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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
夏の終わりのヤンデレちゃん編
53/177

51 コスプレ隊長登場!

 お互いに着替え終わると、開場まで時間があったのでその辺をぶらつくことにした。

 秋葉は、アニメッカへ行きたいと言うので、それに従った。

 アニメッカへ到着し、2階に上がるとアニメのグッズが山ほど売られている。

 今一番旬のアニメはウィッチメントらしく、売り場が一番広い。


「ウィッチメントのグッズすげーな」

「そうだね。何買うか迷っちゃうよね」


 俺は商品全てにさっと目を通し、良さげなものがないか確認した。

 イヤホンジャック……?

 『ゴンスケ』というウィッチメントに登場する、部長曰くマスコットキャラのキツネがモチーフの物だった。

 初めて見るイヤホンジャックという物が気になって手を伸ばした。


 ふわっと誰かの手に触れる。

 別の誰かもイヤホンジャックに手を伸ばしていたのだ。


「あ……」

「まただね……」


 俺の手が触れたのは秋葉の手だった。

 またこの展開か……。

 今回は秋葉も驚いて手を引かない。


「ふふふ。宏くんの手、温かいね」

「すまん……」


 俺は手を引き、イヤホンジャックを譲った。


「いいの……?」

「ああ。そもそも何に使うか分からないし、興味本位で手を伸ばしただけだ」

「でも、最後の一個みたいだから宏くんに譲るよ」


 俺はあることを思いついた。


「ありがとう。お言葉に甘えて」


 イヤホンジャックを手に取り、レジを済ませると店の外へ出た。

 そして、秋葉にイヤホンジャックを手渡した。


「はい、これ」

「え……?」

「秋葉にあげるよ。プレゼントだ」

「本当に……?」

「うん。俺より秋葉に使われた方がゴンスケも幸せだろう」

「ありがとう!!」


 秋葉はとても嬉しそうにイヤホンジャックを鞄にしまっていた。



 その後、開場まであと少しというところで俺たちは整理券番号順の列に並ぶことにした。

 そこに向かう途中、背の高いコスプレをした大人の女性とすれ違った。


「あら。奈美恵ちゃんじゃない。久しぶりね」

「野間隊長! お久しぶりです」


 隊長……?

 一体何の集団だ?


「あらあら。こちらは例の彼氏かい?」

「あ。彼氏じゃないんですけど……。でも、私の好きな人です!!」

「ほほう。やるじゃないか、少年よ」

「いや……その……どうも初めまして」


 正直、ここまでど直球に言われると反応に困る。


「初めまして。野間です。コスプレ喫茶で一緒に奈美恵ちゃんと働いていました」

「あ、そうなんですか! 俺は鈴木です。宜しくお願いします」

「そうなんだよ〜。野間隊長にはすっごくお世話になりました。私たちバイトをまとめてくれる皆んなの憧れのリーダーです」

「よせ。恥ずかしい。私は奈美恵ちゃんが辞めると聞いた時、泣きたくなったよ。好きな男に全力を注ぐから辞めたいって……」

「は……ははは……」


 俺は笑うことしかできなかった。


「その原因が目の前にいるわけだが……。鈴木君。男なら奈美恵ちゃんを幸せにしてあげろよ」


 何と答えていいのやら。

 秋葉は隣でクスクスと笑っていた。


「隊長、ありがとうございます。隊長も早く素敵な人見つけてください」

「よ……余計なお世話だ」


 とても綺麗で頼り甲斐のありそうなお姉さんだが、彼氏がいないのか。


「野間さんみたいな綺麗な人だったらすぐに素敵な人が見つかりますよ」

「な……!? う……うるさいっ!」


 野間さんは赤面しながらそう答えた。


「私だって好きで独り身なわけではない。そうだ鈴木君……」


 野間さんは俺の顎に手を当てながら顔を近づけてきた。


「私と付き合ってみるか?」

「は……はい!?」

「ちょっと! 野間さん!!」


 秋葉は慌てふためいている。


「ふふふ。冗談だよ。やっぱり奈美恵ちゃんは可愛いな。食べちゃいたいぐらいだ」


 野間さんはそう言いながら、次は秋葉の顎に手を添えて顔を近づけていた。

 秋葉も思わず顔を赤らめている。


「それじゃあ、元気でな。たまには連絡してくれ!」


 野間さんはコスプレ喫茶に出勤すると言い、去って行った。

 俺たちは彼女の大人の色気にドキドキした。



 いよいよ、俺たちの順番が来た。

 開場され番号順に入場していくのだが、俺たちは割と早い段階で入れるようだ。

 並んでいる最中に秋葉に暗号のような説明をされた。


「1,000人キャパに対して私たちの番号は100番と101番。前の方に行けるから、開場したらすぐにドリンクを引き換えてロッカーに荷物を預けよう」

「お……おう」

「それから、このバンドは激しいモッシュとかダイブはないから大丈夫だと思うけど、それなりの覚悟はしておいてね」

「ええ……」


 俺たちは歌を聴くだけだよな……?

 秋葉はワクワクとギラギラが織り混じったような、どこかの戦闘民族みたいな顔つきだった。


 中に入ると、ドリンク引き換えカウンターがあり、その周りにロッカーが並んでいた。

 ライブ会場は、更に壁で囲われているという二重構造になっている。


 俺は秋葉に手を引っ張られながら、されるがままに行動を行っていた。

 水をもらい荷物を預け、開場に入ると、ステージが目の前にあると言ってもいいぐらいのところに立つことができた。

 スタンディングと聞いていたが、こう言う感じなのか。

 特に導線とかもなく、空いている場所で立ちながらライブを鑑賞するというスタイルだ。

 会場内のクーラーもよく効いており、少しいたら寒くなりそうだ。


 そして、続々と入ってくる人たちによって、俺たちの周りは埋め尽くされた。

 すでに人の熱によって周りは温められている。

 クーラーが寒すぎるということはなさそうだな。


「すごい人だな」

「前の方はこんな感じだよ。今日は楽しもうね」


 ライブが始まるまで時間があったので、秋葉と話しながらステージを眺めつつ待っていた。

 会場内は薄暗く、明かりもほんのわずかしか灯されていない。

 まだ始まってもいないのに、ステージから観客席まで伝わる空気に俺の心は震えていた。

 これがスタート前の雰囲気。会場にいる誰もが今かいまかと待ちわびている。

 俺はすっかり、その世界に飲み込まれていた。


続く

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