表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋の刺客と愛の資格編
114/177

109 両手に花を

「はーい! ありがとうございまーす! それではこちらの受付で用紙の記入をお願いします」


 里沙はすぐ隣の受付にて用紙に名前等を記入した。その筆圧からも俄然やる気が感じられる。

 参加要項を読むと、開始時刻は14時。まだ時間があるから、たっぷりと作戦を練ることができそうだ。

 参加人数は30名。よくテレビで見るようなファッションショースタイルで進行されるらしい。


「参加も決まったことだし、早く鳴神池に行かない?」

「はい! お姉様! そのあと、レンタル衣装店に案内するね」

「麻衣がいると心強いわ」


 一世一代の勝負前の息抜きという感じで、ちょうど良い。まずは、落ち着いた心を手に入れてこよう。



 鳴神池へ移動すると、休日ということもあり、とても混んでいた。

 時折、外国語が聞こえてくる。前評判通り、ザ・ジャパニーズな池は外国人受けが良さそうだ。

 一周歩くのに5分もかからないぐらいの規模だが、池の真ん中には社があり、神秘的な造りとなっている。

 おそらく大昔の人が頑張って建てたのだろう。社に行くための通路はなく、本当に池の真ん中にポツンと建っている。掃除とか、どうしてるのだろう。


「素敵な場所ね。写真でも撮らない?」

「お、いいな。せっかくだから3人で撮ろう」

「お姉様と写真……! いいの!? そんなことがあっていいの……!?」


 内田は一人、明後日の方向を見ながら呟いている。

 ここは、俺が一肌脱ぎますか。


「あの、すいません!」


 俺は、近くにいた人に声をかけた。


「はい。何でしょうか?」

「写真撮ってもらっても宜しいでしょうか?」

「私がですか!? 大丈夫かな〜」


 俺が声を掛けたのは、首からカメラを下げたおじさんだった。

 この人に頼めば間違いないだろうと思ったわけだ。写真を撮ることに抵抗がなさそうだと見受けできるからな。


「お願いします。無理にとは言いませんが……」

「いいよ。私でよければお手伝いしよう」

「ありがとうございます!」


 俺は、おじさんにスマートフォンを渡した。

 そして、池をバックに3人で並ぶ。


「社も一緒に写したいんだが、もっと寄ってくれないかい?」


 おじさんのリクエストで、社も一緒に綺麗に映るために3人は肩が触れ合うぐらい寄った。

 里沙を真ん中に、両隣に俺と内田という並びだ。里沙の方に触れた瞬間に感じた柔らかさにドキッとした。

 写真を撮ってもらい、おじさんにお礼を言った。おじさんは満足げに手を振りながら去って行った。

 そして、その場で里沙と内田に写真を送った。


「ありがとう! この写真は一生大切にする!」

「大袈裟ね」

「だって……! 夢みたい!」


 内田にとって、相当嬉しい事のようだ。まるで大好きな芸能人と一緒に写真を撮ったかのような態度である。


 鳴神池を一頻り堪能すると、少し早めの昼食を摂ることにした。

 腹が減っては戦ができぬ。先人たちの教えにもある通り、コスプレ大会に向けての腹ごしらえといこう。


 もちろん、どこで食べるかは内田と打合せ済みだ。

 あれが好きだ、これが好きだと言い合っている内に一つの結論に達した。

 色々な物が食べられるバイキングに行けば良いじゃないか、と。


 そういうわけで、俺たちは今バイキングのお店に来ている。

 ちなみに最近はバイキングではなくて、ビュッフェという言い方が流行りらしい。

 里沙に言い方が古臭いと突っ込まれてしまったぜ。

 『オラオラ料理番長』という厳しい名前からは考えられないほどお洒落な店内で、女性客が多い。

 並んでいる料理もヘルシーな物が多く、内田曰く、店名と中身のギャップが受けているそうだ。


 各自取って来た料理を食べていると、里沙が俺の飲んでいるジュースをじーっと眺めていることに気づいた。


「これはブラッドオレンジジュースだ」

「やっぱり……。私も飲みたかったけど、ちょうど空だったわ」


 そう言い終えた後もブラッドオレンジジュースの入ったコップに釘付けだ。

 ふふ。分かりやすい奴め。


「ほら、良かったら飲むか?」


 俺はコップを里沙に差し出した。


「いいの……?」

「おう! もちろんさ」


 里沙はコップを受け取ると、丁寧にジュースを口に入れ、コクっと一口美味しそうに飲み込んだ。


「うん、美味しい」


 そして、俺にコップを返しながら感想を述べた。


「間接キス……」


 俺と里沙の様子を見ていた内田がそう呟く。

 間接キスか……。


「お姉様、良いの? 鈴木と間接キスなんて」

「そうね……。特に気にならないわ」


 いつか誰かにも聞かれた気がするが、俺は少しドキドキしているんだ。

 だが、平気な振りをする。


「ははは。今更気にしないさ」

「ふーん……。そんなものなのね……」


 内田はそれ以上何も言わなかったが、明らかにまだ何か言い足らない、そんな顔をしていた。



 その後もバイキングを堪能し、お腹がいっぱいになると、お店を後にした。そして、内田に案内されレンタル衣装店にやって来たのである。

 店内には所狭しとコスプレの衣装が並んでおり、どれにするか迷ってしまう。


「すごい……。こんなにあるけど、私あまり知らないわ」

「任せて! 私がお姉様に会う衣装を見つけ出すから!」


 こいつは頼もしい。里沙ならどれを着ても様になると思うが、どのキャラのコスプレをするか、とても重要な要素だろう。


「さて……、これなんてどうかな?」


 内田が手にしたのは、俺も知らないキャラの衣装だった。

 露出が多めの衣装だ。というか、ほぼ水着じゃないか!


「それは……。水着?」

「水着じゃないです! 下着という設定です」


 さらっと何を言っているんだ。

 余計に駄目じゃないか。


「麻衣……。さすがにその設定は恥ずかしい」

「ですよね……。お姉様のエロスが……げふん、げふん。何でもありません」


 明らかに内田の欲望が垣間見えていた。

 賛成か反対かと聞かれれば、賛成だが……。

 それにしても、このレンタル衣装店、色々と楽しいな!


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ