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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
素晴らしき高校生活と恋の始まり編
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41 愛を抱きしめて

「こっち向いてよ」

「え……?」

「いいから……」


 俺は里沙に促されるまま寝返りをうった。

 もちろん、里沙もこちらを向いている。

 顔が近い。なんだこの状況は。


「ふふっ。顔が近いわ」

「そりゃこうなるだろ」

「あはは。おかしい」

「さすがに恥ずかしいんだが」


 そして里沙は俺の目をまっすぐ見つめながら話し始めた。


「宏介。気づいてる?」

「ん? 何だ?」

「宏介のこと好きなのは秋葉さんだけじゃないってこと」


 何っ!? 誰だ? 全く気づかなかったが……。

 ってか何でそんなにモテ始めたんだろうか。

 不思議でしょうがない。


「分からない。一体誰だ?」

「秘密よ。女の子の秘密はそんなに簡単に話しちゃいけないの」

「むむ。気になるな……」

「本当、鈍感ね」

「その辺はよく分からない」

「はぁ……。何だか眠くなってきたわ」

「そろそろ寝るか」


 俺たちは再び背を向け合った。

 少し時間が経ち、この状況に慣れたのか先より落ち着いていた。

 それからすぐに里沙はスゥスゥと寝息を立て、寝始めた。


 全く。鈍感なのはどっちなんだ。

 俺の心をこんなに惑わせて。


 俺は、はっきりと気づいた。

 俺が好きなのは里沙だと。


 心をモヤモヤさせていた謎の感覚の正体は、結局のところ『好き』という恋愛感情そのものだった。

 秋葉に告白されるし、里沙のことが好きになるし。

 最近の俺はどうしてしまったというのだろうか……。


 感情の正体がはっきりしたのはいいが、現実的な状況としてややこしくなったな。

 秋葉に素直な気持ちを伝えなくてはいけないのだが、心苦しい。

 いや、女子を待たせるのも駄目だと思うが、その返事を聞いた秋葉はどんな顔をするだろうか。

 考えれば考えるほど胸が締め付けられる。


 様々な思いを巡らせながら眠りに落ちようとしていたその時、俺の体も物理的に締め付けられた。

 その衝撃に、俺は一気に覚醒した。

 柔らかい感触が俺の体を抱擁している。

 どうした!? 気がおかしくなったか!?

 そもそも先に寝たはずだよな。

 俺は耳を立てると、里沙はスゥスゥと寝息を立てていた。

 良かった……。寝てる。いや! 良くない!!


「里沙! 里沙!」


 呼びかけてみたが、起きる気配がない。

 里沙はどんな夢を見ているのか知らないが、俺の体に必死に抱きついている。

 不可抗力だ。これは仕方ない。誰も悪くない。

 と必死に自分の心に言い聞かせ、心を落ち着かせようとした。

 幸い、背中を向けた形で抱きつかれているので、まだ正気を保つことができる。


 しかし、やっぱりこれはまずい!

 俺は爆発しそうなほど体が火照ってきた。

 誰か助けてくれええええええ!!


 少しずつほどいていくか。

 俺は体を動かすと肘が里沙の胸に当たった。


「んっ……」


 里沙が色っぽい声を上げる。

 すまん! マジですまん!!

 起きたかと思ったが、それでも里沙は起きなかった。


 このまま少しずつ体を前に動かす戦法で行こう

 俺は里沙から逃げるように体を動かした。

 いい感じでほどけつつある。

 このままいけば作戦成功だ!


 しかし、あと少しというところで作戦は失敗に終わった。

 里沙は再び俺を抱きしめ直した。

 うわあああああああああ!

 何でこうなるの!

 しかも今回は里沙の足まで俺の体に絡んできた。


 うう……。諦めよう。

 俺は里沙に抱きつかれるがまま、朝まで一睡もできなかった。



 朝、里沙は俺に抱きついたまま目覚めた。

 俺は寝たふりをしていた。


「ひゃっ! 宏介……?」


 無反応で寝たふりを続ける。


「寝てるのね……。良かった……」


 里沙は布団から出て、立ち上がった。

 薄目で里沙を確認すると、顔を真っ赤にしていた。

 俺の顔色は大丈夫だろうな?


 里沙は窓際まで行くと、カーテンを開けた。

 朝日が部屋に差し込む。


「ん……? もう朝か……?」


 俺はあくまで朝日によって目覚めたという演技をした。


「おはよう。今日もいい天気ね」

「おはよう」


 窓際に立つ里沙の方を見ると、朝日を浴びた神々しい美少女がそこに立っていた。

 ああ。こんな日常の中でも里沙が輝いて見える。

 里沙が好きということを認識した俺だが、そのせいで遠い存在になってしまったような気がした。


「どうしたの? そんなにぼーっとして」

「まだ眠いな……」


 俺はごまかしたが、本当は里沙に見とれていた。


続く

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