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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
77/177

73 ツンデレラにお願い

次の更新は1/5(金)です。

 俺の隣にいる織田さんを見て里沙は「誰?」とでも聞きたそうな顔をしていた。


「ああ。俺のクラスメイトの織田さんだ」

「織田春奈です。よろしくね」

「私は関野よ。宏介とは幼馴染の腐れ縁みたいなものね」

「そうなんだ。私はてっきり付き合ってるのかと……」

「「付き合ってない」」


 俺と里沙はぴったりのタイミングで同時に否定した。


「ほら、相性バッチリじゃん」


 織田さんはクスクスと笑いながら俺たちのことをからかった。

 俺と里沙は恥ずかしそうに織田さんから目をそらした。


「ほら、仕草まで同じじゃん」

「偶然よ! ほら、とにかく職員室に行くの!」


 里沙は職員室とは反対の方向へ歩き始めた。

 動揺してるな。


「そっちは反対方向だが……」


 里沙は無言で振り返ると、頬を少し赤らめながら正しい方向へ歩き始めた。


「おほん! 行くわよ!」

「はいはい」

「はーい!」


 職員室へ向う途中、里沙は歩きながら織田さんになぜ付いてきたのか質問をした。


「ところで、なぜ織田さんも一緒に?」


 織田さんはその場でピタリと足を止めると緊張しながら答えた。


「じ……実は、関野さんにモデルになってほしいの!」

「モデル? どこかで聞いたことがあるような……」


 俺は織田さんに助け舟を出した。


「この前の華愛子先輩は写真だったけど、織田さんのは絵のモデルだ」

「絵……?」

「うん。私、関野さんに惚れてるの!」

「惚れてる!?」


 里沙は少し後ずさりをして、身構えた。


「違う。そういう意味じゃなくて、美しさに惚れ込んだからモデルになってほしい!」


 織田さんは里沙の後を追うように近づき、手を取るとそう懇願した。


「わかったから! 落ち着いたら?」


 少し潤んだ目をした織田さんが里沙の手を取りながらお願いする場面は、薔薇の花で彩られているようだった。

 知らない人が通ったら勘違いされてもおかしくない。


「あっ! ごめん」


 織田さんは、冷静になると里沙から離れた。


「そう言ってくれるのは嬉しい。私でよければいつでも絵を描いて」

「やったー! ありがとう。里沙ちゃん!」


 織田さんは急に馴れ馴れしくなった。

 里沙は満更でもなさそうだ。


「じゃあ、これ以上はお邪魔しちゃうから私は戻るね」

「おう。お願いできてよかったな」

「本当に! ありがとねっ。鈴木!」


 織田はスカートをひらりと翻しながら廊下を駆けて行った。


「なんだか不思議な子ね」

「ああ。だけど、いい奴なことに違いはない」


 織田を見送ると、再び職員室に向かって歩き始めた。

 途中すれ違う生徒たちは里沙の姿を見ると、思わず隅に退いていた。

 頂点への君臨の仕方が違うだけで、ある意味番長みたいなもんだ。


「なぜ皆んな私のことを避けるの?」

「そりゃあ……。高嶺の花だからな。そう簡単には近づけないさ」

「変なの」


 里沙の顔は少し寂しげだった。

 その後、職員室に到着すると顧問の吉田先生のところへ赴いた。

 吉田先生は俺たちを見るなり、勢いよく話し始めた!


「お! 来たな! 完成したぞ、ほら!」


 机の上には丸められたポスターが置かれていた。

 俺たちの分だけでなく、SF研究部員全員のポスターもあった。


「ありがとうございます。さ、宏介にも手伝ってもらうわ」

「どういうことだ?」

「部長に頼まれて、全て部室に持っていくの」


 里沙はDルームの鍵を俺に見せつけると得意げにそう言った。

 そういうことか。差し詰め、部長が里沙に俺と運ぶように伝えたのだろう。部長の高笑いが頭に響くぜ。



 俺たちはDルームに着くと鍵を開け中に入った。

 ポスターをテーブルに置き、椅子に座り一息ついた。


「ふぅ。ちょっと休憩」

「サボりは良くないわ」

「そういうお前も座ってるじゃん」

「そうね。早く教室に戻って準備の手伝いしなきゃ」


 早く戻るべきだが、慌ただしい校内と隔離されたようにゆっくりと時間の流れるDルームは実に心地いい。


続く

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