28 合宿最終日!
合宿最終日、俺たちは遊園地に来ていた。
「よっしゃー! 楽しむしかないでしょ!」
笹川は完全復帰で準備万端だ。
絶叫系マシンが大好きだと言い、今日は乗り尽くすつもりらしい。
「ははは! 存分に楽しんでくれ。そして、早速だが柚子の罰ゲームを発表しよう」
「な……何があるっていうの!?」
柚子先輩は罰ゲームのことをすっかり忘れていたようだ。
「この遊園地には日本一怖いと言われるお化け屋敷がある」
「えぇ! まさか私がそこに入るの?」
「そうだ!」
「もう! 亮君のいじわるっ!!」
部長はクイッとメガネを直すと俺の方を見た。
「ふふふ。俺だって女子を1人でそんなところに行かせはしないさ」
「まさか!?」
飛び火が俺に来るんじゃないだろうな。
「そのまさかだ! 昨日、俺にカードゲームで負けまくった鈴木に一緒に入ってもらう」
「ええ!? 俺もですか!?」
なんて驚いてみたが……。ふふふ。部長、俺はお化けなんて怖くないんですよ。
「さぁ、柚子先輩。俺が怖いオバケから守ってあげますよ」
「ほ……本当……? じゃあ、お言葉に甘えて」
「おっ。なかなか強気じゃないか」
俺たちはお化け屋敷前に到着すると、その大きさに圧倒された。
建物の外観を見る限り、廃墟となったホテルがモチーフのようだ。
「ここだ! あまり並んでいないから、今のうちに行った方がいいな」
「他人事みたいに言う!」
俺は里沙の方をチラッと見た。
「な……何よ。私は行かないから」
「ははーん。怖いんだな」
俺が煽ると、里沙はムッとした顔をして言い返してきた。
「違う! お化け屋敷に興味がないだけ!」
「ふーん……」
「本当なんだから!」
そんなこんなで俺と柚子先輩はお化け屋敷に乗り込んだ。
しばらく時間がかかりそうなんで、部長と里沙と笹川はジェットコースターに乗ってくるとのことだ。
入り口から入ると、まずフロントがあった。
そこそこ広く、程よい暗さになっている。
天井には割れたシャンデリアがぶら下がっており、周りもボロボロの家具や誰もいない受付などが佇んでいる。
へぇ。作り込みがすごいな。
先に進もとう、それらしき扉を引くが、開かない。
「あれ? 開きませんね」
「嘘……」
早くもビビりまくりの柚子先輩だ。
その時、急にアナウンスが流れ始めた。
『ようこそ……! 当ホテルへ。お客様をお部屋へご案内します……』
ギィィィィ。
かすれた声のいかにもなアナウンスが終わると、扉が自動的に空いた。
そういう演出ね。
扉の先にはエレベーターがあり、そこに乗って上に上がるみたいだ。
大丈夫か?
「これに乗るの!?」
「そう見たいです」
「絶対何かあるよね……。もう駄目かも……」
完全に怯えきった柚子先輩は俺の腕にしがみついてきた。
「わわ! ひっ付きすぎじゃないですか?」
「いいじゃん! 減るもんじゃないし。怖いもん!」
か……可愛い!
お化けそっちのけで、こっちに気が集中してしまいそうだ。
エレベーターに乗り込むと上昇し始めた。
途中、ガタンと止まり電気がチカチカし始めた。
「ほら〜。やっぱり。怖いよ……」
柚子先輩はよりいっそう力強く俺の腕にしがみついた。
あの、お胸が当たってますよ。
『後ろを振り返ってはいけない……』
またアナウンスが流れた。
そう言われると、振り向きたくなるのが人間だ。
俺たちは後ろを振り返ると、壁に取り付けられた鏡に長髪の女幽霊が映っていた。
「きゃああああああああ!」
気持ちいいぐらいの叫びっぷり。
オバケ屋敷の企画をした人も大喜びだろう。
その後も進むたびに驚かせる仕掛けがたくさんあった。
そのたびに柚子先輩は俺にしがみついてくるため、気が気ではなかった。
神よ。いや、お化け屋敷の発案者よ。感謝します!
お化け屋敷から出ると3人が待っていた。
「よ! どうだった?」
「いやー。よくできたお化け屋敷でしたよ」
「……」
柚子先輩は無言だった。
「相当怖かったようだな。あとで俺たちも入ってみようか?」
「いいですね! 時間があったら入りましょー!」
「え!?」
笹川は相変わらず興味津々だが、里沙は部長の言葉にドキりとしているようだ。
その後、罰ゲームを終えた俺たちは皆んなで他のアトラクションを回った。
平日でそんなに混んでいなかったので、すべてのアトラクションに乗れたんじゃないかな。
帰りの新幹線、俺と里沙は隣同士で2人席の方に座らされた。
「はい。お前たち2人は夫婦だからそっちの席で」
「部長!」
さすがに疲れた俺もこの時ばかりは気付いたら寝ていた。
コツン。
ん? ああ、寝てたのか。
俺の頭が同じく寝ていた里沙の頭に当たり、目を覚ました。
里沙は眠りが深いのか目を覚まさない。
「ふふふふふ……!」
通路を挟んだ向こうの席で3人がニヤニヤと笑っている。
「な……何ですか?」
「いや、何でもない」
「ふふふ! いいもの見せてもらったぜー!」
「クスクス。部室に飾ろっか」
一体なんだというのだ……。
目を覚ましてから、長谷駅まではすぐだった。
結構寝ていたんだな。
新幹線を降りると、俺たちは長谷駅で解散した。
実に充実した旅だった。
本当にSF研究部に入ってよかった。
その夜、風呂から上がると、佐々木部長からメッセージが届いてた。
『今日のお土産だよー!』
お土産……?
どういうことだ?
画面を下にスクロールすると、画像が来ていた。
うわ! こんなところを撮られていたのか!
あ! あの時、笑われていたのはこういうことだったのか。
部長が送ってきたのは、新幹線の中、俺と里沙が寄り添って寝ている写真だった。
恥ずかしい!
『もちろん、関野にも送ったぜb」
うわあああああ! なんてことを!
この画像は、確実にSF研究部内で共有されている!
次会う時が怖いなぁ……。
続く




