163 興味ないね
不良たちは予期せぬ第三者の介入にたじろいだ。牧は俺たちのところまでやってくると不良たちに迫った。
「何か用か!? あぁ!?」
「うっ……。君に用はないかな……。あははは」
残りの二人もひそひそと何かを話している。
「先輩ヤバいっす。こいつこの前のやつですよ」
「何っ!? この野郎……!」
「あぁ!? やんのか!?」
「うっ、滅相もございません。君たち今日は帰るぞ」
先輩不良の合図で彼らは全員どこかへ走り去っていった。間一髪だったぜ。牧が来てくれなかったら確実に怪我をしていたところだ。
大本はまだ怯えが抜けきっていない状態で、「今の知り合い?」と牧に聞いた。
「この前、この辺で絡まれてな。やり返してやったらくそ雑魚だった」
駅前の治安が良いと思ったのはフラグだったか。全く、この辺も油断はできないな。
「よお、鈴木。あゆみとのデートは楽しかったか?」
牧はへらへらしながら、俺を馬鹿にした様子で、そう聞いてきた。大本の気持ちも知らないで。俺のエゴかもしれないが、少しばかり頭にきた。
「あのな牧、大本の気持ちも知らずによくそんな……」
「やめて、鈴木君!」
気付いたら、俺と牧は一触即発の状態になっていた。大本の制止がなかったら危うく喧嘩に発展するところだった。
「鈴木君とはそこのカフェで少し話をしていただけ。それに、不良たちから私を守ってくれようとしたの」
「鈴木が? へぇ、意外とやるじゃん」
「さっきの通り、俺は強くないし、牧が来てくれなかったらボコボコにされてたかもな」
「何だお前、嵐ヶ丘高校最強の噂は嘘なのか!?」
「俺は平凡な一高校生だ。誰かと喧嘩の強さを争いたくもないな」
「マジかよ。冷めたわ」
牧は冷たくそう言い放つと俺を舐め回すように見た後、そのまま何も言わず去ってしまった。
「達徳……! どこ行くの!?」
大本の叫びも無視して、牧はそのまま歩き続けた。どうやら俺に対する興味がなくなったらしい。
睨みをきかせられるのも嫌だが、いざ無関心にされたと思うと、それはそれで悲しい。
俺は胃がズシンと重く、冷たくなるような、あまり味わいたくない感覚を覚えた。
「ごめん。さっきの頼みはきいてやれないかもしれない」
「謝らないで。私の独りよがりだから。やっぱり無理なのかな……」
大本はそう言うと、涙をこぼし始めた。冷たくも、あたたかい涙が彼女の綺麗な頬を伝う。
「あれ……? よくわからないけど、涙が出てきちゃった」
「大丈夫か?」
「うん。でも、こんなことは初めて。情けないところ見せちゃってごめんね」
牧のやろう。女の子を悲しませやがって。後を追いかけて殴りに行ってやろうか。
「気にしないで。巻き込んじゃってごめん。もう鈴木君には迷惑かけないから」
「いいや、俺なんかを頼ってくれてありがとう。大本ってさ、牧に変わって欲しいと思ってるんだよな?」
「うん。喧嘩とか、よくないことをやめてほしい」
「だったら俺も協力するよ。親友になれるかどうかは分からないけど、何とかしてみせる」
「いいの……? 鈴木君には関係のないことに巻き込んでしまってるけど……」
「関係あるさ。牧も大本も同じ高校の同じ学年。それに一緒に海外研修へ行く仲間じゃないか」
実を言うと不安だ。余計に関係を拗らせてしまうのではないだろうか。危険な目にあうのではないだろうか。
しかし、男に二言はない。俺は、俺の意志で大本に協力する。そう考えると燃えてきた。
土日が過ぎ去り、あっという間に月曜日がやって来た。いつものように授業が終わり、俺が向かったのはSF研究部ではなく、一年五組の教室だった。
入り口から中を見たが、牧の姿はなかった。意を決して教室の中に入り、近くにいた生徒に牧のことを聞いてみた。
「あの、牧っているかな?」
教室内が静まりかえった。俺が質問をした生徒は何も答えず、苦笑いをしながら教室から出て行った。
牧は自分のクラスでも異質の存在になっているのか。それにしても、答えてくれないなんて酷いぜ。
「あの、鈴木君。達徳ならもう帰ったよ」
俺に牧の行方を教えてくれたのは、大本だった。そうだ、彼女はこのクラスの委員長なのだ。
「そうか。それは残念だ」
「何か用だった? 出て行ったばかりだからまだ校内にいると思うけど……」
「遊びに誘おうと思って。とりあえず急ぎで校門まで行ってみる」
「そっか。さっそくなんだ。ありがとう鈴木君。私も一緒に行くね」
俺たちは牧の後を追いかけて、校内を駆けた。先生に見つかって注意されるのは勘弁してもらいたい。
走り回って、とうとう校門までやって来たが牧の姿はない。今日は諦めますかと言いたいけど、今日じゃないといけない気がしてならなかったので、俺たちは高校を出た後も牧を追うことにした。
きっと駅に向かっただろうと言う大本の予想を頼りに、俺たちは急いで進んだ。駆け足だったため、冬なのに汗が額から滲んでいた。
駅前に着いた俺たちは、通りの向かい側に牧の姿を見つけた。
「はぁ……はぁ……。いた!」
「はぁ……はぁ……。いたね!」
牧を見つけることのできた安心感で、どっと疲れが襲ってきた。なぜこんなにも心が充実しているか分からない。もしかして、これが本当の恋ってやつか。いや、そんなわけないだろう。
俺たちは通りを渡って、牧の後を追った。すぐに声をかければいいのに、探偵のように、彼にばれないよう後をつけた。
続く




