66 マリッジに思いを馳せて
明日12/21(木)、明後日12/22(金)も諸事情により更新できません。
再開は12/23(土)です。
吉田先生はため息をつきながら頬杖うをついた。
「私の夫は優柔不断すぎなんだよなぁ〜」
「そうなんですか」
柚子先輩が皆んなを代表して返事をする。
「ああ。ご飯を食べに行こうと言っても、どこでもいいって言う。どこか遊びに行こうと言っても、どこでもいいって言う。とにかく主体性に欠けている」
「男の人にはビシッと決めてもらいたいですよね」
「本当そうなんだよ。私も決めてくれって言われれば決めるけど、もっとこう引っ張っていって欲しいな」
なるほど。女性は強引な男性に弱いのか。
「今回の喧嘩の原因もそれですか?」
「まあそうだな。もうそろそろ結婚記念日だから、記念に食事でもと思ってどこへ行くか相談したんだが……。結局、全部私任せ。イラッとしてしまってな」
「ふむふむ。では、一方的に吉田先生の方から怒ってしまったと」
「そういうことだ。はぁ〜」
吉田先生は、再び大きなため息をついた。
そして、チラリと俺の方を見た。
「男の目から見て今の話はどうだ?」
「そうですねぇ……。確かに優柔不断も良くないかもしれませんが、怒るのも良くないかもしれません」
「うーん……。私はどうしたらいいのか?」
「早く謝りましょう」
里沙が間髪入れずにそう言ってきた。
「早く謝って、素直な気持ちを伝えるべきです。貴方と一緒ならどこへ行っても幸せだと。だから、私は貴方にどこかへ連れて行って欲しいと」
「うっ……! 今更恥ずかしいな」
「でも仲直りしたいんですよね?」
里沙は吉田先生に顔を近づけ、彼女の瞳の奥底に語りかけた。
「そうだけど……」
「それと聞き方を変えてみてはどうですか? 『どこに行こう』じゃなくて『ここへ行こう』、『どこへ行くか決めて』と」
「それで変わるといいんだけどな。秋葉はどう思う?」
「私ですか……? 好きな男性のことだったら別にイラっとはしないと思います。先生も夫のことを全て愛してみたらどうですか?」
「すごいな……」
さすが秋葉だ。愛が重い。
「笹川も何かアドバイスをくれると助かる」
「気にしないのが一番じゃないですか? 私もなみっちと同じ意見で、夫の全てを受け入れると思いまーす!」
笹川は細かいこと気にしなさそうだ。
何でも笑って済ましそうなイメージがある。
きっと彼女なら世の男性のほとんどが、楽しく夫婦生活を送れると思う。
プチ女子会の結果、吉田先生から謝ることが決定した。
それもそうだ。夫として悪気はないはず。
夫婦っていうのも大変だな。
「花束を買って帰りましょう! ここには綺麗な花が売ってます!」
柚子先輩は立ち上がり、吉田先生に訴えかけた。
花束か。プレゼントされたら、意外と嬉しいかもな。
満場一致でそう決まったので、花屋さんに移動して少し高めの花束を購入した。
吉田先生は俺たちにお礼を言うと、先に帰って行った。
帰りの電車の中、俺は吉田先生のことについて思いを張り巡らせていた。
そして俺は、里沙と夫婦になったらどういう生活が繰り広げられるのか妄想してしまった。
「宏介、今日は結婚記念日よ。どこか行きたいとこある?」
「んー? どこでもいいぞ」
「またそれ!? たまには決めてよ!」
「そう言われてもなぁ……。お前とならどこに居たって幸せだよ。何なら家で豪華な食事でもいい」
「もう……!」
あああ! のろけ話のような妄想はやめよう。
里沙と結婚か……。
俺はそう考えるだけで、ドキドキした。
「何ニヤニヤしてるの?」
うわ! 里沙に気づかれた。
「ニヤニヤなんてしてない」
「してた。宏介ってたまにニヤニヤしてるけど、イヤらしいことでも考えてるの?」
「そんなわけないだろ! こうして里沙と居られて幸せだって……」
あっ……。
素直な気持ちを言ってしまった。
「ちょっと、今何て言ったの?」
何だ。聞こえてなかったか。
いっその事、正直に言ってしまおうか。
「いいや、何でもない。とにかく今日の動物は可愛かったな」
「あ、そうやって話をずらす!」
結婚か。
どういうものなんだろうか。ただ好きというだけなら上手く生活していけないということか。
こうやって色々考えてみると、結婚ということが得体の知れないものに思えてきてしまう。
続く




