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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
素晴らしき高校生活と恋の始まり編
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21 ツンデレラとヤンデレラ

 秋葉は本の貸出手続きが終わると、俺たちの並んでいる列を横目に歩き始めた。


「秋葉!」

「ひゃっ!」


 彼女らしい反応だ。秋葉は俺たちに気づくと笑顔で手を軽く振ってきた。

 すぐに俺たちも貸出手続きを終え、秋葉の近くまで来た。


「偶然だな」

「うん。本当にね。この図書館には私の好きな本も置いてあるの」

「そういう本も置いてあるんだな」


 アニメ絵表紙の本の他には、料理の本や裁縫の本等も借りたという。

 花嫁修業でもしてるのか?



「ここは大きいからね……。色んな本があるよ。ところで……隣の女の人は……」


 秋葉が名前を出す前に里沙は自己紹介を始めた。


「私は関野里沙です。宏介とは昔からの友達よ」

「私は秋葉奈美恵です。鈴木君のクラスメイトだよ。宜しくお願いします」

「よろしく。いつも宏介が迷惑かけてない?」

「えへへ。迷惑どころか、鈴木君のおかげで高校生活が楽しいよ」

「そう。それは安心したわ」


 里沙はそう言うと得意げな顔をしていた。

 お前は俺の母親か!


「鈴木君と関野さんって学校で噂になってるよね」

「それは誤解よ」

「あ、うん。私は分かってるから大丈夫だよ……」

「それはありがたいわ。秋葉さんは良き理解者になってくれそうね」


 2人は笑いあっている。

 おお。この2人、意外と馬が合いそうだぞ。


 俺たちも秋葉もこれから嵐ヶ丘駅に戻るので、せっかくだからと一緒に帰ることになった。


 バス停まで行く途中、俺は里沙と秋葉に挟まれる形で歩いていた。

 なんて幸せな3ショットだろう。

 

 歩いている途中、何回か秋葉の腕が俺の腕に当たった。

 秋葉さん!? なんか距離近くないですか?


「すまん。さっきから腕が当たって」

「ううん。いいよ……」


そう言うと秋葉は俺の服の袖を掴んできた。

ど……どういうこと!?


「……。2人はどういう関係なの?」


 里沙が不機嫌そうに聞いてきた。


「どういうって、クラスの友達だが?」

「ふーん……」


 里沙から物々しい雰囲気を感じる。

 そして、心なしか俺に近づいてきた。


 なんだこの状況は。

 2人とも、頼むから少し離れてくれ。

 じゃないと、俺の恥ずかしさメーターが振り切れてしまう。


 バスに乗り込みやっと気が休まるかと思ったら、余計に落ち着かない状況になってしまった。

 3人のため運良く空いていた1番後ろの席に座ることになったのだ。

 もちろん、さっきと同じく俺が間に挟まれる形で。

 狭いのは分かるけど、やっぱりくっつきすぎじゃないか、秋葉よ。

 俺と秋葉はお互いの体温を感じるぐらいにひっついていた。


 里沙は里沙でまた寝てるし。

 行きと同じように俺にもたれ掛かってきている。

 うおおおおおお! 爆発しそうだ。

 俺は一生この時を忘れません。


 さて、やっと嵐ヶ丘駅に着いたわけだが……。


「どうしたの? 凄く汗をかいてるみたいだけど」

「大丈夫……? 気分でも悪い?」

「大丈夫。俺は暑がりなんだ」


 お前たち2人のせいだぞ。



 その後、嵐ヶ丘駅のバス停で秋葉と別れ、俺たちは帰ることにした。

 別れ際、秋葉の放った一言で里沙はまた物々しい雰囲気になった。


「それじゃあ……。夏休みだから鈴木君に毎日会えないのは寂しいけど、いつでもまた私の家に来ていいからね……」

「おう! さすがに家は迷惑だと思うからまたどっかで遊ぼうな」

「うん!」


 里沙が会話に入ってきた。


「秋葉さんの……家……?」

「うん……。この前鈴木君が私の家に来てくれて、とても幸せでした」


 秋葉はとても嬉しそうな顔をしている。


「そう。それは良かったわね」


 里沙は当たり障りのない返事をした。


 駅から家までの道中も相変わらず物々しい雰囲気だ。

 物理的な態度には出てないが、昔の恐かった時のそれを感じる。


「あの……里沙……さん?」

「何よ?」


 やっぱり不機嫌だ。


「俺が何か粗相をしましたでしょうか?」

「別に」


 駄目だ。分からん。



 家に帰ると、亜子がリビングでアイスを食べながらテレビを見ていた。

 よし。聞いてみるか。


「なあ、亜子よ。話があるんだが」

「何?」


 俺は今日あった出来事を一から説明した。

 そんな俺の話を亜子は、相槌を打ちながら時折ため息まじりで聞いていた。


「……というわけだ」

「にゃるほどね〜。全然分かってないねお兄ちゃん」

「うーん。何がだ?」

「全部。私が里沙姉の機嫌直す方法知ってるから教えてあげよっか?」

「本当か!?」

「その代わり……」


 亜子は手に持っている半分まで食べたアイスの方をチラリと見た。


「分かった。アイスの1本や2本、俺が買ってやるから」

「えー。3本!」

「しょうがない! 3本買おう!」

「交渉成立〜! じゃあ待っててね!」


 亜子はそう言うと、外に出て行ってしまった。

 それからしばらくすると、戻ってきた。


「明後日なんだけど、里沙姉の家で夏休みの宿題勉強会をするからお兄ちゃんも来てね」


 どうやら里沙に会いに行ってたみたいだ。

 今度は勉強会を里沙の家でするのか。前以上にスパルタになりそうだ。


「分かった。その案に乗ってみよう」

「そうと決まれば、アイスよろしくね〜。あ、前払いだから」


 その後、コンビニにアイスを買いに行き早速亜子に渡した。

 亜子はまた1本アイスを食べ始めたのだが、お腹が痛くならないのだろうか。


 ま、とにかく亜子の取り次いでくれた案で里沙の機嫌が直るならアイスの3本ぐらい安いものである。


続く

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