101 恋の刺客と愛の資格
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次の更新は3/11(日)です。
布団から出ると、思った以上の寒さに体が震えた。
朝ごはんを食べつつ、ニュースを冴えない頭に流し込んでいると、今年の冬は例年以上に寒いことが分かった。
11月も半ば。日本列島は確実に冬へと進路を進めている。
それにしても、毎年例年以上の寒さという言葉を聞くが、いつまで記録を更新し続けるのだろうか。
「お兄ちゃん、醤油取って」
考えるより先に手が動く。
亜子に醤油を渡すと、今度は塩を手に取り、自分の目玉焼きにかけた。
目玉焼きには塩が一番だ。その点、亜子とは相容れない。
半熟気味の目玉焼きを突いていると、コーヒーの香ばしい香りが漂ってきた。
俺たちより少し早めに朝食を取り始めた親父は、既に食後のコーヒータイムへと進んでいた。
無言でブラックコーヒーを啜る親父は、顔色一つ変えることなくテレビを見つめている。
台所にいた母さんも、食卓につき、朝食を取り始める。
俺たちは白ご飯を食べているが、母さんだけは焼いた食パンを食べる。
玉子料理も、目玉焼きではなくスクランブルエッグだ。
こだわりが強いらしく、いつも決まって洋食である。
近状報告や今日1日の予定、ニュースの話題など、ありきたりな会話がテーブルの上で飛び交う。
これが我が家の朝食の様子だ。特に変わった所はない。
平均的な日本の家庭だと思いたい。
朝食を食べ終えると、歯を磨き、トイレを済まし、制服に着替える。
この一連の流れをこなすだけで、時間は丁度良い塩梅になる。
妹より少し遅めに家を出られるのは、高校が近い証拠だ。
このマンションを選んでくれたことに感謝しよう。
靴を整え、玄関を出ると、そこには嵐ヶ丘高校一の美少女である里沙が立っていた。
「おはよう」
「うっす。待たせたな」
家が隣同士の俺たちは、特に決めたわけではないが、毎朝一緒に高校へ通っている。
幼馴染で家が隣同士という理想のシチュエーションにあるという奇跡を噛み締めながら、朝から充実した人生を送れていることを胸に刻む。
マンションを出ると、駅前を通り、嵐ヶ丘高校へ向かう。
そして、駅前を過ぎたあたりで、里沙の親友の倉持と合流する。
「おはよう! 今日も可愛いねっ!」
「おはよう。咲も今日の髪は一段と綺麗ね」
「えへへー。実は最近トリートメントにこだわってて……」
俺の入る余地がないガールズトークが始まった。
もちろんトリートメントなど使ったことがなく、シャンプーですらこだわりはない。たまに、妹専用のシャンプーを使い怒られるぐらいだ。
こんな感じで、冬休みまで平穏無事に向かってくれると有り難い話だが、最近、違和感を感じることがある。
見られている。
自意識過剰だろうか。毎朝、駅前を過ぎたあたりから、誰かの視線を感じるような気がする。
確信が持てないので、誰にも言っていないが、俺の中の野生の勘が察知している。
これがストーカーというやつか? それとも、誰かに雇われた探偵につけられている? まさか、殺し屋に狙われているとか!?
いずれにせよ、俺を監視する奴がいることは間違いなさそうだ。
時折、不意打ち気味に後ろを振り返ってやるが、特に変わった様子はない。
「最近の宏ちゃんって、様子がおかしいよね」
「そうね。挙動不審よ」
さすがに2人から突っ込まれたか。俺だって好きで挙動不審になっているわけではない。
誰かに監視されているということを正直に話すと、2人は大笑いし出した。
「あははは! きっと宇宙人に狙われているんだよ」
宇宙人か……。その線は考えてなかったな。
「気のせいよ。もし、ストーカーだったら私が凝らしてめてあげる」
おお。心強い。
いや、女子に護られてどうする。
ここは奴を炙り出し、取っちめてやらなければな。
だが、いかんせん正体が掴めない。
続く




