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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
素晴らしき高校生活と恋の始まり編
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34 幼馴染と恋バナ

 カメラよし、ノートよし、筆記用具よし、お泊りセットよし……。

 長渕さんから連絡のあった通り、15時に星狩村へ着くように家を出る。


「お兄ちゃん、どこ行くのー?」

「ちょっとな、部活の用事で明日まで泊りで行ってくる」

「答えになってないよ」


 俺が家を出ようとすると、亜子が付いてきた。

 見送りに来るつもりだ。


「えへへ。寂しいから見送るよ」

「珍しいな……。いや、玄関まででいいよ」

「いいから!」


 亜子は俺と一緒に外に出た。

 もちろんそこにいたのは、里沙である。


「あ、里沙姉だ。へぇ〜、2人でお泊りデート?」


 こいつ、俺たちを冷やかすために来たな。


「ば……ばか! そうじゃない!」

「そうよ。そんなこと言うと、お土産買ってきてあげないわよ」

「えええ。ゴメンなさい」


 お土産って……。あの村に特産品があったとは思えないが。


「わかったら、黙っておくこと。ね」

「はーい」


 里沙は亜子の頭を撫でながら大人しくさせていた。

 亜子もまんざらではなく、満足そうだった。



 前と同じように、嵐ヶ丘から稲垣まで電車で移動し、そこからバスへ乗り換えた。

 バスに乗っている間、里沙は秋葉について色々と聞いてきた。


「秋葉さんと宏介ってとても仲がいいみたいだけど、何かあったの?」

「うーん、まあ色々な。正直、イメチェンには俺も驚いた」

「色々って何よ?」


 コスプレの秘密を知っているとか、告白されたとか……。

 とてもじゃないが言えない。


「秋葉も友達が少ないから、単純に俺と仲が深まっているんだ」

「それ以上の何かを感じるけど……。ひょっとして、秋葉さんは宏介のことを好きなんじゃないの?」


 ドキッ! これ以上ごまかしても仕方ない。

 ここは素直に言うべきか。


「じ……実は、告白された」

「告白!?」

「そうだ。頼むから他の誰にも言わないでくれ。里沙だから言えることなんだ」

「そ……そう。それは良かったじゃない。それで、返事は!?」

「してない。できなかった……」

「できなかった……?」


 里沙の顔が浮かんだから、と言えたらどれだけ楽だろうか。


「うん。いい加減な返事はできないと思って」

「そういうことね。乙女をあまり待たせちゃ駄目よ。あ、でも時間があるならじっくり考えたほうがいいかも」


 どっちなんだ……。

 そう言った里沙の顔は少し焦っているように見えた。


「ん? 何か様子がいつもと違うが大丈夫か?」

「そ……そう? だ……大丈夫よ」

「汗をかいてるみたいだが?」

「うん。ちょっと暑くてね。このバス、クーラーが効いてないのかな」


 キンキンに冷えているぞ。

 むしろ寒いくらいだと思う。


「体調が悪くなったらいつでも言えよ」

「ええ。ありがとう」


 里沙に聞いてもらえてよかった。

 これで気が少し楽になった。

 本当に里沙以外には相談できないからな。

 里沙にならどんな秘密でも話すことができる。

 そう、俺たちはそんな仲なんだ。

 正直、今はこいつといる時が1番心が落ち着く。

 ふふ。昔の里沙なら考えられないな。

 ずっと一緒にいてもいいぐらいだ……。


 ずっと一緒に……? それってどういうことだ?

 何を考えているんだ俺は?


「何? 先からこっちを見て」

「え!? すまん」


 里沙に話しかけられ、俺は我に返った。


 星狩村に着くと、俺たちは長渕さんの家に向かった。

 チャイムを鳴らすと長渕さんの奥さんが出てきた。


「あら、いらっしゃい。話は聞いてるわ」

「どうも、初めまして」

「うふふ。若いっていいわね。話通りの素敵なアベックにみえるわ」


 長渕さん……。一体どういう話をしたのだろうか。


「夫は今外出中で。すぐに戻ってくると思うわ。ささ、遠慮せずに上ってちょうだい!」


 俺たちは長渕さんの奥さんに促され、家に上がらせてもらった。

 暖かくいい人じゃないですか。


「本当にありがとうございます」


 俺と里沙でお礼を言った。

 手土産の1つぐらい持ってくるべきだった。

 次来るときは、忘れずに持ってこよう。


 リビングに通され、さっそく長渕家秘伝の柿の葉茶をいただいた。

 奥さんは家事があるからとリビングへ俺たちを残し、どこかへ行ってしまった。


「何かそわそわするわね」

「慣れないからな」


 普段とは違う風景。

 他人の家。しかも友達の家とはわけが違う。

 少しでも動こうなら失礼に当たる気がして、その場でじっと待っていた。


「ねぇ……。バスでの話の続きなんだけど……」

「ん? ああ……」

「宏介は秋葉さんのこと好きなの?」


 おおう。ど直球で聞いてきたな。


「好きだ」

「え!?」

「ああ。友達としてな。恋愛感情かと言われれば分からない」

「あ……うん。そうだったの……」

「ああ。そういう意味で言えば里沙のことが1番好きだけどな」

「な……!?」

「あ」


 里沙は顔を真っ赤にして、その場で固まってしまった。

 しまった。友達としてという意味だが、何を言ってるんだ俺は。


続く

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