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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
素晴らしき高校生活と恋の始まり編
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11 お隣さんは家庭教師

 7月。夏休みまであと1ヶ月。

 夏休みを控えた高校生たちは、まさに無敵だと言っても過言ではない。

 そう、そのはずだが、俺たちには乗り越えるべき大きな壁がある。


 期末テストだ。


 期末テストで赤点を取ると、夏休みの最初を削って補習に出なければならない。

 それだけは避けたい。


 さすがにテスト期間中の部活は休みとなるが、テストが終わったらSF研究部の楽しい夏休みの活動について話し合うことになっている。

 夏休みを存分に満喫するためにテストごときで躓くわけにはいかない。

 しかし、俺は古典が大の苦手である。

 変格活用? 何それ? 外国語かな。

 清少納言さん、あなたのお話は俺の心に全く重ならへん。

 ええい、誰か俺に古典を教えてくれ!



 高校が終わり、家に帰った俺は、机に向かって必死に古典の問題集を解いていた。


「ははは。全くわからねぇ……。終わりだ!」


 解答を見たが、説明すら理解できない俺は絶望した。


 気分転換にアイスでも食べますか。そう思い、リビングに行くと見覚えのある女が平然と座っていた。


「ふぇ!?」


 俺は間抜けな叫び声をあげた。


「どうしたの? そんなに驚いて」


 そう言葉を発したのは里沙だ。

 なぜお前がいるんだ?


「あ、お兄ちゃん勉強終わったの?」


 妹の亜子も里沙の隣に座っていた。


「なぜ里沙がここにいるんだ?」

「いては駄目かしら?」

「駄目じゃないけど……。俺ん家だぞ」

「そんなこと分かってる」


 妹が里沙をフォローするように会話に入ってきた。


「今日は私に勉強を教えてくれるって約束してたもんね!」

「そうよ。今、ちょうど勉強を教えてたの」


 里沙は亜子に対しては優しい。昔からとても仲が良い。


「そういうことか。でも、自分の勉強はいいのか?」

「私は日頃から予習復習を欠かさないわ。だからテスト前に焦って詰め込みなんてことしないの」

「うっ……」


 何も言い返せなかった。俺は自分の勉強不足を激しく後悔した。


「そ、そうだ。俺にも勉強を教えてくれ」

「え? 急に何よ」

「マジで古典ができないんだ。助けてくれ」


 藁にもすがる思いとはこのことである。


「ふーん、私は苦手じゃないし、いいわよ」

「え?」


 まさかの一発オーケーである。「嫌よ!」なんて言われると思っていたのだが、満更でもなさそうだ。


「人に頼られるのも悪い気がしないわ。私をもっと頼りなさい。そして褒め称えなさい!」

「里沙姉っ! 里沙姉っ!」


 亜子が楽しそうに腕を振り上げている。


「これから緊急勉強会よ!」


 こうして、俺の家で里沙先生による鈴木兄妹への授業が始まった。


 時刻は17時。


「そういえば、何時まで大丈夫なんだ? 夜ご飯の時間とかもあるだろ?」

「そうね……。いいことを思いついたわ、ちょっと待ってて」


 里沙はそう言うと、1度自分の家に戻りすぐに戻ってきた。


「ちょっと夜ご飯の相談をしてきたの。これで問題ないわ」


 俺の両親は、親父が有休を取って母さんと一緒に旅行に行っている。

 もともと、出前を取る予定だったのだが……。


「いや出前を取ろうと思ってたんだが」

「いいから! 私のお母さんが作ってくれるって」


 おばさんにはよく世話になっていたっけ。

 里沙は恐かったけど、おばさんは優しかったな。

 なんだか懐かしい。


「本当にいいのか?」

「何を今更言っているの? それに、お母さんもそういうことならって喜んでたわ」

「やったー! なんか楽しくなってきたよ」


 俺か妹が里沙に分からない部分を聞くというスタイルで勉強会は進んだ。

 中学校の勉強と高校の勉強を器用に教える里沙の姿はさながら塾講師のようだった。

 なによりも、こんなに勉強が出来るなんて思ってもみなかった。


「それにしても、お前すげーな」

「急に何よ」

「いや、こんなに勉強が出来るなんて思わなかった」

「ふふ、私はこの期末テストで学年1位を目指しているの。出来て当然よ」


 なるほどな。完璧美少女たるもの勉強もできるということか。


「いいこと? 古典の単語は暗記よ。普段使わない言葉だから覚えるしかないわ」


 うーん。どこかの怠け者少年よろしく、食パンに単語でも書いて食べようかな。 

 単語の暗記は頑張るしかないとして、何気に里沙の教え方は上手だった。

 おかげで赤点が回避できそうなくらいには、謎の言語をモノにできそうだ。


 時刻は18時半。

 チャイムが鳴ると、おばさんが夜ご飯を持ってきてくれた。


「こんばんは〜。勉強頑張ってるかしら?」

「あ、どうも。ありがとうございます」

「おばちゃん、ありがとう!」


 俺と妹は、お礼を言った。


「いいのよ。あなた達が3人で一緒にいるなんて、随分久しぶりじゃない。なんだか懐かしいわね」

「俺もまさかまた家が隣同士になるなんて思ってもいませんでした」

「うふふ。運命感じちゃうわね。ごめんあそばせ〜」


 そう言うと、おばさんは夜ご飯を置いて俺の家から出て行った。

 マジでありがたい。


 おばさんの愛情こもったご飯を食べると勉強を再開した。

 美味しかったです。ごちそうさまでした。今度会ったらまたお礼を言っておこう。


 それから勉強を再開すると、授業は続いた。

 時刻は21時。


「お、もうこんな時間か」

「あと1時間はやらないと駄目だわ」


 里沙先生はスパルタだぜ。正直、もう頭がパンクしそうだ。


「ふわぁ〜あ。眠くなってきちゃった」

「亜子は無理しなくても大丈夫よ」

「ううん。最後までやるー」

「偉い子ね」


 俺たちはラストスパートをかけた。


 時刻は22時。

 里沙先生は授業の終わりを告げた。


「ふぅ。今日はこのぐらいね」

「今日は……?」

「そうよ。明日もおばさんたちは旅行でしょ?」

「そうだ。明後日帰ってくるから明日もずっといないぞ」

「もう1日、明日も頑張るわよ」


 完全にスイッチが入っているな。



「里沙姉ありがとう! 大好き!」


 亜子は里沙に抱きつきながらお礼を言っていた。


「どういたしまして。亜子は昔から可愛いわね」


 里沙は亜子の頭を撫でながらそう言った。



 俺と亜子は里沙を見送るために玄関に来ていた。見送ると言っても隣だけどな。

 そこで亜子は突然ぶっ込んできた。


「本当のお姉ちゃんになってくれればいいのに! そうだ、お兄ちゃんと結婚すれば私のお姉ちゃんになれるよ!」


 ぶっ! いきなり何ってんだこいつは。


「な……何言っているの!?」


 里沙の動揺っぷりが凄い。顔を赤くして慌てふためいていた。


「あはは! なーんちゃって」


 亜子がいたずらっぽく笑う。


「もう……!」


 里沙は、ふいっとそっぽを向いた。

 


 そして俺たちは最後に挨拶を交わした。


「明日も勉強よろしくね!」

「よろしくな」

「ふふふ。覚悟しておきなさい!」


 こうして俺たちの勉強会は後半戦へと続いた。


続く

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