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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋の刺客と愛の資格編
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114 祭りは続く

 大会が終了したので、俺と内田は里沙を会場裏まで迎えに行った。

 各出場者がぞろぞろと帰る中、里沙が出てくるのを待つ。

 様々なキャラクターが入り乱れ、その場はまさにカオス状態。コスプレを全く知らない人が遭遇したら、百鬼夜行の如く異世界に迷い込んだと思うだろう。


「なかなか出てこないな」

「あれだけ人数がいれば、退出も時間がかかるでしょ」


 じーっと出口を見つめながら二人して待っていると、最初に秋葉が出てきた。その後ろに里沙が続く。

 ただ一人、エルフのコスプレイヤーというおまけ付きだ。


「里沙も奈美恵も可愛いデスネ!!」


 彼女たちは、大きな声で賑やかにしていた。

 早速、大会出場者同士、交流をしているのか。


「お姉様〜! こっちー!」


 内田が里沙に呼びかけをした。

 里沙たちはこちらに気づき、俺たちのところまでやって来た。


「残念だったわ。アンジェに負けちゃった……」

「惜しかったけど、良い大会でした!」

「そう言ってもらえると助かるわ」


 内田と里沙の会話の傍ら、エルフがこちらをじーっと見つめる。


「このお二方もお友達デスカ?」

「うん。宏介と麻衣子よ。」

「宏介と麻衣子、ヨロシクです! 私はアンジェと言います! アメリカから来ました!」


 アンジェは俺と内田に向かって軽くお辞儀をした。

 なんとも礼儀正しい。俺たちも思わずお辞儀を返す。


「宏くん、私はどうだったかな……?」


 秋葉が不安そうに質問をしてきた。


「秋葉も可愛かったぜ。本当お前はすごいよ!」

「えへへ。ありがとう!」


 素直な気持ちを伝えると、秋葉の表情は晴れやかになった。

 色々と、彼女の行動力には驚かされるし、見習いたい。


 その後、アンジェを交え、しばらく話し込んだ。

 彼女は最近日本に来たばかりであること、俺たちと同じ年であること、どこに引っ越してきたのかなど、聞いた。

 まだまだ興味は尽きないが、彼女の時間がなくなってしまったため、その場は解散となった。

 近いうちに日本を案内する約束をして俺たちはアンジェと別れた。


「さぁ、私たちも着替えて帰らない?」


 里沙は魔法少女の衣装である白い手袋を外しながら、そう言った。


「そうだな。もう夕方で、頃合いか」


 俺は里沙に同意をした。

 こうして、世界コスプレ大会は幕を閉じた。

 里沙の優勝は叶わなかったが、新しい友達もできて充実した一日だったな。


 帰りの電車、秋葉も内田も帰る方向が違うため、俺と里沙は二人きりだった。

 運良く席にも座れて、一息ついた。


 さてと、例の水族館に誘ってみますか。


「今度さ、水族館に行かないか?」

「水族館って……結構前にチケットを見せてもらったところ?」

「それそれ! どうかな?」

「行く。いつにするの?」

「そうだなぁ……」

「明日は咲たちと遊ぶ予定があるし……」

「来週はどうかな?」

「うん。来週の土曜日がいいわ」

「よし! 決定で!」


 覚えててくれたんだな。

 これで、亜子からの宿題とやらも無事終えることができる。

 今から来週が楽しみだ。またプランを練り練りしておきますか。



 休みが明けて月曜日。

 楽しい楽しい学校がまた一週間始まる。

 人生の経験を凝縮したような高校生活を謳歌していると自負できるが、少しハラハラするのもたま事実。

 今週も何か起きるのではないだろうな。


 俺の予想は見事的中、朝のホームルームから話題は尽きなかった。


「今日は転校生を紹介します」


 担任の先生が突如放った一言にクラスは騒がしくなった。

 今度は俺が転校生を迎え入れる側か。


「それじゃあ入ってください」


 扉が勢いよく開き、転校生が入って来た。

 茶髪の青い瞳。スタイルもよく、まるで外国人……。って、うん?


「初めマシテ! アンジェ・ジャーマノートと言います。ヨロシクデス!!」


 そこに立っていたのは、つい最近出会ったばかりのコスプレイヤーだった。


「あ……!」


 思わず声が漏れた。


「アレ? 宏介と奈美恵!」


 アンジェが俺と秋葉の名前を発すると、クラス中の視線が俺たちに向けられた。

 まさかまさかの転校生。こんなオチが待ち受けていたなんて。


 最初の休み時間、アンジェの周りには女子たちが集まっていた。

 キャーキャーと黄色い声が飛び交っている。

 どうやら女子たちは、異文化交流に興味津々のようだ。

 男子たちは、その輪の中に入りたそうに遠見の見物をしている。

 俺も例外ではなく、そんな彼女の様子をボーっと眺めていると、山内が話しかけてきた。


「やあ、まさかアンジェさんと知り合いだったなんて」

「俺も驚いている。つい一昨日出会ったばかりだ」

「なるほどねぇ。鈴木君は何かと渦中の人物のようだけど、わざとなのかな?」

「そんなわけないさ。全くの偶然だ。今回ばかりは、秋葉も同じ境遇だったからな」

「どういう星の下に生まれたのか……。じゃあ、僕もアンジェさんと話してこようかな」


 山内はそう言うと、女子の輪の中に堂々と入り込んだ。さすが、イケメン委員長のなせる技。

 ここで、あることが俺の脳裏をよぎった。

 秋葉がオタク少女でコスプレ大好きってバレてしまうのでは?

 後ろの席へ振り返ると、秋葉は机に顔を伏せていた。

 恥ずかしすぎる、という理由で頑なに秘密を保ってきたが、とうとう崩壊してしまうのか。


 俺はそーっと秋葉の肩を突いてみた。


「ひゃうん……!」

「わっ……! ごめん!」


 予想外にも、秋葉は変な声を出した。


「びっくりしたぁ」

「驚かして悪い。秋葉のことが心配で……」

「私のことを心配してくれるの……?」

「だって、秘密がバレてもおかしくないよな?」

「ううぅ……。だから今も顔を伏せてたんだよ。本当はアンジェさんと話したいけど、今は駄目だなって」

「だよなぁ。その辺は俺も協力するから、何とかアンジェに説明しよう」

「本当!? ありがとう♡」


 秋葉の秘密保持作戦が始まった。

 難易度は高い。今の所怪しまれるかバレてしまう未来しか視えない。


続く

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