表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋の刺客と愛の資格編
117/177

112 コスれ!

「それではー! 1番! アンジェさん! お願いします!!」


 さっそくエルフのコスプレイヤーが前に出てきた。

 名前からして、やはり外国人のようだ。


「うおおおおおお!」

「きゃあああああ!」


 トップバッターにしてこの盛り上がり。

 はあ、と、溜息が思わず溢れる。それ程、様になっている。


「さすが世界コスプレ大会ね……」

「ううむ……」


 きっと、Aブロックは彼女に票を入れることになるだろう。


「ミナサン、ヨロシクですー!」


 少しカタコトの日本語だが、それが可愛らしい。

 まだ挨拶をしただけなのに、また歓声が上がった。

 そして、笑顔から一転、凛々しい顔になると、キャラを演じ始めた。


「私が世界を救ってみせる! だから、この村を出る!」


 演技力も抜群ときましたか。

 感情移入の仕方が凄まじい。作品のワンシーンをそのまま切り出したかのようである。

 アピールタイムは短いが、ポージング、セリフで会場を虜にした。

 俺の知らないアニメかゲームのキャラかな。


「内田はあのエルフが何か知っているのか?」

「ゲームのキャラね。知っているからこそ、クオリティの高さが分かるの」


 エルフのコスプレイヤーは、アピールタイムが終わると、颯爽と後ろに下がっていった。

 続く者たちのハードルを上げられるだけ上げる結果となった。


「アンジェさん! ありがとうございました! 素晴らしかったです!」


 メイドの司会のもと、大会は順調に進んだ。

 Aブロックはガチ勢らしき人たちが多く、熾烈な戦いとなった。

 まるで、テレビでよく見るファッションショーである。

 全員のアピールが終了すると、いよいよ審査の時間だ。


「さあ! お手元のスイッチで投票をお願いします!」


 入れられる票は一人一票で、皆んなの様子を見る限り、誰に投票するか迷っている人が多かった。

 エルフのコスプレイヤーの他にも、剣士や王様、修道士等がおり、さながらRPGの世界だった。

 非日常的な光景に心が踊り、大会に参加できて良かったと思った。

 ああ! コスプレって最高!


 投票時間が終わり、早くもAブロックの結果発表だ。


「それでは、結果をご覧ください!」


 会場のモニターに決勝進出者の名前が映し出される。


『1番アンジェ・ジャーマノート』


 やはり、エルフのコスプレイヤーの名前が映し出された。

 そして、会場に、惜しみない拍手が溢れた。

 さすがに票数まで表示されることはないが、圧倒的一位だろう。

 あの演技力、里沙よ、頑張ってくれ!



 続いて、Bブロックの時間がやってきた。さあ、里沙のお出ましだ。

 例の如く、メイドの合図で出場者たちがステージに上がる。

 このブロックも様々なコスプレイヤーがいたが、その中でも、里沙の魔法少女は一際目立っていた。

 流石というべきか、彼女の顔はにこやかで、少しも緊張していなさそうだ。

 うん。いける! アピールタイムさえ順調にこなせば、問題なしだろう。


 Bブロックも順調に進行し、里沙のアピールタイムとなった。

 見ているこっちが緊張したきた。


「ああ、お姉様! 私たちに勇姿を見せて……!」


 思わず内田は、声を漏らした。


「あのコスプレ、少し遠くから見るとキャラそのものだな」

「狙い通りね。いつもお姉様に似ていると思ってたの。まさか実際に拝める日が来るなんて、ゾクゾクしちゃう……!」


 内田は両手の拳を握り、グッと力んでいた。きっと彼女も緊張しているはず。


「それでは、15番! 関野さん! どうぞ!」


 里沙が前に出きた。

 そして、髪を手でファサッとひと撫ですると、喋り始めた。


「よろしくお願いしましゅ!」


 あ、噛んだ。

 やっぱり緊張してるのか……。


「うおおおおおおおおおお!」

「可愛いよー!」


 里沙は一瞬、石のように固まったが歓声のおかげで調子を戻した。


「緊張なんてしてないんだからっ! ちょっと調子が悪かっただけよ!」


 里沙の扮する魔法少女は、ツンデレキャラだ。ほら、ピッタリだろ?

 里沙がセリフを喋る度に、会場に歓声が溢れる。

 そして、俺の隣にも、狂気の沙汰が一人いる。


「きゃあああああああ!! お姉様! 素敵ー!!」


 内田は手を挙げ、上下に振りながら興奮していた。


「私のことも罵ってー!」


 周りのことなど、眼中にない。

 近隣に座っている人たちは、そんな内田の様子を見て、苦笑いをしていた。

 完全に引かれているぞ。


「う、内田。少し落ち着いたらどうかな?」

「は……!」


 内田は、俺に声をかけられ、正気を取り戻したようだ。

 そして、周りを見渡し、咳払いをした。


「オホン。はしゃぎ過ぎちゃった。だって、お姉様が可愛いいから」


 里沙が可愛いのは分かるが、内田の気持ちはどうかしてるぜ。

 もはや、里沙に服従の魔法をかけられたのではないかというほどである。


「今日はみんなに感謝するわ。特別よ! その……、あ……ありがとう……!」


 里沙のアピールタイムは、無事? 終了した。

 最後までキャラになりきっており、完璧だった。彼女に、これほど演技力があったとは、恐れ入る。

 ま、俺も内田と一緒で、あれだけツンツンと罵られたく……、っていやいや、そう思ったらいよいよ末期だぜ。


 Bブロックも全員のアピールが終わり、審査がやってきた。

 先と同じようにスイッチを押す。

 当然、俺と内田は里沙に票を入れるが、結果が分かるまでは油断できない。

 スイッチを握る手に汗が滲む。ドキドキ。胸の高鳴りは不安なのか、それとも勝利の武者震いなのか。


「結果発表いきまーーす!!」


 メイドが威勢良く、合図を放つ。

 俺は信じているぞ! さぁ、そのスクリーンに里沙の名前を!


『15番関野里沙』


 その名前を見た瞬間、体の力が一気に抜けた。


「はぁぁぁぁ……。良かった……」

「うん! やったわ!」


 俺と内田は思わず、手を取り喜び合った。

 ステージに立つ里沙の表情もどこか満足げだ。


続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ