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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
75/177

71 幼馴染にもう夢中

次の更新は1/2(火)です。

今日が今年最後の更新です。

皆さま、良いお年を。

 俺と里沙は座り、低い机の上に置いたノートパソコンのスイッチをつけた。

 あまり大きくないノートパソコンの画面を、お互いよく見えるようにするため、自然と寄り添う形となってしまう。

 里沙の顔があと少しで俺の顔にくっついてしまうような新近距離にある。

 相変わらず鼻腔をくすぐる石鹸の香り。

 俺はもうダメになってしまうかもしれない。


「準備完了ね。さっそく作るわよ」


 里沙は慣れた手つきで文章作成ソフトを開くと、その真っ白なページに題名を打ち込んだ。


『星ヶ原について』


 何のひねりもなく、シンプルなタイトルがただ黒い文字で打ち込まれただけだった。


「面白くないな」

「やっぱり? どういうタイトルにしようかしら?」

「そうだな……」


 俺は里沙の打ち込んだタイトルを消し、書き直した。


『迫る! 星ヶ原の真実について!』


「古臭い……」

「そうかな?」

「少し昔のニュースのキャッチコピーみたい」


 確かにそう言われてしまうと、古くさく感じる。

 こういうのってタイトルを考えることが一番難しい気がする。


 その後もタイトルを考えるだけに1時間は有してしまった。

 完全に泥沼にはまっていた。

 結局のところ、『星ヶ原とその伝説について』というありきたりなタイトルをつけた。

 長渕さんたちがつけていたようなタイトルだ。


 その後もああでもない、こうでもない、と言いながらレイアウトを決めたり、写真を載せたりとその場で決めながら進めていった。

 実に計画性のないこと。

 だけどこれが楽しいんだよな。


「写真はこっちの方が……」

「あっ……!」


 キーボードを打っていた俺の手に里沙の手が当たる。

 里沙は顔を赤らめ手を引いた。お互い沈黙が少し続いた。

 なぜ今更こんなに恥ずかしがっているのか。

 やっぱり、部屋に2人きりだからという状況が俺たちを狂わせるのか。


「おほん。こっちでいい?」

「あ……ああ。そうしよう」


 写真を里沙の決めた位置に持ってくると、俺は続きの文章を打ち始めた。

 それから作業を続けていく中で数回、俺と里沙が触れ合う時があった。

 時には勢い余って頭がぶつかったり、肩が触れてしまう時もあった。

 こいつワザとか!? ワザとやってるんだろ!?

 そう思えるぐらいの密着具合になっている。


「なぁ里沙」

「何?」

「少しひっつきすぎじゃないか?」

「そう?」


 里沙は気にしない風で、特に離れたりしなかった。

 そっちが離れないなら俺も離れないぞ!

 結局俺たちは、密着具合を保ったまま資料を完成させた。

 恥ずかしさやら、体温やらで熱くなってきたな。


「ふぅ。終わったな」

「何とか完成したわね。じゃあ明日、USBに入れて学校に持っていくわ」

「頼んだ。さて、そろそろ戻りますか」

「戻る前に一つだけ……」


 里沙が人差し指で1を作ると、俺の顔の真正面に突き立ててきた。


「な……何だ?」

「写真のことは2人だけの秘密だから!」

「言われなくてもそうする」

「絶対よ。秘密だから!」

「分かったって」


 俺と里沙の間には何かと秘密が多いな。

 別にいけないことをしているわけではないけど。

 里沙との秘密か……。

 悪い気はしない。むしろ大歓迎だ。


「これからも秘密を増やしていこうな」

「どういうこと?」


 勢い余って変なことを言ってしまった。


「何でもない。里沙の天然ぶりには驚くよ」

「天然じゃない! おっちょこちょいなだけよ」


 里沙は、ムッとした顔でそう答えた。

 ほらな。フォローになってないぞ。

 でも天然なところも可愛いからなぁ。


 俺は、里沙の全てが肯定的に捉えられてしまうという恋の盲目になっているかもしれない。


続く

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