127 ラブリージャーニー
俺は車の扉の取っ手に手をかけた。機械音が鳴り、扉が自動的に開く。
「どうぞ」と由香、里沙を後部座席に通す。「お久しぶりです! お願いします!」と彼女たちは車に乗り込んだ。続いて亜子が乗り込み扉を閉めた。
俺は全員が乗り込んだのを確認すると、助手席へ乗った。
そして、集合場所であった玄関前から車が発進した。
「シートベルトはしておくように」
親父が少しぎこちなく皆んなにそう言った。
全員従いシートベルトを締める。
「親父、緊張してない?」
「皆んな綺麗になったな……」
「ぶっ! 褒めても何も出ないと思う」
思わず吹き出してしまったじゃないか。
突然何を言い出すんだこの人は。
俺が親父と会話をしていると、後ろから由香の野次が飛んできた。
「何で宏介が答えるの! おじさん! 冗談じゃなくて可愛くなったでしょ?」
「そうだね……」
「ほらー!」
「ははっ! 相変わらず由香ちゃんも元気そうで何よりだ」
親父は優しい笑みを浮かべていた。
どこか切なく、懐かしみを味わっているような表情だった。
それからも、賑やかな車内と共に車は走り続けた。
下道で行くと結構時間がかかるようで、途中から高速道路に入った。
「わぁ〜、高速道路だ。サービスエリア行こうよ!」
亜子がより一層はしゃぎだした。
俺は平静を装いながら内心ワクワクしていた。軽い旅行気分だ。
「休憩がてら寄るか。お手洗いは済ませておくように」
「はーい!」
車は速度を緩めながらサービスエリアへと進入した。
駐車場は車でいっぱいだ。
家族連れや人間の腕に抱かれた犬、フルフェイスのヘルメットをかぶったライダーたちが休息している。
太陽の日差しは眩しいが、風は冷たい。暖かい車内から降りたため、より一層寒く感じる。
各自、お手洗いを済ませると自然とお土産コーナーへ足が進んだ。
まだ行きの道中じゃないか。皆んな気がはやいな。
などと思いつつ俺も例外ではなく、美味しそうなお菓子のお土産を眺めていた。
「宏介ー! あっちに五平餅ってあるよ」
「今話題の。ちょっと気になる……」
「食べてみよう!」
俺は由香に連れられて外で営業を行っている屋台に向かった。
そして、五平餅を一つ購入した。
「半分こね」
由香が先に五平餅を頬張った。
美味しそうに食べてやがる。湯気を立てながら由香に食べられる五平餅はさぞ幸せなことだろう。
「はい、あげる」と渡された五平餅は既に半分以上食べられていた。畜生、割り勘で出したのに不公平じゃないか。
しかし、五平餅を口にした瞬間、その美味しさに細かいことなど気にならなくなった。
「あー! ずるいー!」
お土産屋から出てきた亜子が俺の持つ五平餅を指差してそう言った。
「里沙姉、私たちも食べようよ」
「お昼ご飯食べられなくなっちゃうわよ」
「むぅ……」
亜子は羨ましそうに俺を見てきた。
「ほら、少しだけどやるよ」
「本当!? お兄ちゃん大好き!」
亜子は俺から五平餅を受け取り、美味しそうに食べきった。
お兄ちゃん大好きなんて言われても心には響かんぞ。たぶん……。
軽く腹ごしらえも済んだところで再び車に乗った。
こうして再び、親父の安全運転のもと、目的地へ向かって車は走り出した。
高速を下りると、すぐさま懐かしい風景が広がった。インターチェンジ付近にあるスーパー。たまに買い物に着いてきていたな。
お店の並ぶ国道を抜けると、いよいよ住宅街になってきた。俺たちが通っていた小学校の前を通り、車は細い道へと入る。
そして、とうとう前の家へたどり着いた。
「俺は家の片付けをしているから後はお前たちで行ってきなさい」
「うん。送ってくれてありがとう」
「待っててくれれば帰りも送るが、一日仕事になりそうだ」
「帰りは自分たちで……」
「おじさん! 私たちで良ければ手伝いますよ」
由香が進んで手伝いを買って出た。
マジで? 今日一日はこっちに張り付きか。
「む。それは助かるが、本当にいいのかい?」
「ね。里沙も亜子もいいよね?」
里沙と亜子は即答で手伝いを了承した。
……って、俺には聞かれないのね。
「そうと決まれば、お昼頃には戻ってくるんだ。皆んなで昼食を食べに行こう」
「はーい!」
俺たちは、とうとう海陽公園へ向かった。
もちろん里沙と由香が昔住んでいた家は存在するが、別の人が住んでいる。
彼らのことは知っているが、見かけても挨拶をするぐらいで特に仲良しというわけではない。
いわゆるご近所づきあいというやつで、両親とはそこそこ交流があったみたいだ。
家から出てすぐ、俺たちは海陽公園へ到着した。
小さなプールや鉄棒、少しお洒落な滑り台、週に一度お年寄りたちがゲートボールを楽しむグラウンド。
うん、昔と何にも変わっていない。ただ、背が高くなったせいか昔より狭く感じる。
「タイムカプセルを埋めたのはあそこ!」
由香が指さす先にあったのは海陽公園のシンボルであるウミガメ像だった。
石で作られたそれはあいも変わらずどっしりと構えている。
俺たちはウミガメ像の隣まで足を進めた。
全員が地面の一点に集中している。埋めたのはそこで間違いない。
俺はスコップを構えた。そして皆んなを一瞥し、地面を掘り始めた。
続く




