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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
夏の終わりのヤンデレちゃん編
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49 撫で撫でしてあげる

 亜子でも入ってきてくれないかな。

 そうすれば、少しは俺も落ち着けるだろう。

 いかんせん、女子と2人きりになるのは慣れていない。

 でも、よく考えてみれば最近の俺は女子と絡みすぎではないか。

 ひょっとしたらその疲れが蓄積していた!?

 贅沢な疲れだ。全国のモテない男子連合軍に後ろから刺されてしまう。


「ぼーっとして、また体調悪くなってきたの?」

「え……? いや、大丈夫だ。確かにぼーっとしてるが風邪のせいではない」

「変なの……」

「里沙はまだ帰らなくてもいいのか?」

「何言ってるの。すぐそこなんだから明日の朝までだって看病できるわ」

「……。お願いしようかな」


 俺もたまには変化球を投げてみる。


「じょ……冗談よ! おばさんに看病してもらいなさいよ」


 ふはは! ここでど直球ストレートを投げてやろう!


「いや、里沙に看病してもらいたい」

「何言ってるの!? 冗談だから! それに看病するまでもないでしょ」

「ははは! ちょっとからかってみただけだよ」

「もう……!」

「でも、冗談じゃなくても嫌じゃないから。このまま居てくれても全然構わん」

「本気……?」

「おう」

「さすがに朝までは無理だけど、しばらくここにいるわ。何でも言って。今日はお世話係なんだから」

「助かる。じゃあ早速、喉が渇いたから冷蔵庫の中にある水を持ってきてくれ。母さんがいるから場所を聞けば分かるはずだ」

「了解」


 里沙は冷蔵庫へ水を取りに行った。

 完全にパシリじゃないか。里沙をパシリねぇ……。

 昔と全く逆の状況だ。昔はよくしょうもないことでパシリに使われていたな。

 色々と思う事はあるが、今はあいつに思い切り甘えてみよう。


 里沙は水の入ったコップを持ってきた。


「ありがとう」

「はい。じゃあ飲ませてあげる」

「は?」

「大人しくしてるのよ」

「さすがに飲みにくくないか?」

「宏介に拒否権はないの。今日はお世話係りの私がルールよ」


 恐ろしい看病があったもんだ。


 里沙は俺の口元にコップを運び、傾けた。

 徐々に水が俺の口の中へ流れ込んでくる。

 もっと力強く流れ込んできて、むせるのが落ちだと思ったが、意外と優しく飲ませてくれた。

 割と喉が渇いていたのですぐにコップは空になった。


「よしよし。よく飲めました」


 里沙は俺の頭を撫でた。

 マジか!? 里沙に撫で撫でされたぞ。

 何というプレイに晒されているのだろうか。


「次は何がお望み?」

「えーと……」


 まさかこの先もずっとこの調子で続くんじゃないだろうな。

 絶対にお世話というものを勘違いしている。

 今、俺は里沙のペットにされている。

 きっとそうに違いない!!


「じゃあ、そこの床に置いてある雑誌を……」


 その瞬間、俺はまずい事を思い出した。

 あの床の雑誌を撮ってもらったらベッドの下が見えてしまう。

 男子諸君なら分かると思うが、ベッドの下と言えばあれである。


「これでいいの?」


 里沙は雑誌に手を伸ばす。

 そして、ベッドの下に目線を移した。


「あ……!」


 見つかってしまったか!


「ど……どうした?」


 俺は素知らぬふりをして里沙に問いかけた。


「何でもないわ。ちょっと思い出しただけ。はい、雑誌」


 里沙は目を泳がせたかと思うと、何事もなかったかのように俺に雑誌を渡した。

 しかし、確実に秘蔵のコレクションを見られたのは間違いない。

 お互い何も言わなかったが、少しの間、何とも言えない変な空気が漂っていた。


 俺は里沙にとってもらった雑誌を読んでいると、里沙も俺の隣に来て一緒に雑誌を見始めた。

 俺が読んでいたのは、亜子が暇つぶしにと貸してくれた色々な場所の紹介が載っているお出かけ情報誌だった。


「可愛い!」


 里沙が反応を示したのは、水族館のページでペンギンの子供が生まれたという記事だった。


「今度行くか?」

「絶対に行くわ。子供が育たないうちに」


 俺は亜子にもらった水族館のチケットを思い出した。

 机の引き出しを開け、チケットを取り出す。


「ちょうどチケットが2枚ある。近いうちに行こう」

「本当!? ありがとう!」


 里沙は満面の笑みを浮かべながら、再び俺の頭を撫でてきた。

 本当に何だろうな、この状況。ものすごく照れる。


 その後も里沙に頼みを聞いてもらっては、撫で撫でされるという謎のやり取りが続いた。

 そして、夜ご飯の時間が来ると里沙は帰ることになった。

 俺も立ち上がり玄関まで見送りに行こうとすると、止められた。


「見送りはいいわ。安静にしてて。その代わり……」


 里沙は少し躊躇った。


「その代わり……?」

「その代わりに私の頭も撫で撫でして!」

「へ?」


 俺は言われるがまま里沙の頭を撫でた。

 サラサラの髪が心地いい。


「これで良かったか?」

「うん」


 俺に撫で撫でされた里沙は満足げな表情で帰って行った。



 昨日とは違い、食欲もある。お腹も空いているので、普通に食べられそうだ。

 母さんに呼ばれ食卓に着くと、開口一番、里沙と秋葉のお見舞いについて聞いてきた。


「今日来てたのは、里沙ちゃんと誰?」

「クラスメイトだよ」


 なぜか亜子の方が先に答える。


「そうなの。よく知ってるわね」

「うん。今日私も挨拶したから。それにただのクラスメイトじゃないよ。お兄ちゃんのことが好きな子だね」

「まあ! あなた聞いた!?」

「ごほっ……! ああ……。宏介! 里沙ちゃんとはどうなったんだ!?」


 俺が会話に参加するわけでもなく話は進んでいく。


「どうもなってないし、亜子も勝手に話を進めるなよ」

「えー、だって本当でしょ〜?」

「違う」


 いや、まあ当たってるけどな。

 ここは否定しておかないと面倒くさいことになる。


「男なら落とし前をつけろ。浮気は許さん!」


 親父はそう言うと、豚カツを力強く口に入れ頬張った。

 俺も負けじと豚カツを食べる。


「だからそう言うのじゃないって」

「お兄ちゃん、いい加減認めたら? 私は里沙姉とじゃないと許しません!」

「亜子!」

「いつでも彼女の紹介は待ってるから」

「母さんまで」


 着々と逃げ場が無くなってきている。

 そりゃあ俺だって里沙と付き合いたいよ。


「全く、最近の男は……。いいか、父さんの頃はなぁ……」


 その後、なぜか親父の説教が続いた。

 俺って悪いことしてないよね。頼むから勘弁してくれ。


続く

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