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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
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59 サボ天使の微笑み

 駅前の100円ショップに入ると、俺たちは文房具コーナーへ向かった。

 ペン、ハサミ等掲示物の作成に必要な道具を一式揃えるためだ。

 その100円ショプは広く、幅広いジャンルのものを扱っている。

 中には100円以上するもの売っていたりした。


「あ! 呼ばれているね」


 柚子先輩が突然妙なことを言い出した。


「え? 知り合いでもいました?」

「宏介君も一緒に来る?」


 俺は柚子先輩に連れられて2人でその知り合いがいる方へと向かった。

 そして到着したのは植物コーナーだった。

 100円ショップには植物まで売っているのか。

 ……って俺たち以外、そこには誰もいませんけど?


「ほら彼女たちだよ」


 柚子先輩が指をさした先にはサボテンがあった。

 え!? 呼ばれてるってサボテンに!?

 柚子先輩、マジですか。


「ひょっとして……?」

「そうだよ! あの子に呼ばれたの。もう買うしかないね」


 柚子先輩は棚に置かれていた小さなサボテンを手に取ると、大切そうに運んだ。

 皆んなの元に戻ると、ちょうど文房具を一式カゴに入れ終わったみたいだった。


「どこ行ってたんだ?」


 部長がそう聞いたが、柚子先輩が答えるまでもなく分かったようだ。

 全員の視線が柚子先輩の手で持たれているサボテンに集まった。


「サボテンですか……」


 里沙が呆れたように聞く。


「うん。ほら、可愛いでしょ?」


 確かに植物として可愛いが、柚子先輩の愛情は一線を超えている気がする。


「そうだ! 今週末、発表の仕上げにサボちゃん公園に行くけど皆んなも来る?」


 柚子先輩の視線は佐々木部長に注がれていた。


「なぜ俺を見ながら言うんだ? 俺は行かないからな」

「え〜!? この前約束したじゃん! 行こうよ〜」

「ほら、そこの1年生たちが行きたそうにしているぞ」

「私は行きまーす!」


 笹川は元気良く手を挙げた。

 彼女は何にでも興味津々だ。


「じゃあ俺も行こうかな」


 一時だが柚子先輩に惚れた身の俺は、彼女について行くこと自体嫌じゃなかった。


「宏くんが行くなら私も行こうかな……」

「じゃあ私も行くわ」


 秋葉と里沙もサボちゃん公園行きが決定した。


「よかったな。さすがSF研究部の1年生だ! 楽しんでこい!」

「皆んなありがとう〜」


 柚子先輩はとても嬉しそうだ。

 その笑顔だけ切り取れば、天使のような微笑みだ。



 買い物を済ませ、100円ショップを後にすると、その日はそれで解散となった。

 近いからと言う理由で購入した物を預かると、俺と里沙は一緒にマンションへ向かった。


「ねぇ、まだ早いから高校に戻らない?」

「いいけど、何するんだ?」

「私たちもデータを作らないといけないでしょ? その打ち合わせを早くしたいわ」

「そうだな……。戻るか」


 高校に戻り、職員室へ行き、鍵を受け取ると、再びDルームへ入った。

 そこにいるのは俺と里沙だけであり、いつものような騒がしさはなく静まり返っていた。

 遠くから響いてくる吹奏楽部の練習の音が、余計に儚さを演出しているような気がした。

 里沙は椅子に座りテーブルの上にノートを広げた。


「宏介も座って。早速始めるわよ」

「おう」


 俺は自然と里沙の隣に座った。


「ちょっと! 何で隣に座るのよ。普通、向かい合いで座らない!?」

「あ。すまん。自分でも分からないが、なぜかこうなった」

「……。まあ、嫌じゃないならいいけど……」

「え……?」

「こっちの方が話し合いしやすいからよ」


 何だこれ。自分で作り出した状況とはいえ、放課後の部活で里沙と2人きり。しかも隣同士で座っている。

 いつもとは違うその感覚に俺はドキドキしていた。

 なぜかこのことは、誰にも言ってはいけない2人だけの秘密のような気がして、俺は嬉しかった。


続く

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