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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
ヤンデレちゃんはあわてんぼう編
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135 紡がれた赤い糸

「あ……。え……? 秋葉も……?」


 聞くべきことはもっとあるだろうが、詰まりに詰まった言葉しか出てこなかった。


「これも手編みなんだよ。ほら、宏くんと同じで赤いマフラー」


 秋葉は俺の隣まで来ると、嬉しそうに並んだ。


「あ、せっかくだから写真撮ろっか」


 秋葉はスマートフォンを鞄から取り出すと、俺とツーショットの写真を撮った。

 いわゆる自撮りというやつで、アプリ特有の補正がかかっていた。

 いやいや、言及すべきはそこじゃあなくて。

 色々と秋葉に仕組まれた気がしてならない。こんな公の場でツーショット写真を撮るなんて、恥ずかしくて周りの様子が確認できない。


「秋葉さんの手編み……?」


 里沙は苦笑いをしながら問いかけてきた。


「うん。やっぱりこれからの世の中は女子力が大切だなって。宏くんも気に入ってくれてるみたいだし」

「女子力……?」


 里沙の女子力。果たして里沙の女子力とは。

 俺は固唾を飲んで里沙を見た。


「何よその目」

「里沙の女子力って……?」

「私にだって女子力ぐらいあるわよ」

「すっごい強そう……」

「どういう意味よ!?」

「とても可愛いという意味だ」

「本当に!?」

「ああ。断じて嘘じゃない」


 里沙は怪しんだ目で俺を見つめた。

 思わず怯みそうになる。ほら、やっぱり戦闘……女子力が高そうだ。


「はい、そこのお二人さん! イチャイチャは後にして教室行くよ!」


 倉持がニヤニヤして俺たちにそう言った。

 俺の気のせいかな。この状況を一番楽しんでいるのは彼女だと思う。


「私だって……」

「ん? 何か言ったか?」

「何にも!」


 里沙が何か呟いたようだが、誤魔化されてしまった。

 それから彼女は少し不機嫌そうな様子で教室へ向かった。

 里沙、倉持と別れ教室へ入ると教室内がざわついた。

 何だろうと思いながら席に着く。それからすぐに山内が話しかけてきた。


「君たちは……! 付き合っているのかい!?」


 あ、そうか。

 俺と秋葉は同じマフラーを身につけているのだった。


「えー。付き合っているっていうか、結婚かな……?」

「結婚っ!?」


 ちょ! 秋葉さん!? いきなりどうした!?


「ま……待て、山内! 俺は何も聞いてないぞ」

「鈴木君、まさか一線を超えてしまったわけじゃあ……」

「滅相も無い!」

「でもさっき宏くんと……」

「秋葉! 誤解を招くような言い方はやめるんだ!」

「は……ははは……」


 山内はフラフラと酔っ払いのように自分の席へ戻っていた。

 朝からご苦労なこった。色々と誤解してないといいけど。


「もう……宏くんは私と結婚するのが嫌なの?」

「そういうことじゃなくて! 色々とぶっ飛びすぎだ」

「冷たいんだから……。結婚は冗談として、まあ、私は宏くんの後ろに座れるだけで幸せだよ♡」


 絶対に冗談じゃなかった。

 最近の秋葉には恐怖すら感じる。何ていうか、こう激しさが増してきている。


 放課後、俺たちはSF研究部へ向かった。

 Dルームの扉を開けると、ちょうど佐々木部長がホワイトボードに何かを書いているようだった。


「お、来たか。今クリスマスのイベントを決めようとしていたところだ」


 ここでもクリスマスに向けて浮足立っているといわけですか。


「クリスマスイブに皆んなで集まってワイワイやろうと思うが、お前たちも来るだろう?」


 クリスマスイブなら大丈夫だな。


「はい、ぜひ集まりましょう」


 俺に続き秋葉も賛同した。


「おし、これで全員参加だなー。何かやりたいことはあるか?」

「そうですねぇ……。ベタにここでパーティなんてどうですか?」

「ほう。なかなか良い提案じゃあないか!」


 佐々木部長は、候補と書かれた欄にパーティを追加した。

 その他にはケーキ屋とかイルミネーションとかサボちゃん公園とか色々書かれていた。

 途中おかしな候補があったことには敢えて触れずにいこう。


「私は宏介の提案したパーティが良いです」


 椅子に座っていた里沙がホワイトボードを見ながら答えた。


「私もー!」


 続いて笹川が賛成してくれた。

 秋葉や柚子先輩も異論はないようだ。


「サボテンたちもクリスマスに皆んなと会えて楽しみだって!」

「それは良かった。決まりだな。クリスマスイブは冬休み期間に入っているが、ここに集まろう。もちろん、プレゼント交換会も一緒に行う」


 相変わらず柚子先輩もぶっ飛んでますね。

 佐々木部長も普通に受け答えしてるし。


 そんなこんなで、俺の気分は確実に大気圏を飛び出しそうなほど高ぶっていた。

 クリスマスに友達と過ごしたことなんて何年ぶりだろうか。いや、今までそういうイベントなんてなかったはずだ。

 秋葉に貰ったマフラーも俺にとっては家族以外から貰った初めてのクリスマスプレゼントということになる。

 早く彼女へのお返しを買いに行かなくては。


 というわけで、駅前の大型雑貨屋に来たわけだが、なぜか秋葉も一緒にいる。

 これじゃあプレゼントを買いたくても買えない。


「今日はお買い物?」


 秋葉がニコニコと俺に聞いてくるが、「プレゼントのお返しを買いに来た」なんて言えるわけがない。


「ああ、ちょっとな」

「そっかぁ。この後、どこ行こっか?♡」


 なぜだ、なぜこうなった。


「今日は私とデートのお約束をしてたもんね♡」


 いつだ? いつそんな約束をした?

 絶対にした覚えはないぜ。


「約束したっけ……?」

「うん。昨日の夢の中で♡」


 夢の中!?

 ははは、俺が知るわけないよな。

 とにかく、今は何も買わずに一旦外に出るとするか。


続く

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