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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋の刺客と愛の資格編
131/177

126 思い起こせば

来週の更新は8/17(金)あたりになります。

 紙には可愛らしい文字でこう書かれていた。


『海陽公園、タイムカプセル。この紙を見たら私に連絡して 由香より』


 はっ! 海陽公園って昔住んでいた家の近所にあった公園じゃないか。

 その後に続くタイムカプセルは、確か公園に埋めたはず。

 そうか、それを掘りに行くということだな。


 俺はすぐに、指示通りスマートフォンで由香に電話をかけた。

 食事時で出ないかと思ったが、彼女はすぐに電話に出てくれた。


「もしもし、どうしたの? 電話なんて珍しいね」

「そ……その、読んだんだ」

「読んだ?」

「ああ、本に挟まれた紙を……!」

「……っ! やっと!? 気づくのにどれだけかかってるの? バカ介!」

「ごめん!」

「あはは、思い出してくれただけで嬉しい。それで、海陽公園とタイムカプセルと言えば、もう分かってるよね?」

「うん。掘り起こすんだろ?」

「そう! ちょっと早いかもだけど、公園がなくなる前にね」

「じゃあ近いうちに……」

「明日」

「え?」

「さっそく明日行くの」

「明日!? 確かに行けるけど……」

「そうと決まれば、里沙と亜子も誘っておいて」


 ああ、確か四人で埋めたっけ。

 当時大切にしていたおもちゃを埋めた記憶はあるが、他に何を埋めたか忘れてしまった。

 変なもの埋めてないといいけどな。


 というわけで、俺は亜子の部屋へ向かった。


「明日って一日大丈夫か?」

「大丈夫だよ。なに? デートのお誘い?」

「おう、由香主催の楽しい楽しいデートだ」

「やったー! 私も参加する! どこに行くの?」

「海陽公園にタイムカプセルを掘りに行く」

「ええ!? 懐かしいー! でも、何でこのタイミングで?」


 俺は亜子に、由香と交わした本の約束について話した。


「そういうことね。何でそんなに重要な約束を忘れてたの?」

「うっ……」


 返す言葉が見つからない。


「とにかく、明日ね〜。楽しみ!」

「朝から出発だ。よろしく」


 さて、お次は里沙に電話をするか。

 俺は部屋に戻ると里沙に電話をかけた。

 彼女も明日は予定がなかったので、約束のことを説明し、タイムカプセルの掘り起こしに誘った。


「もちろん行くわ。何が出てくるか少し怖いけど……」

「楽しみなんだけどな。少し恥ずかしい気持ちだ」

「本当にね。四人でまたあの場所に行くなんて、奇跡みたい」


 人生何が起こるか分からない。

 偶然が重なった結果なのか、運命なのか。

 里沙の言う通りで、考えれば考えるほどこうしてまた四人揃えているのは奇跡である。


 俺たちがかつて住んでいた町は長谷駅から電車で一時間ほどかかる。

 海陽公園も住宅街の中に作られたごく普通のなんてことない公園だ。

 今もちびっ子たちの遊び場になっているのだろうか。

 久しぶりに訪れてみたら建物が建っていたとか、駐車場になっていたとか、悲しいことこの上ない。

 由香曰く、まだ存在するらしいからその点安心だ。


 やる事をやり切った俺は、ようやく夕食をとることにした。

 亜子は俺より早く食卓についていたが、テレビを見ながらゆっくり食べていたので大して箸が進んでいないようだ。

 母さんと親父は既に食べ終えており、「遅い」と文句を言われてしまった。

 俺は謝りながら椅子に座り、そそくさと箸を持った。

 今日の夕飯はハンバーグか。俄然お腹が空いてきた。


 それから、明日のことを考えながらハンバーグをつついていると、ソファに座りテレビを見ていた親父が話しかけてきた。


「宏介、明日は暇か?」

「明日は忙しい」

「そうか……。ならいい」


 早くも会話終了である。


「何なに? 何かあったの?」


 俺に代わって亜子が親父に質問をした。


「ようやく前の家の売却が決まってな。それで、まだ残っている家具とか細かい物の本格的な整理をしようと思って」

「まだ全部片付けてなかったんだ! それで、お兄ちゃんはお手伝いさんというわけね」

「うむ。だが、無理に連れて行くつもりはない」


 マジっすか!

 そんな偶然ある!?


「お父さん、明日はね、私たちも前の家の方まで行くんだよ」

「何!? どういうことだ?」

「私とお兄ちゃん、里沙姉も由香姉も皆んなで一緒に行くの」


 親父は俺の方を見て、目で「何をしに行くのだ?」と訴えかけてきた。

 俺はタイムカプセルを掘りに行くことを伝えた。


「ほう。楽しそうだな。そうだ、電車で行くのは大変だろうから車で送迎してやろう」

「いいの!? 助かる。さすが親父。 あ、でも車に全員乗れるかな?」

「む、一、二……五人か。うちの車はどのみち七人乗りだから大丈夫だ」

「あれ? 母さんは?」

「私はご近所さんとランチの約束をしているから行かないわ」


 だから手伝いの要請ね。

 ま、時間があったら俺だけ残って手伝うか。


 俺はさっそく里沙と由香に車で送ってもらえることを連絡した。

 それからお風呂に入り明日に備えて早く眠ることにした。

 部屋の電気を消し、ベッドに入る。ふと見上げる天井は、まだ慣れない。

 そう言えば引っ越す前は自分の部屋の天井に、どうやって書いたのか、怪獣の落書きがあったっけ。

 さすがに高校生になった今そんなことはしないが、落書きを見ることができないのはちょっぴり切ない。

 売り払うってことは消さないといけないな。……。しっかり消えるかな?

 明日の朝、親父に報告しておこう。あとで苦情が入らぬように。

 こうして俺は、昔懐かしい思い出に思いを馳せている内に、心地よい眠りに入った。


続く

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