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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
夏の終わりのヤンデレちゃん編
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52 ふわふわライブ

 俺はポケットに入れたスマートフォンを取り出し、時間を確認した。

 ライブ開始まであと10分。スタッフらしき人が機材の最終チェックをしにステージへ来たのが分かった。


「もうすぐだね」


 秋葉はすごく楽しそうにしている。


「俺も何だかワクワクしてきた!」

「始まったらあっという間だよ」


 気合い入ってきた。

 思う存分楽しむぞ。


 時間になると、照明は全て落ちた。

 オープニングの音楽と一緒にバンドメンバーたちがステージに出てくる。

 観客一同は、拍手で迎えた。

 俺も負けじと拍手でメンバーの登場を讃える。


 メンバー全員が立ち位置に着くと一気に照明が当てられ、早速演奏が始まった。

 いきなりウィッチメントの主題歌だ。

 うおおおおおおおお!! いきなり飛ばしてくれる!


 演奏が始まった瞬間、俺は前に押された。


「うおっ……!?」

「あはは。ライブが始まるとみんなノリノリになるんだよ」


 秋葉も腕を上げながら楽しそうにはしゃぎ始めた。

 どうしたどうした!? さっきまで大人しく待っていた人々が突然ノリノリで腕を振りながら体を動かしている。

 中には飛び跳ねている人もいる。

 これは……。俺も乗るしかないのか? この流れに。


 俺も音楽に合わせて、腕を振ってみた。

 最初は恥ずかしかったが、曲も中盤になると完全に慣れていた。

 あれ? この曲ってこんなにノリのいい歌だったんだな。

 ってか、最高の曲じゃないか!?


「クロウズの曲、最高だな!」

「……! うん!」


 何曲か演奏されるうちに俺も気づけば無我夢中で楽しんでいた。

 周りの人と少しぐらい腕が当たってもお互いにお構い無しだ。


 そして、俺は理解した。これはただの鑑賞ではない。

 俺たちはぶちまけに来たのだ。全てのストレスを。全ての悩みを。

 音に合わせて、無我夢中で解放するしかない。

 クロウズの奏でる音とシンクロして、全てをぶつけろ!


 ライブは激しさを増す中、俺を少し正気に戻す出来事があった。

 いや、正気というのはおかしいかもしれない。

 皆んなノリノリで前のめりになるため、必然的に密度は高くなる。

 とうとう俺と秋葉は体が密着するぐらいの距離になってしまった。

 当然、動けば秋葉の体に触れる。


「宏くん……! ごめん! だけど、気にしないから」


 やばい。完全に秋葉の胸が俺の体に密着している。

 当たっているだけで幸せに包まれそうな柔らかさだが、動くと余計に感触が伝わってくる。

 くっ……! 秋葉と少し離れて持ち場を確保しなければ!


 人の流れに合わせてタイミングを計る。

 今だ! そう思った瞬間、俺は秋葉と離れることに成功した。

 ふぅ……。なんとかセクハラ案件は回避できた。

 しかし、そのままの勢いで俺は反対方向に流された。

 そして、全く知らない女の人に密着してしまった。

 その人はライブに夢中で気にしていないようだが、俺は気になってしょうがなかった。


「宏くん、駄目だよ。引っ付くなら私にして」


 秋葉は俺の体を引っ張り自分の体に密着させた。

 助かったのか、助かってないのかよく分からない!


「うん……。一緒に楽しもう」

「あはは……。そうだな……」


 もうどうにでもなれ!

 俺はできるだけ秋葉の感触を気にしないようにしながら、ライブに集中した。


 秋葉が最初に言っていた通り、あっという間にライブは終わってしまった。

 アンコールも終わるといよいよ退場だ。


「はぁー。 楽しかったね」

「おう! 最高だった!」


 俺たちは汗だくになっており、不思議な達成感と開放感を感じていた。

 これがライブの魅力か……。

 次も来ようかな。


「秋葉、誘ってくれてありがとう。もう完全にはまってしまったな」

「一緒に来てくれてありがとう。宏くんと見れて、いつもより楽しかったよ」


 こうして俺たちは、ライブハウスを後にした。


続く

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