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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
素晴らしき高校生活と恋の始まり編
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16 ウェルカムトゥザクールジャパン

 部長もゲームを選び終わったようで、お互いに何を選んだか確認し合った。


「ほお。ゾルダか! 神ゲーじゃないか」

「そうなんですか……。部長の手に持っているのは何ですか?」

「これはカスタムドロイド、通称カスタムドロという名作中の名作だ!」

「へぇ。やったことないですね。そんなに面白いんですか?」

「もちろん。好きなパーツを組み合わせて戦う対戦ゲームだ」

「おお! なんだかメカっぽいですね」


 女子には分からないかもしれないが、パーツとか組み合わせとかロボットとか、そういうものにワクワクするのは昔から変わらない。

 そういえば、里沙にプラモデル壊されたことあったな……。

 あ、でもあれはどこからか侵入した蜂がプラモデルに付いてて、そいつをやっつけるために叩いたからだっけ。

 まあそんな話はいいとして、男子なら潜在的にメカが好きだということだ。


 俺と部長はそれぞれゲームを購入すると、次の領域に向かうためにゲーム屋を後にした。


 次に来たのはゲームセンターである。

 ずらりと並ぶUFOキャチャーの中にはフィギュアやぬいぐるみ等、オタク向けの景品が目白押しだ。

 以前、里沙と倉持と一緒に行ったゲーセンとは毛色が全く違うな。

 とりあえず何を狙うか、品定めのためにゲーセン内を徘徊した。


「お。このフィギュアが良さげだな」

「なんですか、そのキツネみたいなキャラクターは」

「ウィッチメントを見れば分かるが、マスコット的なキャラクターだ」

「ウィ、ウィッチメント……?」

「ああ。ウィッチ・ジャッジメント、略してウィッチメントだ」

「そういことですか。ふーん。ウィッチメント……」

「お。気に入ったか?」

「どうでしょうね……」


 部長は100円を入れるとUFOキャチャーを始めた。

 何というか、阿漕な商売だ。いいとこにクレーンが降りたと思ったのに少ししか景品が動いてないじゃないか。


 お金をつぎ込むこと1,000円ちょっと。やっと取れた。まあ、取ったのは部長だが。


「おお! やりましたね!」

「キター! この達成感!」


 部長はフィギュアを手に取り俺の方を見てニヤリと笑った。


「お前にこいつをプレゼントしよう」

「え!? いいんですか!?」


 フィギュアなんて興味もなければ子どもの玩具だと思っていたのに、意外と嬉しいもんだな。


「そうだ部長! 部室に飾りましょう」

「お! いい案だな。鈴木のオタク仲間入り記念といったところか!」

「ええ!?」


 別にオタクを馬鹿にしていたわけではないが、少し抵抗があったのが正直なところだ。

 だがこうして、いざオタクの世界を味わってみると、思いがけず楽しんでいる自分がいることに気づいた。

 子ども心に帰れるというか、何の邪心もなく素直にワクワクできる。

 うん。悪くない。むしろ、めちゃくちゃ楽しいじゃないか!

 どうやら俺もそちらの世界に足を踏み入れたようだな。

 部長、ありがとうございます。


「さて、本日のメインイベントといきますか!」

「まだあるんですか!?」

「ふふふ。何を言う。今までのは前座だよ坊や」

「ゴクリ……」

「コスプレ喫茶に行くぞー」

「はい! え……!?」



 というわけで、俺と部長は今まさにコスプレ喫茶の前に立っている。

 その素人では入りにくそうな、アニメの絵が並べられた看板を掲げた喫茶店は商店街の一角に平然と建っていた。

 いや、素人ってなんだよ。ここに初めて入る人は、どんな勇気の持ち主だろうか。


 部長が扉に手をかける。緊張の瞬間である。

 俺は不安と期待に胸躍らせながら恐るおそる、部長の後に続いて店に入った。


「いらっしゃいませー!」


 可愛い女性たちの声が店内に響き渡る。


「何名様なの?」


 ん? 少し無愛想だな……。


 俺たちを案内するために、制服を着た女性店員が目の前に現れた。

 赤い髪……? 赤い瞳……?

 カツラに、カラコンだろう。

 そして、手には物騒な剣を持っているぞ。

 おまけに不機嫌そうな顔をしている。俺たち何かしました?


「2人だ」

「うるさい!」


 うお! 怒られた。ど、どういうことだ!?


「こっちに来なさい!」


 俺と部長はその赤髪赤目の女性店員に案内されると席に着いた。


「注文が決まったら呼びなさい」


 そう言うと、赤髪赤目の女性店員は去って行った。


「ははは! なんて顔をしてるんだ」

「いきなりびっくりしましたよ」

「あれは、ああいうアニメキャラだ。面白いだろ」


 他にも色んなコスプレをした女性店員がたくさんいる。

 アニメのキャラクターのコスプレをした女性が、そのキャラクターになりきって接客をするカフェらしい。


「さあ、メニューを決めようか」


 メニューを見るとあることに気づいた。

 どうやら、アニメにちなんだ料理を食べることができるみたいだ。


「俺はこれにしよう」


 部長が選んだのは『蘭乙女のホワイトアイス』だった。

 俺はどれにしようかな……。


 そして、目に付いたのは『魔法少女のマジックトースト』だった。

 なぜそれにしたかといえば、メニューに載っている料理写真の横にウィッチメントの主人公が載っていたからだ。

 今の俺には1番馴染み深いキャラクターだからな。


 注文を済ませ、しばらくすると料理が運ばれてきた。

 まず来たのは、部長のメニューからだ。


 ゴスロリの格好をした女性店員が料理を持ってきた。


「こちらが蘭乙女のホワイトアイスよ。食後に紅茶はいかがかしら?」

「え……どうしようかな」

「はは! 大丈夫だ。必要だったらまた頼むから」

「そう」


 ゴスロリの女性店員はキッチンの方へ戻って行った。


「あれもそういうキャラだ」

「な……なるほど」


 なぜか疲れるんですが。俺がまだ慣れていないだけなのか、こちらが気を遣ってしまいそうな店だ。



 それからすぐに俺の頼んだトーストも運ばれてきた。

 もちろん持ってきたのはウィッチメントの主人公のコスプレをした女性店員だった。

 あれ? さっきゲーム屋であった魔法少女だ。

 改めて顔を見ると、可愛いな。

 でも、どっかで見たことある顔なんだよなぁ。


「お待たせしました! 『魔法少女のマジックトースト』だよ! 美味しく召し上がル……ン……!?」


 魔法少女は俺と目が合うと、すぐに顔を伏せてしまった。

 そして俺もすぐに違和感に気付いた。


「あ……あれ? 今の声って……」

「なんだ知り合いか?」


 部長、俺の聞き間違いじゃないなら知り合いどころか、クラスメイトです。

 ゲーム屋であった時は気づかなかったが、俺の推測が正しければ、そこにいる魔法少女は秋葉だ。

 メガネもしていないし、化粧もしているみたいだからパッと見気づかないな。


「顔を上げてくれませんか?」

「い……いえ……その……」


 この反応、絶対に秋葉だ。


続く

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