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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
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57 入部テストは落とし穴

  職員室に入ると、放課後ということもあってか事務作業をしている先生が大多数だった。

 俺の担任も何やら忙しそうに仕事をしていた。

 入った瞬間に目が合ったが、軽い会釈をしただけで特に話したりはしなかった。


 少し奥へ入ったところに、顧問の先生の席はあった。


「どうも。ポスターの手配をお願いしに来ました」

「お。来たな。毎年恒例のアレか」

「はい。それと、新人の紹介です」

「ほほぉ。これまた可愛いのが入ったな!」


 顧問の女の先生は、職員室なのに白衣を着ていた。


「よろしくお願いします。私は1年7組の関野里沙です」

「俺は1年2組の鈴木宏介です」

「同じく2組の秋葉奈美恵です」

「うむ。よろしく。私は吉田霞。生物を教えている」


 自己紹介が終わると吉田先生は俺たち1年生組をじーっと見回し、ニヤッと笑った。


「そうだ! 入部テストがまだだったな」

「入部テスト……ですか?」


 里沙が不安そうに問いかけた。

 横で部長もニヤッと笑った。


「先生、アレをやるのですね」

「ああ。名ばかり顧問で申し訳ないが、これだけは欠かせない」

「いやいや、助かってます」


 入部テストとは何が行われるのだろうか。

 先生と部長の不気味なニヤけ顔が怖い。変なことをさせられないといいが……。

 先生はいわゆるリケジョってやつだ。とんでもないことを言ってきそうで里沙が不安になる気持ちもわかる。


「さて、鈴木、関野、秋葉、私についてくるんだ」


 吉田先生は立ち上がり、手招きをした。


「では先生ポスターの手配をお願いします」

「了解。出来上がったデータをもらったらすぐに印刷できるようにしておこう」

「はい!」


 職員室を出ると、部長とはそこで別れた。


「楽しんでこいよ〜!」


 気楽なものである。部長、あなた達も入部テスト受けたはずですよね。

 内容が分かってのあの笑みか……。うう。身震いがする。



 しばらく、校舎の中を歩くと理科室の隣にある理科資料室にたどり着いた。


「ここだ。さあ中に入るぞ」


 ゴクリ。俺は、固唾を飲んだ。

 中はどうなっているのだろうか。普段入ることのない、そのマッドサイエンスな響きに俺は恐ろしい妄想を膨らませた。

 俺の隣で里沙と秋葉も不安そうな顔をしている。


 先生が扉を開けると、予想に反した光景が目に飛び込んできた。

 机に積まれた何冊もの本。床にも散らばっている。

 加えて色々な道具やら資料も床にばらまかれている。

 資料なのかゴミなのかよく分からない。

 理科っぽいところで言うと、棚に並べられたホルマリン漬けの標本や骸骨の模型、人体模型である。

 これ、授業で使うことあるのか?


「見ての通り、ひどい有様だ!」

「まさか……?」

「そのまさかだ! 入部テストはこの部屋を綺麗にすることだ。私の悪い癖で、片付けが苦手なんだよな……」


 はぁ。心配して損した。

 俺たちは部屋の片付けに利用されるというわけですね。


「先生。どのように片付ければいいですか?」


 お。秋葉はやる気満々だな。確かに、掃除とか好きそうだ。


「適当でいいぞ。本はそこの棚に。紙類の資料はそっち。道具は……適当に空いてるスペースに置く」


 空いているスペースといっても無いに等しいぞ。

 これは整理のやりがいがありそうだ。


「マスクと手袋等、掃除道具はそこの引き出しに入っているから。じゃあ、私は職員室に戻る。終わったら教えてくれ」

「はい」


 吉田先生は軽快に職員室へと戻って行った。

 俺たちは早速、マスクと手袋をはめると掃除を始めた。



「すごいね……」

「ええ。時間がかかりそう」

「今日中に終わるか?」


 各々がどう片付けようか考えている。

 結局、3人で手分けして俺が本、里沙が道具、秋葉が資料の役割分担となった。



 片付けようと机の上に置いてある本をとりあえず1冊手に取ると、『人体の不思議』と書かれた本だった。

 ふーん。俺が適当なページを開くと、そこには女性の裸が載っていた。

 いくら勉強の本といえど、見てはいけないものを見てしまった。


「何見てるの?」


 気づくと里沙が俺の後ろで本を覗き込みながら、ジト目で呆れたように見てきた。


「いや、たまたまだ! こんな写真が載ってるなんて知らなかったんだよ!!」

「へぇ〜。どうだか……」

「信じてくれー!」


 くっ……! この片付け、早く終わらせたいが一筋縄ではいかないな。


続く


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