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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
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69 ビタースウィートパーティ

 装飾品売り場に着くと、俺たちは当たり障りのない飾りを選んだ。

 ハロウィンが近いからか、かぼちゃの置物などそれっぽいものが売り出されていたので俺たちも意識して選んだみた。

 ハロウィンメイド喫茶。なんと神秘的な響きだろうか。


 カゴ一杯に装飾品を選び、会計をするために俺たちはレジに並んでいた。

 俺はこの時、ある名案を思いついた。


「山内、提案なんだが、女子の頭にハロウィンっぽい飾り物をつけるのはどうだ?」

「なるほど。鈴木君も意外とノリノリなんだね」


 何を隠そう、メイド喫茶をくじ引きの中に入れたのは俺である。

 口が裂けても言わないけどな。


「まあ、こういう時ぐらいディティールにこだわりたいだろ?」

「何か鈴木君らしくないね……。でも、その意見には僕も賛成かな」


 むむ。俺をムッツリだとでも言いたいのか。

 確かに山内が発言するのと俺が発言するのでは、その言葉に込めたれた意味が違ってくるような気がする。

 イケメンは何を言ってもポジティブに捉えられるからな。

 生まれた時点でレア度Sランクのガチャを引き当てたようなものだろう。


「女子のメイクに関しては私たちに任せてくれるかな?」


 さすが秋葉プロ。

 コスプレ喫茶で働いていた秋葉に任せておけば何とかなるだろう感があり、頼りになる。


「おー! なみっちやる気じゃん!」

「ちょっと燃えてきちゃった」



 その後、会計を済ませた俺たちは高校に荷物を置きに戻ることにした。

 駅前から高校に向かっていつものように歩く。


 その途中、俺はふと周りから取り残されたような感覚に陥った。

 何気ない日常。俺はこいつらと一緒にいていいのだろうか。

 当然のように過ごしているこの日常が、ある日崩壊してしまわないだろうか。

 そんな不思議な感覚を覚えた。


 俺の異変に気付いた秋葉が話しかけてきた。


「どうしたの? 体調でも悪い?」

「いや……。何でもない」


 俺の返事はどこか上の空だった。

 そうか、幸せってこういうことなのか。

 何気ない日常を何気なく過ごせることが幸せなんだ。

 ふふっ。我ながら笑っちまうぜ。

 こんな時にこんな大切なことに気づいてしまうとは。

 いや、こんな時だからこそか。

 俺の顔は自然とほころんだ。


「あれ? 今度は笑ってる。変な奴ー」


 笹川が俺の顔を覗き込んでいた。

 こいつも俺の大切な友達の一人だ。

 俺は唐突に笹川のことを褒めてみたくなった。


「ふふっ。笹川は綺麗だよ」

「え!? どういう意味!?」

「いや、ほら、その金髪がすごく美しいってこと」

「そ……そうかな……?」


 笹川は少し照れながら自分の髪を手櫛で解いていた。

 そして、前髪を指でクルクルさせながら続けた。


「私にとって金髪はコンプレックスだったからなー。褒められたのは初めてかも。えへへ」


 笹川はとても嬉しそうにしていた。


「なぁなぁ、そこまで褒めるんだったら撫でてくれないか?」

「へ?」


 俺が戸惑っていると、山内は肘打ちしてきた。


「ほら、早く。全く君ってやつは……」

「山内まで……」


 俺は恐る恐る笹川の髪を撫でた。

 シルクのようにサラサラな髪は俺の手に優しく絡んだ。


「これでいいのか……?」

「うん!」


 笹川のその突然のお願いの意味が俺にはよくわからなかったが、お役に立てたようで良かった。

 何だか笹川って猫みたいだ。


 俺が笹川の方を見ていると、肩をそっと叩かれた。

 そちらを振り返ると秋葉が少しムッとした様子でご立腹のようだった。


「私も撫でてよ……」

「え!?」

「嫌なの?」

「嫌じゃないけど……」

「けど……?」

「あー! 分かったよ!」


 俺は秋葉の頭も優しく撫でた。


「うん……!」

「あはは! なみっちも甘えたがりだね」


 笹川は爆笑してるし。

 秋葉は秋葉で何が「うん……!」だ。やってるこっちは恥ずかしいったらありゃしない。


「へぇ〜。鈴木君ってモテるんだ」


 山内は相変わらずの爽やかスマイルでそう言ってきた。


「お前ほどじゃない」

「本当かな? 僕なんて鈴木君の足元に及ばないよ」

「そういうお前は彼女いないのか?」

「残念ながらいないよ。あ、でも毎日ラブレターを受け取るとか、遊びに誘われたりとか色々あるかな」


 畜生! 聞くんじゃなかった。

 やっぱり俺よりモテモテじゃないか。

 でも、残念なイケメンだから以前言っていた通り長続きしないというわけだ。

 それでもそこまでモテたら勝ち組だ。


続く

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