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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
ヤンデレちゃんはあわてんぼう編
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137 サンタクロースのお買い物

 秋葉とアンジェの対戦はその後も数回続き、ギャラリーの数を着々と増やし続けていた。

 画面の中で何が起こっているのか分からないが、秋葉の指さばきを見る限りは、常任離れしているはずだ。

 ゲームの結果は秋葉の十本ストレート勝ち。格闘ゲームの世界では、これを十先と呼ぶらしい。


「さっすが奈美恵! ボコボコにされちゃった」


 アンジェは負けたというのにニコニコと上機嫌な様子だった。


「ボコボコにされて悔しくないのか?」

「悔しいけど、奈美恵と対戦できてハッピーね! しかもシュガーラミー使い全国一位のモサなんだから」


 秋葉はゲーム機から離れると、鞄を抱きしめながら俺の背中に引っ付くようにして縮こまっていた。


「うん? 一体どうしたんだ?」

「うぅ……。こんなにたくさんの人に見られて恥ずかしいよぉ……」


 どうやら秋葉の恥ずかしがり屋スイッチが入っていしまったらしい。

 こうなったらこの場から逃れる以外に手はない。

 コスプレという鎧を纏わない彼女の防御力はゼロに等しい。

 その代わり、俺に対する攻撃力は群を抜いて高い。


「しょうがない。出るか……」

「うん……」

「えー!? もう出て行くの!?」

「アンジェも一緒に来るか?」

「うん! 行く行く!」


 などと勢いに任せてゲームセンターを出たのは良いけど、特に行く場所も決めていなかった。


「何か疲れちゃったからそこのファミレスで休憩しようよ」

「休憩するかー」

「日本のファミレスは始めて。だから楽しみ!」

「アメリカのファミレスと大差ないと思うけど……」


 アンジェは散歩に行く前の犬のように目を輝かせていた。

 店に入る前から席に着くまで興奮が収まりきらない様子だった。

 俺たちは小腹が空いていたので、ポテトフライ等軽食を頼んだ。

 そして、ドリンクバーから飲み物を持ってきて一息ついた。


「奈美恵に宏介は二人でよく遊ぶの?」

「たまになー。めちゃくちゃあそ……」

「よく遊ぶよ」


 秋葉は俺の答えへ被せるようにして口を開いた。


「ほら、昨日も遊んだよね?」

「ええ!? 昨日は……」

「私の夢の中でだよ」


 ってまた夢の話ですか。


「えー!? 二人は夢の中で遊ぶほど仲が良いの!?」


 いやいやいや。アンジェよ、その反応はおかしいだろ。色々と突っ込みどころがありすぎる。


「うん! すごく幸せ」

「素敵な二人。あこがれるなぁ……」


 憧れるな。

 その境地に踏み込んだら引き返すことはできないだろう。

 ここは話題を変えてやろう。


「ところでアンジェは部活を決めたのか?」

「まだ決めてナイ。すごく迷ってるの……」


 よし、佐々木部長の代わりに勧誘してみるか。


「だったらSF研究部に入らないか?」

「この前連れて行ってもらったところ?」

「おう! アンジェなら楽しめると思う」

「んー。次の活動日に体験入部に行ってもイイ?」

「もちろん。俺から部長に伝えておくよ」

「カタジケナイ」

「渋い言葉を知ってるんだな」

「私は武士に憧れてマス!」


 きっとドラマか漫画の影響だろうな。

 今時「かたじけない」なんて言う女子高生は滅多にいない。


「今日は二人のデートを邪魔してゴメンナサイ!」


 アンジェはいきなりそうやって俺たちに謝ってきた。


「ううん、そんなことないんだよ。私はアンジェちゃんと仲良くなりたいし」

「奈美恵〜! 私は嵐ヶ丘高校に来て良かったです!」


 その後、ポテトフライがやって来たので、適度につまみながらアメリカの話やアンジェの趣味について色々話を聞いた。

 やはりオタク同士、秋葉とアンジェはかなり意気投合していた。

 楽しい会話の途中、アンジェのスマートフォンが鳴った。

 どうやら会話相手は母親らしく、電話を済ませると用事ができたと言って帰って行った。


「おし、俺たちも帰るか」

「もう……? 私はまだ宏くんと一緒にいたいんだけど」


 うっ。そんな風に言われると困ってしまう。

 今日の目的は秋葉にプレゼントのお返しを買うこと。心を鬼にするしかないようだ。


「今日はこの後予定があってな。悪いがまた近いうちに遊ぼう」

「うん! 絶対だよ!」


 ファミレスを出て駅の前で秋葉と別れた俺は再び雑貨屋へ向かった。

 今度はひとりでじっくり買い物ができそうだ。

 店内にはクリスマスに合わせた音楽が流れており、店員はサンタクロースの赤い帽子を被っている。

 この雰囲気を味わうともうすぐ今年も終わりだということを実感する。


 さてと、何を買おうかな。

 ……。

 今まで誰かにクリスマスプレゼントなんて買ったことないから何を買って良いか分からない。

 迂闊だった。まさかこんなことで迷うとは。

 しばらくの間、俺はゾンビのように店内をさまよっていた。

 そんな俺に救いの手を差し伸べてくれたのはクリスマスコーナーだった。


 うおお! 助かった!

 そこに並んでいるプレゼントを買っておけば間違いないはずだ。

 俺はすぐさま目に入った手袋を手に取った。

 紺色で派手すぎず、チェックの柄が可愛らしい手袋だ。

 うん、いい感じかな。これに決めた。


 手袋を購入した後は平穏無事に家へ帰った。

 あとは秋葉に手袋を渡すだけだ。

 俺は彼女にどうやって手袋を渡すか考えた。

 すると、ドクンと鼓動が強く早くなった。

 あれ? もしかして考えただけで緊張しているのか。

 俺は机の上に置いた手袋の入った包みを見つめながら、その先に潜む何かと睨めっこしていた。


続く

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