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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
淡雪ウインターバケーション編
159/177

155 初詣へ行こう

 冬の寒さのせいで息が白い。体の芯まで凍えてしまいそうだ。

 寒さに負けないよう、俺は手に持った温かい甘酒を体に流し込んだ。

 生姜入りのそれは、体の芯から暖めてくれるだろう。

 隣にいた由香が「あ、ずるい」と言い、屋台に甘酒を買いに行った。

 そう、俺は今、亜子と里沙、それから由香と一緒に約束通り風来神社へ来ている。

 鳥居から長い参道が続いており、拝殿はまだ見えない。

 幅の広い参道の端と端に屋台が所狭しと並んでいる。

 その風景はまさに日本といった感じで圧倒的だ。

 それにしてもすごい人だ。年始早々、これだけの人がお参りとは信仰深いな。


「お待たせー」


 甘酒を買いに行った由香が戻ってきた。おまけにチョコバナナまで手に持っている。


「いつのまに!?」

「屋台といえばこれでしょ!」


 由香は美味しそうにチョコバナナを頬張った。幸せそうで何より。


「亜子、私たちも何か買いに行くわよ」

「焼きそば食べたい」


 続いて里沙と亜子が屋台へ向かって行った。

 そうか、亜子が朝食を抜いていた理由はこれだったんだ。

 みんなが何か食べているのを見ると、こっちまでお腹が空いてくる。

 朝食も摂って、甘酒も飲んだのに。

 そうやって、俺が何か食べようか迷っていると、手に温かい感触がした。


「ねぇ、私たちも行こうよ」


 由香が手を繋いできたのである。

 突然の出来事に俺は、胸が高鳴った。


「え……えっと……どこに行く?」

「連れてって」


 なぜだろうか。

 由香のその言葉を受けて、俺の体に少し電撃が走った。

 彼女の言い方、表情がいつもと違って見えたのは気のせいではないだろう。

 これじゃあ連れて行くしかない。

 しかし、そうは言っても、この辺りから離れすぎるわけにもいかない。

 だからと言って、手を繋いだままここにいるのも何か照れ臭い。

 俺は考えなしに由香を引っ張って歩き出した。

 由香は黙ったままついて来るだけだった。

 何を話していいか急にわからなくなった俺は、とりあえず思い浮かんだツキミの話をしながら歩いた。


「そんな可愛い猫ずるい」

「鈴木家はツキミにメロメロさ。飼い主が見つかったら正直寂しい」

「実は私が飼い主だったりして?」

「嘘はお見通しだ」

「やっぱり? ししし」


 由香と手を繋いで歩いているおかげか、いつの間にか寒さを感じなくなっていた。

 そして、気付けば射的のすぐ近くまで来ている。

 食べ物ではないけど、射的をやるのもありだな。


「私、得意だよ」

「実は俺も得意なんだ」

「じゃあ宏介のお手並拝見ということで」


 俺は百円を店主に渡し、銃と弾を受け取った。

 景品は、お菓子のような小さくて軽いものからゲーム機本体やぬいぐるみといった大きくて重いものまで多種多様だった。


「あの猫のぬいぐるみを獲って、ツキミへのお土産にする」


 俺は引金を引いた。

 見事に弾は命中。しかし、ぬいぐるみは倒れない。

 その後も全弾命中したが、結局ひとつも景品は獲れなかった。


「下手じゃん」

「こんなはずじゃなかった」

「言い忘れてたけど、負けた方が何か奢る罰ゲームありだからね」

「え!? 今決めたよね?」

「そんなことないよ」


 やられた。

 由香は銃を構えると猫の人形に向かって発射した。

 人形はピクリとも動かない。


「ほらな」

「接着剤でもつけてあるんじゃないの」

「ま、今回は引き分けということで」


 由香は不服そうな顔をした後、小さい箱に入ったお菓子にターゲットを変えた。

 弾は命中、そしてお菓子は倒れた。


「ししし。私の勝ち」

「あ、ずるい」

「宏介、この世は勝った方が正義なんだよ」


 どっかの悪党みたいなセリフを言いやがる。

 由香は店主からお菓子を受け取ると、俺に渡してきた。


「はい、私からのお年玉」


 ずいぶん可愛らしいお年玉だ。


「宏介からのお年玉、期待してる」


 なるほど。何を奢ろうか。

 射的を終えた俺たちは、とりあえず由香と里沙と合流した。

 彼女たちは二人で焼きそばを分けながら食べていた。


「どこいってたの?」


 里沙がハンカチで口を拭い、そう聞いてきた。


「射的をやってきた」

「あ! ずるい!」


 里沙のかわりに亜子が反応を示した。

 里沙は射的に興味がなさそうだった。


「そうそう、賭けに負けたから宏介が皆んなに何か奢ってくれるって」


 由香が会話を続けた。何だか話が飛躍しだしたぞ。

 俺のなけなしの所持金がすっからかんになってしまう。

 でも、こいつらに奢るのは満更でもないな。


「じゃあ私のリクエストで、たい焼きね」


 こうして、由香の一存で俺はみんなにたい焼きを奢ることになった。

 どこかにあるはずの屋台を探すと、「幸運のたい焼き」という言葉が目に入った。

 それだ。俺たちはさっそく、たい焼きを買いに行った。

 屋台の近くまで来ると甘い香りが漂っている。

 誰かのを少しもらおうかと考えていたが、結局のところ人数分買ってしまった。

 外はサクサク、中はホクホクで美味しい。俺が食べてきたたい焼き史上、一番美味しいたい焼きかもしれない。

 これは新年早々良いことありそうだ。由香たちも満足げにたい焼きを食べている。実に奢りがいがある。ま、俺からのお年玉ということで。

 風来神社に来て良かった。美味しいものを食べたり飲んだり。縁日気分を味わい、非常に充実した時間を過ごしている。

 しかし、まだ本来の目的であるお参りはしていない。お賽銭用に持ってきた五円玉まで使ってしまう前にお参りをしないと。


続く

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