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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
夏の終わりのヤンデレちゃん編
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43 夏の終わりのヤンデレちゃん

 ある日の放課後、俺と秋葉はSF研究部に行かず、校舎の屋上で2人きりになっていた。


「話って……?」

「その……告白の返事をしようと思って」

「うん……」


 決断は早いほうがいい。女子を待たせるのはご法度だ。

 秋葉は少し儚げな顔をして俺を見つめていた。


「ごめん。俺は……」

「待って!」


 他に好きな人がいる。そう言おうとした矢先、秋葉に止められた。


「その先は言わないで。聞きたくないよ……」

「う……」


 まずい。秋葉の声が震えている。今にも泣きそうだ。


「私も頑張るから! 関野さん以上になるから!!」


 秋葉はいつも以上に声を荒げてそう言った。

 やはり里沙のことだと分かっているようだ。


「もう1度だけチャンスをください! いつかまた私から告白するから……。その時は最後の返事として受け入れるよ……」

「あ……ああ……」


 駄目だ。はっきりと断れなかった。

 俺の心が秋葉に向くことはないはずだが、ここまで言われると断り辛い。


「ごめんね、自分勝手で。でも、どうしても宏くんのことが好きなの……」


 秋葉は俺に抱きついてきた。


「わ!」

「……」


 その後数十秒、お互い何も言わずそのままだった。

 そして、秋葉は俺から離れると、とうとうその片鱗を見せはじめた。


「ふふふ。宏くんは私のものなんだから……。一生大切にしてあげる」

「へ……?」

「絶対に私以外を愛せないようにするんだから……」


 あ……秋葉さん……!?

 キャラ変わってませんか!?


「それじゃあ、SF研究部行こっか」

「お……おう」


 俺はその変わりように戸惑った。


 部室に着くと、すでに皆んなは集まっていた。

 珍しく里沙と笹川が2人でゲームをやっている。部長は書類を机に広げ、整理しているようだ。


 すると、秋葉は素早く部長の前に座った。


「佐々木部長。恋のお悩み相談室いいですか?」

「へ? どうした?」

「好きな人について相談したいことがあります」


 部屋にいる人全員に聞こえるような声で話しているので、そこにいる全員が秋葉に注目していた。


「何なに〜? 奈美恵ちゃんの恋バナ?」


 柚子先輩も興味津々でこちらにやって来た。

 里沙と笹川もゲームを止め、こちらを見ている。


 部長は周りを見るとメガネをクイッと直した。


「いいぞ! 何でも相談してみろ!」

「はい! 私は宏くんのことが好きなんですがどうしたら振り向いてくれるでしょうか?」


 ええ!? いきなり!?

 弩級のストレートが飛んできたぞ。


「宏……くん……?」

「あ、彼のことです」


 秋葉は俺の方を見た。


「なるほど。宏介だから宏くんか。いい呼び方じゃないか……」


 そして次の瞬間、皆んなが同時に驚いた。


「えええええええええええええ!?」


 部長も予想外の相談に驚いている。


「本当か!? 鈴木のことが好きなのか?」

「はい……。結婚したいぐらいには……」

「け……け、結婚!?」


 里沙と笹川も立ち上がり、こちらに寄ってきた。


「マジか〜。鈴木となみっちが結婚かー!」

「あはは。おめでたいね」


 笹川と柚子先輩は俺たちを囃し立てた。

 一方里沙は何も言わずにその場でニコニコしながら立っている。

 これはまた機嫌最悪モードじゃないですか。


「ふむ。この相談の答えは簡単だ。付き合って、将来結婚すればいい。シンプルな答えだろぉ?」

「でも……宏くんには他に好きな人がいるみたいです……」

「何っ!? そういうことか……。誰とは聞かないが、それはハードルが高そうだな」


 結局、恋のお悩み相談室は、はっきりとした答えを出せないまま閉店してしまった。

 だが、SF研究部には秋葉が俺のことを好きであるとはっきりと知られた。

 しかも俺には他に好きな人がいることも。


 秋葉よ、怖いくらい積極的になったな。

 俺もお前みたいになれたらどれだけいいことか。



 その日、初めて里沙と話したのは家の玄関の前でだった。

 途中皆んなと別れてからここに来るまで、どれだけヒヤヒヤしたことか。


「ねぇ。秋葉さん何かあったの?」

「実は、告白の返事をしようと思ったんだが……」


 俺は今日あったことを里沙に話した。


「そうなの……。前も聞いたけど、他の好きな人って誰?」

「それは……」


 俺は言葉に詰まった。

 ここは思い切って里沙のことだと言ってしまいたい。


続く

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