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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
103/177

98 ロマンティック願って

次の更新は3/2(木)です。

「ねぇ……あの娘って……」

「うん……」


「噂の一年生だよな」

「間違いないよね」


 等々、周りのヒソヒソ話を背景にお地蔵さんの目の前までたどり着く。

 ここまで言われたらさすがになぁ……。


「なあ、気にならないか?」

「え? 何が?」

「だから、皆んなが明らかに里沙のこと話してるだろう?」

「あー……。もう慣れたわ」


 なぜか俺たちもヒソヒソと話す。


「慣れたって……」

「だって、廊下を歩くだけで注目を浴びるし、色々言われるもの」

「でも、今回のは……」

「どういうこと?」

「いや、何でもない……」


 余計なことは言わないでおくか。

 それにしても、里沙の天然っぷりは健在だ。

 お前の中では願掛けに来ただけかもしれないが、周りにとっては恋愛成就にやって来たと思われているわけで。

 そもそもどこでこの七不思議を聞いてきたのだろうか。

 きっと、倉持あたりが面白い方向に改変して伝えたに違いない。


「ほら……願いなさい」

「あ……ああ」


 里沙はお地蔵さんに向かって手を合わせ、目を閉じた。

 俺も習って同じ動作をする。

 勢いだけでここまで来たわけだが、何を願おうか。


 そうだな……。ここは、本来の趣旨通り恋愛成就でも願っておこう。

 俺は頭の中で、お地蔵さんに向かって語りかけつつお祈りをした。

 後日お供え物でも持ってくるとしよう。こんな寂しいところで、ただ一人、願い事を叶え続けてきたのだから。

 それぐらいしても罰は当たらないだろう。


 俺が目を開けると、里沙も願い事を終えていた。

 こちらを見やると、爽やかに微笑んでみせた。


「ふふ。何を願ったの?」

「教えない」

「教えなさいよ」

「そういうお前は何を願ったんだ?」

「……。内緒」

「ほら」

「私のことはいいの! 宏介は何を願ったの?」

「だから、願い事は人に話したら叶わないぞ」

「そうなの!?」

「当たり前だろ……」


 まるで純粋無垢で世の中の闇を知らない子供と話している気分だ。

 腹黒いのか、腹黒くないのかよく分からない。まあ、ピュアだと信じたいが。


「でも、いつか教えてやるよ」

「本当? じゃあ私もそう約束する」


 そう言うと、里沙は小指を差し出してきた。

 出た。久々の指切り。里沙の中では、それさえすれば約束は必ず守られるらしい。


「早く」


 俺は里沙に促され、指切りをした。

 そして、里沙は相変わらずの満足げな表情を浮かべていた。


「目的も果たしたし、そろそろ戻るか」

「そうね……。まだ名残惜しいけど、戻るわ」


 夕方の体育館裏、別に世界から取り残されているわけではないが、別の時間が流れているようで、少し切ない。

 急がなくたっていいのに、その雰囲気が俺たちを急かす。

 黄昏の焦燥感。不思議な魅力がある。


 お地蔵さんを尻目に体育館裏から去ると、玄関に行き靴を履き替え、Dルームへと向かった。

 まだ皆んないるかな。ライブが終わってから、結構経ってるはず。

 戻って誰もいなかったらショックだ。


 Dルームの前まで着き、扉に手をかけると、簡単に開いた。

 良かった、鍵はかかってない。

 しかし、俺たちの目の前に広がる光景は、誰もいない部屋だった。

 あれ? タイミングが悪かったか。それとも、帰ってしまったのか。

 いや、鍵を開けっ放しにするわけがない。

 とりあえず、待ってみるとしますか。


続く

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