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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
素晴らしき高校生活と恋の始まり編
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19 甘えたガールな妹よ

 ついにやってきました。夏休み。


 俺は修業式を終えると、今日は全部活が休みだということで、早々に家へ帰ることにした。

 余談だが、最近誰かの視線を感じることが多くなった。

 また里沙が俺の監視を始めたわけではあるまい。

 しかもそれは、授業中にもふと感じることがあり、最近の疑問の1つになっている。

 うーん……。一体誰なんだ……。

 ま、もう夏休みだしとりあえず気にしなくていっか。


 帰り途中、里沙と一緒に歩いていると、里沙が俺の方をジト目で覗き込んでくる。


「な……なんだよ?」

「最近、SF研究部への参加率悪いけどちゃんと星ヶ原について調べてるの?」


 ドキッ! すまん。調べてない。


「えーと、し……調べてるよ」

「嘘ね。バレバレよ」

「……。すまん! でも約束通り今月中にはできるだけ調べるから」

「いいわ。私も調べてないし」


 何だ! そうだったのか。


「そこで提案なんだけど」

「おう。何だ?」

「明日一緒に図書館に行かない?」


 図書館か……。確かに何か手がかりがありそうだな。

 あ、それと里沙にプリンも奢らないとな。


「いいぞ。昼前に出よう。嵐ヶ丘駅の近くにプリンの美味しいカフェがあるからそこでお昼を食べていこうぜ」

「プリン!? うん! 行きましょう!」


 里沙は幼い子どものように喜んでいる。


「はしゃぎ過ぎだろ……。でもまだプリン好きなんだな」

「え、そうだけど。確かに、よくそんなこと覚えてたわね」

「いやまあ、何となくな」

「それでもちゃんと覚えててくれたんだ……」

「そりゃあ里沙のことなんて忘れられるわけないだろ」

「な……! 何言い出すの!?」

「え? 何かおかしいこと言ったか?」

「もう……!」


 何でそんなに動揺してるんだ?


 と、まあこんな感じで学園祭に向けて俺たちも本格的に動き始めるってわけだ。

 8月になったら合宿もあるし。

 下衆い話しだが、里沙も柚子先輩も笹川も胸にそれなりのものを携えている。

 海で水着姿を拝む時が今から楽しみだ。

 佐々木部長、素晴らしい提案をありがとうございます!



 その日の晩、夜ご飯を食べ終わると妹の亜子がどうしても見たいということで、夏のホラー特集をテレビで見ていた。

 亜子は怖がりだが、こういうものに目がない。母さんも割と好きな方で、洗い物をしつつ遠目で見ている。

 親父は「どうせ作り物だ。くだらん」とかいいつつ、絶対にホラー番組は見ない。いつも部屋に戻ってしまう。

 それを亜子に「あー、怖いんだー」とからかわれるのがいつもの流れだ。


 かく言う俺は、ちっとも怖くない。強がりでもなんでもなく、マジで怖くないのだ。

 呪いのビデオ? 呪いの家?

 そんなものがあるならどんと来い。俺が謎を解明してやる。

 そして、全世界に向けて幽霊が恥ずかしがるぐらい情報を発信しようじゃないか。


 約2時間、夏のホラー特集は終わりを迎えた。

 怖い人からしたら怖いのでは、というぐらいに映像はリアルだった。

 亜子の顔から笑顔が消えている。


「もう寝る」


 そう言うと、亜子は自分の部屋に行ってしまった。

 そうだな。俺も明日に備えて寝ますか。


 深夜2時。俺は違和感で目を覚ました。

 何かが布団の中に潜り込んでくる。幽霊か?

 そういえば昔飼ってた猫も夜中によく布団に潜り込んきたっけ。

 今は天に召されたが、その猫の幽霊が今もこうして潜り込んでくるとは胸にこみ上げるものがあるな。

 ……。って、待て待て。大きいぞ。しかも甘ったるい匂いがする。


 完全に覚醒をして、暗闇に慣れた目でそいつの正体を確認すると亜子だった。


「おい。何してるんだ」

「助けてお兄ちゃん。さっきから私の部屋でパキパキ変な音がするの」

「それはラップ現象というやつだ。ちゃんとした理屈があるから幽霊じゃないぞ」

「うう。怖いものは怖いの。今日は一緒に寝る!」

「一緒に寝るって……。お前は幼稚園児か。とにかく布団から出ろ!」

「いやだ。お兄ちゃん大好きー」


 そう言うと、妹は俺の腕に抱きついてきた。

 誤解を招く前に行っておくが、実の妹に抱きつかれても嬉しくない。ただ、ただ重い。

 小さくなった母親がそこにいる。それだけだ。


「こんな時だけ大好きとか言いやがって。日頃から感謝しなさい」

「えー。いいじゃんケチ〜」

「暑い。早く! 出るんだ!」


 はぁ。我が妹は時々、わがまま甘えたガールになる。

 こうなったら自分の目的が達成されるまでずっとこのままだ。

 昔からの悪い癖だな。


 部屋の明かりをつけると亜子を椅子に座らせた。

 俺はベッドに腰掛け説教を開始した。


「何時だと思ってるんだ」

「2時」


 亜子は悪びれる様子もない。


「怖いテレビなんか見るからだぞ」

「だって見たいものは見たいし、怖いものは怖いの」

「だからと言って迷惑をかけちゃいけない」

「お兄ちゃん! こんなときに頼れるのはお兄ちゃんしかいないよ!」


 そう言うと亜子は胸の前で手を組み、神様を崇めるかのごとく懇願してきた。

 切ない顔をして潤んだ瞳で俺を見つめている。


「ったくもう。分かったよ。俺の部屋で寝ていいけど。床で寝てくれ。掛け布団は自分の部屋から持ってこい。以上」

「はーい!」


 亜子は掛け布団を持ってくると器用にくるまり、カーペットの敷かれた床に転がった。

 そして、再び電気を消して就寝モードへと入った。


 ゴソゴソ。モゾモゾ。

 またか。


「おい。何してる?」

「いいじゃん! やっぱりこうしなきゃ安心できないよ」

「駄目だ!」

「ちぇ〜」


 今度こそ、妹を床に寝かすと俺は再び就寝モードへと入った。

 落ち着いたかと思うと、お次はしつこく話しかけてきた。


「ねぇ」


 無視。


「ねぇ!」


 無視。


「ねぇねぇねぇねぇ!」

「あー! 今度は何だ!?」

「里沙姉とはキスしたの?」

「ぶっ! 何てこと聞いてくるんだよ!」


 亜子の顔がはっきりと見えないが、ニヤけているに違いない。

 寝る前の暗闇の中でこう言う話をするって、修学旅行に来たわけじゃないんだから。


「彼氏彼女の関係なんだから恥ずかしくないと思うよ」

「いつから付き合ってることになってるんだ」

「生まれた時から」

「言いたい放題だな。それはあり得ない」

「お似合いだって! 強くて優しい美人の幼馴染なんて勿体なさすぎるぐらいだもん。それに……」

「それに、何だ?」

「とにかく、応援してるから!」


 そりゃどーも。

 だがそれは、明日とつぜん地球が滅ぶと同じぐらいありえない話だ。

 それに今の里沙だったら引く手数多だろう。

 そうだ! 明日、里沙に聞いてみよう。

 と、その前に亜子にも仕返しに聞いてやるか。


「そういうお前は彼氏ぐらい……って!」


 亜子はすでに寝息を立てていた。

 なんて自分勝手な野郎なんだ。


 はぁ。俺も寝るか……。



 翌朝目を覚ますと、亜子が俺の真横で寝ていた。

 おい。結局こうなるのか。

 いつの間に潜り込みやがったんだ。ある意味猫みたいなやつだな。


続く

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