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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
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100 歌姫の告白

次の更新は3/5(月)です。

 教室から出たのはいいが、廊下側にも窓があるため、俺たちの様子は丸見えだ。

 もちろん、クラス全員がこちらに釘付けとなっている。

 由香はそういった状況に慣れているらしく、気にも留めていない。


「一昨日は、私の歌を聴きに来てくれたかな?」

「当然。すっかりファンになったぞ」

「やった! 宏介大好きー!」

「そ……それはどうも」


 率直に言われると恥ずかしい。

 この場合、友としてという意味であろうが。


「まだ、朝のホームルームまで時間あるよな」

「ああ」

「じゃあ、ちょっと付き合ってくれない?」

「いいけど……どこへ行くんだ?」

「ししし。いいから、着いてきてよ」


 由香は身軽に振り返り、俺に背を向けると、軽やかな足取りで歩き出した。

 俺はその後ろ姿に吸い込まれるかのように、着いていく。

 彼女のツインテールが機嫌よく揺れている。

 いったいどこへ連れて行かれるのだろうか。

 得てして、俺は美少女にどこかへ連れて行かれる。


 校内を歩くこと数分、俺たちは屋上にたどり着いた。

 初めて来る場所ではないが、朝の日差しを浴びながらの屋上は心地よい。

 爽やかな1日の始まりを感じさせてくれる。


「どう? 気持ちいいでしょ?」

「ああ。心地良いな」

「この時間の屋上は、私のお気に入りの場所。意外と誰も来ないんだ」

「まさか毎日来ているのか?」

「うん。朝一の発声練習もしてるよ」

「さすが、歌姫。ストイックだ」

「ししし。それほどでも〜」


 由香は、ツインテールの片方を手櫛で掻きながら、微笑んで見せた。

 そして、屋上の端まで行くと、息を大きく吸い込んで叫んだ。


「大好きだーーーーーーーーーーーー!!!」


 渾身の叫びに込められた思いはこだました。

 町中に響き渡っているのではないだろうか。


「凄い声量だな。……そして、誰が好きなんだ?」


 文化祭のライブを見た時からの疑問を由香にぶつけてみた。

 由香は何も言わずにこちらを向き、俺の眼前まで近寄ってきた。

 そのまま、グイグイと前進を続け、俺を扉部分の壁まで追いやる。


「な……何だ?」


 俺の背中が壁に着くと、由香は俺の頭の真横に向かい手を伸ばし、勢いよく壁を突いた。

 これが、噂に聞く壁ドンか。少し古い気もするが、実際やられると圧迫感が凄いな。


「ねぇ……。私の想い、届いてるかな?」


 由香は俺の目をまっすぐ見つめながら、そう聞いてきた。

 何だこの雰囲気。由香はいつになく女の子らしい表情をしながら切ない顔をしていた。


「答えてよ……。私は、宏介のことをずっと思ってるんだよ」

「……!? え……。どういう……意味……?」

「バカ介!」


 由香はふくれっ面をすると、俺から距離をとった。

 それからまた微笑んでみせた。


「ししし。里沙にだって負けないんだから。私は昔から宏介のことが大好きだよ!」

「それって……!?」

「じゃあ、またな!」


 由香は俺を残し、駆け足で屋上から去って行った。

 突然の告白を受けた俺は、予想外の出来事に呆然と立ち尽くしていた。

 しばらくして事態を飲み込めたが、それでも心ここにあらずという気分だ。


 そして、ライブの光景が鮮明に蘇る。

 由香が歌を捧げた人物は俺だということを何度も思うと、俺の心は、このまま世界を何周もかけ巡りそうなほど、渦巻いていた。


続く

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