか迷っていると、秋葉が話しかけてきた。


「ちょっとな。部室に発表のポスター運ぶのを手伝ってた」

「そう。てっきり関野さんとデートでもしてるかと思ったよ」


 秋葉さん、目が笑ってないですけど。


「今、消耗品の整理してたんだけどストローがないの。一緒に買い出しに行かない?」

「そうだな……。今、任されてることもないし行こうかな」

「うん♡ 山内君に言ってくるね」


 やれやれ。気の休まる暇がない。


続く

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