136 えんかうんと!
俺と秋葉は雑貨屋から出ると、話し合いをした。
「これからどうするんだ?」
「これからどうするって……。私は宏くんと愛を育んでいきたいな」
「えっと、そういう意味じゃなくてだな。帰るのか遊ぶのかってことだ」
「遊ぶに決まってるよ。だって今日はデートなんだから」
夢の中の俺を今から殴りに行きたいぜ。
お前が勝手に約束したせいでやっぱりプレゼントが買えそうにないじゃないか。
ここで「どこへ行こうか」なんて聞いた日には完全に秋葉のペースに持ち込まれてしまうだろう。
「それならゲーセンなんてどうだ?」
「うん! 行く行く!」
こうして俺たちはゲームセンターへ向かった。
俺の知っているゲームセンターへ入ろうとしたら秋葉は立ち止まった。
「どうした?」
「んー。ここじゃなくて別のゲーセンへ行こうよ」
「へぇ、他にもあるのか?」
「うん。ここから近いし、景品も豪華なんだ」
「じゃあせっかくだし、そっちに行ってみよう」
秋葉の案内のもと、駅前にあるもう一つのゲームセンターへ向かった。
それは、大通りから少し外れた路地裏にある所だった。
そして中へ入った瞬間一目で分かるほどだった。
「あー、そういうことね」
「ね。アニメ好きな人にとっては良い所でしょ?」
店内の装飾も店員の手作りだろうか、アニメキャラの姿を模した広告が至る所に貼られていた。
UFOキャッチャーの景品もフィギュアが多い。
建物は二階建てで、一階はUFOキャッチャー等の景品があるゲームが中心。
二階には格闘ゲーム等のアーケードゲームがズラリと並んでいるらしい。
まずは二階に行こうという秋葉の希望に沿ってエスカレーターを上がった。
結構な人で賑わっており、ガチャガチャとレバーやボタンの操作音が聞こえてくる。
「おお……。不思議な感じがする」
「アーケードゲームはやらないの?」
「ゲーセンでやったことはないな。滅多に来るところでもないし」
「そっかぁ残念」
「秋葉はやるのか?」
「うん。ゲームも好きなの」
「そうなんだ。じゃあ一緒に……。ん?」
秋葉と会話しながら店内を闊歩していると、格闘ゲームコーナーの一角に人だかりができていた。
近くまで寄ってみると対戦で盛り上がっていることがわかった。
誰がプレイしているのかなかなか見えないが、「すげー」とか「やられた!」とか様々な声が聞こえてきた。
「うぅ……。よく見えないね。誰か気になる……」
「いっちょ行ってみるか」
俺たちは人だかりを掻き分けて、プレイヤーのすぐ後ろまで近寄った。
そこにいた人物はなんと、俺たちと同じ制服を着ていた。
そして見覚えのある後ろ姿。思わず「あっ!」と叫んでしまった。
「ねぇ、この子って……!」
「間違いない」
「「アンジェ!?」」
ちょうど対戦を終えたアンジェはこちらに振り向いた。
「あ! 宏介に奈美恵! こんなところでグウゼンだね!」
「それはこっちのセリフだぜ。ゲーム好きなのか?」
「はい! 本場でこのゲームができて幸せ!」
アンジェはとびきりの笑顔で答えてみせた。
彼女がプレイしていたのは、『ブレイズバル』という格闘ゲームでスピーディな展開が特徴だ。
「二人も格ゲーやりに来たの?」
「ちょっと見物に来た。俺は格ゲーやらないし」
俺の回答から遅れること数秒、秋葉は意外な言葉を口にした。
「アンジェ、私と対戦してみない?」
「オー! ホントに!? ぜひやろう!」
「うん! 私もこのゲーム好きなの」
「イエス! 楽しみね!」
というわけで、秋葉とアンジェの対戦がいきなり始まった。
ロールプレイングゲームで言うと、敵にエンカウントして対戦が始まったみたいだ。
秋葉は椅子に座り、お金を入れるとスマートフォンを読み取り口にかざした。
「スマフォ……?」
「そうだよ。ネットに繋がっていて、登録しておくと戦績が残るの」
どうやらネット対戦にも対応しているらしく、万が一同じゲームセンター内に対戦相手がいなくても大丈夫らしい。
「ゲーム……ガール……!?」
俺の真横にいた人がそう呟いた。
そして、その一言を皮切りに周りがザワつき始めた。
「ゲームガールって……」
「ああ、間違いない!」
ゲーム画面を見るとユーザー名『game_girl』と表示されており、どうやら秋葉のゲーム上での名前らしい。
「ゲームガールって名前がどうかしたんですか?」
俺は思わず横にいた人に質問をした。
「シュガラミ全国ランキング一位の猛者だよ。君、あの子の友達なのに知らなかったのかい?」
し……知らなかった。
秋葉にそんな特技があったとは。
「えへへ。気づいたらこうなってたの」
「気づいたらて……。このゲームのこと好きすぎじゃん」
「うん。でも、宏くんのことは、もっともっと好きだよ♡」
ああ、そんな眩しい笑顔で俺を見ないでくれ。
それにその発言を聞いた周りの人たちも再びザワついてるし。
ええい、早く対戦を始めてくれ!
こうして迎えた対戦は意外な結果となった。
アンジェのストレート勝ち。秋葉は強いのでは?
アンジェは立ち上がりこちら側にやって来た。
「奈美恵、手加減したね!?」
そういうことか。
「バレてた……?」
「バレバレ! もう一回本気でやってよ!」
「うん、もう一回しよう」
こうして、秋葉とアンジェの再戦が始まった。
シュガラミ全国ランキング一位の肩書き通り、秋葉は本気を出すと滅茶苦茶強かった。
続く




