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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
ワールドワイド・ファイブデイズ編
173/177

一枚の絵

 高速道路を降りて台玄市に入ると、窓の外はすっかり都会になっていた。

 この前動画で見た通り、道路には所狭しと車が走っている。

 隣のタクシーなんて、すごいスピードで走っていったけど大丈夫だろうか。

 驚くべき交通量、歩道を行き交う人々の多さを見て忙しなさを感じる。

 看板の文字は読めないので、海外だぞという雰囲気は漂っているが、日本でよく見かけるコンビニやカフェが乱立しているのは意外だった。


 桃桃高校に着いた俺たちは、まず初めに空いているセミナールームへ案内された。

 そして、手荷物を置き向かった先は校長室である。この学校で一番偉い人に挨拶をしにいくというわけだ。


 校長先生は台湾人で、とても優しそうだ。

 俺たちと校長先生は、宮本先生が通訳をしながら言葉を交わした。先生は日本語、台湾語、英語を話すことができるらしい。俺たちにとってスーパーマンのような存在だ。

 校長室から出た俺たちは、再びセミナールームに戻った。そして、宮本先生と自己紹介を済ませた。


「今日から5日間、君たちのアテンドもさせてもらうよ。僕が色んなところを案内する」


 俺は率直に、宮本先生のことがすごいと思った。言語堪能、先生でありながら案内役もできる。彼から漂う雰囲気はエリートそのもの。いかにも仕事ができるっぽい、いや、絶対できるに違いない。


「さて、まず君たちに課せられたミッションは交流するために選ばれたメンバー同士で仲良くなることだ」


 いよいよ国際交流が始まる。色々な期待と不安で胸がドクンと強く鼓動したのを覚えた。

 宮本先生は職員室に集まっているという台湾側のメンバーを呼びに行った。

 その間みんなも緊張しているのか、静かで張り詰めた空間がそこにあった。

 宮本先生たちはすぐにセミナールームへ戻ってきた。

 先生のあとに着いてきた生徒は俺たちと同じく7名だった。


「それじゃあお互い自己紹介と行こうか」


 宮本先生はそう言ったあと、台湾語でも何か発言をした。それを聞いた台湾の生徒たちはうなずいた。

 きっと台湾語で同じことを言ったのだろう。


 俺たちは長いテーブルにそれぞれ日本側と台湾側でマンツーマンになるように座った。

 ある程度の時間が経ったら席を交代して会話をするという方式だ。


「お互いに言葉が通じるのか不安だと思うけど、一番初めは敢えてこうさせてもらった。さあ、コミュニケーションを楽しもう」


 いきなり野生に放り込まれたウサギの気分だ。

 俺の隣に座っている男子はとにかくニコニコしている。

 ああ、そんな眩しい笑顔で見つめないでくれ。なんて声をかけたら良いか分からず戸惑うだけの自分が恥ずかしくなってしまう。

 くそ。俺は自分を変えるために合宿に参加したのだ。ここは勇気を振り絞ろう。


「ハ、ハロー」

「……! Hello!」


 よし! あいさつはできた!

 次は何を言えば良い!?


「Im Yushin. May I have your name please?」


 俺が戸惑っていると向こうから話しかけてきてくれた。

 名前を教えてくれたようだが、俺は全く聞き取ることができなかった。

 辛うじて聞き取れた「May」って5月のことだよな。なぜ今、5月のことなんだ?


「えっと……。その……」

「アナタのナマエはナニですか?」

「なるほど! My name is Kousuke」


 その後、彼が取り出したスマホを通訳代わりにコミュニケーションをとった。その方法があったか。

 名前は「湯信(ゆしん)」で、同じく一年生だ。日本が好きで日本語の勉強もしている。特に漫画に強い憧れがあるらしく、将来の夢は漫画家になることだという。

 湯信は自分の夢について、目を輝かせながら教えてくれた。そして、自分で書いた絵も少しだけ見せてくれた。

 湯信のスマフォに保存されていたデジタルで書かれた絵はとても上手だった。


 その中でも、特に俺の目を引いた一枚があった。


「This is the girls I saw when I went on a trip to Japan」


 湯信がそう言って説明してくれたのは、彼が以前に、日本へ旅行に来たとき見かけた女の子たちの絵だった。

 とある中学生ぐらいの子がクールな顔で、何人もの中学生を引き連れて歩いている絵だ。

 先頭を歩く女の子はクールな顔でスマートに歩いている。彼女に続く学生たちはみな特徴的だ。

 まるで漫画の扉絵にでもありそうなほどセンスに溢れたその絵は、とてもかっこよかった。

 そして俺にはもう一つ、どうしても気になる点があった。

 先頭を歩く女の子がどこからどう見ても里沙としか思えない。


続く

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