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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
素晴らしき高校生活と恋の始まり編
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12 勘違い to the fever

 鈴木兄妹と里沙先生の勉強会は後半戦も終了した。

 何とかテストを乗り切れそうだ。

 後半戦では古典だけでなく、他の教科のポイントも一通り教えてもらった。


 さすがにここまでやってもらうとな。今度、あいつの好きなものでも買ってくるか。

 確か、プリンが好きだったはず。今も好みが変わってないといいけど。

 スイーツ博士にオススメのプリン屋でも聞いておくか。



 静まり返った教室。ペンで筆記をする音や、紙をめくる音が空間を支配する。

 テスト2日目の一限、問題の古典のテスト中だ。

 俺は、机に置かれたテスト用紙に並べられた難解な物語と睨めっこをしていた。


 ……読める、読めるぞ!

 あ、これ里沙に教えてもらったところだ! と、思わずそう声に出してしまいそうである。


 実を言うと、他の教科も里沙に教えてもらったポイントが面白いほど当てはまったのだ。

 これは赤点回避どころか、高得点間違いなし。学年順位も凄いことになりそうだ。

 マジパネェっす。里沙様々、プリンを一ヶ月分ぐらい奢ろうかな。


 無事に古典を解き明かし、俺は時間を持て余した。ボーッとしていると、後ろからグゥ〜とお腹のなる音が聞こえてきた。

 秋葉だ。彼女の方から鳴っている。


 古典のテストが終わり、さっそく秋葉をからかってみた。


「なぁ、さっきのテスト中……」

「それは言わないで。恥ずかしいよ、もぉ……」


 言い切る前に止められてしまった。

 それにしても、顔真っ赤だぞ。


 朝からお腹を鳴らすとは、朝ごはんしっかり食べてるのかな?

 ……余計なお世話か。



 テスト期間は4日間。最後の試験が終わった瞬間、教室の雰囲気が和らいだ気がする。

 終わった。ヤバい。出来過ぎた。

 次のテストがプレッシャーになるほどの仕上がりになったような気がする。


 テストが終わってからは、土日も含めて数日間の休みとなる。

 通称お疲れさんデイズと呼ばれるその休みは、テスト疲れを癒すためだと言われているが、その実、先生たちが必死に赤ペンを握り締め、丸つけに手を痛めているだろう。


 そしてこの学校では、学年ごとに1位から100位まで順位が貼り付けられる。

 ここで1位になろうものなら、一目置かれる存在となるらしい。

 順位が張り出されるのは全テスト返却が終わった後の週末、金曜日。

 まずはテストの結果に一喜一憂だ。



 お疲れさんデイズが終わり、テストの返却がそれぞれの教科ごとに始まった。

 いくらテストに自信があってもこの時ばかりは祈ってしまう。

 どうか神様、俺に点数を!



 さて、テストが全て返却されたわけだが俺は震えていた。全部で11教科あり、俺の平均は90点。合計点は990点だ。

 嘘だろ? ははは。いくら何でも出来すぎて怖いんだが。

 点数は誰かに言ったわけではないが、とにかく里沙には何回も感謝をした。

 感謝しすぎて引かれるほどだった。倉持にも笑われるし。



 そして、来る順位発表日。俺はなぜか恐るおそる現場に向かった。

 順位は玄関のところにある掲示板に紙で貼り出される。


 現場に着くと……さっそく人だかりができているな。

 後ろからだと見にくい。

 人だかりをくぐり抜け、前の方に進むとやっと順位が見えた。


 えーと、1位は……7組関野里沙、1070点。

 おおお! やったじゃないか。宣言通り1位だな。

 ここまで満点に近いと、どこを間違えたか気になるだろうな。

 ってか、点数まで掲載されるのか。恐ろしい高校だ。

 

 それで、2位は……5組牧達徳1000点。

 ほお、1000点か俺と近いじゃないか! ははっ!


 3位は……2組鈴木宏介990点。

 へえ、どこかで見たことある名前だな。


 んで、4位は……って待て待て。

 俺はもう一度上から順位を見直した。

 何かの見間違いではないか確認をする。


「へ……?」


 マジ!? 3位!? あの俺が3位!? 嘘、俺の点数高すぎ!

 信じられねぇ……。


 俺があまりの衝撃にその場に立ち尽くしていると、後ろから声をかけられた。

 声をかけてきたのは同じクラスの委員長、山内だった。

 横には笹川もいた。


「おー鈴木! すごいなー!」


 笹川がいつもの調子で俺にそう言った。次になんだか様子のおかしい山内が発言した。


「鈴木君。君はそんなに勉強ができたんだね……」

「おう。俺も驚いてる」

「ははは……。負けたよ」


 山内は明日、地球が滅ぶかのような元気のなさだ。


「だ、大丈夫か?」

「悔しいさ。僕は勉強だけが取り柄でさ。せめて学年3位以内に入ろうと思ってたのに」


 山内の指差す先を見た。

 4位、2組山内聡四郎970点。

 あ、俺の1つ下じゃないか。


「ほら! 見事に4位さ!」


 ところで、山内ってこんなキャラだっけ?


 山内は俺の両肩を掴むとガクガク体を揺さぶってきた。

 止めてくれ。頭が揺れる。


「どうしたらそんなに勉強ができるんだい!?」

「お、落ち着けって! 山内も十分すごいじゃないか!」

「それが強者の余裕かい!? 悔しいよおおおおお!!」

「あはははははは! 何やってんの!?」


 横で笹川が大笑いをしている。

 それに周りを見てくれ。ほら、クスクス笑われてる。

 いい笑いの的になってるじゃないか。

 せっかくのイケメンが台無しだぞ。


「はぁ……。ごめん。迷惑だよね」


 山内は俺の肩から手を離すと、その場でうなだれた。


「なんか、ごめんなさい」


 俺が山内を励まそうとしたその時、周りがある人物の登場にざわついた。


 里沙のお出ましだ。


 モーセのように人波を割ると、掲示板の目の前まで来た。

 後ろには倉持や他の友人もいる。


「あ、宏ちゃんだ!」


 倉持は俺の近くまで寄ってきた。


「おう」

「宏ちゃんやるね!」

「マジで信じられん」

「頭良いんだ。私なんてランク外だよー」

「いや、里沙のおかげだし。それよりもあいつの方がすごいぞ」


 俺は里沙を指差した。


 里沙は周りの友達にキャーキャー言われている。

 本人は恥ずかしそうに照れていた。


「そんなに騒がないでよ、恥ずかしいわ」

「またまた謙遜しちゃってー。もっと堂々としなよー!」


 楽しそうな笑い声が聞こえてくる。


 ああ、こうして見ると、遠い世界の住人のようだ。



 その後、里沙は俺の方へやってきて、目の前に立った。

 周りはまたざわついている。


「おめでとう。宏介が3位なんて驚きね」

「いや、俺も未だに信じられないし、里沙こそ1位はすごいじゃないか。おめでとう」

「2人ともすごいね」


 倉持はなぜだか自分のことのように嬉しそうだった。


 その後、山内が会話に入ってきた。


「2人とも頭がいいんだね。完敗だよ」

「いや、だから里沙のおかげだって」

「関野さんの……おかげ……?」


 しまった。


「そうよ。私が宏介にテスト勉強を教えたの」


 周りのざわつきが一段と大きくなった。

 そこにいる全ての生徒が俺たちに注目している。

 嫌な予感がする。


「へえ。羨ましいよ。次は僕も教えてほしいぐらいさ。あ、でも、テスト前は居残り禁止なのに、どこかで勉強してたってこと?」


 おっと、爆弾が投げられたな。しかも爆発寸前と見た。

 さっきまでのざわつきとは一転、周りは静寂に包まれた。

 妹もいたが、俺の家で里沙と勉強したなんてこと、口が裂けてもここでは言えない。


 しかし、里沙は間髪入れずに答えた。


「宏介の家よ」


ちょおおおおおおおお!


「ええ!? 鈴木君の家!?」

「そうだけど……?」


 里沙は何をそんなに驚いているのか分からないという顔をしている。

 このド天然め!


「宏介の両親もいなかったし、結構遅くまでできたわね。おかげで成果はバッチリ! 想像以上」


 はい、爆発しました。見事なまでの綺麗な爆発。

 芸術点でも満点取れるぞ!


 「えええええええええええええええ!?」


 俺と里沙、倉持以外のそこにいた全員が驚き、叫んだ。


「2人で! 家って! 2人はやっぱり……!?」


 山内が叫ぶ。


「いやいや、待て待て! そこには俺の妹も……」


 駄目だ。聞いちゃいない!


 倉持は口に手を当て大声で笑うのを堪えているようだった。

 なんかこの状況を楽しんでませんか!? 助けてくれい!


 さらに里沙の友達が囃し立てる。


「うっそ〜! 里沙って彼氏いたの!?」

「里沙の彼氏だから勉強もできて当然よね」

「2人で夜遅くまで勉強って。燃えるね!!」


 あああ。話が勝手に飛躍していく。

 とめられない。とまらない。


「え。何でこんなことになるの? 彼氏って何? 宏介! どういうことよ!?」

「俺に言われても!」


 俺と里沙は混乱状態の群集の中、どうすることもできずに、慌てふためいた。

 倉持は楽しそうだし、山内と笹川は普通に驚いてるし。

 現場は大荒れの模様。

 まさに混沌、カオス状態だ。


続く

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