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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
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60 夕暮れの屋上にて

 ある程度里沙と打ち合わせが進み、お互いの役割が固まってきたところで里沙はある提案をしてきた。


「……。ねぇ……」

「何だ?」

「まだ高校が閉まるまで時間があるから、校内探検してみない?」


 むむ。校内探検か。

 そう言われると、俺はまだ嵐ヶ丘高校を半分も知らないな。


「行きますか。まだ行ったことない場所が多いな」

「実は私も。何だかワクワクする。さ、まずは部室の鍵を返しに行くわよ」


 俺たちは再び職員室へ行き、鍵を返すと、まずは東校舎から見て回ることにした。

 東校舎には職員室はもちろんのこと、俺たち1年生の教室と2年生の教室がある。

 とりわけ変わったものはなく、いたって普通の教室が並んでいるだけだ。

 2年生の教室前の廊下を歩いている時、俺たちは同じ高校なのに異世界に来たような感覚に囚われていた。


「何だか緊張する。学年が違うだけで来ては行けないところ見たい」

「本当にな。カツアゲされないといいけど……」

「大丈夫よ。いざとなれば私がいるから」

「それはいいのか……?」


 確かに元番長の里沙なら、いざとなれば何とかなりそうな気がする。

 でもそれは、完璧美少女伝説破滅への第一歩となるだろう。


 嵐ヶ丘高校には校舎が3つあり、東校舎と西校舎、南校舎に別れている。

 また、運動場と体育館もあり、今は運動部の活動真っ只中だ。

 西校舎には3年生の教室と、理科資料室やら家庭科室やらの実技授業ができる教室が揃っている。あと、里沙と嵐ヶ丘高校で初めて会った時に連れてきてもらった図書館がある。


 時刻は18時過ぎ。あたりはうす暗い。

 さすがにこの時間ともなると、ほとんど誰もいない。


「ここ、行ってみない?」


 そう言って里沙が指さしたのは、屋上へと続く扉だった。

 階段の先にあるその扉は、俺たちを吸い込むかのように誘った。


「行っていいのか?」

「きっと大丈夫。ほら、行くわよ」


 里沙がドアノブに手をかけ、扉を開けた。

 一応鍵穴はあるが、閉まってないんだな。


「わぁ〜。綺麗」

「お! いい眺めだ!」


 そこからは、明かりの灯った幻想的な駅前の景色を見ることができた。

 しばらくその景色を眺めていると、後ろからシャッターの音が聞こえてきた。

 俺たちの他に誰かいるのかと後ろを振り返ったが誰もいない。


「今、シャッター音が聞こえなかった?」

「絶対に聞こえた」


 どうやら里沙にも聞こえていたらしく、それは確かに俺の聞き間違いではなかった。

 これは……。心霊現象というやつか?

 再び町の方を見ていると、またシャッター音が聞こえた。

 いる。俺たち以外の誰かが。

 しかし、振り返っても誰もいない。

 扉のあるところが出っ張りになっており、そこの物陰がとても怪しい。

 俺は、ズカズカと物陰に向かった。


「ひっ……!」


 見つけるより先に、誰かの声が上がった。

 ほらな。絶対にそこにいるだろ。


「誰ですか?」


 俺が声をかけると、物陰からひょっこりとカメラを持った女子が現れた。


「あの……すいません。2人の姿があまりにも映えたので。勝手に撮らせてもらいました」

「そうですか。隠れなくても大丈夫だと思いますよ」


 少しオドオドしたカメラ女子は俺と目を合わせると赤面しながら、目をそらした。


続く

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